“hiroto的”四柱推命入門 第4回


■ はじめに

 第4回はいよいよ四柱推命の中心課題である、用神および喜忌について考えてみたいと思います。
 普通は用神の話をする場合に格局という話が出てくるのですが、“hiroto的第一の方法”では格局についての説明は積極的にはしません。天干地支の関係から喜忌(用神)を求めれば、格局の名称などは知らなくても十分占えると考えています。ただし他書を読む場合には、知っておいた方がいいとは思います。
 第3回まで、干支の相互関係について縷々述べてきたのは、用神喜忌を求めるための必須の知識だからです。逆に干支の相互関係が理解できれば、用神喜忌を求めるのは、比較的楽です。とはいえ判断に迷うことは多いのですが…。  ま、能書きはともかく、さっそく話を始めましょう。

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■ 用神について

命式のよしあしの考え方

 命式のよしあしの考え方を説明するのに、これまでの四柱推命の本には(たぶん)書かれたことのない例え話をします。

 何人かのグループを考えましょう。これは会社の部とか課とか係でもいいし、小中学校の学級でもいいし、とにかく人間の集団と考えます。そして、その中に自分も属しているとしましょう。
 さて、この集団が活動する場合に、どういう状態が好ましいかを考えてみますと、日本人の大多数の人は、和気藹々とした集団を好ましいと感じるでしょう。とくに突出した人もなく、かといって集団から脱落する人もなく、割と同じような力量(学級なら成績)を持った人の集団を好ましく思うだろうと思います。そういう集団はそれなりに平和で、幸せな集団といえるでしょう。
 ところが、集団が何か活動をする場合には、強力なリーダーシップを持った人が一人いた方が、一般的にはスムーズに行動できると思います。ましてそのリーダーが自分であれば最高です。
 ところが、そういうリーダーが集団の中に二人いる場合はやや不安定です。どちらかが譲ればいいのですが、そうもいかない場合は調整役が必要となります。
 そういう強力なリーダーがいなかったり調整役がいない場合でも、個々人の互いのコミュニケーションがうまくとれれば、それなりの結果は出せるでしょう。
 ここで、リーダーではなく、逆に足を引っ張る人がいる場合は、その人をサポートする必要があります。そうでないと、集団の活動はなかなか先へ進みません。足を引っ張るというか、集団の活動を邪魔するような場合には、そういう人を排除せざるをえない状況になるかもしれません。もちろん小中学校のクラスの場合には、おいそれと排除するわけにはいきませんが、会社の場合には、転勤させたり休職させたり解雇したりということがありえます。またそうせざるをえない状況もあります。(私も見聞きしたことがあります。当事者になったことはありませんが)

 以上が例え話です。おわかりのとおり命式を人間の集団に例えて話をしました。

 さて、四柱推命の中級者にはわかると思いますが、上の例え話は、いわゆる4つの用神法の説明です。その用神法とは、①扶抑用神法 ②専旺用神法 ③通関用神法 ④病薬用神法 の4つです。それに五行周流というものも含ませています。

 一般に言われる用神法にはもう一つ ⑤調候用神法 がありますが、人間の集団の例えではちょっと説明しにくいので、例え話にはあげませんでした。

 人間の集団を即、命式にあてはめるのは理屈になっていないことは重々承知のうえですが、この例え話であげたような関係は命式にもあてはまります。古来四柱推命でいい命式とは次のようなものをいいます。なお、ここでの命式とは大運や年運など行運も含んでの話です。
   (1)干支五行の均衡のとれた命式
   (2)命式中、どれか一つの干支五行が非常に強い命式
   (3)命式中、二つの干支五行が強く、その強さを調整するものがある命式
   (4)命式の干支の流れがスムーズな命式
   (5)命式の欠点をカバーする、あるいは取り去る命式
   (6)命式の寒暖、燥湿などの気候的なものが調和している命式(調候)
 ここで注意してほしいのは、(1)~(6)のうちどういう命式を目指すかは、あらかじめ決まっているということです。例えば、私の命式は(公開しませんが)どれか一つまたは二つの五行が強いということはなく、目指す方向は基本的には(1)です。(2)を目指すと、例えていえば、出るくいは打たれる、というようなことになり、かえって悪くなります。

用神法とは

 前に命式の目指すべき状態を説明しました。この目指すべき状態になるような干支のうち命式あるいは行運にある干支を用神と呼んでいて、その方法を用神法と言っています。

 ただ、いろいろなところで何度も説明していますが、「用神」という言葉は術者や本によって意味がずいぶん違っています。私の知るかぎりでは、「用神」という言葉はほぼ喜神(後述)と同じ意味で使っている術者が多いようです。その他に、月支蔵干(月令)を用神としたり(これも比較的多い)、命式中で最もかぎ(key)となる干支を用神としたり(この場合は喜神、忌神両方の場合がある)、さまざまな意味で使われています。ですから、本を読む場合には、その著者が、またその場面で、どういう意味で「用神」という言葉を使っているかをよく考えなければなりません。
 “hiroto的第一の方法”においては、用神を次のように定義することにします。

「ある命式において、その命式が目指すべき状態になるように働くもしくは妨げる、命式中(行運を除く)にある干支のうちもっとも重要な干支」

 この定義によれば、用神が喜神の場合も忌神の場合もありえます。ただ、かなりの確率で喜神になるでしょう。
 さらに用神法とは、

「目指すべき状態にするための方法、とくに用神に対しての作用の仕方」

と定義します。言葉にするとかえってわかりにくくなった感じですが…。

 前にあげた用神法を再度あげますと、次のものとなります。
   (1)扶抑用神法:命式の干支五行の強弱を均衡させる方法
   (2)専旺用神法:命式の強い干支五行をさらに強める方法
   (3)通関用神法:命式の干支の作用の流れを円滑にする方法
   (5)病薬用神法:命式の欠点である干支を弱めたり取り除いたりする方法
   (6)調候用神法:命式の気候的なバランスを調整する方法
 上の番号は前項の番号に対応しています。前項の(4)干支の流れがスムーズな命式にする方法も広義の通関用神法といえるのですが、一般的ではないので(4)は省いています。

 次に、目指すべき命式をどう見分けるかということを説明しましょう。

■ 格局を使わない格局のはなし(外格編)

目指すべき命式の見分け方

 タイトルはあっさりと書きましたが、実はこれは初心者どころか上級者でも結構難しい問題です。というより、ある命式を見て、その命式が目指すべき方向がわかれば、7割方は四柱推命の審査は終わったと言ってもいいぐらいです。(あとの3割は象意)

 と書いて、はじめにがっかりするようなことを言いますが、以下の説明ではたぶんわかりません。これは実占を積んで経験的に理解するしかない、と私は思っています。したがって時間がかかります。しかし、ただやみくもに実占を積むよりは、ある程度理屈を納得してからやった方が理解は早いでしょう。

 さて、本題に入りますが、目指すべき命式の見分け方においてポイントをあげると、次のようになります。

   (1)その命式のどれか一つの五行が非常に強いかどうか?
   (2)その命式の五行のうちの二つが均衡しているかどうか?
   (3)どの五行が強いか?弱いか?日干が強いかどうか?
   (4)火や水が強すぎたり無かったりしないか?

 まず最初にやることは、その命式が「どれか一つの五行が“非常に”強い命式であるかどうか?」ということです。

 ごく一般的な四柱推命書では、まず正格とか内格とかの説明から入って、一行得気格などの特殊格を説明していますが、命式の審査の順序としては逆だと思います。まずは、特殊な命式であるかどうかを確かめてから、それに当てはまらない場合には内格とすべきであります。ですから、先ほどの用神法は一般的な順序で説明しましたが、実は次のような順序で用神法を見るべきだというのが、“hiroto的”の考え方です。すなわち、

専旺用神法 → 通関用神法 → 扶抑用神法

の順序です。病薬用神法と調候用神法は少し別の見方をするので、最後に見ます。

 まず(1)どれか1つの五行が非常に強いかどうかですが、これについては、「四柱推命古今論集」の「専旺論集」で論じています。しかし、入門者にはわかりにくいと思いますので、以下にどれか一つの五行が非常に強いかどうかを判断するための“hiroto的”方法を紹介しましょう。着目点は次の6つです。

   ①天干に出ていて、数が多かったり、生じられていたりすること
   ②地支に数多く通根していること
   ③会(三合)、方局などの特殊な関係が成立していること
   ④月令に通根していること(季節的に強いこと)
   ⑤最強の五行を壊したり剋したりする五行がないかごく弱いこと
   ⑥他の五行が非常に弱いこと

以上6つを挙げました。このどれを重視するかは総合的に判断する必要がありますが、“hiroto的”では基本的には上の順にみていきます。ただし、この順番は術者によって異なり(4)の月令を優先して重視する術者もいます。このへんは考え方の分かれるところです。

 例を挙げて説明しますが、あまりにはっきりとした例は挙げず、微妙な例を挙げていきます。


命式例11 (出典『鵲橋命理』)


 天干に出ているのは、庚金、甲木、壬水、丁火の4行です。このうち地支に通根しているのは、甲木が辰辰亥で3支に通根、壬水が辰辰子亥で4支に通根、庚金と丁火は通根していません。月令をみると乙木ですから、甲木に通根しています。亥子は丑があれば亥子丑と水の方局(北方)となり、子と辰は水の半会です。季節的には木が強く、五行の干支の数や地支の特殊関係からみれば水が強いといえます。この場合は水と木の強さは微妙ですが、いずれにしても一つの五行が強い命式ではありません。


命式例12(出典『鵲橋命理』)


 天干に出ているのは、丙火、壬水、庚金、甲木の4行です。このうち地支に通根しているのは、丙火が午午午の3支、壬水が申の1支、庚金が申の1支、甲木は通根していません。月令は丁でこれは火です。干支の数が最も多く、季節的にも火が強いです。ですから、火が強い命式ですが、壬水が丙火を剋しますから、極端に火が強いという命式ではありません。


命式例13(出典『鵲橋命理』)


 天干に出ているのは癸水、己土、甲木で、己土が2つあります。このうち通根しているのは、己土と甲木で、土支は戌未未で3つ、木支は未未で2つです。この時点では己土が強い可能性があります。ところで天干には甲己の合があります。これは果たして土化するでしょうか?私は土化するとみますが、人によっては月令に旺じていないので、土化しないというかもしれません。百歩譲って土化しないとしても甲己の合により甲木の作用は残る日干時干には影響をほとんど与えませんから、己土と癸水の強さ比べとなります。とすれば、これは圧倒的に己土が強く、この命式は土が強い命式といえます。
 なお『鵲橋命理』では、この命式は正格(内格)に分類されており、五行のバランスを図る命式とされていますが、私は土を強めるべき命式だと考えます。


命式例14(出典『鵲橋命理』)


 天干に出ているのは壬水、甲木、戊土、丙火の4干で、このうち通根しているのは、壬水が辰の1支、甲木が寅辰の2支、戊土が辰戌の2支、丙火が寅戌午の3支です。この3支は寅午戌の火局を成立させており、非常に強い地支となります。例11で半会している例を出しましたが、半会と完全な会では強さの差は圧倒的に違います。季節的には甲木が月令に通根しています。
 さて、壬水は辰に通根しているといっても、日干と年支では離れており通根の作用も小さく、強さでは丙火や甲木に全然劣ります。また甲木は月令に旺じているといっても、強さの順からいえば丙火の方がかなり強いです。これは丙火が極めて強い命式です。


命式例15(出典『命理正宗』)


 天干に出ているのは乙木、丁火、甲木、丙火で木と火の干が2つずつです。通根しているのは、甲乙木が寅卯未の3支、丙丁火が寅未の2支となります。季節は春であり木が強くなります。また寅卯は東方のうちの2つで卯未は木の半会です。したがって、数の上からも季節からも木が強い命式であることは間違いありません。また、丙火の地支は子であり強く支える地支ではありませんから、やはり木の方が強い命式です。
 『命理正宗』では曲直格すなわち木が非常に強い命式の例としてあげていますが、私は木が強いは強いが火も弱くない命式とみます。


命式例16(出典『鵲橋命理』)


 天干に出ているのは丙火、甲木、庚金で3干です。通根しているのは、丙火が戌で1支、甲木が辰で1支、庚金が申と戌で2支で月令に旺じています。地支には申辰子の水局がありますので、天干に壬か癸があればそれが最も強くなるのですが、天干にはありません。したがって、この命式は庚金が強い命式です。丙火は地支の水局の影響で弱められ、また甲木は庚金の剋を受けますからやはり弱くなります。したがって相対的に庚金は非常に強くなります。ただし、地支の水が強いので、行運で壬や癸が巡ってくると強さが逆転する場合があります。一方行運で酉が巡ってくると申酉戌の方局が成立するので、庚金は極端に強くなります。
 この例は行運によって極端に五行の強さが変わる例です。

 以上6つの例を挙げて、どれか1つの五行が“非常に”強いかどうかの見方を示しました。しかしながら、例13や例15をみてわかるとおり、判断に迷う命式も少なくありません。こういうふうに判断に迷う場合は、私は、その人の過去をみたり、体格や相貌をみたりして判断します。命式のみで判断すると誤る場合があるからです。

 さて、次に2つの五行が強く、均衡しているかどうかを見るわけですが、見分け方の方法は別に変わりはありません。例を挙げます。


命式例17(出典『命理通鑑』)


 天干に出ているのは己土、庚金、戊土、甲木で、通根しているのは、戊己土が丑の1つ、庚金が申丑で2つで月令に旺じ、甲木が寅で1つです。地支を見ますと、寅申の冲と子丑の合があります。地支の通根の作用、とくに寅申は弱くなります。また天干には甲己の合があり、この合は化しませんが、甲が己日主を剋する力は強いといえます。この命式で最も強いのは土行であることには違いありませんが、庚は季節に旺じているといっても通根の力が不足し、甲木は通根の作用は無力でも己に近接して合している分己への作用は依然としてあります。すなわち、木と金の強さはさほど違いはないと判断できそうです。


命式例18(出典『命理正宗』)


 実はこの命式は一度取り上げていますが、そのときの月令は己土としています。これがもし月令が丁火だとするとどうでしょうか。
 天干には丙丁火、壬水が2干で、通根は丙丁火が寅未、壬水が申辰となります。天干には丁壬の合があり、これは化干せず単なる年月の干合ですから、日干丙火への影響はあまりありません。よって、丙火と壬水の強さ比べです。丙火は月令季節に旺じていますが、寅未は年月支であり通根の作用はやや弱いです。壬水の方は申辰の半会です。これを比較すると、壬の方が若干強い感じはしますが、夏でもあり丙も弱くありません。強さはほぼ均衡しているとみます。
 これが、未月の後半生まれで月令己土だとすると壬の方が明らかに強くなりますし、行運で子が巡ってくると水が非常に強くなります。

 2つの五行が均衡している命式を2例あげましたが、見方そのものは1つの五行が強いかどうかと同じです。

 次に、日干(日主)が強いかどうかですが、それは強さの順番をみて、日主が何番目に来るかをみればいいわけです。この見方は今までの見方と変わりありません。
 火や水が強いとか無いとかいうのは、いわゆる調候を見た場合に、火や水の命式に与える影響が木金土よりも大きいからです。これは寒暖燥湿ということができます。“hiroto的”でいう寒暖燥湿とは次のような命式です。

   寒:冬生まれで金水が多く(天干に)火がない
   暖:夏生まれで木火が多く、水が少ない
   燥:命式に水が少なく、火が強い
   湿:命式(地支)に水が多く、火が弱い

上の寒暖では冬、夏と述べましたが、冬は晩秋~初春、夏は晩春~初秋と考えていいでしょう。これも例をあげて説明します。


命式例19(出典『命理正宗』)


 冬生まれで干支には(亥中の木を除けば)金水しかありませんから、寒であり湿である命式です。ちなみに、これは水が極端に強い命式です。


命式例20(出典『命理正宗』)


 命式中に壬水と辰子の水の半会があり、さらに子がありますから、命式とくに地支に水が多く、湿となりそうです。ただし年柱は丙寅で丙火と寅中の火があるため、完全な湿にはなりません。仮に年柱が辛未であれば、未中に火はありますが火の力は弱く、湿ということになります。


命式例21(出典『命理正宗』)


 年月支の辰戌は冲して作用が減じられます。また寅戌は火の半会です。天干には水を生じる庚金はありますが壬癸はなく、地支には辰中に水がありますが冲されて力がありません。したがって燥の命式と判断します。

 例をいろいろとみてきましたが、再度命式を見るポイントを述べますと、

   (1)その命式のどれか一つの五行が非常に強いかどうか?
   (2)その命式の五行のうちの二つが均衡しているかどうか?
   (3)どの五行が強いか?弱いか?日干が強いかどうか?
   (4)火や水が強すぎたり無かったりしないか?

ということでした。ではそれぞれがわかったところでどういう命式を目指すのかといえば、次のようになります。

 (1)の場合は、「原則として」その一つの五行がさらに強くなるのを目指します。あくまで「原則として」であり、例外があります。
 (2)の場合は、二つの五行のバランスをとることを目指します。
 (1)でも(2)でもない場合は、命式の五行が均衡することを目指します。その場合はとくに日干の強さに着目し、日干が弱い場合は日干を強め、日干が強い場合には日干を弱めるようにします。
 (1)や(2)に当てはまらない(4)の場合は、不足している火や水を加えます。

非常に強い1つの五行を強めるべき命式

 前項でまず1つの五行が非常に強いかどうかを見ました。もし1つの五行が非常に強い場合には、はじめの例え話で出した、強いリーダーの地位を強化した方がいいのと同様に、1つの五行をさらに強めるような方向にもっていくのが「原則として」良い命式であり行運ということになります。
 そして、前に書いた用神の定義、

「ある命式において、その命式が目指すべき状態になるように働くもしくは妨げる、命式中(行運を除く)にある干支のうちもっとも重要な干支」

にしたがえば、この命式においては、もっとも強めるべき干支、というかこの場合五行であり多くは天干ですが、それが用神ということになります。
 以下は、変通星で話を進めますが、第3回で述べたように、干関係は単純な五行関係ではないため、変通星の関係が即干関係にはつながらないことを、まずは注意しておきます。

 強い五行が日主あるいは比肩・劫財(以後は比劫と略します)の場合には、日主や比劫、印(印綬・偏印)がよいことになります。正官・七殺(以後は官殺と略します)は日主、比劫を剋しますのでよくありません。食神・傷官(以後は食傷と略します)や財(正財・偏財)は日主を弱めますが、もともと日主が強いのであまり影響を受けません。むしろ日主の暴走を抑える効果があるので、好ましい場合もあります。ただし、命式中に印がある場合には財は印を剋すので、その場合は財はあまりよくありません。

 強い五行が財の場合には、財や食傷が良いことになります。比劫は財を剋するので良くありません。また印は日主を強め、財を弱めることになりますのでよくありません。官殺は財を洩らしますが、日主を弱めるため、相対的には財が強くなる形となり、悪くありません。

 強い五行が官殺の場合には、官殺や財が良いことになります。食傷は官殺を剋しますので良くありませんが、財が官殺の隣にあって官殺を生じている場合には、食傷が財を生じ財が官殺を生じる形となって、食傷が良い作用を与える場合があります。比肩や印は日主を強めて、日主が官殺に対抗しようとするので、官殺のリーダーシップが発揮できなくなり(これは例え話ですが)良くありません。

 さて、ここまでは、強い五行を強めるという比較的単純な構造でしたが、次の2つの場合は少しひねりが必要です。「原則として」とわざわざ括弧書きしたのは、以下の場合を意識したためです。

 強い五行が印の場合には、印がいいのは当然として、印を強める官殺は多くの場合は良くありません。月干に印があり年干に印を生じる官殺がある場合にのみ官殺が有効です。なぜなら、印というのは日主を生ずるものであり、官殺は日主を剋するものですから、印の作用の足を引っ張ることになるからです。
 それで、印が非常に強い命式の場合には印と比劫が良いと書かれているのが一般的です。(印が非常に強い格、従強格を認めている本の場合)しかしながら、私の感じでは、日主自体が強くなることも良くないことが多いように思います。行ってみれば、非常に強い親がいて、せっかく子供の面倒を見ようと思っているのに、子供の方が強くなってきて親の庇護をいやがるようになる、独立しようとする、というような感じでしょうか。ちょっと怪しい例え話ですが。さらに私の感じでは、日主を洩らす食傷の方がむしろ良い場合があるように見受けられるような気がします。ただ、これはまだ理論として確立したものではなく私の感じです。秘伝というようなものではありません。ただ、こういうこともありそうだということを頭の片隅にでも置いといてください。

 強い五行が食傷の場合には、食傷がいいのは当然なのですが、食傷を生じる比劫がよいとはいえません。それよりは食傷を洩らす財の方がはるかに良いです。財は食傷を弱めるはずですが、この場合は強い五行をより強くという原則に反しています。そして財があるときには、日主が多少強くなっても影響はありません。これは、日主、比劫が食傷を生じ、食傷が財を生じるという一種の気の流れが命式によい影響を与えるのかもしれません。ちょっと非科学的な説明ですが。ま、四柱推命は科学ではないので、説明が非科学的でもいいでしょう。官殺は良くありません。

 さて、ここまでの説明では格局の名称は使いませんでした。とくに名前を覚えなくても干支の関係さえわかれば、四柱推命の見方はマスターできると思っていますので、あえて使わなかったわけですが、他書を読むときに必要でしょうから、ここで名称を挙げておきます。ただし、厳密に見ると、同じ格の名称でも術者によって若干定義が異なっていますが、基本的なところでは同じですから、あえて“hiroto的”名称はつけずに、似たような定義であれば古来ある名称を当てまめることにします。

 日干が非常に強い場合を「従旺格」と言います。このうち、日干が特別に強かったり、地支に三合会局や方局があったり、他の五行がなかったりする場合を「一行得気格」といいます(意味は五行のうち1つだけ強いという意味)。一行得気格は日干の五行によってさらに名前がついており、日干が甲乙のときは「曲直格」、丙丁のときは「炎上格」、戊己のときは「稼穡格」、庚辛のときは「縦(従)革格」、壬癸のときは「潤下格」といいます。
 強い五行が財のときは「従財格」、官殺のときは「従殺格」、食傷のときは「従児格」で、ここまではいいのですが、印のときは「従強格」という人もいるし、そのような格はないという人もいます。まあ名前がないのは不公平(?)なので、とりあえず「従強格」としておきましょう。

 以上を表にしてみますと、次のような表になるかと思います。


非常に強い干格の名称良い変通星良くない変通星
日干、比劫従旺格
一行得気格
比劫、印、食傷、(財)官殺、(財)
従財格財、食傷、官殺比劫、印
官殺従殺格官殺、財、(食傷)比劫、印、食傷
食傷従児格食傷、財、(比劫)印、官殺、比劫
従強格印、比劫、(食傷)財、官殺、食傷、(比劫)

 再度念押しですが、良い良くないは周囲の干の強さともからみますし、干によっても作用の差がありますから、上の表のようにスパッと割り切れるものではありません。もちろん、原則は原則としてあるわけですが、同じ変通星でも命式によって差があるということは覚えておいてください。肝心なことは、非常に強い五行がある場合には、その五行、干(すなわち用神)を強めるようにするのがよいということです。
 以上の考え方を例題でみてみましょう。まず例題13、14の命式を再度取り上げます。


命式例13(出典『鵲橋命理』)


 私はこれは土の強い命式だとみます。土は官殺ですから従殺格ということになります。
 従殺格ですから官殺(土)と財(火)が良いことになります。もう少し細かくみますと、戊は日主癸と合しますが、それによって化火するわけではなく、財が強くなるので良いといえます。己は土ですから基本的にいいのですが、甲との争合になるためやや良くないことがあるかもしれません。丙丁火は基本的に良いと判断していいのですが、土が乾きすぎるきらいがあるので、凶意がないこともありません。
 良くない干ですが、命式中には丙丁(財)がありませんから食傷は良くありません。当然、印や比劫もよくありません。


命式例14(出典『鵲橋命理』)


 丙が非常に強い命式で、従財格ということになります。
 従財格の場合は食傷(木)、官殺(土)がよいことになります。この命式では月干が傷官、年干が官殺で、非常によい命式といえます。ただし、己土は甲木を合して甲木の作用を取り去りますので良くありません。

2つの強い五行のバランスをとるべき命式

 はじめに書けば、この見方はあまり入門者向けではありません。というのは、こういう命式に対してはまだまだ異論が多く、初学者には混乱を生じかねないからです。しかしながら、“hiroto的”ではあえて取り上げることにします。

 異論が多いと言いましたが、実際結構多くの術者がこういう見方をするべきではない、あるいはしなくてもよい、と言っています。また、この実例は少ないとされます。しかし私は意外と多いと感じています。意外と多いゆえに、“hiroto的”でも避けて通るわけにはいかないと思った次第です。

 そこでこういう命式の名称ですが、同じくらいの強さの五行が2つある命式を「両神成象格」といいます。これには2種類あって、例えば木と火など相生の関係の場合を「両神相生格」といい、金と木など相剋の関係の場合を「両神相成格」ということもあります。「両神相生格」は「両神成象格」に含まないという術者もいます。名称はともかく、2つの強い五行がある場合の見方について以下説明します。

 ところで、『命理約言』では「二気双清」とあり、命式に2つの五行しかない場合を述べています。そうなると実例は確かに少なくなるわけですが、“hiroto的”ではそんなに厳密な捉え方はせず、2つの五行の強さがほぼ等しい場合には成立すると考えています。前にあげた例え話でいえば、2人のリーダーがいる場合にあたるわけですが、そういう集団というのは結構身近にもあるのではないでしょうか。そしてその場合には、その力のバランスを図り(あるいはけん制して)どちらかが突出しないようにする、というのが普通の対処方法だと思います。ここで取り上げる命式も基本的にはそういう対処をします。

 2つの五行が強い場合というのは、10通りあるわけですが、生の関係と剋の関係でそれぞれ5通りずつあります。すなわち、相生五行と相剋五行です。

   相生五行:木生火、火生土、土生金、金生水、水生木
   相剋五行:木剋土、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木

 2つの干が同じ強さであっても、相生では生を受ける方が強く、相剋では剋を受ける方が弱くなるのが普通です。したがって、通常の場合は、相生の場合は生を受ける方を洩らす五行を良いとし、相剋の場合は剋する方を洩らす五行、すわなち剋される方を生ずる五行を良いとします。この場合は強い方を洩らすという考え方です。一般的には、強い五行を弱める方法としては洩らす方がソフトで害が少ないものです。
 また、強い方を剋すという考え方もあります。相生の場合は、生を受ける方を剋し生ずる方を生ずる五行、相剋の場合は剋す干を剋し、剋される五行を洩らす五行です。これらは、術者によっては良いとし、術者によっては悪いとされています。
 もう一つは強い方を生じる場合で、これは一般に悪いとされます。

 これを表にしてみましょう。

2つの五行強い弱い良い微妙悪い
木生火
火生土
土生金
金生水
水生木
木剋土
土剋水
水剋火
火剋金
金剋木

 何度もいいますが、良い悪いの取り方は術者によって違います。例えば、木剋土の場合、一般的には火を持ってくるのを良いとし、通関用神としていますが、佐藤六龍師は金を通関用神として(必ず)喜神としています。
 ところが、2行がバランスしているといっても、上の表の「強い」「弱い」が逆転していれば、逆の判断になりますし、2つの五行の強さが完全といっていいほど同じならば、バランスを図るよう両方を強めるか両方を弱めるかが良いということになります。そういう意味では、木剋土の場合は金は木を抑え土を洩らして両方弱めますから、良いということになります。強弱の見極めは非常に重要です。
 ただ、多くの場合は、2行の強さや数が同じぐらいというと、2行の生剋関係で上の表のような強弱になります。


命式例22(出典『四柱推命活用秘儀』)


 喜忌の結論は同じですが、途中経過は出典の解説とは違います。
 通根を見てみますと、己土は戌、庚金は戌巳、丁火は戌巳午に通根しています。通根の数では丁が多いです。巳午は方をなしており、午戌は半会ですが、離れているので会としての作用はそれほど強くありません。また丁は亥に坐しており、亥水の剋を受けます。時干庚は午に坐して、午火の剋を受けます。己土は季節に旺じていますし、巳午火の生を受けます。(巳午が土を含むとして通根しているという術者もいます)
 以上をみると、丁火庚金己土の強さは結構接近しています。この場合は2行が強いのではなく3行が強く、生剋の関係から火が最も弱いという結論になります。


命式例18(出典『命理正宗』)


 この命式は水と火が均衡している例としてすでに挙げました。これはいわゆる身殺両停の命で、木により壬水と丙火の調和を図るのを目指すべき命式です。

■ 第4回のおわりに…化気格のこと

 以上がいわゆる外格とか特殊格とか呼ばれるものですが、要するに、命式中の五行が1つまたは2つが非常に強い命式のことです。前にも述べたとおり、看命にあたって最初にやるべきことは、五行のうちきわめて強いものが(1つか2つか)あるかないか、すなわち外格かどうかをみる、ということです。巷の書では、外格となる命式は少ないので例の多い正格(内格)、扶抑用神が必要な命式から説明していますが、看命の順序としては逆です。大事なことなので何度も繰り返します。

 また、格局にうるさい人は、これまでの中に化気格が入っていないということでしょう。もっとうるさい人は雑格(例えば天元一気格とか)がないと抗議するかもしれません。“hiroto的”では実質を重視して格局の名称とかにはこだわらない、というのがそのご意見に対する回答ですが(むろん古書を読むときには名称の知識は必要です)、化気格については、ちょっと補足しましょう。
 例えば、次のような命式を考えます。


命式例23(出典『子平粋言』)


 日主辛と時干丙が合して、この場合は水が強い命式ですから、化水します。化水格ということになりますが、天干は水金、地支には水を含む支ばかりですから、これは水が極端に強い命式で特殊ということになります。


命式例24(出典『星命術語宝鑑』を一部改変)


 この命式では年干と月干が干合で月令は戊土で土支も3支あるため、土が十分強く化土すると判断します。すると甲木は戊土に変化して、



という命式に変わると考えられます。ところが日主乙木は地支に卯未の2支があり半会ですから、土に比べれば弱いですが、決して弱いわけではありません。これは土が極端に強い命式とはいえず、すなわち特殊格とはいえず、単に財の強い命式といえます。

 多くの化格は例23のように外格に属するのですが、例24のように化してもなお外格に入らないという場合もあります。ただし、引用を一部改変したのは、実はそういう命式は多くないということを示しています。実際、このような例を探すのに苦労しました。例24の元の命式は己卯、甲戌、乙未、己卯であり、これであれば卯戌の合で戌の作用が減じられ、甲己の合は化さない干合になります。

 ですから、化格即外格とはせず、上の話からは除いているわけです。化するということをわかっていれば、何も化格を特別扱いする必要はないと私は考えています。

 以上で、命式の見分け方の4つのポイント、

   (1)その命式のどれか一つの五行が非常に強いかどうか?
   (2)その命式の五行のうちの二つが均衡しているかどうか?
   (3)どの五行が強いか?弱いか?日干が強いかどうか?
   (4)火や水が強すぎたり無かったりしないか?

のうち(1)と(2)を説明しました。次に(3)の説明ですが、それは第5回にじっくり述べたいと思います。いわゆる扶抑用神法の説明ですが、この見方は実はさまざまであり、簡単なようで意外と難しいのです。


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   作成  2010年 1月31日
   改訂  2021年 9月26日  フォームの変更、一部追記


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