His Book

マラヤ山麓の峠から峠をトレッキングした若者が出会ったのは、
辺境に地に暮らす人びとの素朴な心だった。
習慣や価値観のちがいに戸惑いながらも、胸を熱くして歩いた旅の記録。

 

風の足跡 謝 孝浩 著・写真
福音館日曜日文庫(福音館書店刊)1,262円

謝 孝浩の本
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書評
(週刊文春1997年ゴールデンウイーク特大号)

私の読書日記(抜粋)池澤夏樹氏(芥川賞作家)

の体験をつづる文章がいい。簡潔で抑制されていて、美しい。自分の体験や感動を押しつける姿勢がない。読者は安心して彼のあとについて旅ができる。ただしこれは、ぼくという読者とこの著者の間にある程度の共通性があるからかもしれない。彼が旅先で出会う人々に接する姿勢にぼくは共感を覚える。ネパールはほくにとっても大事な土地だし、彼がダライ・ラマの説法を聞いたヒマラヤ西部のマナリという町をぼくは知っている。そのすぐ近くで同じようにダライ・ラマの説法を聞いている。そういう懐かしさがこの本をぼくにとって親しいものにしている。

かし、この本の価値はそういう事情を超えてもっと普遍的であると思いたい。今、われわれが必要としているのは、こういう会話なのである。アリの手厚い看病であり、母親の留守に客にちゃんと食事を出す11歳の山小屋の少年であり、育ての親である老僧を数年ぶりに訪れるもと孤児の青年なのである。

れでも、この本の著者は人の心の温かさをねだらない。風はテントの中で不安な一夜をすごす彼に「おかまいなし」に吹く。彼が訪れる先の人々も彼の歩みに「おかまいなし」に生活を続けてほしい。異物として彼らの間に踏み込んでゆきながらも、なるべく跡を残したくないと願う。「風の足跡」というのはそういう意味だ。


本人からのコメント

この本は、私の20歳代の旅の記録が綴られています。旅中心の生活だったので、言いかえれば、自分の20歳代のすべてがつまっているような気がします。ちょっぴりほろ苦い、でも一生懸命だった青春の記録ともいえる作品です。今となっては気恥ずかしい部分もありますが、自分の原点をいつまでも心にとどめさせてくれる作品となっています。「歩く」というゆっくりとした速度でみえてきたものを、切り取るシーンがたくさんでてきます。短編を重ねながら、ひとつのモチーフを形づくる構成になっていますので、読みやすいと思います。全国書店にて発売中ですが、みつからない時は、お手数ですが、書店に注文していただけると幸いです。

メール 待ってます
sha@t3.rim.or.jp


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