人工内耳を考えている お母さんへ(2) |
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2001.3.3 §21〜28まで ご寄稿頂きましたので、追加掲載致します。(管理者) |
21.好奇心のかたまり この頃、大輔は好奇心のかたまりです。電話はだれから?これの名前は何?お母さんはなにするの?なんのお話?誰といくの?だれがいるの?などなど。洗濯ものたたみや掃除や、翌日の学校の荷物の用意なども率先してやるようになりました。お皿をはじめて洗ってくれた時には日頃、いかに私がすることをよく見ているか、その仕草ひとつひとつに現われていて、びっくり。また、弟が食べ汚したお皿を、顔をしかめて洗いながら、ぼそっと一言、「きたない・・・」には大爆笑でした。 お手伝いのひとつで、日頃は主人に頼んでいる古新聞出しをした時のこと。その日はあいにく主人が留守だったので、大輔と弟用に小さい包みを作って、一緒に運んでもらっていました。遅れがちだった弟の分を大輔は、自分のを運び終わった後、戻ってきて手伝ってあげていました。いつもは効率よく、大人だけで運んでいたけれど、子供も一緒にそういう作業をするって良いな、と思いました。 やっとひらがなに興味を持ち始めたのもこの頃でした。はじめに覚えたのは、ふうせんの”ふ”、弟の名前にある”ん”でした。 22.自分で考える力 ちょっと目にした文章の中で、気になる一文がありました。「訓練から帰宅しても、自由に遊ぶ時間もないほど、夜も言葉のお勉強です。こうした生活では、子供が自分で考えて行動する力は育ちません。子供に任された時間が少ないからです。・・・・」 確かに、大輔がぼーっとしてる(ように私には見えてしまう)と、”カードしなくちゃ”とか、思うよなぁ、と心当たりがあるだけに、何となく気になりました。たまたま、先日の絵日記の個別指導では、「出来たら毎日描いて、お話する時間を」と言われ、発音のグループ指導では、「YちゃんとTちゃんは全部はなまる。大輔とMはだーめ。次の時間までに練習しておいてね。今度チェックするからねぇ。」と言われ、もっと意識して勉強せなアカンのやろか、と思っていたので、この両極端な2つの話に、私の気持ちは混乱。 そんな時の朝の出来事。朝、地下街をいつも通り歩いていたのですが、いつもと変わらず大輔は、のらーりくらりとマイペース。「早く行きたいよなー。あ、おっちゃんにぶつかるっ!」と私は一人でやきもきしていました。「さっさと来なさい。ちゃんと手つないでっ!」といつも通りの言葉が出かかった時、何故かふっと、あの文章が頭をよぎって、気持ちがさっと切り替わっていました。大輔をよく見てみると、新幹線になったり、汽車になったりしながら、私にとっては、ただの、目的地につくまでの地下道を、実に楽しそうに歩いている。ぶつかりそうになる通行人に、「ごめんなさい」を言いながら、何となくそんな大輔をそっと見守っていたくなって、気付いたら私もヒコーキになっていました・・・。 その続きの地下鉄の車内。この間、「次の授業までに、しっかり家でやっときや。」と言われた、発音のカードをしようと思って、私は「まめ」やら「むし」やらのカードを持っていました。さぁ、しよう、と思って大輔を見ると、車椅子専用のスペースのところのてすりを線路に見たてて、楽しそうに私を見上げています。ここで、「むし」とか「まめ」とか、カードをめくることにどれだけの価値があるのかしら、とちょっと疑問に感じて、その時は大輔と、そのてすりで線路ごっこをして過ごしました・・・。 我が子のために、と子供が泣いていても心を鬼にして訓練しているお母さんも身近にいます。私のように、こんなんじゃ、大輔の言葉は伸びないのだろうか。発音はきれいにならないのだろうか。大輔の何を大事に育てたいのか、随分 考えています。 子供達の豊かな発想力には驚かされます。たった一つのビデオのケースを頭にのせて「帽子」、次はかしこまって正座しながら「本」、そして少し離れた所に立てて起き、「テレビ」・・・たった一つの箱でもどれだけ遊べることでしょう。友人の結婚式で何故か(?)もらってしまったブーケを私が持って帰った時も、しばらくしげしげと眺めて、「お花、仲良しねー、友達ねー」と話していました。花束がそう見えるんだなぁ、とその感性に脱帽でした。またある時は、おでんのゆで玉子(1/2個)を丸々口に入れて、何か必死に叫んでいると思ったら、「しんかんせん!」と言ってる・・・。確かに、新幹線の先頭車両の”顔”にそっくり。そういう子供らしい気持ちの遊びを、私も一緒に楽しみたいな、と思います。 23.判ったふり、の怖さ 身障者スポーツセンターの体育館のトランポリンで遊んでいた時のことでした。3兄弟と出会ったのですが、それにしても静かだなと思っていると、手話を使い出しました。私も片言の手話で「トランポリン、少し代わってもらってもいい?」と聞いたことがきっかけで、それから少し話をしました。基本的な質問は出来るんだけど、答えの読み取りがとっても難しい。読み取れないところもあったのに、「もう1回言って欲しい」と何故か言えなくて、判ったふりをしてしまいました。愛想笑いなんかでごまかしたりして・・・。判ったふりが積み重なると、コワイよなぁ、大輔に”判ったふり”が育たないようにするには、どうしたら良いんだろう、と思いました。 24.大輔が殴る理由 大輔は、どうしてか、ずぐに手が出てしまいます。それは随分、私を悩ませています。ある日の学校の帰り道の出来事でした。MちゃんとAちゃんと大輔が歩道を走っていました。おもむろに大輔が2人の前に立ちはだかったのです。2人は大輔を押しのけて走ろうとしたところ、大輔がぽかっとMちゃんを叩きました。”またや・・・。”と思って「こらーっ!」と声をかけると、大輔は「危ないと思った!」と言います。確かに、自転車が前から走ってきていました。ちゃんと理由があったんだ・・・。まだまだ、おもちゃの取り合いや、言語化できない気持ちを”ぽかっ”で済ませてしまうことの多い大輔だけど、「こらっ!」と怒鳴る前に、どうしてそうしたのか、聞いていく余裕がこちらにないといけないな、と思います。 そういえば、随分思いやりの気持ちも育ってきたように思います。同じく学校の帰り道の出来事。小雨が降っていました。Nちゃんと手をつないでいていて、Nちゃんはレインコートだけ。大輔はレインコートに傘も差していました。「Nちゃんに傘をさしかけてあげるなんて・・・、しないわなー。」とお母さんたちと話をしていました。突然大輔が私のところへやってきて、「Nちゃん、かさ(があたって)、いたい(と思う)。大輔、いらない。」と言って来ました。びっくり。親の私より、よく気がつきました。 おばあちゃんが寝ている部屋に弟が乱入した時も、「みてごらん、おばあちゃん、ねんね。しーっ!」と言いに行ったり、寒い日にマフラーと私に貸してくれたり、お父さんだけ手袋がないことに気付き、「こんど、かいにいこうねー。おとうさん、うれしいとおもう」と言ったり。(よって、主人の今年の誕生日プレゼントは手袋。(^o^)) 根は優しいのかなぁ・・・。 ☆謎の、「ひよこになるよっ!」☆ 大輔と弟とに絶大な脅し効果(?)があるのが、おばけ。その次に大輔に効き目があるのが、「ひよこになるよっ!」の一言。「そんなんしてたら、YちゃんやMくんと一緒にバラ組ではあそべないね。大輔はひよこ組(1年下)に戻るんやね?」という意味なんだけど、色々説明しても聞き分けがない時には、この一言で一喝!ひよこ組だって頑張っているんだから、そういう時に多用してはいけないな、と思うんだけど、大輔のプライドをくすぐるのか、効き目はある。 クリスマスの頃はサンタさん、3匹のこぶたの劇遊びに夢中な頃はおおかみ、節分の頃は鬼、そしていつも気になるのはおまわりさんらしい。 25.愛情と手間 姉のような存在の、近所のお母さんから「あなたの子育ては手間ひまは十分にかけてるけど、愛情はかけてないんちゃう?」と言われました。大ショック。ショックを受けたってことは、やっぱり自分でもそう感じるところがあるからかな。言ってくれたことが正しいかどうかは別として、言ってもらえたことで自分の考えどころみたいなものがハッキリしていくので、感謝。いろんな事例を流さずに、一緒にじっくり観て、掘り下げていってくれるようなところが彼女にはあって、すっごくあったかいんです、気持が。だから、言われてることはドぎつくても、傷かないのかな。 私なりに一生懸命やっているんだけど、何か一生懸命になるところがズレているんじゃないか、というあたりはいつも感じていました。あれこれいっぱいしているけれど、子供達のそのままを受け入れて、無条件に”愛する”ことがどれだけできているかしら・・・。 ☆聴くということ☆ 大輔とお昼を食べていました。友人が遊びにくる時間が迫っていたので、私は一足早く御馳走様をして、洗い物をしようと思っていました。すると、大輔が「おかあさん、おかわりして。」と言う。「おかあさんはおなかいっぱいなの。いらないの。」と言っても、しつこく、お代わりしろ、という。段々腹たってきて、「おなかがいっぱいかどうかは、お母さんが考えるの!お母さんはいらないっ!」と言い捨てて、洗い物を始めました。 ふと、どうして大輔は私にお代わりして欲しいんだろう、と思いました。洗い物を止めて、しょんぼり食べている大輔のそばに行って、「お母さんに、一緒にいて欲しいの?」「うん・・・。」「お母さんは、お代わりしなくても、ここに一緒にいたらいいの?」「うん・・・。」そうか、おかわりしたら、まだ私がそばに座っているから、お代わりして、と言ってたんだ・・・。 大輔が食べ終わるまで、そばに座っていました。大輔、嬉しそうに、最後まで、きれいに食べていました。可愛いいなぁ、と思いました。聴く、ってこういうことなのかもしれない、とちょっと思いました。 26.私が怒るベスト5 大輔にガミガミ言う時のパターンが、大体決まっていることに気付きました。 1.弟やお友達に乱暴をするとき 2.食事のときに好き嫌いを言うとき 3.公共の場でうるさくするとき 4.することなすこと、遅くって、時間に追われてしまうとき 5.何か用事を、私に言いつける(?)とき 「危ない時、人に迷惑がかかる時、に自分のしたいようにしてしまうのがワガママだとすれば、1と3はしっかり言い聞かせて、他はそんなにガミガミ言わずに子供の気持ちを考えて、受け入れて、思いやってあげればよいのでは?」とアドバイスを受け、頭では納得。だけどやっぱり怒鳴ってばかり(^_^;)。 することなすこと遅いといえば、担任の先生と何気なく話をしている時、「大輔って消防士さんにはなれないだろうなぁ。」「そうねぇ、家が燃えちゃってから現場に到着したりしてぇ。(^o^)」などと笑ってしまった。ほんと、職業には適性があるのかもしれない、ということをこれほど身近に感じたことはありません。もう少し早く、靴をはくにしても、着替えるにしても、できないもんかな、と思います。1日中待っているような、1日中せかしているような気がします。 27.寄る気持ち その頃、病院でのリハビリに、不安というか、不満というか、悶々とした気持ちを抱えていました。だけど、病院相手に、「一体、このリハビリにどういう意味があるわけー?」なんて、怖くて聞けませんでした。だけど、やっぱり、誰かが声にして言っていかないと、何も変わらないと思って、先日、勇気を出して、STの先生にお話をしてみました。 すると、わざわざ時間を割いて下さって、個室(聴力検査室。(^_^;))に通してくださって、じっくり話を聞いてくださいました。その上で、先生が今、問題だと思っておられること、これから改善していくために今考えておられることなどを、それはそれは誠意をもって、お話して下さりました。今すぐに、こちらが望んでいるような形にはなっていかないかもしれないけれど、私達が声を出していくことで後のお母さんや子供たちがやっていきやすいようになるのね。だったら、 言っていかないとね、と思いました。 ”寄っていく気持ち”みたいなものが、今回はすーっと湧いてきて、それで話をさせていただけたのが良かったのかもしれません。以前、ぷりぷりしていた時は、”寄る”って感じよりも、”攻撃”的でしたから。誰とでも、こんな気持ちで寄っていけたら、心地よいだろうな、と思いました。寄っていきたいところはたくさんあるけれど、今1番近づきたいのは弟の保育所の先生方です。 ☆クリスマスパーティ☆ あるクリスマスパーティに参加しました。それは中学生から幼稚園児まで一緒に集うものでした。そのパーティの反省会で、中学生のお子さんをもつ親御さんが幾分興奮気味におっしゃっていました。「うちの子は、こんな小さな子供達の相手を するためにわざわざ来たんじゃない。久しぶりに会う友達もいるのに、世話ばかりさせられて、何のために来たか判らない。プレゼント交換の品物だって、こんなちゃちなものを貰っても、嬉しくもなんともない。今度からはある程度、年齢を分け たらどうか。」 ・・・そんなものかしら。何か悲しい気持ちで一杯になりました。そのお兄ちゃんだって、いろんなお兄ちゃんに遊んでもらいながら大きくなったんじゃないのかな。小さい子と一緒に遊ぶことで、そのお兄ちゃんの中に芽生える気持ちもあるんじゃ ないのかな、プレゼント交換だって、貰ったもの云々よりも、それを一生懸命選んだ子供の気持ちが大事なんじゃないのかな。 28.丁寧な関わり この頃、ちょっと自分で気になっていること。それは大輔の聞えに対して、私が思いあがっているところがあるということ。手を抜きガチ、とも言えるでしょうか。手術をして、聞こえに対して、大きな手応えを感じるだけに、”聞えてるんちゃうん”と思いすぎているところがあって、それが手話なしでやった方がいいのではないか、という日頃の疑問と重なって、言葉だけで言って済ませてしまったりして、それで大輔が怪訝な顔をしていたら、「わからへんの?」みたいに なっちゃって、なんか変。 「何?」「誰?」と不安そうな目で私に問いかける大輔の顔が増えてきたように思え、「人工内耳をつけていても、聞えにくいことには変わりない」という大前提を今一度、肝に命じて、もう少し、丁寧な関わりを心がけようと思っているところです。だけど、丁寧にって、どうしたらいいんだ?身振りをつけずに、口元もあまり当てにさせずに、いわゆる聴覚活用で日常生活のやりとりをするって、どうしたらいいんだ??なんか、すっごい基本の当たり前のことが判らなくなってきて、少々混乱気味です。手話や身振りを意識して減らしてみた結果でもあるんだけど、他の人は、こんな感じ、もったこと、ないのかなぁ。 21〜28まで、2001.3.3追加掲載。 |
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