私の読書記録です。2026年1月分から、上の方ほど新しいものです。 「帯」は腰帯のコピー。評価は ★★★★★ が最高。
| 題 | 秘儀(上/下) (原題: Nuestra parte de noche) |
著 | 著: マリアーナ・エンリケス (Mariana Enriquez) / 訳: 宮崎真紀 |
| 版 | 新潮文庫 2025年(原典2019), 各1150円, ISBN978-4-10-241061-5/978-4-10-241062-2 | 帯 | 全世界が注目する南米ホラー、ついに上陸! / 今世紀最凶の恐怖。血と美と闇の絵巻! |
| 話 | アルゼンチンの田舎を車で旅する、重い心臓病を患うファンとまだ幼いガスパルの親子。 〈闇〉を召喚し、異界につながる扉を開くことのできる霊媒であるファンは、南米で隠然たる勢力を誇る〈教団〉に長く利用されてきていて、 彼らの不穏な旅の目的地は〈教団〉が儀式を行う館だ。霊媒の能力の片鱗を見せはじめた息子を〈教団〉から隠し、 遠くない自分の死後も平穏な人生を送らせるため策を講じるファンだが、それはガスパルから見ると父親からの冷たい仕打ちに見えるものだった。 〈教団〉を支配する残酷で貪欲な一族に搾取されながらもその支配から逃れようとする異能の親子それぞれの波乱の人生の物語。 | ||
| 評 | 統合人格評 ★★★ / SF人格評 ★ / ホラー人格評 ★★★★ | ||
| 下の『肉は美し』もそうだが、ここ数年出版が盛んで一つのブームとなっている南米女流ホラー。 その代表者の一人、『寝煙草の危険』の作者による文芸ホラー大作。 章ごとに時代を行き来し、それぞれの語り手やつながりがすぐには見えづらい作りで、登場人物の相関も結構複雑なので、 腰を据えて読まないと物語世界に入りこみ難いが、そういう重厚さを楽しむ小説だ。 儀式の参列者の肉体を損壊する〈闇〉の顕現や、力のある霊媒だけが開ける〈あちら側〉の風景 ― 地面は骨で敷き詰められ、 切り取られた手や死体が吊るされた木が立ち並び、飢えた何かの気配がある荒野 ― の描写は鮮烈だが、 それ以上に、〈闇〉の力を独占するために人身売買や拷問を躊躇なく行い、人々を蹂躙し続ける一族の狂気が恐怖の源泉となっている。 これも(例によって)アルゼンチンの不安定な歴史の暗示であるようだが。 | |||
| イカした言葉 孤児になるということは、すなわち灰を託されるということだ。(上p564) | |||
| 題 | 肉は美し (原題: Cadáver exquisito) | 著 | 著: アグスティナ・バステリカ (Agustina Bazterrica) / 訳: 宮崎真紀 |
| 版 | 河出書房新社 2025年(原典2017), 2500円, ISBN978-4-309-20935-7 | 帯 | 人肉食が合法化した社会を冷徹に描き切った、究極のディストピア食人ホラーSF! |
| 話 | あらゆる動物に感染する致死性ウィルスの流行により、家畜やペットが一掃された未来。 深刻な食糧難から人々の間で共食いが横行し、その混乱を収束するために人肉食が制度化された〈移行〉後のアルゼンチン。 〈頭〉と称される飼育されたヒトの食肉業者の幹部である主人公は、子どもを亡くしたことで精神が不安定となった別居中の妻、 認知症の父親、〈移行〉後の食文化を何も考えずに受容する妹家族との関係に悩み、かつての家業であった畜肉業のグロテスクなコピーである 現在の仕事に違和感を持ちながらも有能なビジネスマンとして働いている。 そんなある日、取引先の業者からメスの〈頭〉を贈られたことから、彼はある違法行為に手を染めていくことになる。 | ||
| 評 | 統合人格評 ★★★★ / SF人格評 ★★★★ / ホラー人格評 ★★★★★ | ||
| 年始一冊目から弩級のホラー。淡々とヒトの解体シーンが続くので、耐性の無い人にはキツい。 そして、いくらおぞましくてもこれはホラーではないのかもしれない。この世界では当たり前の営みが描かれているだけで、 現実でも牛や豚に同じことしてるではないか、と言われればその通り。本書に嫌悪を感じるならば、それはヴィーガンの人たちが感じているものと同じなのかも。 主人公が一度はじめてしまった行為は物語が進むにつれ引き返せなくなり緊張感を積み上げていくのだが、 これを突き崩すラストの行動が相当に衝撃的。いや、これは桁外れの問題作だわ。 | |||
| イカした言葉 「ほほ笑むと魅力的に見えるって人はいうけど、私にはさっぱりわからない。ほほ笑んだら、頭蓋骨の形がむき出しになるのに」(p47) | |||