46. プラナリア、飛ぶ!
 2004.01.18
 晴れた日曜の午前。洗濯を済ませ、やんわりとした冬の陽の射し込む居間のテーブルでプラナリアの世話をしている最中に、事件は起きた。
 エサの残骸と排泄物と濁った水が取り除かれプラナリアの塊だけとなったタッパーの、汚れた内側をさあこれからティッシュペーパーで拭いてキレイにするぞぉというところで、突然起こった。
 タッパーが飛んでいってしまった!
 私の左の掌の上にあったタッパーが、それを固定しようと私が左指の先にちょっと力を加えた次の瞬間、まるで弾かれたように右前方へと飛んでいってしまった!
 あ、やべ!
 思ったが遅く、タッパーは30cmほどの飛距離を記録して、掃除の順番を待っていた「GI」タッパーの上に勢いよく落下した。
 飛んだのは「SSP」のタッパーだった。
 幸いにもタッパーは逆さにも横倒しにもならずに着地した。これがもしそういう状態で落ちていたら、タッパー内の「SSP」プラナリアの塊が「GI」容器の中へと降下して、手の施しようのない事態になっていたはずだ。「SSP」と「GI」のプラナリアは見かけに差がないからね。混ざってしまったら最後、選別はもう不可能。あ〜混ざらなくてよかった。
 けれど、その幸いは不幸中の幸いだった。

 冷たっ!
 何かが私の顔にかかった。それが落ちたタッパーからの飛沫だと理解したのは、反射的に閉じてしまった目を開けたときだ。勢いよく飛行して勢いよく着地したものだから、反動で外へと飛び出してしまったのだろう。
 ……いや、待てよ……何が?……飛沫?……。
 「GI」の上へ重なった「SSP」タッパーを慌てて拾い上げるわずかな間に、いや〜な考えが頭を過った。再び手にしたタッパーの中に見えるのは蠢くプラナリアの塊。
 ……もしや……。
 タッパーをテーブルに置き、手鏡を取って覗き込んだ。
 !! やっぱり!
 私の額、右の眉根の上あたりについていたのは水滴なんかじゃなかった。ツヤツヤした立派なホクロのようにも見えたが、はて、私のデコにホクロなんてあったっけ? ねぇよ!
 そう、それはプラナリアだった。プラナリア3匹の集合体だった。

 視線をほかに移せば、テーブルの上にも、私のトレパンの腿の上にも、セーターの袖口にも、床の上にも、点々とプラナリアたちは飛び散っていた。
 あっちゃー、やっちまった。思いつつ、ピペットを握る。プラナリアたちを急いで回収せねば。
 水の外に出て何かに張り付いたプラナリアは、吸盤でも持っているんじゃないかと疑うほど、そこから剥がすのが難しい。いや、その何かが小石や布や紙であるならば解決は容易いんだけれどね。それらを掴んで水の中に沈めチャプチャプ振れば、プラナリアは自ずと剥がれてくれるんだよ。だからトレパンやセーターならいいんだ。しかしテーブルや床は持ち上げてチャプチャプできないからなぁ。
 そこで仕方なく、チャプチャプできない場所には水滴を2つ3つ落としプラナリアを浮かせてピペットで吸い上げよう作戦を実施。だが、案の定なかなか上手くはいかなかった。浮き上がらないのだ。剥がれんのだ。
 こうなりゃもう力業よ。狙いを定めてピペット水鉄砲を何度も喰らわせたり、こっちに吸い付きなと丸めたティッシュペーパーで撫でてみたり、それでもダメだと解ると終いにはピペットや指の先で突いてみたり。ええい、剥〜が〜れ〜ろ〜。
 苦労した。苦労して何匹かを回収した。が、手荒にしたせいで何匹かは傷付けてしまった。致命傷を負わせてしまった。殺してしまった。ごめんなさい。私のデコに張り付いたプラナリアのうちの1匹も爪の先に引っ掛けて潰してしまった。すみません。まったくもってすみません。

 すみませんはまだ続く。
 その後私は清掃作業に戻り、「SSP」「HI」「GI」の3つのタッパーの汚れを落としてそれぞれに新たな水を注ぎ入れた。そしてピカピカになったタッパーを定位置に運ぼうとして立ち上がったときだ。テーブルの向こう70、80cm のところに立て掛けてあるエレキギターのボディが、違和感を伴ってふと視界に入った。
 何か、くっ付いてる。黒胡麻の粒のような何かが数個。
 考えなくても解った。プラナリアだった。
 うわっ、こんなところまで飛んでいたのか。想像以上に伸びていた飛距離にびっくり。
 ギターの手前の床にも数匹落ちているのを見つけた。もちろんすべて回収しなくちゃと思ったけれど、タッパーを飛ばしてからすでに1時間近く経過していて、プラナリアたちの身体からは半ば水分が失われており、水をかけても動く様子はなく、生存を認めて救出できたのはわずか1匹だけだった。

 まだ続く。
 ごめんね、とひとりごち、しかしすっかり済んだと思ったのでどかっと座布団に腰を下ろし、読みかけだった新聞に目を通し、折込みチラシもチェックして、それらを揃えて半分に畳んだ、そのとき。またまた見つけてしまった。今度は私の後方。フローリングの床の上。
 私を越えて飛んで行ったプラナリアたちが、乾涸びる寸前の状態で点在していた。
 水滴を落としてもムダだった。

 まだ終わらない。
 さらに20、30分ののち、テーブルの向こうのテレビとその下のビデオデッキに張り付いている数匹を発見。エレキギターの背後のラック、それを覆っている茶色いクロスの表面にも数匹。
 サティのピアノ曲のタイトルが浮かぶ。どんな曲だったかは記憶にないが題名だけは覚えている。──「ひからびた胎児」。
 プラナリアたちはもうほとんどカラカラに乾いていた。もはや水で戻す試みも捨てて、動かない乾燥プラナリアたちをカッターの刃先で削ぎ落とした。

 結局、犠牲の数はトータルで30匹近くにものぼったろうか。
 はぁ。悪いことしちゃった…。呆れるくらい何度も繰り返してるけど、ホント、ごめんなさい。
 47. Flying V(フライングブイ)
 2004.02.11
「フライングブイがいる!」
 お宝発見!とばかりに胸が躍った。
 プラナリアたちは盛んに分裂を繰り返している。だから、ちぎれてできた“頭だけプラナリア”や“尾だけプラナリア”も今やまったく珍しくない。よくよく考えてみれば冗談みたいな形状のそれらが完全体に混じって優雅に泳いでいるさまも、もはや日常的な景色になっていた。
 けれど!
 これってスペシャル奇異。「GI」タッパーの中に見つけてたまげた。ミラクルー!

 その姿から考えるより先に思い浮かんだのはエレキギターのモデルのひとつ「フライングブイ」。一も二もなく彼の名は「フライングブイ」に決まった。
 よろしくな! フライングブイ。
 そして私はプラスチックのシャーレを用意して彼を「GI」の群れから隔離した。念入りに観察してやろうと思って。
 しかしシャーレにポツンと一匹だけではあまりに寒々しく見えたので、彼と同じくらいの体長の、小柄なプラナリアを「GI」から4匹チョイスし、彼のお供として加えてみた。
 よし。OK!
 「フライングブイ」率いる特別チームができあがった。
Flying V
Flying V :ギターメーカーGibson(ギブソン)の人気モデルのひとつ
 2004.02.21
 春近し。窓から射し込む陽も今日は昨日より明るく暖かい。
 テーブルにタッパーとシャーレを並べてプラナリアたちにエサをやった。
 ついでに写真撮影。光の塩梅(あんばい)がいい。撮影日和じゃん。
 お宝の「フラングブイ」にもレンズを向ける。ちなみに私は未だにアナログなカメラを愛用。フィルムを店に出して現像&プリントをわくわくと待つのが好き。常に一か八かってな調子でシャッターを押しているので、うまく撮れたらご喝采ってもんよ。「フラングブイ」、キレイに写るといいな。パシャ。泳いでる姿が、ああ、かわいいな。パシャ。
 そう、確かにかわいかったんだ、ここまでは。それがまさか、こんなことになろうとは!

 異変に気付いたのは、すべての容器の掃除を終えたころだった。
 なになになになになにぃ〜!? 「フライングブイ」の様子が明らかにおかしい! 元気がない。身体がすーっと伸びてない。水を揺らすと、くるんと丸まったりして。
 苦しいの? ねぇ苦しいの? もしかして注ぎ入れた水が悪かった? いや、でも同じ水に浸っている他の容器のプラナリアたちは何ともないし。
 うっわ、なに? なんなの? なんで? どうしたの? どうすればいいの?
 狼狽えた。考えを巡らせた。でも何の解決策も見出せなかった。
 小一時間もしないうちに「フライングブイ」は動かなくなった。さらに数十分後には、死体というより破片と変わり果てていた。
 「フライングブイ」だけじゃない。プラスチックシャーレに隔離した特別チームの全員が同じように死んでしまった。

 惜しい。悔しい。本当に悔しい! これからが楽しみだったのに!
 改めて原因は何だろうと考えた。何がいけなかったのだろうと。そして、ふと、思い出した。以前にも似たような変死事件があったよね。「SSP」大量死事件(2001.11.04/43.秋と冬のプラナリア参照)がそれで、あのときも確か、彼らはプラスチックシャーレの中でもがき、死んでいったんだ。
 じゃあプラスチックのシャーレが原因? 何らかの毒物が何らかの弾みでシャーレから出ちゃったってこと?
 いや、わかんないけどね。わかんないし、わかったところで「フライングブイ」が戻ってくるわけじゃないけどね。
 はぁ…。っちくしょー! それと、ごめん!
 2004.02.24
 図らずも遺影となってしまったが、写真ができあがったのでご覧いただきたい。
 これが「フライングブイ」。在りし日の姿。
Flying V
 48. てえへんだ!
 2004.05.30
 てえへんだ!てえへんだ!てえへんだ!てえへんだ!てえへんだ!
 って私はどこぞのハチか? 親分は岡っ引きか?
 いや、ふざけてる場合じゃない。本当にてえへん!なのだ。そしてここで、私式「てえへんだ!の法則」。
 「私がてえへんだ!と騒いでいるとき、真にてえへん!なのは私ではなく彼らである」。
 そう、彼らがてえへん!なことになってしまったのだ。

 事件の結末から言おう。
 「GI」プラナリア大量死。過去最大規模。
 他人事のように書いてるが、誰のせいかといえばもちろん私のせい。あっしが殺したんでさあ、親分。

 手を打つのが遅かったんだよね。今朝、さあてエサあげようかな、と見やったときに初めて異変に気がついたんだけど、なぜだ?と考えなくても原因がすぐわかったよ。
 真夏のようなこの「暑さ」だ。
 今日は午前中から摂氏30度を超えた。まだ5月だというのに。そして昨日も絶好調に暑かった!
 ああ、そうだよ、暑かったんだよ、確か。で、その暑い中、実は私は一日じゅうプラナリアたちと同じ部屋の中にいたんだ、確か。なのにちっとも、彼らのこと気にかけてやらなかった。
 そうだよ。昨日の私は仕事に追われてて、自分のためにクーラーのスイッチを入れることすら思いつかないほどにひどくテンパッてたんだ。パソコンの前に座っていただけなのにTシャツが、ああ汗でびしょびしょだぁ、なんてことにも夕方になるまで気がつかなかったくらい、それくらい余裕なしの状態だったんだ。だから許されるってわけでもないけど、それでプラナリアにまで気が回らなかったんだよ。

 その大惨事がいつから始まったのかは知らないけれど、今朝発見したときにはもう、タッパーの中は屍体の山だった。牛や豚の臓物を思い起こさせる、生臭い、いや〜な臭いがそこから強力に流れ出ていた。わずかな幸い、全滅ではないみたい。まだ動いてるのがいる! 見つけて急いで救出作業。
 弱々しい、今にも死にそうなのも混じってはいるが、なんとか助け出せたプラナリアは数えてみたら74匹だった。
 「GI」プラナリアは多分1,000匹近くはいたんだよなぁ。うじゃうじゃいたんだよ。それが、たったの74匹! 1,000匹近くも殺しちゃったんだ…。
 タッパーの中の屍体の山は、ピペットの先でつついたら、たやすく崩れて形がなくなった。かきまぜたら、プラナリア粉末の水溶液ができた。いや〜な臭いのプラナリア水溶液ができあがったよ。ごめん、と謝りながら、それはキッチンの排水口へと注がせてもらった。

 他のタッパーはどうかというと、「HI」にも数匹の屍体が見られた。対処があと数時間遅れたら、きっと「GI」と同じ運命を辿っただろうと思う。でもその前に食い止められてよかった。そして「SSP」は、まったく無傷。いつもと変わりなし。
 何で「GI」だけこんな目にあっちゃったんだろうね。人口(?)密度が高かったからかな? それで余計に水温が上がっちゃった? 酸欠になっちゃった? いずれにしても劣悪な環境に置いてしまったことは間違いなく、それを予防できなかったことを、いつものごとく後悔した。はぁぁぁぁ。
 や、しかし! 生き残ってくれたヤツらがいて、ほんとによかった。ありがてぇ。えらいよ、キミたち!
 私また張り切るから! 増やしたる! この過酷なサバイバルゲームを制して残った、とりわけ生命力の強いアンタたちのクローンを、いやというほど作ったる!

 後手に回ってしまったけれど、プラナリアたちを避暑地へと移した。今となってはマヌケな話にも思えるが、いつでもそれが可能なように準備だけはしてたのだ。買って凍らせておいた保冷剤を冷凍庫から取り出しタオルでグルグル巻きにして、フタ付きの白い発泡スチロール箱の中へ置いた。温度を測る。20度ちょい。よしOK! 3つのタッパーをタテに重ねて入れた。暑い夏が終わるまで、今年も彼らはこの白い箱の中で暮らす。否応なく暮らしてもらう。ちと窮屈かもしれないけどガマンしてくれ。でもって生き延びてくれ。死ぬな! 頼むよ。
 2004.05.31
 「GI」、58匹。
 昨日より減ってはいるが心配はしていない。
 消えたのは死にかけだった破片たちだ。消えるだろうと予想していた破片たちだ。そして今残っているプラナリアたちこそ、正真正銘の生存者。「南極物語」のタロとジロにも、「バトル・ロワイアル」の秋也と典子にも負けない、立派な立派な生き残りだ。
 改めて意を決する。
 ぜーってぇ増やしたる!
 49. そしてまた夏
 2004.06.05
 今年ひとつめの里子出し。
 「GI」激減につき今回は「SSP」と「HI」のみ。それぞれ30匹ずつを福岡県のYさん宅へと送り出した。
 それではYさん、どうぞよろしくお願いいたします。
 2004.06.08
 手痛いミス。プラナリアを無事にお届けできなかった。
 東京から福岡への旅の途中で「SSP」の容器から水が漏れ、到着したときにはほぼ全滅状態だったそう。
 Yさんと犠牲プラナリアたちに謝罪し、「SSP」30匹を新たに選んで再度の便に乗せることにした。
 今度は水漏れしませんよーにと、100円ショップで買った小さなおかず入れ容器はやめた。代わりに、以前、姫路工業大学のNさんがプラナリアを入れて送ってくださった筒状の容器、それを押し入れから引っ張りだし熱湯で消毒して使用。キャップに緩みがないこともしっかり確認した。よし万全。
 ではYさん、再びよろしくお願いします。

 「GI」は71匹に。増え始めた。嬉しい。ありがとう。
 2004.06.10
 Yさんから連絡があった。お送りした「SSP」が容器の中でみな死んでいたとのこと。
 水漏れしなきゃいいってもんじゃなかったのね。何でだろ? 容器のせい? 梱包の仕方が悪かったから?
 正直、かなりショック。これでもう60匹も無駄死にさせちゃった。
 ごめんねYさん。ごめんねプラナリアたち。
 2004.06.19
 今度こそYさんに生きてる「SSP」をお届けできた。よかった〜。
 包装梱包資材の店に行って食品容器を物色した甲斐があったよ。
 買ったのは、お弁当などに入っている赤いキャップの醤油・ソ−ス入れ容器。「タレビン」と呼ばれている商品だそうだけど、そのなかでも大きいサイズのを選んで。
 バッチリじゃない? 漏れる心配ほとんどナシの容れ物だよ。って「水漏れしなきゃいいってもんじゃない」という話はどこに行ったんだろう、私にもわからんが。決めた! 当分、これでいくことにしよ。
 50. つわもの登場! ニューカマーは南国育ち
 2004.06.24
 よーこそ!
 はじめましてのプラナリアたちがやってきた。
 送ってくださったのは熊本市のAさん。Aさん宅のメダカの水槽に勝手に住み着いているプラナリアたちだそう。
 さらに詳しく出どころを辿れば、熊本市内「八景水谷(はけのみや)水源地」に作られた「八景水谷公園」の池、そこが彼らの故郷とのこと。メダカを飼う目的で池からメダカとともに泥と水草とを持ち帰ったところ、メダカ以外にもいろんな生物が姿を見せるようになり、その筆頭がプラナリアで、今では水槽の中を我がもの顔で泳いでいたりするのだとか。
 さて、ここからが肝心。
 Aさんのお話によると、水槽は「少なくとも7月から9月までの3ヶ月間は水温が30度を下回ることがありません」状態で、そんな中でもこのプラナリアたちはいたって元気なんだって!
 さすが熊本育ち! だからかどうかはわからんが、夏の暑さに強いプラナリアがいるとうかがって興味がムクムク。見てみてぇ。Aさんのご厚意に甘えることと相成った。

 そして今日、到着。
 おおっ! こいつらが、Aさんいわく「熱い野郎ども」か!
 酷暑を生き抜く猛者ならば、とワイルドな風体を想像していたのだけれど意外や意外、かわいい。ウチにいる「GI」「SSP」とよく似ている。スマートなのが多いものの、長さもだいたい同じくらいか。
 ただし。顔がちょっと違う。ルーペで見て気がついた。「GI」「SSP」より、左右の目と目の間がせまい。中央により過ぎ。プププ、面白い顔。

 職場にいくらでもあるからと、Aさんはプラスチックの試験管に入れて送ってくださった。動物は守備範囲ではないそうだけれど、生物学者さんなのだ。
 その素敵な試験管の赤いキャップをゆるめて取り、中身のプラナリアと水を移した。100円ショップで購入の、丸くて小さなポリ容器へと。そこへさらにウチの水を注ぎ足して様子をチェック。プラナリアに特に変化は見られない。彼らの新居はこれでよしとした。
 次に、さあどこに置こうかと考えた。我が家のプラナリアたちは、すでに避暑地ぐらしだ。保冷剤入りの発泡スチロール箱の中に置いている。彼らと一緒に…じゃあやっぱり面白くないよね。せっかくの猛者たちなんだから!
 そこで居間のラックの上を選んだ。5月に「GI」を大量死させたいわく付きの場所。でもきっと、大丈夫…だよね、猛者くんたちなら。うん、大丈夫大丈夫。期待してる。信じてる。迷惑かもしれんが応援するよ。ファイトだ! 気合いだ! 行け行けゴーゴー!
 あ、数えてもみたんだ。69匹! こんなにたくさん! ありがとうございました、Aさん。大切に、と言う資格が私にあるかどうか、そのあたりすでに怪しい状況だけれど、楽しく可愛がらせていただきます。たんまり増やしてみたいです。本当にどうもありがとうございました。
 2004.06.27
 猛者くんたちにもエサをやった。
 Aさん宅のメダカの水槽は池の生態系の再現に近いご様子。きっとそこにはプラナリアにとってのいろんな餌食もいたのだろう。なのにお生憎さま。ウチでは食せるものいったら冷凍アカムシだけと決まっている。さあ食え!とアカムシを投げ入れた。
 多分初めての体験だよね、冷凍アカムシは。どうかな〜?と思ったけど、たいして気にしたふうもなく普通に寄ってきて普通に吸い付いてた。
 エサの後、水を取り替えた。これで100%ウチの水になったわけだが、これにもやはり彼らは無頓着。うん、問題ないみたい。
 仲良くやっていけそうな予感。
 2004.07.07
 猛者くんたちの中から身体が大きめのを1匹選んで隔離した。
 ご存じのように、猛者くんたちのほかに現在ウチには姫路工業大学の研究室からいただいた「GI」「HI」「SSP」なる3チームのプラナリアがいる。チームという呼び方がいかにも素人っぽくて笑えるが、それはさておき、いずれのチームも驚くことにたった1匹から作られたクローン集団である。
 私もそれをやってみたくなったのだ。
 隔離した1匹からできるだけ多くのクローンを作るつもり。どこまで増やせるだろうか。楽しみ〜。
 チーム名も考えなくちゃね。ってだからチームと呼ぶなー!
 2004.07.19
 隔離したプラナリアの体がちぎれて2つに分かれた。
 1匹が2匹に! よっし!
 2004.07.26
 命名「KH」。
 「岐阜県入間川」の「GI」、「兵庫県イワヤ谷」の「HI」に倣って、採集地「熊本県八景水谷(はけのみや)」だから「KH」。
 ひねりナシ。独自性ナシ。真似っこオーライ。
 2004.08.09
 いつのまにやら「KH」が3匹になっていた。
 1匹増。うれしいぞう。
 2004.08.21
 3日ばかり家を空けることになったので、「GI」「HI」「SSP」の避暑地暮らし組をやむなく冷蔵庫に移した。閉め切った酷暑の部屋のなか、発泡スチロール箱&保冷剤の簡易クーラーボックスじゃ心許ないからね。
 一方、南国育ちの猛者くんたちなら多分平気だろうと踏んで、彼らには敢えて手を触れず、そのまま部屋に放置した。

 そして帰宅。
 冷蔵庫組も猛者くんたちも元気な様子だ。異変なし。よかった!
 と思ったのもつかの間。
 よく見りゃ「KH」が1匹しかいない。小さな2匹が消えてる!
 あれ〜?
 まさか共食い? いや、出かける前日にエサやったばかりだしなぁ。
 暑さに負けて死んじゃった?
 う〜ん、どうなんだろう。わからん。

 そんなわけで「KH」は1匹に逆戻り。ふりだしアゲイン。
 2004.08.26
 選手交代。
 ふりだしに戻ったのをいいことに、「KH」の1匹を別のプラナリアに差し替えた。近日中にも分裂してくれそうな大きめの個体に。
 2004.08.28
 目論見どおり、分裂してくれた。
 「KH」、2匹に。
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