“hiroto的”四柱推命入門 第5回


■ はじめに

 第5回は用神および喜忌の2回目で、内格、扶抑用神法について述べてみたいと思います。
 扶抑とは弱いものを助けて(扶助)強いものを抑える(抑制)ということですが、端的にいえば命式の干支の強弱を平均化しよう、命式の五行の均衡を図ろうということです。と口で言うのは簡単ですが、これが意外といろいろなパターンがあって迷います。私も今でも迷うことが多く、苦労しています。
 難しい難しいと言ってもしょうがないので、なるべくわかりやすくなるよう、できるだけ具体的に、さらに実例を挙げながら、考え方を理解してもらうことにします。

- このページの目次 -

■ 格局を使わない格局のはなし(内格編)

扶抑の具体的な方法

 結局のところ、外格にならない命式はすべて内格として、五行の均衡を図るべき命式であるといえます。しかし、はじめに書きましたとおり五行均衡を図るのは難しいのですが、なぜでしょうか?それは(狭義の四柱推命の)命式には干支八字しかなく、しかもそれが全部別々の五行ということはまずないからです。だいたいは木火土金水の5つともあることはなくて、3つというのが普通です。4つあれば五行にはあと1つですから、比較的均衡をとりやすいのですが、2つとか3つでは、外格にならなければ、5行の均衡をどう図っていくべきか迷うことが多いものです。

 以下、これまでの四柱推命書にはなかった画期的な方法で扶抑を説明しましょう。その方法とは原則として次の4つです。

   (1)強い五行を弱める
   (2)弱い五行を強める
   (3)日主の強さを命式中で中の上ぐらいにする(上の下でもいいが)
   (4)命式中に4つの五行が均衡しているときは残り1つを求める

これぞ“hiroto的”四柱推命法(第一の方法)のオリジナルであります。とくに日干の強さを中の上ぐらいにする、というのは、術者もみな感じてきていたことなのでしょうが(身旺がよいというのはよく書かれていますが)、はっきりと中の上と書いた本はないと思います。もちろん全部の書をひもといたわけではないので、確定的なことは言えませんが。
 また(4)も断定的に述べた術者はいないと思います。ただ(4)は使い方が難しいので、優先順位としては4番目ですが、これが実にピッタリと当てはまる例が見られるので、あえて(4)に入れています。
 以下の原則を実際どう使うかを、以下にわかりやすく(?)例をあげながら説明します。

天干に2つの五行の場合

 2つの五行が均衡している場合はすでに外格編で述べたとおりです。ここでは、五行の力の差がある場合です。2行しかないのですから、どちらかは日主の五行であり、あと1つの五行ということになります。そして、あと1つの五行が用神の五行であり、より日主に影響を及ぼす天干(地支もありうるが)を用神(命式のキーポイント)とします。だいたいは日干の隣で、月干か時干ということになります。もちろんこの用神は喜神にも忌神にもなりえます。
 さて、2行の場合を表にまとめます。この表は“hiroto的”オリジナルです。前に挙げた両神成象の表と似ていますが、ここでは変通星を使います。なお下でいう日主には比劫を含みます。


2つの五行強い弱い良い微妙悪い
日主、食傷日主食傷食傷、官殺比劫、印
食傷日主印、比劫食傷、官殺
日主、財日主食傷、財比劫、印、官殺
日主比劫、印財、食傷、官殺
日主、官殺日主官殺官殺、財比劫、印、食傷
官殺日主比劫、印食傷官殺、財

 この表の見方ですが、日主と食傷が強く、どちらかといえば日主が強い場合は、食傷と官殺が良く、比劫と印は悪い、財は時として良くも悪くもなるということです。例えば、木日主で火がある場合には、木日主が強ければ、火金が良く、木水が悪く、土は微妙ということです。逆に火食傷が強ければ、水木が良く、土は微妙、火金は悪いということになります。

 この表で、日主、比劫と日主、印がないのは、これは日主が強い従強旺格(外格)になるためです。

 もとよりこの表はあくまで原則であり、干合やその他の作用は考慮していません。実際には干合とか地支との関係、また十干特有の作用をよく考える必要があります。
 以下例を挙げて説明します。


命式例25(出典『淵海子平』)


 月支に正官がありますが非常に弱く、天干には甲乙木と丙火しかありません。甲乙木は地支に寅未の2支があり、丙火も寅未の2支です。日主(比劫)と食神のみといってもいいでしょう。良いのは食傷と官殺ですから、火と金です。土は微妙。日主を生じる印と比劫はよくありません。火が良いのはいいとして、金がいいのは日主を抑えるためです。土も日主を分けて弱める作用があります。己土は丙火を弱めるのですが、幸い甲木と合するため丙火を積極的に弱める作用はあまりありません。よって土は悪いということはありません。


命式例26(出典『淵海子平』)


 これは天干には壬水と己土の2つの五行しかありませんが、地支は寅卯木が圧倒的に強く、2つの五行しかない命式とはいえません。行運で甲乙木がめぐってくると木が非常に強くなるためです。よって2行の問題では解決できず、3行のバランスを見ながら判断することになります。


命式例27(出典『淵海子平』)


 丙火と癸水しかなく、辰土はありますが弱いです。辰は癸の根となりますが、他は火支であり、丙火が強い命式です。日主が強く正官が弱いので、財(金)と官殺(水)を喜び、比劫(火)印(木)財(土)を避けるべき命式です。

 2つの五行しかない場合には、上の例のように比較的単純ですが、それでも十干関係までみていくと少々複雑になります。
 例えば、例27の場合は、甲乙木は癸水を弱めて忌神、丙丁火は丙火を強めて忌神ですが、同じ土でも戊土は癸水を合し化火して忌神、己土は癸水を抑えて忌神となります。庚金は癸水を生じて喜神、辛金は丙火と合して取り去るので喜神で、同じ喜神でも作用は違います。壬癸水は水を助けて喜神ですが、壬は単純に水が増えるのに対し、癸水は丙火を剋する作用があります。この作用の差は象意としてあらわれてくることがあります。
 地支については、その地支が丙癸にどう作用するかを見ればいいわけです。

 さて、2つの場合は簡単でしたが、では3つの五行の場合はどうなるのかを考えてみましょう。

3つの五行の場合

 3つの場合も表にしようと思えばできないことはないですが、数が多いので作るのも大変ですし、見るのも大変です。日主・比劫、印、食傷、財、官殺の5つから3つを選び、それを順に並べると、組み合わせは60通りということになります。60通りなら表にできないこともないですが、微妙なバランスがありますので、表にできるほど単純ではありません。

 ここでは、次の原則
   (1)強い五行を弱める
   (2)弱い五行を強める
   (3)日主の強さを命式中で中の上ぐらいにする
をどう使うのか、実例を通して説明したいと思います。


命式例28(出典『淵海子平』)


 日主己土は劫財が時干にあり、辰丑丑と3支に通根しています。ただし辰は酉との合で通根の作用は減じられます。癸水は月令に旺じて丑丑辰とやはり3支に通根しています。丁火は天干にありますが通根はなく、癸の剋を受けることになります。土と水が同じぐらいの強さですが、癸は己の剋を受けるためやや弱くなっています。
 この場合は、まず強い土を弱め、弱い火を強める木が良いことはわかります。土を洩らして弱める金は水を生じて間接的に火を弱めますが、日主の強さを命式中で中の上ぐらいにするので、まあまあといえます。火を強めるために丙丁火を使うのは戊己土を生じるのであまりよくありません。ただ、地支に寅巳午など土に通根しない火を含む支をもってくるのは丁火を強めるのでOKです。というのは、この命式は冬生まれでやや寒すぎるので丁火で暖める必要があるからです。このことは、調候のところで説明します。


命式例29(出典『淵海子平』)


 天干に出ているのは、丙火、甲乙木、庚金で、それぞれ地支に寅未、寅未、申申と2支ずつあります。そのうち庚金は秋生まれなので季節に旺じています。寅申の冲があり作用が弱くなりますが、それぞれ1つずつ通根しているので、全体のバランスにはあまり影響しません(吉凶は別)。木生火、火剋金の並びで、木火金はそれなりにバランスしているようですが、甲木は丙火をさほど生じませんし、日主丙の根である未は年支と遠く、寅は申と冲で作用が弱いので、この中では丙火は比較的弱いといえます。
 強いのはやはり庚金であり、それを抑え日主を助ける火は良いといえます。木も丙火を強める効果は少ないですが、それでも喜神です。庚金を分けて弱める作用もあります。水は強い金を弱めますが、日主を弱めて良くありません。金土は庚金を強めるので悪いです。
 この場合は、強い五行を弱めると同時に(比較的)弱い日主を中の上ぐらいの強さにするため、木火がよいということになります。


命式例30(出典『淵海子平』)


 天干には庚金、壬水、甲木と3干ですが、地支には寅午の火の半会があります。よって、これは純然たる3つの五行という命式ではなく、むしろ4つの五行があるというべきでしょう。丙丁火が行運にあると強さは逆転する可能性があります。一方、日支時支には申子の水の半会がありますので、壬水は強いです。季節的には甲木が旺じており、庚金に至っては申にしか通根していませんから、日主は比較的弱いということがいえます。
 強いのは明らかに壬水ですから、水を抑え日主金を生じる土が良いことは一目瞭然です。日主を強めるため金も必要でしょう。とくに地支に金が欲しいところです。最もよくないのは日主を弱める火です。また水もよくないのは見てのとおり。木は命式中で強いとはいえませんが、とはいっても日主を分けて弱めますからあまりよくありません。


命式例31(出典『淵海子平』)


 甲木、庚金、壬水の3干に対して、地支に根があるのは庚金だけです。庚金が強い命式であることは間違いありません。ではこれが庚金が非常に強いかといえば、地支には午戌と火支が多く庚金は十分に強いとはいえず、また甲木の印である壬水もありますから、従旺格(外格)にはなりません。強い金を弱めるには火と水がありますが、この場合には火では弱い日主をますます弱めますので良くありません。日主は中の上ぐらいがよいので、この場合は水の方が良いということになります。もちろん木も日主を強めるので良いです。丙丁火は火が極端に強くなるので、命式のバランスを一気に損ねてしまうので、絶対避けたい干です。


命式例32(出典『淵海子平』)


 天干には乙木、丁火、辛金の3干で、それぞれ地支には、亥未、未巳巳、巳巳と通根しています。亥未は木の半会であり、巳未は午をはさむ方局となっています。木火が強い命式といえます。辛金は巳に通根しているとはいえ、巳自体は火でありあまりうれしい通根ではありません。強さは火の方が若干強いといえます。両神成象格といってもいいかもしれません。いずれにせよ土は(相対的に)弱い金を生じて木火を弱めるので良いとします。金は木火を両方とも弱めるので微妙ですが、この場合は弱い金を助けるのでまあいいでしょう。問題は水ですが、基本的には強い日主を強めるのでよくありません。しかし、壬水は丁と合して火を弱めるのでよいです。


命式例33(出典『淵海子平』)


 天干には戊己土、丙火、庚金の3干があり、それぞれ未戌、未戌、申戌に通根しています。数からいって土が最も強く、次が土の生を受ける金です。五行関係からみると、月干丙から火生土、土生金という流れになっており、また火土金がそれなりに強いですから、比較的バランスしています。こういう命式はかえってバランスを保つのが難しくなります。日主が強いので、まずは日主を弱めるのがよいのですが、木は火を生じて土を間接的に強めますのでうまくありません。土を洩らす金は良いです。土を分ける水は火も弱めますのでやはり良いです。ただし、十干で見ますと、甲は己を合して取り去るのでよく、乙は庚と合して取り去るのでよくありません。すなわち甲乙木ともに丙火を生ずるという作用はなく、よしあしが分かれます。

4つ以上の五行の場合

 4つの五行があってバランスしているときは、だいたい欠けている五行は良いです。すなわち、もし命式中に木火土金があり水がない場合は、だいたいにおいて水がよい五行となります。なお、こういう見方は私独自の方法とは言いませんが、あまりこういうことをいう術者はいません。さらにこの見方は五行の力量の的確な判断を必要とします。
 一般的には、4つの五行がバランスしているのはむしろ珍しく、4つ以上となると強弱に差があるのが普通です。その場合は、とくに強いものを取り上げて、2つや3つの五行と同じような見方をします。
 例で説明しましょう。


命式例34(出典『淵海子平』)


 天干には戊土、丙火、庚金、甲木があり、4つの五行がそろっています。地支をみると、辰戌が冲で寅戌が火の半会となっています。強さはわかると思いますが、土火が強く木金と続き、水は辰中にあるのみで弱いです。4つの五行がバランスしているとはいえませんから、原則にしたがいます。日主が強いのですから、日主を適当な強さまで弱めます。命式中の甲木は戊土を抑えていいのですが、乙木は庚と合して金を取り去るのでよくありません。水は火を抑え木を生じるのでよいです。


命式例35(出典『淵海子平』)


 天干には戊土、甲木、壬水、庚金の4つの五行がありますが、このうち甲木が圧倒的に強いです。庚金の七殺には根がなく季節が夏で寅午の火の半会があるため極めて弱く、この命式は木が強い従殺格というべき命式でしょう。したがって甲木を強めるべき命式であり、五行均衡を目指す命式ではありません。


命式例36(出典『淵海子平』)


 天干には癸水、乙木、庚金、丙火の4つの五行があります。ところが、乙庚は干合します。季節が秋で丙火はそれほど強くありませんからこの干合は金化します。すると金が強くなりますが、丙火は寅に通根していますし、また金は癸水に洩らされますので、特に金がきわめて強いとはいえません。これは3つの五行の場合と考えればよく、原則に従ってみます。強弱をみると金が最も強く、水が次、火がそれに次いで、木は寅辰の2支、土は辰の1支しかありません。金水が強い場合はだいたい木火がよく、この場合もそれにあてはまります。土は強すぎる金を強めますのでよくありません。


命式例37(出典『淵海子平』)


 この命式例の注をみると、立運が1~2年であることがわかりますので、月令は辛金となります。
 天干には戊土、癸水、丙火、庚金と4つの五行がありますが、戊癸は干合します。季節は晩秋ですからこの干合は火化しないとみます。ただし丙火が隣あって寅戌の半会がありますので微妙なところではあります。子丑の合がありますが、癸と日主戊は合で癸の作用は大きいとみます。戊は丑戌に通根していますが、季節には旺じていません。丙は寅戌の半会がありますからやや強いです。庚は季節に旺じており戌丑に通根しています。したがって4つの五行ともそれなりに強いです。戊日主がやや弱い感じはしますが、丙火の生を受けるのでそれほど弱いわけではないにしても相対的には弱いので、火土を喜神とし、金水を忌神といえます。
 この命式では4つの五行が比較的バランスしています。この命式には寅以外に木行がないので、五行の均衡という観点から木は喜神とみます。
 ちなみに、この命式の持ち主は壬辰運戊子年に亡くなっています。ちなみに壬辰は月柱と天剋地冲であり、年運は北方運となっています。戊土は喜神には違いありませんが、土を生じるというよりも奪印生食の作用が大きいです。こうしてみると戊が戊を生じる作用は弱いというべきかもしれません。

 以上で扶抑の具体的方法はおわりです。例を通じて説明したのでわかりにくかったかもしれませんが、

   (1)強い五行を弱める
   (2)弱い五行を強める
   (3)日主の強さを命式中で中の上ぐらいにする
   (4)命式中に4つの五行が均衡しているときは残り1つを求める

の4つの原則にしたがって判断する流れはつかめてもらえたのではないかと思います。あとは実践を積み重ねることで、強弱の微妙な違いや干支の作用が自ずからわかってきます。「読書百篇、意自ずから通ず」というわけです。

扶抑における格局の名称について

 ここから先は蛇足です。本来、専旺、通関、扶抑がわかれば格局の名称などはどうでもいいと思っていますが、一応格局の名称を紹介しておきましょう。

 内格の名称は一般的には月令の変通星からとります。ただし比肩劫財の場合には、比肩格とか劫財格とは呼ばずに、劫財は十二運からとり建禄格、比肩は帝旺で別名陽刃(羊刃)ですから陽刃格もしくは月刃格と呼びます。列記しますと、正官格、偏官(七殺)格、正印(印綬)格、偏印格(以上2つを印格)、正財格、偏財格(以上2つを財格)、傷官格、食神格、建禄格、陽刃(月刃)格というふうになります。ただし、建禄格と陽刃格は内格(正格)としない術者もいます。(例えば『命理約言』)
 なお、月令の取り方が“hiroto的”と一般的な取り方では違うことに注意してください。

 透派などではこのような格局用神の取り方はせず、原則として日干の隣の干(すなわち月干あるいは時干)の変通星の名称を使います。名称は上と同じです。ただ、『五術占い全書』を見ると劫財が時干にある場合でも月刃格というようであり、少し変な気がします。実際の透派は体用を定めてから格局を決めるのでもう少し複雑ですが、私は透派ではありませんのでこれ以上は述べません。

 しかしながら、これまで見てきたように、命式のキーポイントは必ずしも月令にあるものではなく、また月令も良かったり悪かったりで一定しませんから、月令を格局の名称にすることについては、私はあまり賛成しません。かえって混乱の元になると考えていますので、“hiroto的”ではあえて格局の名称は使わないことにしたわけです。

 ただし外格の場合(従格など)は、用神がそのまま喜神ですから格局の名称を使っても混乱は少ないと思います。実際、内田勝郎氏の『四柱推命術の見方』では、外格には格局の名称を挙げていますが、内格については格局の名称を(目次に)挙げていません。これはある意味かしこい説明のしかただと思います。ただ、外格を最後に説明するのは感心しませんが。

■ その他の用神法

病薬用神法

 病薬用神法というのは、一言でいえば、命式中の欠点である干支を抑制したり取り去ったりする方法です。なぜ病薬用神法と言われるかといえば、『五言独歩』の始めにある「病有りてまさに貴となすべし」に由来しているものと思います。これを発展させたのが張楠の『命理正宗』といえるでしょう。
 病薬用神法は、命式の干支の相互作用をよく理解して、これまでの専旺、通関、扶抑という方法を十分に飲み込んでいなければなかなかわかるものでありませんし、私も理解できているかといわれると、はて少し自信がありません。
 ということで、病薬用神法は入門者の域を超える話なので、すっとばそうと思ったのですが、先に用神法で名前を挙げたので、ここで一例だけ取り上げることにします。


命式例38(出典『子平粋言』)


 甲木が秋生まれで庚金が隣あっており、弱いといえます。寅には通根していますが、地支に寅午戌の火局がそろっており、甲木はますます弱いといえます。幸い壬が甲木を生じていますが、戊土が壬水を抑えている形で、その強さはあまり強くありません。この場合戊土はこの命式の欠点であり、この戊土を抑える甲木が行運にめぐってくると発達します。(甲木は日主の助でもあります)この場合甲木を病薬用神とします。
 では乙木はどうかというと、乙木が戊土を抑える力は弱いので病に対する薬としては力不足です。このあたりは難しいところです。

調候用神法

 調候用神法もまた入門者の域を出ますので、ここでは詳細は省きますが、『滴天髄』にいう「天道に寒暖あり、地道に燥湿あり」は重要だと思いますので簡単に述べることにします。

 その前に一言。調候については、『窮通宝鑑』(『欄江網』『造化元鑰』)がその教科書と言われていますが、実は術者の中でも評価が分かれています。大半の術者は読むべきだとは言っていますが。
 また、調候法について、私はとある人(先生というべきか)から「調候喜忌は最後に採れ」と教わりました。つまり、扶抑、専旺、病薬などを明らかにしてから調候を考えろということです。その人はおそらく調候は初心者が知るべきではないという考えがあったのだろうと思います。
 そういうわけで、調候法については説明を省こうかと思ったのですが、実占経験からは、調候、とくに寒暖、燥湿については、あだやおろそかにはできないと感じています。もちろんそれらは火が強いとか水が強いとかで説明できなくはありません。しかし、例えば火や水の一行得気格が必ずしもいい命式とはいえないということ等々を考えると、少なくとも寒暖、燥湿の問題だけは入門者といえども避けては通れないのかなと思い、若干の解説を加えるという次第であります。

 前に挙げた『滴天髄』の寒暖論の全文をあげると、「天道に寒暖あり、万物を発育し、人道これを得て過ぎるべからず。地道に燥湿あり、品彙を生成し、人道これを得て偏るべからず」とあります。普通に解釈すれば、「天候には気温の高低があり、これが万物を発育する。大地には乾燥湿地があり、これが諸物を生成する。これらは過ぎたり偏ったりしてはならない」ということですが、四柱推命の場合、夏生まれで天干に丙丁火があって強かったり、冬生まれで壬癸水があって強かったりするのよくなく、適度にあるのがよい、地支に水が多かったり水が全くなかったりするのはよくなく、適度にあるのがよい、と解釈されます。
 さらにこのことは、『命理正宗 一行得気格』でも述べられていることで間接的に補強されます。
 調候用神法の例を挙げます。


命式例39(出典多数)


 これは張学良の命式です。金水で構成された命式で、水を用神とする従旺格です。いわゆる金寒水冷の命ですが、幸い季節が夏生まれであり、かろうじて寒湿に過ぎるの命を免れています。喜神は金水木ですが、金水のみが強すぎるのであまりいいとはいえません。早年は辛卯庚寅運であり喜神の行運ですが、健康とはいえずアヘン中毒でした。その後は波乱の人生を送るのですが、中年期以降幽閉生活を送り、結局100歳まで生きていました。しかし、そこまで長生きなのは私には不思議です。成敗的には悪いのですが、身体的には火木運になったのがよかったのだろうと思います。

■ 第5回のおわりに

 さて、ここまでで“hiroto的”の基礎知識はすべて伝授しました。あとは今までのことをいかに実占に使うかという話になります。
 もっとも、すでにところどころに応用的な話を入れてますので、今までの話でもある程度実占は可能です。とはいうものの、テーマを部分的に取り入れただけですので、それらを総合した解説を加える予定です。


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   作成  2010年 2月21日
   改訂  2021年 9月26日  フォームの変更、一部追記


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