ゲームミュージックのための
MMLプログラミング入門
(その5)
○いよいよ、添削講座の開始だよ
読者のみなさん、明けましておめでとうございます。今年も、MUSIC LALFをよろしくね。とはいっても、テクノポリスの編集は知るヒトぞ知る年末進行に入っているので、実はこの原稿を書いているのは、まだ11月だったりするんだ。クイーンのフレディー・マーキュリーが、エイズで死亡してしまった、なんていうニュースを聞きながらこの記事を書いているんだよ。
さて、この連載も今回で5回目。'91年11月号から募集をはじめた「課題曲」に、読者のみなさんから寄せられた作品もだんだん増えてきた。そこで今回からは、それらの作品を古代先生がコメントしたり添削したり、というスタイルで進めていくことにしたいと思う。
今回取り上げるのは、 にお住まいの さんから寄せられた作品と、 にお住まいの さんから寄せられた作品だ。もともと同じ課題曲なのでタイトルのつけようがないけど、 さんの作品は、ファイル名の"ORI.BAS"から"ORI"と、 さんの作品は、ファイル名の"KADAI.BAS"から"KADAI"とそれぞれ呼ぶことにしよう。この作品はもともとBASICのMMLで書かれていた作品だが、この記事の中では、MUSIC LALF形式に変換したリストで紹介することにしたい。紙面の都合で全曲は掲載できないけど、それぞれリスト1、リスト2を見てほしい。課題曲の応募は、今も受け付けている。もちろん、MUSIC LALFのMMLで書かれたソースプログラムでの応募が一番うれしいけど、それ以外の言語で書かれたものでもかまわないので、どんどん応募してほしい。
では、古代先生どうぞ。
○ さんの作品、"ORI"について
古代: みなさんこんにちは。古代祐三です。たくさん応募してくれてどうもありがとう。
藤井: ではさっそく、応募作品を聞いてみましょう。まずは、 さんの応募した作品、"ORI"です。古代先生、いかがですか。
古代: なんか、メロディーとベース、オブリガートといった各パート間のボリュームバランスがちょっとへんですね。
藤井: これでは、メロディーが死んじゃってますからねぇ。
古代: こういうときは、一度データを作ってから何度か聞いて、もうちょっとよく考えて直すと、それだけでぐっとよくなるんだ。
藤井: 音色の選びかたも、もうちょっと工夫すると生きてくると思うな。ベースとか。
古代: そう。あと、ベースのパートは、ちょっとメロディーラインがおかしいと思う。このままじゃ、コードから外れちゃってる感じに聞こえる。
藤井: 多分、そういうところも含めて、作者の さんのアタマの中では、イメージしているアレンジがあって、それがカッコよくなっているんだろうけど、それが、うまくデータとしてプログラムできていないんだと思うなぁ。
古代: うん、ちょっと直すだけで、 さんのイメージしているものにグッと近くなると思う。
藤井: メロディーとベースとからみとか、気持ちはわかるんだよね。
古代 :じゃ、ぼくがちょっと直してみましょう。
(といって直したものが、リスト3の"ori2")
古代: くわしい修正点は、リストを参考にしてもらいたいけれど、そんなにはいじっていない。おもな修正点は、ボリュームバランスの調整と、ベースラインの変更、あとSSGのパートにエコーをかけたぐらい。でも、けっこうかわるでしょ。
藤井: 多分、 さんのイメージはこんな感じでなんでしょうね。あと、リズムのアレンジがちょっと単純かなって気もするので、これが、次の課題になるんでしょうね。
古代: いろいろ試してみて、トライ・アンド・エラーをくりかえすと、だんだん自分のイメージをくっきりと表現する方法が見えてくるようになるので、次のテーマを見つけて挑戦してみてね。
○ さんの作品、"KADAI"について
藤井: さて次は、 さんの応募した作品、"KADAI"です。これはなかなかいいですよね。古代先生。
古代: そうだね、全体的によくまとまっているなぁ。
藤井: アレンジがいいですね。メロディーのイメージをよく理解して、それをうまく生かしたアレンジになっている。
古代: イントロとか、つなぎの部分とか、 さんのオリジナルアレンジの部分もgoodだね。ウマく一体化してるし。
藤井: 構成のメリハリもウマいですよね。
古代: なかなか聞かせるよね(笑)。
藤井: なんというか、アレンジとかの発想がバンドっぽいよね。すごく自然に聞けるし、聞き手をうまくひっぱっていくような仕掛けもある。
古代: クラップの音が気持ちいいね。
藤井: リズムパートはがんばってますよね。大きい音で、オーディオから流してもバッチリきまってるし。パーカッション関係は凝っただけの効果が出てる。ノリもいいし、完成度を高めるのカギになっている。
古代: この曲は、このままゲームのBGMとしてつかえそうなデキだよ。
藤井: FM音源の音色とか、SSG音源の生かしかたとか、細かいところまで気を使ってあるし。
古代: これに関してはいうことがないでしょう。
藤井: 作者は、いろいろな音楽とかけっこう聞き込んでいる感じがするので、この次は、もっと高度な表現力の生かしかたとか、研究してみるといいんじゃないかな。
○最後に、ひとこと総評を
藤井: ということで、今回は2作品を聞いたのですが、全体を通してご感想は。
古代: 最初、課題を出したときにはどんな感じであがってくるのかなと、ちょっと不安なところもあったけど、なかなか力作が応募されてきて、ひと安心(笑)。今回取り上げた2作品は、どちらもポップな仕上がりでなかなか楽しめたなぁ。今回応募してくれた作品は、MUSIC LALF発売前に制作にかかったと思うから、BASICを使ったものが多かったのだろうけど、やっぱり次はベーシックでなく、MUSIC LALF使って機能を限界までつかったアレンジを試みてくださいネ。
藤井: どうもありがとうございました。また来月もよろしく。
○質問コーナー
さて、最後はおなじみの質問コーナーです。今回は、岩手県花巻市の匿名希望さん、ペンネームがT-07-Sさんからの質問を取り上げてみましょう。
「ピアノなどの目的の音色を作るコツのようなものはあるのでしょうか?教えていただ ければ幸いです」
これはまた大変な質問だ。コツはいろいろあるのだけれど、なかなかヒトコトではいえないんだ。でも、お答えしよう。
まず基本は、作りたい音色を、その構成要素に分解して聞くことにある。一つの音色は、いくつかの別々の音色の組み合せによって作ることができるんだ。いわば積木細工でカタチをつくるように、音の元素ともいえるいくつかの違う音色を、同時に、あるいは時間の経過とともに組み合わせることで、自由にいろいろな音色を作ることができる。
たとえば、ピアノの音色なら、立ち上がりの鋭く倍音を多く含んだ「アタック」の音色と、徐々に減衰していく「サステイン」の音色を組み合わせることで作れる。このうち、アタックの音色は、ギターやクラビネットのアタックの音色と似ているし。またアタックが同じ音色でも、「サステイン」の音色をカタい音色にすれば「生ピアノ」っぽい音色になるし、ヤワラかい音色にすれば「エレクトリックピアノ」っぽい音色になる。このように、いろいろな楽器の音色を、「音の元素」に分解して聞くことが、オリジナルの音色作りの第一歩といえるだろう。
では、この音の元素は、どのようにして作るのだろうか。FM音源の場合でご説明しよう。FM音源の説明書をみると、「アルゴリズム」というものが書かれているハズだ。図のような、おなじみのヒトにはおなじみのものだ。これは、FM音源の基本となっている発音の単位「オペレータ」を、どのように組み合わせて音色の基本を作るかを示したものだ。このアルゴリズムの中でも、オペレータの縦のつながり、つまり図の中でまるく囲んで示した部分は「タワー」と呼ばれている。
このタワー一つ一つが、音の元素になっているのだ。だから、音色エディタを使って、いろいろな音色を分析して、それぞれのタワーがどういう音の元素になっているか研究しておけば、ほしい音色に合わせてそれを組み合わせ、自分のオリジナルの音色を作ることができる。
また、似た音色だけどちょっとイメージと違うというときには、モジュレータ(キャリアに変調をかけているオペレータ)のエンベロープと、アウトプットレベルのパラメータをいじるコトで、音色を微妙に修正できる。このあたりのパラメータの極意のマスターに関しては、実際にいろいろデータを変えてみて経験的にマスターするのが一番速いだろう。
実は、T-07-Sさんの質問は、ハガキいっぱいにもっといくつも書かれてのだが、紙面の都合もあるので、一つだけ取り上げた。ごめんなさい。ということで、いろいろ質問コーナーもおハガキお待ちしてるよ。それ以外にも、古代先生へのファンレターとかも受け付けているから、なんでもどうぞ。ではまた来月。
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