第3回では、天干どうしの相互関係について述べたいと思います。
十干の相互関係は、五行の相互関係では説明できないものが結構あります。そのあたりについて詳しく述べたいと思います。
十干の相互関係は、「原則としては」五行関係、すなわち生剋洩分助の5つの関係が前提なのですが、例外もあります。
生剋洩分助を言い換えれば、印、官殺、食傷、財、比劫の5つであり、印と比劫は自分を強め、官殺、食傷、財は自分を弱めるというのは、すでに理解していることでしょう。ただしこれはあくまで原則です。
次に例外についていいますと、例外のその1は干合です。例外の2番目は干自体の特性です。例外の3番目はいわゆる調候です。
天干どうしの相互関係を見るときの順序ですが、まず干合を優先します。その次に五行的関係(生剋洩分助)、3番目に干の特性、4番目に調候を考えていきます。ただし、五行的な関係と干の特性のどちらを重視するかは、その他の干関係や調候などもあわせて考え、時と場合により変わることがあります。
次に、天干どうしの作用の強さですが、近いほど大きいとします。すなわち、年干と月干、月干と日干、日干と時干、の相互関係が強く、年干と時干、月干と時干の相互作用は比較的弱いです。
行運の天干の作用は、大運にしろ年運にしろ月運にしろ、原則として年干、月干、日干、時干の順に作用すると言われます。ただ私の感覚では、作用は横並びで、適宜結びつきの強さを判断する必要があります。なお、五行関係よりも干合を優先しています。(これについては異論が多いですが)
以下は作用の順序ということで、まずは干合について説明します。
以下はあくまで“hiroto的”での干合の話であり、異説が数多くあることを、まずは申し上げておきます。
干合というのは、誰が最初に発見したのかよくわかりませんが、陽干が陰干を剋する場合で、お互い引き合う関係、強い牽引関係であります。強い牽引関係にあるので、相互に与える作用は大きいのですが、その他の干に与える作用は減じられます。(まあカップルがいちゃついているときに周囲の状況に目が行かないようなものか)
また、干合が成立するとき、ある条件下では干合の作用が変化し、干の性質自体を変える場合があります。これが合化(単に化とか干化などいろいろな呼び方があります)です。もともと干合には変化しようとする動きがあるのですが、命式でそれを抑える動きがあれば合化しません。命式が干合の変化を助けるような場合に、その干合は化すると考えればいいと思います。干合が化する条件については、「化干論」を参照してください。
干合は他の天干どうしの作用のように、近いほど大きくなります。というより、近くなければ、すなわち隣り合わなければほどんど作用しません。ただし行運の場合はどの干とも作用します。
以上の考えを整理すると次のようになります。
(1)命式の干合は年干と月干、月干と日干、日干と時干の間でとります。
(2)行運の干は命式中のどの干とも干合する可能性があります。
(3)年干と月干が干合した場合、それらの干の作用は日干や時干に及びません。
すなわち年干月干がないのと同じようなもの。
(4)日干との干合は日干に大きな作用を与えます。
倍化するという人もいますが、そうすると作用の強さを数えやすいのは確か。
(5)干合の変化が命式によって強められると化することになります。
(6)化するのは行運との干合にも当てはまります。
(7)行運と年月時干が干合して化さない場合は作用を失います。合去といいます。
(8)月干が行運干と干合(合去)すると、年干と日干が干合することがあります。
(9)同じ干に干合が複数付く場合、複雑な牽引関係となります。
最後の(9)は争合とか妒合とか言ったりします。この場合の干合は原則的にはどちらか一方が成立するとしますが、これも周囲の天干との関係を見ながら判断するので一概にはいえません。これについては、例題でとりあげる予定です。
以下の話は必ずしも天干に関わる話ではないのですが、この考え方が干関係に重要ですので、ここで取り上げるものです。
五行関係については、前に ①生(印) ②剋(官殺) ③洩(食傷) ④分(財) ⑤助(比劫) の5つの関係だと述べました。前者を主体、後者を作用を及ぼすものとしますと、(したがって生の木水は水生木:水は木を生ずということです)
①生(印) | 木水、火木、土火、金土、水金 |
②剋(官殺) | 木金、火水、土木、金火、水土 |
③洩(食傷) | 木火、火土、土金、金水、水木 |
④分(財) | 木土、火金、土水、金木、水火 |
⑤助(比劫) | 木木、火火、土土、金金、水水 |
このうち①⑤は主体を強める関係であり、②③④は主体を弱める関係です。これが原則的な五行関係です。
ところが、この原則的な関係が条件によっては成立しにくかったり、かえって逆の作用を与えたりする場合があります。このあたりについては、「五行生剋賦」を参考にしてください。徐楽吾は「反生剋」と呼んでいますし、術者によっては、「逆生剋」と言ったりします。徐楽吾はそのことについて『子平粋言』の「論八法」において、「生剋から離れることはできないが生剋だけでは気候の変化について十分説明できない」と述べています。彼はまた、生剋については陰と陽では作用が異なるとも述べています。彼が述べているのは生剋だけですが、助についてもやはり違います。これらの具体的な内容については、次の項で詳述します。
ただし、原則は原則としてあるわけで、あくまで「生剋を離れない」ことは再度強調しておきます。
2干の干関係を次に述べる予定ですが、その前に十干の特質をおおざっぱに述べておきます。“hiroto的”では、この十干の特質を重視して、干関係を見ていきます。
○甲木
甲木の特質は樹木で示されます。樹木というのは、根が深く葉が繁るのが元気な樹木であり、またそれを伐採して建材にしたり木器にしたり、あるいは彫刻の材料になったりします。元気な樹木に必要なのは太陽と雨水と土壌であり、建材にするのに必要なのは斧や鋸です。乾燥すれば薪木となりますが、湿っては薪木としては使い物になりません。
○乙木
乙木の特質は草花で示されます。草花というのは、もちろん太陽、水、土壌が必要です。また花となれば、それを摘んで花瓶にさして飾ることができます。しかし雑草は生い茂るとやっかいです。また雑草は薪木としてはあまり用をなしません。
○丙火
丙火の特質は太陽で示されます。冬春には日の光が欲しいですが、夏は暑くて大変です。ぎらぎらと照りつけると旱魃の恐れがあります。海や湖に映える太陽はきらきらと輝いて美しいものです。当然ながら雲がかかって雨が降れば、太陽を臨むことはできません。
○丁火
丁火の特質は焚火やかまどの火、蝋燭の火で示されます。物を暖めることができますが、太陽の下では蝋燭(明かりとして)は役に立ちません。炉内で金属をとかし、また鍛錬することができます。かまどがあれば、火を保つことができ、また煮炊きができます。
○戊土
戊土の特質は山や堤防、かまどや炉で示されます。鉱山からは金などの鉱石が産出されます。堤防は水をせき止めることができます。またかまどや炉は火を保つことができます。
○己土
己土の特質は田畑の土で示されます。水を保って植物を育てます。しかしながら、川が氾濫するとびしょびしょになってしまいます。また土がつくと汚れます。
○庚金
庚金の特質は金属で示されます。火で鍛錬されて有用な器や刃物になります。しかし雨にさらされれば錆びてしまいます。金属は一度冷えると冷たさが持続するので、結露しやすいです。
○辛金
辛金の特質は宝石(中国で珠玉)で示されます。美しいものですが、汚れやすくまた壊れやすいものです。刃物でも傷つきますし熱を加えると壊れてしまいます。汚れた宝石は洗えばまた輝きをとりもどします。玉で作った噴水は美しいものです。
○壬水
壬水の特質は川や海で示されます。晴れのときは満々と水をたたえて美しいものですが、雨が降れば氾濫します。川や海には水草や海草が育ちますが、一般的には樹木は育ちにくいものです。(マングローブなど特殊な植物は別として)
○癸水
癸水の特質は雨水で示されます。冬の雨は冷たく、また雪に変わり、一面を凍らせてしまいます。しかし、春や夏は木を育てます。たくさんの雨が降れば川や池を作りますが、少々の雨では地面が水を吸い取ってしまいます。
以上が十干の特質を示したものです。注意してもらいたいのは、甲木=樹木ということではなく、甲木が樹木の“ような”特質を持っていると考えれば、十干関係が“わかりやすくなる”ということを言っているに過ぎません。言い換えると、樹木のもっている性質が甲木の特質となるというわけではありません。例えば、樹木が生い茂ると下草は枯れてしまうからといって、甲木は乙木を弱めるというふうには言えないということです。
以上の特質をわきまえた上で、次の2つの干どうしの関係を見ると理解しやすいですし、さらに3干の関係や調候ということもわかりやすいと思います。
この項では2つの干関係について詳しく見ていきます。2干の関係をみることで、逆にその干の特質が見えてきます。どういうことかといえば、例えば甲木の作用というのが他の干との関係によって明らかになるということです。
なお、あくまで2つの干関係を取り出してみていますので、その他の干関係や季節、地支の状態などによっては若干変わってきます。このことは注意してください。
この干関係については、「滴天髄」、「窮通宝鑑」、「子平粋言」、「十干体象」、「五行生剋賦」、「一行禅師天元賦」、その他の諸々の詩賦や参考書に依っています。また『四柱推命術密儀』や『第二編・子平』には透派の用いている十干関係が詳述されています。
例によって前者が主体、後者が主体に対する作用を与える者とします。
①生(印)
甲:壬癸 | 壬水は甲木を若干生じますが作用は大きくありません。冬など壬水が強くなりやすいときにはかえって強い浮木の害を与えます。 癸水は甲木を生じる普通の生関係です。ただし冬で甲木が弱すぎる場合には害を与えます。 |
乙:壬癸 | 壬癸水は乙木を生じる普通の生関係です。壬の方が若干良い関係です。冬で弱すぎる乙木に対しては害を与えます。 |
丙:甲乙 | 丙火は甲乙木の生を受けますが作用は大きくありません。むしろ丙火は甲乙木に洩らされます。(反生) |
丁:甲乙 | 丁火は(水の少ない)甲木によって強く生じられます。 乙木も丁を生じますが作用は弱いです。 |
戊:丙丁 | 戊土は丙火の生を受けます。普通の生関係です。 丁火は戊土を生じますがその作用は弱いです。むしろ丁火を戊土が生じるような場合もあります。 |
己:丙丁 | 丙火は己土を生じます。水があれば吉意が強まります。 丁火は己土をたいして生じません。 |
庚:戊己 | 戊己土は庚金を生じます。普通の生関係です。ただし庚金が弱い場合には埋金の害を与えます。 |
辛:戊己 | 戊土は辛金を生じます。普通の生関係と考えていいでしょう。 己土は生の作用はあまりなく、弱い辛金をさらに弱めます。ただし寅月のみは良いとされます。 |
壬:庚辛 | 庚金は壬水を生じます。普通の生関係です。 辛金は壬水を生じる力はわずかですが、干関係は良好です。 |
癸:庚辛 | 庚辛金は癸水を生じるというよりも水源になるという方が適切です。干支に金のない癸水は力がありません。また金が多すぎるから癸水が強くなりすぎることもありません。庚と辛で差はあまりありません。 |
②剋(官殺)
甲:庚辛 | 甲木と庚金は普通の剋の関係ですが、金が強く水がない場合にはとくに強く働きます。 辛金の剋作用はごく弱いです。ただ辛金の正官は比較的貴命になりやすいように思います。ただし辛金が弱いと全く働きません。 |
乙:庚辛 | 庚は隣合うと干合となり、化さない場合は極めて強く剋作用が働きます。 辛金とは通常の剋関係です。 |
丙:壬癸 | 壬水は丙火を剋するというよりも調和する作用となります。ただ丙が非常に弱い場合はあまりよくありません。 癸水は丙火を剋します。普通の剋関係といってよいです。 |
丁:壬癸 | 壬癸水は丁火を剋す普通の剋関係ですが、壬水の場合は干合となります。 |
戊:甲乙 | 戊土は甲木に剋されます。しかしあまりいい剋ではありません。 乙木が戊土を剋す作用は弱いです。むしろ戊土が乙木に良い作用を与えます。 |
己:甲乙 | 甲乙木はともに己土を剋します。甲木とは干合です。甲木との関係がよりよいといえます。 |
庚:丙丁 | 丙丁火は庚金を剋します。ただ丙火は剋作用よりも調候の作用が大きいように思います。 |
辛:丙丁 | 丙丁火は辛金を剋します。丙は辛と干合で関係は悪くありませんが、丁火は辛金を強く剋し、丁火が強すぎれば辛金は壊われてしまいます。 |
壬:戊己 | 戊己土とも剋作用がありますが、己土は強い壬水を十分に抑えきれませんし、関係もよくありません。 |
癸:戊己 | 戊己土は癸水を剋します。普通の剋関係ですが、癸水が強くてもなかなか剋関係には勝てません。戊土とは干合となります。 |
③洩(食傷)
甲:丙丁 | 甲木は丙火にあまり作用を与えません。丙火は甲木に対して気候的作用(温暖、乾燥)を与えます。 丁火は甲木を弱めます。普通の洩作用です。 |
乙:丙丁 | 丙丁火は乙木を洩らします。丙火が強すぎれば乙木は枯れてしまいますが冬には必要です。 |
丙:戊己 | 丙火は戊土によって洩らされることはあまりありません。 己土は丙火を洩らす作用がありますが、弱い丙火に限ります。 |
丁:戊己 | 丁火は戊土に洩らされますが、干関係はいいです。 丁火は己土の恵みを受けます。 |
戊:庚辛 | 庚辛金は普通の洩の作用と考えていいです。干関係は良くも悪くもありません。 |
己:庚辛 | 庚金は普通の洩の作用です。 辛金は己土を洩らす作用はごく弱いというのが通説です。己土は辛金を弱めるという考えもあります。 |
庚:壬癸 | 壬癸水は普通の洩の作用ですが、癸水の洩の作用はやや弱いです。 |
辛:壬癸 | 壬水は辛金に好作用を与えます。ただし水が多すぎると沈金になりよくありません。 辛金は癸水に洩らされます。 |
壬:甲乙 | 甲木の洩の作用はごく弱いです。 乙木は普通の洩の作用があります。ただし壬水が強すぎるときは効果がありません。 |
癸:甲乙 | 甲乙木は普通の洩の作用です。 |
④分(財)
甲:戊己 | 戊土は甲木を弱めます。その効果は比較的強いです。 己土は極端に強くなければ、甲木とはよい関係です。 |
乙:戊己 | 戊己土は乙木とはよい関係です。強さを調節します。ただし乙木が弱く土が強すぎると害となります。 |
丙:庚辛 | 庚辛金は普通の財の関係です。 辛金は丙火と干合です。 |
丁:庚辛 | 丁火は庚辛金に分けて弱められますが、その作用は比較的大きいです。 |
戊:壬癸 | 壬癸水は普通の財の関係です。 癸水とは干合します。 |
己:壬癸 | 己土は水によって弱められますが、癸水の方がよく、壬水はあまりよくありません。 |
庚:甲乙 | 甲乙木は庚を分けて弱めます。ただし乙木は干合して化金すれば、庚金はかえって強くなります。 |
辛:甲乙 | 甲乙木は辛金を弱めます。一説には甲木は辛金を剋(逆剋)します。 |
壬:丙丁 | 丙丁火は壬水を弱めます。 丁火は壬水と干合します。 |
癸:丙丁 | 丙丁火は癸水を分けて弱めます。 |
⑤助(比劫)
甲:甲乙 | 甲木は普通の助の関係です。 乙木は甲木を強めません。奪財、奪印の作用で害となることがあります。 |
乙:甲乙 | 甲木は乙木を強めます。 乙木は助の作用はわずかで、むしろ奪財、奪印の害をなすことが多いです。 |
丙:丙丁 | 丙丁火は丙火を強めますが、丙火が弱いと丁火はあまり役に立ちません。 |
丁:丙丁 | 丙火は丁火にはあまりいい作用を与えません。 丁火は普通の助の関係です。 |
戊:戊己 | 戊己土は普通の助の関係と考えていいですが、強すぎは他干に害を与えます。 |
己:戊己 | 戊土は普通の助の関係です。 己土は助ですが、その作用は弱いです。 |
庚:庚辛 | 庚金と庚辛金はあまり助にはなりません。弱い場合にないよりましという程度でしょう。 |
辛:庚辛 | 辛金が弱い場合には庚金が助になります。 辛金どうしでは助関係にはあまりなりません。 |
壬:壬癸 | 壬癸水は助関係ですが、癸水の方が作用が大きいです。 |
癸:壬癸 | 壬癸水は助関係ですが、癸水の方が作用が大きいです。 |
以上2干どうしの関係をあげました。再度言いますが、実際に命式を見る場合には、他干の作用や季節などをあわせて見ます。
3つの干の組み合わせは、順序を問わなければ120通り、順序を問えば1000通りですから、ここでは説明しきれません。そこで、いくつかの例を説明しますので、それによって類推してください。
例1 丙癸己
これは太陽と雨水と土壌の組み合わせであり、いい組み合わせです。甲乙木を強めます。これは調候的な考え方でもあります。
例2 戊丁甲
これは炉の火が薪木によって保たれることを示し、とくに丁火にとっては非常によい組み合わせとなります。
例3 戊丁庚
これは炉の中で金属が鍛錬されることになり、庚金にとってはよい組み合わせです。
例4 庚甲丁
これはなたで薪木を切ってそれを火にくべることであり、丁火は非常に強くなります。ただし水が少ないことが条件です。
例5 己辛壬
土で汚された珠玉が水で洗われてきれいになることで、辛金の強さは調和されます。
例6 甲丁辛
珠玉が強い火によって焼かれてしまうことで、辛金にはよくありません。甲木ではなく戊土であれば辛金の傷つき方は緩和されますし、丁戊辛の並びならば、辛金には全く問題ありません。
例7 庚壬辛
これは辛が壬に洗われるのを庚が助けることを示しています。作用としては庚金が壬水を生じ、壬水が辛金を調和するという方向になっています。「刃輔傷官」(『命理正宗』参照)という関係です。この場合は傷官壬が辛金を調和するという関係ですので成立します。同じようなものに丙戊丁という組み合わせがあります。これはやはり傷官戊が丁火を調和するから成立する関係です。
以上は、私の思いつくままにあげた例であり、これらが重要だと言っているわけではありません。十干の特質と2干の関係をもとに、3干の組み合わせをどう考えるかを例で読み取ってもらおうとしたものです。
天干の相互関係の応用でまずは性格傾向をみてみましょう。
この項とあわせて、「個性の見方」も参照してください。
下の表は、「個性の見方」のページにも挙げた表です。
変通 | 基本 | 喜神で弱い | 忌神で強い |
---|---|---|---|
日主 | 自我、落ち着き | 消極的、 引っ込み思案 | 孤軍奮闘、 独断専行 |
比劫 | 実行力、競争、独立 | 実行力不足、 独立心不足 | わがまま、 気が強い |
食傷 | 表現力、奉仕、功名 | 無愛想、 無関心 | 自己犠牲、 出しゃばり、お節介 |
財 | 活動力、統率力、 干渉、経済観念 | 活動力不足、 統率力不足 | 差し出がましい、 強欲 |
官殺 | 素直、正直、忍耐、 自制 | 忍耐力不足、 傲慢、仕事が下手 | 人のいいなり、 小心、慎重 |
印 | 依頼心、器用さ、 吸収力 | 要領が悪い、 くそまじめ | 虫がいい、 依頼心が強い |
この表は原則論であり、今2干どうしの関係を見た後では、おなじ変通星でも違いが出ることがわかるかと思います。
例えば、甲日主の場合、甲木は助ですが乙木は助の役に立ちません。月干に甲木がある場合は、実行力や競争心、独立心が強いと言えますが、月干が乙木の場合には、むしろ乙木が甲木を洩らすような関係となるため、食傷で示すような性格に近くなります。また乙日主であれば、月干乙木比肩は助けになるどころかむしろ邪魔に感じるため、独立心や競争心といってもどちらかといえば敵愾心を含んだ感じとなり、独断専行になりがちです。
年干や月干を社会や仲間、時干を家庭(自分が世帯主あるいはその配偶者としての)と考えると、これらの干関係により本人の表面に出る性格傾向を知ることができます。
以上、干支の相互関係についてみてきました。それでは、今までの見方、考え方を実際の命式で考えてみましょう。
1901年3月27日巳時生まれの男性を見てみましょう。これは佐藤栄作の命とされていますが(『四柱推命術の見方』内田勝郎著)、時間が正しいかどうかはわかりません。
己 | 甲 | 辛 | 辛 | : | 77 | 67 | 57 | 47 | 37 | 27 | 17 |
巳 | 辰 | 卯 | 丑 | 癸 | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | |
- | - | 乙 | - | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 | 子 | 丑 |
月令は乙で春にあたります。地支をみると、卯辰が方を作っており、木が強いといえます。また丑辰は土で、土も十分強いです。巳丑は金ですが、離れており、半会とはいえません。
日主甲木からみますと、月令が乙木ですから旺じており、辰には水を含みますから、甲は十分強いといえます。甲己は合となりますが、木が強く化土にはならないと考えます。
干関係をみてみますと、甲木が十分強く、辛金の剋の作用は2干あって丑巳に通根しているとはいっても、剋作用自体がそれほど強くありませんから、正官に負けることはありません。日主が強い場合の辛金正官は貴命になりやすいとは、2干関係のところで述べているとおりです。日主が強く財官双全の命で、地位財産ともに手にするという命です。
性格は、リーダーシップがありつつも適度な自制心を持つという、指導者タイプの性格です。時干との干合は家庭を大事にする面があることを示唆します。
1948年2月22日酉時生まれの女性をとりあげます。これは『愛の占い桃花運』(鮑黎明著)から採った命式です。
己 | 丁 | 甲 | 戊 | : | 76 | 66 | 56 | 46 | 36 | 26 | 16 |
酉 | 丑 | 寅 | 子 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | |
- | - | 甲 | - | 午 | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 | 子 |
月令は寅で春ですから日主は季節的には強いです。しかし、通根は寅中の丙しかありませんから、さほど強いとはいえません。甲木は寅に坐して季節的にも強く、印の作用で丁火を生じます。しかし、地支に子丑とあり、多少の水がありますから、強く生じるというほどではありません。すなわち、日主丁は強いといっても、バランスからいって極端に強いとはいえません。戊己土は2干あり丑に通根しています。ただ戊土は甲木に抑えられていて、また己土は丁火の生をたいして受けませんから、強すぎるというほどではありません。むしろ丁火に恵みを与えるぐらいです。
してみると、この命式は3行(火木土)の強さが比較的バランスしている命式といえます。ただ、命式がバランスしているゆえに、行運によってバランスがくずれやすいといえます。
命式のバランスがとれているので性格的には基本的には温和なのですが、日主が印に頼りすぎているきらいがあり、やや依頼心が強い傾向にあります。すなわち独立して何かするというタイプではありません。周囲にうまく乗っていく方が成功します。
この命式で注意すべきは甲木で、月干の甲木は印の作用があるのですが、行運の甲木は己土と合して取り去ります。恵みを与える己土を取り去り、しかも行運の甲木の生の作用もなくなりますから、あまりよくありません。