NIB

映画ラインナップ

Late Show Home R's home


0.設定

 俳優たちは、全員「内閣調査室異星人防犯対策課」、通称「NIB」のメンバーです。《NIBって何の略? ………"aikaku-chousashitsu seijin ouhan-taisakuka"………誰?そんなアホなネタ考え付いたのは》
 原則として、男性俳優の内もっとも年齢の高い者(もしくは、そう見える者)が、「課長」の役を得ます。また、22歳以下の(もしくは、そう見える)女優がいた場合、「お茶くみ」の役が与えられます。《日本のお役所は、未だに男尊女卑の温床なのよ、フザケてるったらありゃしない》彼女が「コンピュータ」の技能を所有していれば、「オペレータ」の役を得られます。
 全員に<格闘><拳銃><警戒>の技能指導が与えられます。また、個別に以下の特別技能指導が与えられます。

 小道具として、全員に分解光線銃と、黒の帽子、サングラス、黒の上下スーツが渡されます。
 課長にはペンライトが1本渡されます。これは「超小型記憶消去装置」で、エキストラがこの光を見ると、異星人に関わるすべての事柄(俳優のことを含む)すべてを忘れるように演技することになっています。《ま、お約束ってやつかしら》
 その他、上記の特別技能指導を受けた俳優には、監督の判断で各々の技能に相応しい武器を渡しても構いません。ただし、俳優の武装を強力にし過ぎないように注意が必要です。その場合は、敵として出す異星人を、下記のデータより強力にする必要があるでしょう。
 なお、撮影期間は諸般の都合上、真夏(7月下旬頃)となります。《うえー、蒸し殺す気?》

1.導入

 監督は、以下のナレーションを俳優たちに聞かせてください。背景は「宇宙」です。《フィルム倉庫にいくらでもバンクがあるはずよ》

『無限に広がる大宇宙……そこに存在するあまたの星々……そこには、まだ我々人類の知らない様々な生き物が多数生息している。そして、中には人類をはるかに超えた知性と文明を身につけた種族も……』

 宇宙のシーンから地球がクローズアップされ、さらに日本へと視点が降りてきます。霞ヶ関のビルのひとつに、「内閣調査室」というテロップがかぶります。《大丈夫、誰も判りゃしないから適当なビルを映しとけばOKよ》
 そして、その一室。薄暗く埃っぽい、まるで半地下の倉庫のような感じの部屋に、俳優たちはいます。扉の表札は「資料課」となっていますが、これが異星人防犯対策課の表向きの名称です。俳優の自席には、それぞれ普通のオフィスで見かける、プッシュホン型の内線電話(0発信で外線が可能)が1台ありますが、課長席にはそれ以外に、旧式の黒電話が1台、でんと置かれています。部屋の一隅にはロッカーが「俳優の人数+1」個並んでおり、このうちひとつには名札が貼ってありません。
 俳優たちには、ここでそれぞれが普段どんなことをして暇つぶしをしているか演技させてください。《俳優の個性をアピールするには重要なシーンね》
 俳優の暇つぶし演技が一通り終わったところで、課長席の黒電話が「ジリリリリン……ジリリリリン……」とけたたましく鳴り響きます。課長が取ると、電話口から「番号違いだ」と一言だけ声が聞こえ、すぐに切れます。
 これが、内閣調査室異星人防犯対策課(以下「NIB」)招集の暗号です。俳優たちに名札のないロッカーを開けさせてください。そこには消防士が出動の際に使うような、垂直に降りる手すりがあります。これを下って行くと、シューターでNIBの作戦室へ降りて行く構造になっています。
 作戦室には、逆光でシルエットのみで顔は定かでありませんが、俳優たちと同様のサングラスをかけ黒尽くめの格好をしたスキンヘッドの男性が俳優たちを待っています。彼が俳優たちの上司です。
 上司は、重厚な声で「仕事だ」と言って、以下のことを俳優たちに語ります:

 地球時間で昨日の夜半頃、ラーズ星系η(イータ)星の王子「マグレック」が、王家の宇宙母艦にて地球近辺を飛行中、小型宇宙艇にて単独で母艦を離脱、行方を絶った。母艦からの追跡では、日本国内に不時着した可能性が高いとのことで、イータ星より日本政府に対し、王子の捜索および身柄の安全確保の正式要請が入っている。例によって速やかに対処するように。

 上司は、俳優たちにマグレックの資料と写真を渡します。
 <文献調査>の判定に成功すると、資料を斜め読みすることができ、それによれば「ラーズ星系イータ星人は、能力の程度に差はあるが、皆一様に超能力を所有している」こと、「マグレック王子は優秀な超能力者である」となっています。
 写真には、「犬のハンドパペットを持った白色人種らしき金髪碧眼の7〜8歳程度の少年」が映っています。勘の良い俳優なら、「どちらが王子か」と上司に聞くでしょう。上司は重厚な声で「もちろん、こちらだ」と言って、「ハンドパペット」の方を指差します。イータ星人は、地球人の目から見ると「ハンドパペット」のような外見をしているのです《特撮費用を安く上げるためだってのは、言わない約束よダーリン》。「少年」は、地球を訪れる際の偽装用ロボットです。イータ星人自身は、音声による会話能力がなく、異星を訪れる場合には、そういったすべてのことを偽装ロボットが行うのです。

マグレック王子(本体)

マグレック王子(ロボット)


2.追跡

 王子を捜索する方法は、俳優がそれぞれに色々な方法(コンピュータで不時着地点を解析する、周辺住民に聞き込む、UFOの目撃談を等)を思いつくことでしょう。適宜監督の判断で色々な試みを試させ、成功した判定に応じて、以下の情報を少しずつ与えてください。

 この追跡シーンで最も重要なことは、逃走する王子と俳優たちの距離が、徐々に詰まっているように演出することです。

 このあたりまでくると俳優たちは、新宿でマグレック王子の行きそうな場所を推理し、待ち伏せしようとするでしょう。監督は、「子供が興味を示しそうな場所」という基準に照らし合わせて、俳優が推理した場所が適切だと思うなら、そこに王子が出現することにして構いません。
 もし、俳優たちが適当な場所を思いつきかねているようなら、新宿駅の近くに「タカシマヤ・タイムズスクウェア」というアミューズメント施設のある建物があることを、それとなく示唆してください。

 俳優たちの予想通り、待ち伏せ場所にマグレック王子が現われます。このおっかけっこは、明らかに俳優にとって不利なものです。しかし、それがショウ・ビジネスというものです。俳優たちは重々解っていながら、王子の瞬間移動に翻弄されなくてはなりません。ただし万が一、分解光線銃などの武器を使用しようとする俳優がおり、それを別の俳優たちが止めないようなら、監督権限で却下してください。《演出的に言えば、誰かが使おうとするのを他の俳優が「バカ、撃つやつがあるか!」と止める、というのは「お約束」だからOKよ》
 俳優たちが翻弄されるシーンを充分に撮影したと監督が感じたなら(概ね3〜4フレームから1テイク程度でしょう)、王子はビルの外へ逃げ出そうとします。

 そこへ突如、別の勢力……「赤の三つ揃いに赤の帽子、赤のネクタイを締めたサングラスの男」2人が現われます。《サングラスだけ黒、てのはご愛嬌ね。それにしても、趣味悪すぎない?》

赤づくめの男(ティラキット星人)

 <警戒>技能の判定に成功した俳優は、この後も通常通りに行動できますが、判定に失敗した俳優は、2フレームの間呆然としていることになります。
 1フレーム目には、まず男のうち一人が「ハンドパペット」すなわち王子の本体めがけて「スプレーのようなもの」を吹き付けます。途端に王子(本体)はグッタリとし、ロボットは動きを停止します。もう一人の男は、動かなくなった王子をロボットごと抱えて表の通りへ走り去ろうとします。
 2フレーム目には、逃げる男はエンジンをかけて止まっていた真っ赤な車に乗り込み、走り去ります。残った男は俳優たちを牽制するために踏みとどまり、逃げた男と王子を追おうとする者がいれば、優先的に攻撃します。
 3フレーム目以降、踏みとどまった一人は、可能なら逃亡しようとします。例としては、以下のような方法が考えられます。

 俳優たちが機敏に立ち回り、踏みとどまった男の逃亡が不可能と思われるなら、この男はここで俳優たちに倒されても構いません。
 このシーンでは、いかなる方法を使っても、王子の誘拐を成功させることが最も重要なのです。そのためには、場合によっては男たち(あるいはマグレック王子)がセットを降りたりフィルムを焼いたりしたことにしても構わないでしょう。《ここまでは、ほんのイントロ。本当の見せ場は……俳優にとっても、そしてモンスターにとってもね……まだまだこれからなのよ。そのことを、俳優たちに匂わせる、てのもひとつの手ね》
 なお、戦闘フレーム進行が終了した時点で、俳優たち全員に<警戒>技能の判定をさせます。成功した俳優は、王子がさらわれたあたりに、かすかな異臭が漂っていることに気づきます。その臭いは、「くさや」の臭いに酷似しています。
 万一、この判定に全員が失敗した場合、近くにいたエキストラの通行人が、「おい、何か臭わないか?」「くさいなあ。これ、『くさや』の臭いじゃないか?」という会話を、俳優たちのすぐ側で行います。
 フラッシュバックで、先ほど男が王子にスプレーを浴びせていたシーンの映像が、再度流れます。


3.調査

 ここで視聴者の視点が入ります。以下のシーンを読み上げてください。

 暗い中に機械類のランプやネオンなどが怪しげに点滅する一室。地球侵略をもくろむ邪悪な異星人、ティラキット星人の秘密基地内部。
 先ほど、王子を襲撃した赤づくめの男(たち)が、椅子に座って「虎縞の猫によく似た異星の生き物」を撫でている同じ服装をした男……見てくれからは判らないが、立っている男のものより高級な生地で仕立てられている……を前に、報告をしている様子が画面に映る。報告を受けている男の顔や表情は、シルエットになっていて見えない。

男A「ナンバー2、ラーズ星系イータ星のマグレック王子を捕らえてまいりました」
ナンバー2「よくやった。続いて、作戦を第2段階に移すのだ」
男A「ははっ!」

立ち去る男。ナンバー2の口元がアップになり、それがニヤリと笑ったように歪むのが判る。

ナンバー2「今宵を境に、猫は虎に戻る……」
ひざの上の虎縞の猫がアップになり、にゃあと鳴く。

 一方、俳優たちは、王子をさらっていった敵の正体を探ろうとするでしょう。<文献調査>など、監督が適切と判断する技能によるチェックに成功すれば、その正体が「ティラキット星人」であるということが判ります。詳細については、「地球侵略を狙う邪悪な異星人」であることしか判りません。
 王子を誘拐された翌日(映画内時間)の夜になったら、全員に<警戒>技能の判定を行わせます。成功すると、「その日のプロ野球の試合で、阪神タイガースが勝った」ということが判ります。代打・大豊のホームランで、逆転勝利したようです。
 さらにその翌日、<警戒>判定(全員に+10%のボーナスを付けます)に成功すると、「阪神が連勝した」ことが判ります。またも代打・大豊のホームランが飛び出しています。
 さらにその次の日、<警戒>判定(全員に+30%のボーナスを付けます)に成功すると、「阪神が3連勝した」ことが判ります。またまた代打・大豊のホームランが飛び出しています。

 俳優たち全員に人気ロールを行わせ、成功した俳優がいたら(複数いた場合は、その中で人気のもっとも高い俳優に)、次の台詞を言わせてください。

「阪神が勝っている……異星人の仕業だ!」

4.対決

 ここで再び視聴者の視点になります。以下のシーンを読み上げてください。

 地球侵略をもくろむ邪悪な異星人、ティラキット星人の秘密基地内部。ナンバー2とナンバー5、阪神が勝っている野球中継の映像を見ながら、笑っている。
ナンバー2「作戦は順調のようだな、ナンバー5」
ナンバー5「はい、ナンバー2。ご覧のとおり、阪神タイガースは優勝に向けて着実に勝利しつづけております。我々が地球を征服する日も、遠くないでしょう」
ナンバー2「地球を征服するには、まず日本から。これは、過去の映像記録を見れば明らかだ。そして、日本を征服するためには、阪神を優勝させることだ」
ナンバー5「狂喜した阪神ファンは何をするか判りません。我々が手を下すまでもなく、日本は大混乱になるでしょう」
ナンバー2「そうなってしまえば、日本を乗っ取るのはたやすいことだ」

2人、揃って低く笑い、それはやがて哄笑に変わる。

 阪神の連勝の原因が、王子の超能力にあるだろうことは、俳優たちも容易に想像するでしょう。この確証を得る方法は、様々に考えられます。監督は、俳優が取る方法に応じて、「マグレック王子は、子供のイタズラ感覚で、積極的にティラキット星人に協力している」らしいことを情報として明かしてください。
 例えば、<コンピュータ>技能でテレビの中継映像を解析すれば、阪神側の外野スタンドにマグレック王子の姿があり、大豊のホームランボールは必ず王子がキャッチしていることが判ります。

 ちなみに、次の阪神の試合は、今夜、東京ドームでの巨人戦です。試合開始は、午後6時半です。ここまで判れば、俳優たちは東京ドームで王子を待ち伏せしようとするでしょう。
 王子を無力化する方法は、前に分かっている通り、「くさやの臭い」です。俳優たちは、「くさやの臭い」を発生させるものを用意しようとするでしょう。これも、適宜判断してOKを出してください。「くさや」そのものを手に入れるのは、時間さえあれば簡単でしょうし、<生化学>技能の判定に成功すれば、人工的に「くさや」の臭いのするガスを合成することもできるでしょう。
 俳優たちが、この臭いをどういった方法で王子に嗅がせようとするかも、様々な方法がありえます。ドームの中で七輪で「くさや」を焼くもよし、ドームの空調ダクトに「くさや」ガスを流して噴出させるもよし、ティラキット星人が使ったような小型のスプレーにして、現われた王子に駆け寄って浴びせるもよし。監督は、臨機応変に対応してください。

 その日の試合、マグレック王子が東京ドームに現われるのは、7回表、3−1と2点を追う阪神の攻撃を迎え、2アウト満塁、この日4番に座っている大豊の打順が回ってきた時です。王子は、2ストライク3ボールのフルカウントから、大豊が打ち上げた平凡なレフトフライを、念動力でレフトスタンドに入れようとします。俳優たちは、これを何らかの方法で阻止するでしょう。
 いずれにせよ、王子が無力化されるということは、満員の阪神ファンで埋まったレフト側外野スタンドが、くさやの臭いで充満するということです。スタンドは大混乱になるでしょう。その大混乱の中、ティラキット星人(データは上を参照)2人が現われ、俳優たちに攻撃をしかけてきます。

 ここで、俳優たちは力押しで彼らを倒しても、もちろん構いません。しかし、俳優というのは、何をするか判りません。《阪神ファンと同様にね》
 例えば、彼らはドームに入り込む際に、巨人の応援団のはっぴを着て、巨人ファンのふりをして球場に入り込んでいるかもしれません。もし、この戦闘の時、俳優がこれをティラキット星人に着せることを思いついたら? そして、他の俳優が、「この臭いは、そこの巨人ファンの仕業やぞ!!」と<嘘>をつくか、あるいは<リーダーシップ>で阪神ファンを先導したら? 間違いなく、怒り狂った阪神ファンは、「巨人ファン」(だと自分たちが思い込んでいるティラキット星人)に襲い掛かるでしょう。

怒り狂った阪神ファンの群れ

 阪神ファンはルールブックのモンスターリストにある「動物の群れ」と同様の扱いとします。「群れ」扱いなのでSPはなく、したがって倒すこともできません。


5.エンディング

 俳優たちによって無事に「保護」されたマグレック王子を、母星から目付け役の爺やが迎えにきます。爺やは、「黒のタキシードを着た、銀髪の痩せた老人」が持った「ハンドパペット」です。爺やは、王子が地球の人々に対して多大な迷惑をかけたことを丁寧に詫び、王子を連れて宇宙船で去って行きます。帰り際、王子は俳優たちに、こう言い残します。

王子「楽しかったよ、おじちゃんたち。また遊びにくるね」

 俳優が、「またくさやの臭いを嗅がせる」などの台詞で王子を脅そうとすると、王子はロボットにアッカンベーをさせ、「今度はガスマスク付けてくるから平気だもんねー」と言います。いずれにせよ、トラブルの種は尽きていないことを匂わせつつ、エンディング・テロップが流れ始めます。


THE END………?


映画ラインナップ

Late Show Home R's home


このHomePageに関するご意見・ご質問等は
radcliff@t3.rim.or.jpまで