AI着色は昭和時代の夢を見るか(その24)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。24回目ということは、これでまる二年AI着色のネタで引っ張り回している勘定。とはいえ当分はこれで行きます。ということで今回も引き続き最初の北海道撮影旅行で撮影したカットから、1972年7月14日に行った室蘭本線沼ノ端-遠浅間・千歳線沼ノ端-植苗間で撮影したカットのカラー化。今回は午後になって、下り列車がモロ逆光気味になっています。しかし夏の北海道の午後は長いので、このネタはまだまだ続きますよ。今回掲載したカットのモノクロ版は<「あそこ」での一日(その3) -1972年7月14日-->の中で掲載しています。今回はモノクロ発表時かなりトリミングしたカットが多いので、それに近い構図になるようにして作画してみました。また今回もカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があるカットもありますが、それは<続・「あそこ」での一日 カラー版(その9) -1972年7月14日->と<続・「あそこ」での一日 カラー版(その10) -1972年7月14日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。

今回も前回同様、「あそこの立体交差」の南方で千歳線の下り線が分離するあたりでの撮影が続きます。最初のカットは、追分機関区のD51605号機が牽引するセキ実車の上り石炭列車。前回掲載したD511118号機の牽引する上り石炭列車とほとんど同じ構図ですね。こちらはギースルエジェクタ付きの標準形、あちらは戦時型とかなり特徴は違うのですがこうやってみるとあまり違いがありません。これがある意味「蒸機が飽和しちゃう」幹線蒸機が残っていた頃の北海道の醍醐味ですね。これはモノクロだけでカラーポジでは撮影していません。1118号機のカラーカットと比べると、順光なこともありなかなかリアルな出来ではないでしょうか。しかし、なぜか青ナンバーに見えるなあ、これ。

続いて上りの室蘭本線旅客列車がやってきます。牽引機は見沢第一機関区のC57104号機。これはカラーポジのカットがあります。電柱との位置関係を見ると、カラーの方がちょっと後。この区間は直線で相当なスピードを出していますので、0.5秒程度の違いでしょう。AI君、時々オーバーウェザリングでお茶を濁してくるクセがあり、けっこう錆々にぬってくることもあるのですが、これは実物の方が汚れが効いていて、テンダの水タンク部分は本物の方が強烈な錆色、AI君の作品の方がキレイです。着色時に自動補正がかかったのか、煙室扉にあった「団結」を消した跡が消えていたりします。これも色味は充分及第点ではないでしょうか。

同じ列車を引き付けて寄りで撮ったカット。この時はこういうバッタ撮りには珍しく35o広角レンズを付けていますので(まあ飽きてきて、多少は変化を付けたいということで普段やらないことに挑戦したのでしょう)、こういう寄りの撮影でワンカットおまけを楽しめるという次第です。モノクロでの発表はこちらのカットの方でしたね。前回は当時の基準で4:3の画面構成にしていますが、今回は3:2にしたのでより広角感が強調されているのではないでしょうか。蒸気列車は広角難しいんですよ、電車とかと違ってね。なぜか前のカットよりもコントラストが強くなっていますが、全体の色調は同様な感じに収まっていて悪くはないですね。

前カットのC57104号機の牽引する上り旅客列車と沼ノ端駅の下り方で交換して、下りの旅客列車がやってきました。牽引機は追分機関区のC5744号機。離合のシーンは<一瞬の邂逅 -カメラが捉えた離合の瞬間->と<無意味に望遠 その2 -1972年7月14日->で発表しました。このカットはカラーポジのカット以上に手前に引き寄せてシャッターを切っていますが、それでも対抗列車がチラリと写っています。逆光でツブれ気味ということもあって全体に彩度が低くなっていますが、実際のカラーと比べてもこんなものかなという気がします。ちょっと補正をかけてやればだいぶ近くなりそうです。さっきの104号機はLP405副灯のリングが磨かれていませんでしたが、こっちは磨いてありますね。岩見沢では44号機の方が愛されていたのかな。

ぼくの中では「あそこの立体交差」を代表するカットとなっていて、カラーポジ版をいろいろなところで発表していますし、ジオラマにもして発表する時も118号機を載っけたりしました。千歳線上り線をアンダークロスする岩見沢第一機関区のD51118号機の牽引する上り貨物列車。タンク車の返空です。ガーダーを灰色に塗ってしまったのは惜しいですが、他の部分はカラーポジと比較しても充分良くやっていると言えるでしょう。機関車のウェザリングも、かなり実物に近くリアルです。橋梁の部分だけ後から手修正すれば使えますね。とはいえ、橋梁も完全なグレーではなく、ほんのり赤味が感じられるところが、またAI君の策略なのでしょうか。もう少し濃くすれば、策略にハマるのですが。

千歳線の上り線をやってきたのは、小樽築港機関区のD5170号機が牽引する車扱のローカル貨物列車。機関車の次位に車掌車が付いているのでわかります。少し見返り気味にはなりますが、この位置からだと築堤が見通せてサイドビューが撮影できます。順光ですので茂みは夏らしい感じに仕上げてきました。テンダはかなりウェザリングが効いていますね。とはいえ、先程のC57104号機は実際にこのぐらいの感じなので間違いとはいえません。もっとも70号機は小樽築港所属なので、さすがに手入れは良くワリときれいなのですが。ヨに続くワム8は塗色を知っているのか錆の表現なのか、ほんのり赤味を帯びた色に仕上げてきました。また目の錯覚を利用しようというのでしょうか。ナゾです。

今回の最後を飾るのは追分機関区のD51285号機の牽引する下りの返空セキ列車。空セキの空気抵抗が大きいのと、ここは若干の上り勾配になっているので、必死に焚いて力行しています。千歳線の橋梁上の待避所からの撮影ですので三脚は立てられず、カメラは3台持ち替えで撮らざるを得ないため、こちらの35oのメインカメラを先に撮って、カラーポジを撮影しています。「あそこ」が人であふれだす前に撮影に行った人は、けっこうここから撮っている人がいますね。何人か直接話をして確認しました。機関車の煙がなぜか赤みがかって妙な感じですが、絵画的表現という意味ではアリかなと思える範囲でしょうか。演出的な迫力は感じます。景色についてはカラーポジと比べても充分リアルと言えるのではないでしょうか。
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