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【2004/10/26】ロングトーンの目的って?
一般バンドに参加しているとギリギリまで仕事だの家族サーヴィスに追われ、練習場に着いて慌てて楽器を組み立て、とりあえず楽器を暖めてそしてすぐさまチューニング、そしてすぐに合奏の基礎練習、合奏練習という流れにならざるを得なくて、ロングトーンをじっくりするなんてことは出来ていませんでした。ここで楽器をとりあえず暖めるには最も低い音を使えば楽器の最も先の部分まで息が通って効率よく温まるのでは?などと考えてとりあえず低音ミからロングトーンをしてみる。そして、ブリッジのソ・ソ#・ラ・ラ#(シ♭)を右手の指を交えつつ吹いてみる。そして高音域を適当にスケール吹き流す。所要時間5分(!)。

こんなロングトーンが良いわけはありません。そもそもロングトーンの目的は何か?

速いパッセージはよほど所見力がある人以外必ずゆっくりのテンポで練習します。ではきれいな「安定した」音を得るためにはどうやって「ゆっくりした」練習をするのか?中には速いパッセージの中で自分の理想とする音色の練習を出来る方もいらっしゃるかもしれません。でも、大概はゆっくりとした音で吹く=長い音を吹いてみて音色の安定感や理想とした音に近づいているか試してみているのではないでしょうか?ロングトーンは決して楽器を暖めるためにやるのではなく、いい音色の発見のためにやるべきことだと思います。

何事も目的意識を持たないと動機付けが非常に難しくなると思います。特にロングトーン。ロングトーンは常に先達の自分が理想とする音をイメージしながらそれに近づけることを目的としてやるべきだと思います。ただ漫然と音を伸ばしていたらそれこそ意味はないはつまらないはで苦痛に感じるだけです。

どこから始めるのがいいのか?これはいろいろな団体の風習があるみたいです。僕が個人的に理にかなっていると思うのはまず、開放のソから最低音のミまでを吹くことです。時間があれば半音ずつ下がっていって、自分の耳でどの音が吹きづらいか、それこそ耳をすまして聞いてみる。不得意(抜けが悪いとか他の音に比べて音色が気に入らないとか)そんな音があればそれこそ反復練習する。というのが良いのでは、と思います。では何故開放のソから下方に吹くのか?

クラリネットで最も短い管の長さで音を出せるのは、開放のソ周辺の音です。そして、開放のソを基本に開始すると、とりあえず何も抑えるキーがない(厳密には音程調節やクラリオン域への移行をスムースにするために右手をある程度抑える練習も必要ですが)=音を出しやすいといったところから簡単に練習に入ることができる。そして短い管から徐々に長い管にしていくので息も少しずつ入っていくのでは?と思います。

では何拍伸ばすのか?で僕は中学3年からの風習で四分音符=60、11拍伸ばし1拍休むということにしています。できるだけ無理なく伸ばすのがいいと思うのでこれぐらいがよいかと思います。こうするとメトロノームがなくても時計さえあれば正確なテンポで練習できるという意味もあります。ただ、無理に伸ばして音が震えたり、息が足りなくなるようでは余り効果がないと思います。楽器の練習は(ある程度は仕方がないのですが)スポーツの練習とは違い、根性で伸ばしてどうにかするという風にとらえるべきではないと思います。きれいな音のためにすることなので、無理のし過ぎは禁物です。もしどうしても息が持たないとか伸ばせないとかいう場合は別途呼吸法を考慮・練習すべきではないかと思います。

そうして下のミまでたどりついたら今度は最低音ミを2拍伸ばしレジスターキーを押し4拍伸ばし2拍休む、ファを吹くレジスターキーを押す・・・開放ソの1音下のファを吹いてレジスターキーを押すとやります。初めて楽器に触れた人に対してこの練習はどうかと思う点があるかもしれませんが、この練習の目的は初心に帰ってレジスターキーを押したときにアンブシャーを変えないこと、レジスターキーを押した音に対して別の意識を持たないこと、レジスターキーを押した後の音に対しての音程感覚の確認をします。

そして最後はハイベーから開放のソまで下がってきます。何事も短い管から長い管へ!です。全ての音を半音階でできれば理想ですけど、なかなかそんな時間も取れなかったり、と言い訳をしてみる。しかし、そうやって半音ずつロングトーンしてみると、音によって音色にばらつきがあるのが見つかります。僕の場合、クラリオン域のファ#や、ソ#の音色が気に入らない。なんだか音にえぐみが増すと言うか。特にファ#。この音を綺麗に吹いている人を見るとうらやましく思えます。ついでにシャリュモーのソ#。下手に唇の圧力が足りなすぎるとこれがえぐい音を一番出せてしまう。

ロングトーンをするときの3箇条。

  • 自分の目指す音色を常にイメージしながら吹く。
  • 教科書で憶えたアンブシャーを保つことを常に意識する。アンブシャーが崩れるようならとにかく休む
  • 自分の苦手な音、気に入らない音、自分の楽器の抜けていない音を発見し反復練習、理想の音に近づける。

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