企画の掘り下げ方

 前にも書いたようにホームページはハイパーテキストですから、書き込む際に大切なのは遠慮しないことです。本のようにリニアに読んでいく物は読者は読む文章の順番に対して自由ではありません。作者が設定した読み方に沿って読んでいくことになります。だから作者は読者があるテーマに向かってわかりやすいように配慮しなければなりません。

 しかし、ハイパーテキストは読者が読む文章の順番や箇所を好きに選んでいきます。ですので作者は、読者がどのように読み進めばいいのかの指針は与えることができても、それを強制することはできません。好き勝手に読み進んでいくことを許容しなければなりません。そのことを逆手に取れば、作者はかなり自由に思いついたことをリンクを駆使して書きまくることができます。読者に対してどのように説明したらわかりやすいかを考えるより、読者がいろんな内容について検索しやすいようにデザインした方が面白いのです。多くの人は無駄な情報がたくさんつまっていた方が面白いと感じるでしょう。無駄な情報はいらないと思う人はそこを読まなければいいのですから。

 さて、本題の企画の掘り下げ方ですが、自分の体験や感じたことを中心に書くことをお勧めします。よく誰でもが認めることの出来る事実のみを丁寧に調べて書いているホームページがありますが、多くの場合すでに誰かが調べたことの再録になります。よほど独自の視点に自信がない限り、そのような方法でホームページを作るのは大変な苦労になるでしょう。読者としては新しいことが書かれてないと読んでも無駄になるばかりです。

 ゴリラについてのホームページを作成したことがあるのですが、ゴリラについてのホームページを検索していくと、ほとんど似たり寄ったりの内容しか得ることはできませんでした。その中で面白かったのは、上野動物園のゴリラたちを絵手紙にしてそれを掲載していたページでした。作者が実際に上野動物園のゴリラを足繁く通って観察し、絵手紙にしているから独自の視点があり面白かったのです。そのサイトで掲示されていた絵手紙は2000年11月に本として出版されました。

 たとえば、「どうやって企画するのか」に書いたように、ウィスキーについてのホームページを作るとしましょう。ウィスキーについて全般的な知識を得るためのサイトを作るとすると、マイケル・ジャクソンの「世界のウィスキー」や「モルトウィスキー・コンパニオン」、土屋守の「ブレンデッドスコッチ大全」や「モルトウィスキー大全」を越えるような内容でなければ存在する意味がありません。しかしそれは一般の人にはまず無理でしょう。ところが、「私が出会ったウィスキー」について書くとなると意味が違ってきます。

 ネット上で発信する内容は私的なものに絞るのです。2000年9月9日に練馬の友人宅でペペロンチーノのペンネをつまみに味わったラフロイグの15年について書くとなると、その内容は一般的なものではなくなります。しかし、ホームページで求められるのはそのような特殊な内容なのです。なにしろ内容は世界中で検索されるのです。数十億人に一人くらいはその特殊な内容を読もうとわざわざ検索してやってくるのです。誰でもが認める一般的な情報はそれを専門に集める人にまかせましょう。そして、私的な情報に特化していくのです。その結果、ホームページを作ることはいかに自分が楽しむかにかかってきます。自分の感性が豊かであれば、いくらでもホームページを更新していくことが出来ます。それを楽しんでくれる人だけが読んでくれればいいのですし、書くことや表現することを自分が楽しめればいいのです。

         

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