じっくりとプロの演奏を聞いていて思うのですが、最もアマチュアとの差を感じられのは勿論音色。そしてタンギング。プロの演奏を聞いているとなんと自然に綺麗にタンギングしていることか。いや、技術の問題以前にフレーズをどう感じさせるかという点において非常に美しく音の句読点をつけているというか。
学生時代、大学連合の演奏会での合宿でのこと。当時4年生だった他の大学の先輩から「もっとタンギングの練習した方がいいね。そういう教則本もあるよ」と言われたことと「もっと冷静に吹こう!」と言われたことがやけに印象にのこっています。で、「そういう教則本」を自分で探して買ってみたのがレジナルド・ケルだったかの17タンギングの練習曲みたいなものだったと思います。思いますというのは何かの拍子に楽譜の束ごと紛失してしまったからです_| ̄|○
で、その本の冒頭に「tap the tip of the reed」がタンギングの基本であるみたいなことが書いてあったと記憶しています。リードの先っちょを軽くはたくとでも言うのでしょうか。しかし実際に、リードの先端末端を寸分違わず舌の何処を使ってはたけばよいのやら。
「はたく」となるとどうも力が入ってしまうような気がします。勿論何らかの力は働くのですが、どうやら、リードの先端を舌のどこかで「触れる」というのが割りとイメージとして合っているのではないかと思います。この「触れる」ということの例えにこんなものがあったように記憶しています。
手で熱い薬缶に触れることを考えてみましょう。触れたらすぐに手を引っ込めますね?タンギングもそうです。舌でリードに触れたなら、さっと離す。
なんとなく理屈が分かるような気もします。要するに舌をリードの先にべったりくっつけるのではないですよと。打つのではなく触れるのですよと。試しに自分で余分な力がリードの先に及ぶようなタンギング(もどき)をしてみるとベチャッともベタともつかないはたまたポコともコンとも付かない打音とでも言ったほうがいいような音が発生し、文字通り汚い音がする。タンギングが汚いと言われるゆえんはこのあたりの感覚なのではないかと思います。そして、タンギングは音の句読点をつけるためにあるのであって、自然な息の流れを殺してはいけないのではないかと。理想は舌の感覚でリードで触れたか触れていないか分からないぎりぎりのところなのでは?などと思ってみてはいますが、なかなかうまくいかない。これはもうプロのいろいろなCDを聞いて、タンギング絶対している箇所をそれこそ全身耳にして聞いて、そのイメージを自分の中に作っておいて、自分で楽器を吹いてみて雑音がでいないかきちんと冷静に確認することが大事ではなかろうかと思います。
で、舌のどの部分を使ってタンギングすればよいのでしょうか?そもそも人間がみんな同じ舌の長さをしているわけではないし、千差万別なのだから、必ずこうしろ!なんてことはあろうはずがありません。
「クラリネット演奏技法」では、理にかなっていて、舌の長さは人によって違うだから、以下のやりかたがあると。
- 舌の先端を舌の歯の歯茎につける。そして、舌をリードに触れるまで盛り上げて見る
- 上の応用でそれでとどかない人は舌の先を下唇の部分に付け、そして舌をリードに触れるまで盛り上げる。
これを応用すれば、リードの振動、アンブシャに悪影響を与えないことを前提に舌の先を舌の唇から舌の歯の付け根などなどいろいろな位置で試してみればいい、ということになりはしないかと思います。と言いつつ僕はそんなに舌が長い方ではないと思うので、舌の先の方でタンギングしています。舌の先は何処にも触れていません(リードは別ですが)。正確には舌の先端から多分3mmほど舌の付け根に向かったところかと思います。これ、上の方法よりも速いタンギングができるという利点はあるのですが、支えがない分不安定かつ雑かつ荒々しくなることもあり、非常にコントロールがつらいです。それと、舌は乾燥しているよりも湿り気を帯びているほうが好影響があるようです。
さてもう一つの問題。平常のタンギングもあるけど、16分音符のパッセージでひたすらタンギングしなければならないことがあって、指とタンギングが合わない、それを何とかしたい!!っていう欲求があるわけです。でも、まずはゆっくり4分音符テヌート同じ音で雑音が出ていないことを確かめて、そこから次へ進んでいくのがきれいに吹いていく練習になるのかな、なんて思っています。久々に自分で実践してみたら、実に悲惨なことが・・・いかに指を早く動かすことに注力して美しい音で吹くことをおろそかにしてきたかという・・・