AI着色は昭和時代の夢を見るか(その17)


PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回も前回からの続きで、最初の北海道撮影旅行の中から室蘭本線栗山-栗丘間に撮影に行った1972年7月16日に撮影したカットの続編のカラー化です。今回掲載したカットのモノクロ版は<雨の栗山(その2) -1972年7月16日->の中で掲載しています。今回も同一カットはできるだけモノクロバージョンとトリミングの位置を合わせてみましたので、比較してみると面白いかもしれません。各列車ともカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があり、それは、<雨の栗山 カラー版(その4) -1972年7月16日->と、<雨の栗山 カラー版(その5) -1972年7月16日->に掲載していますので、こちらとの比較も楽しめます。



今回最初に登場するのは、小樽築港機関区のD51287号機がけん引する上り貨物列車。この列車は<雨の栗山 カラー版(その4) -1972年7月16日->の中で紹介しているように、望遠ズームを装着した35oのサブカメラでも撮影しています。煙の具合からしてすでに石炭は焚いていませんが、安全弁を吹き上げていますので余裕の蒸気での力行ですね。カラーポジで撮影したカットと比較するとほぼ雰囲気が変わらず、かなり優秀なカラー化といえましょう。もっとも、山肌の緑の茂みにしろ、ちょっと霞んだ雰囲気にしろ、AI君の得意技なことはすでに了解していますので、横綱相撲というところでしょうか。でも、カラー化したほうが天気がいい感じなのが面白いですね。


下り線のトンネルから飛び出してくる、下り貨物列車を牽引する滝川機関区のD511086号機。このカットは、前に掲載したモノクロ版の次のカットがベースです。ということでほぼ同じシャッタータイミングのカラーポジ版からすると、ワンアクション後のシャッターチャンスになるのでこちらの方が引き付けたカットになっています。これもなかなかリアルに迫ったカラー化になっていますね。この日は雨なので、AI君の得意な世界ということもあるのでしょう。しかし先ほどの287号機は小樽築港機関区らしくLP405副灯の周囲のリングを磨いていましたが、滝川機関区は煤けたままです。でもレンズはちゃんと磨いてますね。


続い下り線のトンネルを抜けてきたのは、岩見沢第一機関区のC57104号機が牽引する下り旅客列車。これは狙って遊び心で撮ったカットなので、カラーポジはありません。ワンカットだけの撮影なので、<雨の栗山(その2) -1972年7月16日->と同じカットです。とはいえ、前回はトンネルポータルを中心に大胆にトリミングしましたが、コンクリートのカラー化はつまらないし、せっかくAI君お得意の緑が鬱蒼と茂っていますので、トリミングなしとしました。前カットと同一地点なので、全体のトンマナもそろっています。これも実際よりかなりいい天気の感じですね。これも合格点でしょう。


栗丘寄りの上下線が並行している区間の195kmのキロポストのところで、上り貨物列車を撮影します。牽引しているのは岩見沢第一機関区のD5111号機。勾配票を見ればわかるように、ここから一段と勾配がキツくなる(室蘭本線の最急勾配)区間なのですが、余裕で走ってますね。これはカラーポジ版と比べると、今までとは逆にAI君のほうが天気が悪い感じです。ただ微妙に怪しい空の感じは、なかなか頑張って再現しています。しかし、岩見沢第一機関区は、副灯のリング磨くんですね。松・謙さんの話によると「北海道では旅客用機を持っている機関区は手入れが丁寧」ということでしたので、岩見沢も例外ではないということでしょう。全体の雰囲気はいいのですが、道床に草を生やしちゃったのは草でねす。


おなじみの国道をオーバークロスするところのお立ち台から、上りの旅客列車を狙います。牽引機は岩見沢第一機関区のC5744号機。ぼくはお立ち台の手前の犬走りのところから撮りましたが、この左側の手摺りに沿ってズラリと同業者の三脚が並んでいました。前のモノクロカットでは4:3にトリミングしていましたが、今回はライカ版ノートリミングで右側の森を大きく入れました。その分AI君の得意技が発揮されて割と自然に仕上がりました。またもや道床に草が生えてますが、これはカラーポジ版をみると本当に草が生えているので、多少生えすぎではありますが良しとしましょう。かなりリアルに近い雰囲気です。


今度は国道の南側の斜面に登って、下り線の築堤の全体を見渡すカットに挑みます。岩見沢第一機関区のD51915号機がけん引する、下りの車扱貨物列車。これも彩度の違いこそあれ、けっこう迫真の色調が出ています。撮影時の露出の関係か、カラーポジのカットは実際よりいい天気な感じですから、こっちの方がその時の実際の雰囲気に近いかもしれません。実際のカラー版では、トラに積まれた坑木の赤い木肌と、途中に連結されたワム8が色のアクセントになっているのですが、これはちょっと無理ですね。とはいえ、貨物列車としては違和感ない仕上がりになっています。


最後のカットは、この日栗山-栗丘間での最後の走行写真。栗丘駅に進入する岩見沢第一機関区のD5185号機が牽引する下り貨物列車。これは今まで未発表のカットです。全体に彩度が低くほとんどモノクロと変わらない感じですが、空の青みと茂みの緑が逆にいいアクセントになっています。この区間でセキの返空がやってくるのは追分以南と違ってけっこう限られています。しかし、北海道にも藁吹き屋根の家があったんですね。思わぬ発見がありました。しかし、岩見沢のカマなのに、副灯のリングがくすんでますね。あるいはこれは塗装しちゃってあるのでしょうか。今回のAI君は、得意な雰囲気のカットが多かったこともあり、なかなか優秀。オリジナルのカラーに肉薄していました。成長していますね。





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