AI着色は昭和時代の夢を見るか(その25)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。AI着色ネタもまる2年を超えて3年目に突入です。確かにこの間にカラー化もかなりバージョンアップしているので、やってる本人もけっこう面白かったりします。そんなこともあるので、当分はこのネタで行きます。てなわけでまだまだ材料が残っているので、今回も引き続き最初の北海道撮影旅行で撮影したカットから、1972年7月14日に行った室蘭本線沼ノ端-遠浅間・千歳線沼ノ端-植苗間で撮影したカットのカラー化です。今回掲載したカットのモノクロ版は<「あそこ」での一日(その6) -1972年7月14日-->の中で掲載しています。また今回もカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があるカットもありますが、それは<続・「あそこ」での一日 カラー版(その10) -1972年7月14日->と<続・「あそこ」での一日 カラー版(その11) -1972年7月14日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。

今回は「あそこの立体交差」の南方の保線小屋の前に陣取っての撮影です。まずは鷲別機関区のD51896号機が牽引する返空セキと一般の車扱貨車をあわせた下り貨物列車。機関車次位にヨが連結されていますから、各駅で入換を行うローカルの貨物列車ですね。カラーポジのカットのほうが、ワンアクション後にシャッターを切ったようです。逆光の上に鷲別の汚さあいまって、モノクロネガからは全くナンバーが読み取れませんが、カラーポジから896号機と読み取れました。見比べてみると、線路の向こう側の原野はかなり肉薄しています。下り線のみバラストが入れ替えられているところも、うまく表現しています。しかし、手前側の草原を枯草にしてしまったのはいただけませんな。

振り返ると今度は室蘭本線の上り旅客列車がやってきます。牽引機は見沢第一機関区のC57135号機。カラーポジのカットはワンカット前でガーダーと交差するタイミングでシャッターを切っていますが、それと比べても充分にリアルな感じが出ていると言えるのではないでしょうか。しかし、今回もガーダーをグレーに塗ってきちゃいましたね。日本ではグレーの橋梁というのは、トラス橋にはありますがガーダーにはほとんどないですね。どこかにはあるのかもしれませんが、ちょっと記憶にはありません。しかしアメリカには多いようなので、アメリカでの学習の成果なのでしょうか。まあ、使うのであればオートではなくマニュアルの着色で色を載せればいいわけですから。

これが今回最大の問題作。キハ22を2輌連ねた室蘭本線の下り旅客列車のカットですが、ディーゼルカーの塗り分けにほのかに赤味とクリーム味が入っているではないですか。今まで何度かディーゼルカーにも挑戦したことはあるのですが、モノクロのままみたいな感じで出力され、色味を感じさせることはありませんでした。これは学習したようですね。とはいえ、お得意の「低彩度で色を載せ様子を見る」やり方で来ましたが、逆光ということが功を奏して、それなりに自然な感じで見られます。原野の草原も夏の北海道らしい感じにまとまっています。変に派手な色にしないことも含めて、これはなかなかいい仕事をしていると言えるでしょう。

小樽築港機関区の性転換ガマ、D5154号機が牽引する札幌貨物ターミナルからの返空タキの上り貨物列車が、あそこの立体交差の上を通過します。このカットのみ<線路端で見かけた変なモノ その5 -1/1のジオラマ「あそこの立体交差」 1972年7月->で発表しました。リアルカラー版は、さすがにこのガーダーを通過中にいいポジションで2回シャッターを切るというのは至難の技なので、先の築堤を通過中のところを見返り気味に撮影しています。カラー化についてはこれもガーダーがグレーなの以外は、順光でもあるしワリといい感じに仕上がっています。このポジションでの撮影は大体同じ感じに仕上げてきていますので、出力も安定してきたと言えるでしょう。ガーダーの向こう側の室蘭本線がいい感じです。

同じ撮影地点が続きますが、今度も室蘭本線の下り貨物列車。牽引機は岩見沢第一機関区のD5185号機です。前回はトリミングしたカットを掲載しましたが、今回はノートリミングで保線小屋を入れた構図にしました。この小屋をどう表現してくるかも見どころなのですが、なんと下半分の下見板を赤く塗ってきました。それもかなりウェザリングの効いたトーンで。アメリカの牧場とかだとこういう雰囲気に色褪せた赤いペンキ塗りというのはよく見ますし、その表現としては悪くないですね。やはりこれもアメリカの記憶なのでしょうか。それとも丸木の手摺りが西部劇風なので、それに引っ張られたとか。それにしても上半分は生地仕上げで、こちらは日本風に仕上がっているんですがね。原野の表現は及第点でしょう。

今度は撮影位置を変えて、千歳線の上り線の築堤の上からの撮影です。この次に来る下りのフレートライナーを全編成とらえるためにここに移ってきたので、室蘭本線の上りの貨物列車は見返りでの撮影となっています。もう半日以上ここにいてそろそろ飽きてきていますので、こういう贅沢もしてしまうのでしょうね。とはいえ、遠くに見える苫小牧の工場地帯と原野の広がりとで、それなりに味わいのあるカットになっています。カラー化もかなりいい感じ。というか、鉄道というより原野の写真ですから、自然物に強いAI君の持ち味が生きたというべきでしょうか。カラー化画像の方が味わいがありますね。これは充分合格点でしょう。
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