健康志向に合わせた欧米諸国の畜産品種の歴史

『牛』

日本では、1948年に全国和牛登録協会が設立され、1950年からは和牛と登録されている牛の子でなければ和牛の登録資格が得られなくなりました。近年では、生まれる子牛の4050%が、5頭程度の種雄牛からの子牛である状態が続いています。和牛の割合で、黒毛和種が多い理由は、霜降り肉になりやすいことですが、100gの和牛サーロイン赤肉に脂肪が25.8gあります。輸入牛では脂肪は4.4gです。
欧米諸国では、1970年代からの健康志向により、脂肪の少ない赤身肉に人気が集まり、次いで、地球環境問題に対応して、近代畜産から放牧への回帰が課題となっています。時代に合わせて飼育する品種を選んできました。
日本の畜産業は栄養失調が問題だった時代のままです。健康志向、地球環境問題の時代に対応した畜産ではありません。心筋梗塞、高コレステロール血症、糖尿病が問題になっている現在の日本にふさわしい畜産業とは思えません。関税や輸入禁止による畜産業保護政策と、国民の利益のかね合いの問題は、経済の範疇には収まりませんでした。
国内で生産される食料と国民の健康には密接な関係があります。経済的に富める方々が食べるか、余裕のない方々が食べるかは別問題です。先進国では心筋梗塞や生活習慣病は余裕のない方々を襲っていますが、日本では富める方々が罹患しています。日本の畜産業は、現状維持を目指して、近代畜産を続け、黒毛和牛肉を提供して、お客様に満足して頂ければそれで良いのでしょうか。皆様はどう考えますか。

. カロリー 脂質 飽和 一価不飽和 多価不飽和
100g Kcal g g g g
和牛サーロイン赤肉 317 25.8 9.14 13.29 0.62
輸入牛サーロイン赤肉 136 4.4 1.65 1.86 0.14
和牛ヒレ赤肉 223 15.0 5.79 6.90 0.49
輸入牛ヒレ赤肉 133 4.8 1.99 1.79 0.22


黒毛和牛           輸入牛ヘレフォード種

イギリスでは健康志向が高まった1970年代にフランス中部から放牧で育つLimousin(リムザン)牛、Charolais(シャロレー)牛が導入され、現在シェアNO1NO2になっています。

リモシン牛(リムザン)

19712月にフランス中部リムザン地方から179頭のリムザン牛がエジンバラについた。 1986年にはヘレフォード種を抜きシェアNO1を獲得してからその座を守っている。
現在イギリスでのシェア35%。

シャロレー牛
フランス・ブルゴーニュより〈幻の仔牛〉シャロレー仔牛のソテーマリーアンヌ風ベルジュソース レストラン・クボウ

 

フランス中心部原産の大型肉専用種。被毛は白で赤肉が多く、脂肪はごく少ない(体の10%)。イギリス、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ロシア、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで飼育されている。現在イギリスでのシェア16%。
宣伝文句は、
@ 厳しい気象条件とやせた土地で育った牛は、屈強、健康と適応性を身につけた。
A 筋肉質で上質、低脂肪、しかもgood fat多価不飽和脂肪が多い。
B 放牧で飼っていて、飼料用に化学肥料を使っていません。環境にやさしい牧畜です。
(穀物飼料による近代畜産は地球環境に大きな負荷を与えます。もはや持続可能ではありません。放牧飼育が重要です。)
C
高い食物転換効率で、低コストで育ちます。
D 子牛を良く生み、早く育ちます。

シャロレー牛を放牧で育てると、全脂肪中25%が多価不飽和脂肪(PUFA)になり、しかもn-3PUFAが多く、リモシン牛より健康に良いとのコマーシャルです。和牛・ヘレフォード牛では全脂肪中PUFAは 1.6%・2.2%だけです。

ホームページをご覧ください。

http://limousin.co.uk/the-breed/breed-history/

Journal of Animal and Feed Science. 13, Suppl. 2, 2004. 101-104
Polyunsaturated fatty acids in M. longissimus thoracis of fattening bulls fed silage of grass or marize


近代畜産の問題点を指摘しているカナダ大使館ビルにある山地酪農研究所のホームページです

日本の牛乳の75%は妊娠中の乳牛から搾乳されており、牛乳中の女性ホルモンが乳がん、前立腺がん、生殖能力の低下の原因になると、山梨医大、第一保健学教室佐藤章夫教授が日本衛生学会で報告しています

『豚』


バークシャー 現在のイギリスでは利用されなくなり、希少品種として保護されるようになった。


ピエトレン種はベルギーのブラバンド地方のピエトレン村で1920年頃に見出され、極端に脂肪の少ない筋肉質の豚で、1953年から品種として認定された。体全体の脂肪が薄く、筋肉量の多い品種であり、赤肉率(Lean percent)は世界一高いとされている。ヨーロッパ産ハイブリッド豚の止め雄系には必ず使われているといっても良い。
日本では、白い肉を好む欧米とは異なり、淡灰紅色の肉を好むため、この品種はほとんど供用されていない。


デンマークランドレースの最大の特徴は、きわめて脂肪が少なく筋肉質なことである。雌系として使われ、雄系には筋肉質世界一のピエトレンを用いて、脂肪の少ない肉豚を生産する。

世界最高ベーコン輸出国になったデンマークは、長年にこのポジションを守るためにランドレースの繁殖純血種の輸出を拒否した。
   
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