大畑の3日間 その6 -1971年4月4日の3-


「大畑の3日間」シリーズも、3日目まで行ったんでもう終わりかと思ったらさにあらず。「大畑で撮影した3日間に撮った、全カットを取り上げる」という主旨からすると、未発表カットがあるうちはやめられない。撮影した全列車は発表したものの、そう、別カットはまだあるんです。それはミノルタ・オートコードで撮影した、ブローニー判のカラーネガ。この時はまだ、35mmのモノクロの方がメインで、オートコードはレンズが75mm固定ということもあり、ブローニーとはいえこっちがサブカメラとして使っていたのでした。そういうワケなので、オートコードの方は、35mmカメラを覗きながら手持ちで撮影しつつ、リモコンレリーズを使ってノーファインダーで撮影していたので、構図やタイミングがちょっと違うカットになっていたりします。というわけで、シリーズ6回目。ここからはカラー特集で行きますよ。なおオールカラー編は情報量が大きいため、1回4カットで行きたいと思います。



まず最初は、大畑の3日間 その1 -1971年4月4日-の3カット目と同時に撮った一枚。おなじみの築堤を行く1121列車を遠望したカットです。それ以前の3コマは、完全に線路際で手持ちだけで撮影したモノなので、三脚を立てる余裕があったのは、このカットからということになります。こうやって比較すると、シャッターのタイミングはほぼ同時ですが、レンズが広角よりな分、手前の潅木がより目立つ感じです。しかし、荒涼としたこのトーン。確かにこういう色味なんですが、なんとも日本離れしていますね。なんだかカラーになると、中国の辺境で前進形を撮影したような感じにも見えたりします。


次のS字カーブの築堤のところのカットは、カラーはありません。多分、足場的に三脚が立てられなかったんだろうと思います。ということで、5カット目の人吉-大畑間の築堤での写真です。シラス台地の白っぽい土の色と、濃い緑の照葉樹林との対比が、いかにも南九州らしい色合いを見せています。森や家、畑などが、あちこちにほどよくばら撒かれ、なんだか模型のレイアウトを見ているような感じです。しかし、これを模型で作ったら、小学校の体育館でも入りきらないぐらいのスペースが必要になってしまいます。Zゲージでも辛い。トミーテックが試作してホビーショーに出品していた、1/700のソリッドモデルなら、なんとかできるでしょうか。


続いて眼下にやってきた、同じ列車を撮影しました。6カット目と一緒の写真です。これはシャッターチャンスがかなり異なり、35mmを撮影してから、一旦オートコードのファインダーを覗き、構図を決めてから、リモコンではなく直接手押しでシャッターを切って撮影したものと思われます。そうでないと、こういうギリギリの位置に列車のアタマが来るという構図は、リスクが多すぎて撮れません。ちなみに今回の写真はカラーネガ原版なので、引き伸ばして四切のパネル張りにしたコトを想定し、長辺はネガギリギリで短辺側をトリミングした構図でお届けしています。これが、撮影時に想定した絵作りに一番近いと思います。


今回最後は、大畑の3日間 その2 -1971年4月4日の2-の1カット目の別バージョン。D51545号機の牽引する列車を、S字カーブの築堤で撮影したカットです。朝の光から昼の光に変わったことと、元がちょっと露出オーバー気味なのとで、今までよりも明るめな色調になっています。これも、タイミングはほぼモノクロと一緒ですね。しかし、こうやって見るとこの色味、まるでウッドランドシーニックスのターフの色ですね。これなら撒ける(笑)。ウッドランドシーニックスの色味には、かなり賛否や好き嫌いがあるみたいですが、ぼくがあまり違和感を感じない理由は、このアタマの中に刷り込まれた、晩秋から初春の南九州の風景の色があったからなんでしょう。



(c)2015 FUJII Yoshihiko


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