AI着色は昭和時代の夢を見るか(その23)


PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回も引き続いて最初の北海道撮影旅行で撮影したカットから、1972年7月14日に行った室蘭本線沼ノ端-遠浅間・千歳線沼ノ端-植苗間で撮影したカットのカラー化をお送りします。この日はぼくの鉄道撮影史上一日に最も多くの本数のフィルムを撮影した日で、今回でやっと昼過ぎ。このネタは当分続きますよ。今回掲載したカットのモノクロ版は</「あそこ」での一日(その3) -1972年7月14日--><「あそこ」での一日(その4) -1972年7月14日->の中で掲載しています。今回もモノクロ発表時の4:3トリミングではなく、ほぼノートリミングの3:2で作画してみました。また今回もカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があるカットもありますが、それは<続・「あそこ」での一日 カラー版(その9) -1972年7月14日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。



今回最初のカットは、前回の続きで「あそこの立体交差」の南方で千歳線の下り線が分離するあたりでの撮影です。岩見沢第一機関区機関区のD51855号機の牽引する上り貨物列車。ぼくが撮った準戦時型の逆カマボコ煙室扉のD51はこの855号機だけです。あの松本謙一さんが逆カマボコ煙室扉のD51は撮れていないというのですから、運や相性というのはあるんでしょうね。ワムやレなどの車扱貨物を連ねていますが、機関車次位の緩急車がいませんから、岩見沢-室蘭でしょうか、操車場間直通の本土向け貨物でしょう。この列車自体はカラーでは撮っていませんが、近いカットを見るとかなりリアルな着色になっていることがわかります。順光の景色なら、ほぼ完璧になってきてますね。


今度は下りの返空セキ列車がやってきます。ほぼ同位置から苫小牧方を振り返った感じですね。機関車は岩見沢第一機関区のD51439号機。モノクロ版と同じカットですが、こちらはノートリミングで。その分、セキの長さが強調されている感じです。バックはこの時代はまだ原野でしたが、今はここが市街地になってるんですよね。びっくり。おまけに苫小牧の旧市街より賑わっているし。半世紀の時の流れは大きいものです。トップライトで半逆光気味ですが、わりとらしい感じに仕上げてくれています。ウェザリングもほどほどで、ちょっと進歩が感じられます。これもまあ、及第点というところかな。このところ生成AIが急速に進歩していますが、AdobeのAI君も着実に進歩しているようです。


振り返って同列車の末尾を見返りで撮影します。この方が、セキを連ねた列車の長さが強調されると思うのですが、意外と撮っている人は少ないですね。やはり列車というより機関車を撮るという意識が強い人が多いのでしょうか。ワフも黄帯のワフ121000だといいのですが、残念ながら本土にもいるワフ35000。黄帯がない分、着色の失敗は少ないともいえますが。面白いのは前のカットでは絶気だったのが、ここでは焚いて力行しています。ここは立体交差に向かって上り勾配になっているので、空気の抵抗が大きい返空セキは力行なんですね。目の錯覚か、セキもほんのり黄帯に見えたり。AI君、いつもながらこの辺のトリックはウマいですね。


次にやってきたのは上りの貨物列車。牽引機は追分機関区のD51357号機。冷蔵車が多いので、これも本土向け拠点間貨物でしょうか。このカットはオリジナルのカラーでほとんど同じ構図を撮影しているので比較ができます。なんか草原が枯草っぽくなっている点を除けば、比較的近い感じで仕上げてきています。このカットでは、実際のほうがウェザリングが効いていて連結器や前デッキに錆が目立つのが面白いですね。オリジナルカラー版の方のシャッターを先に切って、その後でモノクロ版を撮影しているのですが、焦点距離の違い位にしか違いが見えないのが、沼ノ端らしいところでしょうか。その分、飽きるのも早いのですが。


ここですれ違いざまやってきたのは、小樽築港機関区のD51744号機が牽引する、札幌貨物ターミナル行きタキ43000・44000系のタンカー列車。すれ違いの交換シーンは<「あそこ」での一日(その4) -1972年7月14日->に掲載しています。このカットでもちらっとだけ上り列車が写っていますね。真昼のトップライトで逆光気味ということもあり、ほとんどモノクロと変わらない着色ですが、この驚きはタンク車を青で塗ってきたということ。もしかしてお前、形や色を含めてタキ43000を知ってるのか。一体どこで学習したんだ。全体がモノクロっぽい中で、機関車とは違って明らかに青味を載せてきていますから、意図的なものでしょう。今回最大の問題作ですね。


続けて千歳線の下り貨物列車がやってきます。同じ地点で同じ構図での撮影。もはや飽きてきて投げやりになっているのがわかります。牽引機はこれまた小樽築港機関区のD51713号機。どちらも小樽築港のカマらしく、LP405のクロムメッキの縁取りがキレイに磨かれています。北海道筆頭機関区の矜持ですね。こちらは機関車次位に「ヨ」が連結されていますから、各駅で入換を行うローカルの車扱貨物です。着色は前のカットとほとんど同じトーン。まあ、ほぼ同時に撮ったカットなので、それが当たり前なのですがアタりハズレのブレはかなり減ってきています。これはオリジナルカラー版があるカットですが、草が枯草っぽいの以外はほぼ当を得ているといえるでしょう。


今度は室蘭本線上りの実車セキの貨物列車。牽引するのは追分機関区のD511118号機。これもオリジナルカラー版がありますので、比較ができます。枯草っぽくなってしまうのは、茶色っぽい穂を出している雑草がけっこう繁茂していて、それを緑の葉ではないと認識した結果であることがわかります。それ以外は千歳線下りの築堤とか、けっこういい線行っています。贅沢をいうなら花は全部白花で仕上げていますが、確かに白花も咲いているモノの黄花の草もそこここにありいいアクセントになっているところが違いでしょうか。それと1118号機って、この時は赤ナンバーなんですね。これも目立つところです。AI君、時々ナンバプレートに赤を入れてしまってましたが、こここそやるべきでしたね。


今回の最後は、追分機関区のD51842号機の牽引する、室蘭本線下りの車扱貨物列車。これも次位の緩急車がないので拠点間の列車です。というより、苫小牧以南はいざ知らず、この区間の室蘭本線は当時人口希薄でそんなに着発貨物はなく、ほとんどの貨物が操車場間直通の通過列車でした。そんなわけで比較的長い編成です。惜しむらくは次位のワム8。黒ではないというのなは認識したようですが、タキ43000は知っていてもワム8のとび色2号は知らなかったのでしょうか。学習してもらいたいものです。なんかアルミ製みたいな色ですね。白だったら鮮魚用580000番台もある(北海道はいないが)ことはありますが。ところでこのカットでは、紫っぽい草の穂は枯草ではなくそれらしい色にしてますね。




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