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映画日記 2020年 (54本) |
見た映画の記録です。2020年分です。上の方ほど新しく観たもの。 このサイトを休止している期間の映画鑑賞記録を別に残していたので、2021年の再開に際してこちらに再構成してアップ。 評価は ★★★★★ が最高。
【 年度リスト 】 【 ◀ 2021年 】 【 2019年 ▶ 】
No. | タイトル | 評価 | 感想 |
---|---|---|---|
54 | ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え! Bill & Ted Face the Music |
★★★★ | 30年を経てビルとテッドの続編が観られるとは。しかも相変わらずの下らなさと、それを嬉々として演じる キアヌ・リーブスを堪能できる幸せよ。馬鹿馬鹿しくグタグダで、音楽で宇宙を救うなんていう底の浅いストーリーなのに、 クライマックスで成し遂げられる全時空を巻き込んだ演奏に図らずも胸を打たれた。 この底抜けのユルさと前向さこそが今必要なのかも。 |
53 | ばるぼら | ★★★ | 手塚治虫のアダルトな漫画の実写化作品。新宿の夜を漂うミューズかサキュバスか非現実な存在感の二階堂ふみがエロくて魅力的。 彼女に魅入られる小説家役の稲垣吾郎は始めはイマイチだが終盤堕ち続ける様は悪くない。 |
52 | 脳天パラダイス | ★★ | よくこんなデタラメで悪ふざけだけの映画作った、というのは褒め言葉で、志は高く評価したい。 でもテンポとテンションがもう一つだし、なんやかんやで結局収まるところに収まる予定調和感がね。 集団トリップをサイケに描くならギャスパー・ノエの「クライマックス」 くらい尖ってたら良かったのに。 |
51 | ドクター・デスの遺産 BLACK FILE | ★★★ | 終末医療患者に安楽死を施す謎の医師。その正体は人の生死を操り、その上で感謝される全能感に酔う快楽殺人者、 として描いているが、人助けする人は多かれ少なかれその感覚を持ってるわけで、そう考えると少しゾワゾワ。 金銭的な見返り無しだと犯行を続けられるとは思えないのと、 綾野剛演じる刑事の難病の娘に干渉するのは犯人の美学に反するのではないか、が弱い。 基本的にはTV刑事ドラマのテンプレなのは仕方ないかな。 |
50 | ザ・ハント The Hunt |
★★★ | なかなかにヤバい。邪悪な金持ちが領地でヒト狩りを楽しもうとしてたら獲物としてさらわれてきた人たちが反撃する話でしょ、 と思ってたらそうひねってくるか。狩る側が民主党的価値観で狩られる側が共和党的で、大統領選の時期にそりゃ物議醸すわ。 実はしがらみのある両側(どちらもクズなのだが)の関係が見えてくる頃から俄然面白い。 今のアメリカの分断を強烈に皮肉った怪作。 |
49 | 薬の神じゃない! 我不是薬神 |
★★★ | 鬼滅では泣けないが、これは泣く。切羽詰まった金策のためジェネリックの白血病薬密輸に手を染めた上海下町の精力剤屋が、 高価な正規薬を買えず死を待つばかりの患者の窮状を知り、ついには義理も責任もないのに逮捕のリスクどころか 自分の財産を投げ打って、安価な薬の提供に打ち込んでいく。2000年代初頭の実話がベースだそうだが、 どこか小狡い顔で白血病患者の老若男女を仲間に引き入れ事業を立ち上げる軽妙な前半から、やむを得ない中断を経て、 使命感から再起するシリアスな後半へのつながりが良い。収監される主人公を見送る、救われた患者たちの顔に胸が詰まる。 普通の日本人には中国医療格差問題の象徴である健康宿の描写ピンと来ないだろうな。 |
48 | 劇場版鬼滅の刃 無限列車編 | ★★★ | よく出来てるよ、よく出来てるんだけど皆が皆声を揃えて大絶賛するのは違和感。 毎週放送のTVアニメなら破格だけど劇場版ならこんな感じで普通かと。 わかりやすいメッセージを声高に叫んでドヤ顔されてもなあ。世の為に自らの命を賭す行為は尊いが賛美してはならない。 |
47 | エマ 愛の罠 Emma |
★★★ | チリ発の、情熱とダンスに彩られた刺激的な一作。主人公のエマは欲望のままに、 道徳や規律など目もくれず周囲を巻き込み篭絡し、火炎放射器で燃やして突き進む。 不道徳を極めた、支離滅裂にも見えるその行動の目的は家族の再生で、邪悪ではないのが救いか。 巻き込まれた一同の前で真相を話すエマと、居心地悪そうに微妙な表情の男たちのラストが面白い。 社会通念的にはアレだが、ある意味では全員幸せになっているのがね。 |
46 | テネット TENET |
★★★ | これほど入り組んだ、観客の知力を過大評価した映画を作れるのは、そして作っても許されるのは C・ノーラン監督だけだろう。従来のタイムリープ物のループ構造を超えた、敵味方ともに時間を行きつ戻りつし、 同一世界内で順行する時間線と逆行する時間線が交錯する複雑さにクラクラする。やりすぎだ! SF的には誤魔化してるディテールは相当あるが圧倒的な映像に押し切られる。 |
45 | 鵞鳥湖の夜 The Wild Goose Lake |
★★★ | 中国南部、うらぶれたリゾート地の地方都市を舞台に、警察と対立組織に追われるバイク窃盗団の幹部と、 彼の妻の代理で待合場所に現れた娼婦の数日間の交流を描くノワールサスペンス。 どん詰まりの街でうごめくどん詰まりの人々の鬱屈とした物語なのにやたらスタイリッシュなのは 主人公の2人が美男美女だからに違いない。チンケな窃盗団メンバーと底辺の娼婦がこんなに美形なはずないよね。 |
44 | 人数の町 | ★★★ | 借金で行き場を無くした主人公が連れてこられた奇妙な町。戸籍や名前を失う代わりに、匿名の大衆の一人として指示に従えば 衣食住は保障される。現代社会で絶望する人に示される自由と安寧を秤にかける選択肢は甘く恐ろしい。 ところで、こういう環境の集団だと手に負えない欲望が爆発しそうにも思うが、 住人たちは飼い慣らされすぎに見える(食事に薬物でも混ぜてる?)。「カイジ」と似た世界だが熱のなさは真逆。 |
43 | ようこそ映画音響の世界へ Making Waves: The Art of Cinematic Sound |
★★★ | 映画に命を吹き込む音響効果を作り上げてきた人々が語る、(おもにハリウッドの)音響技術開発史のドキュメンタリー。 ルーカスやコッポラ、彼らを支える技術者が手探りで切り拓いた新しい領域に対して、 映画会社は常に理解を示さず不要なものとして切り捨てようとしてきたというのがのが面白い。先駆者の苦しみだね。 |
42 | ディヴァイン・フューリー 使者 | ★★★ | 幼い時に父を亡くした経験から神を憎んでいる総合格闘技のスター選手が、 彼の右手に突然現れた聖痕の力を見抜いた神父とともに、人々に憑依した悪霊たちを祓う。 そして全ての背後で悪霊を操る闇の司教との死闘に向かう。極めて少年マンガ的なオカルトアクションだが、 原作があるならヒット必然のド王道。前半あえて格闘シーンを封印しクライマックスのバトルを盛り上げる構成がいいし、 主人公の心の中で彼を導き力の源泉となる父親と、穏やかだが強い信仰で人々を救い続けるエクソシストの神父の、 善を象徴し包容力に溢れる二人の大人との絆に泣く。 |
41 | 鬼手 | ★★★ | 厳しい修行の末、鬼神の棋力と屈強な肉体を得た主人公が、裏社会の賭け碁打ち達との盤上・盤外での死闘を経て、 かつて最愛の姉の命を奪った卑劣漢で囲碁界に君臨する最強棋士への復讐に挑む、という韓国囲碁バイオレンス。 囲碁のためにヒトとして大切なものを捨てたヒトデナシたちが金だけでなく身体の一部や命を賭けて喰らい合う、 『ハチワンダイバー』か『嘘喰い』の世界。主人公自身も過去の業から復讐者に追われる緊張感が良い。 ある意味テンプレで意外性はないが面白い。 |
40 | ディック・ロングはなぜ死んだのか? The Death of Dick Long |
★★★ | タイトルからして下ネタで想像はついたけどそっちの性癖だとは。 大人になっても家族ができてもバカなままの男たちの有様は、共感できなくもないが、 考えなしにその場しのぎの嘘を積み重ねて身動き取れなくなる愚かさのレベルが高すぎるよ。 そしてディックが死んだ経緯は実のところよくわからない。その日の気分だったのか過去から試してたのかとか、 彼らの中のスタイルの違いが関係あるのかとか。その辺少しモヤモヤ。 |
39 | カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 Color Out Of Space |
★★★ | ラブクラフト『宇宙からの色』の映画化は原作の要点を意外と押さえた出来。 アルパカはともかく。犠牲者を自覚ないままに周囲の環境ともどもゆっくりと腐らせ狂わせる汚穢、名状し難い色彩としか認識できず、 意思なく生命ですらない怪異の映像化は困難だと思ってたので、 時々動物的な速い動きで恐怖を煽る表現は原作のテイストではなくても映画に落とし込む方便として許容範囲。 ネクロノミコンがペーパーバックになってるのはご愛敬。 |
38 | 破壊の日 | ★ | これはダメだなぁ。自己満足の空回りにも程がある。東京オリンピックに象徴される現代社会の強欲を祓おうとして 作ったらしいが、重低音でがなりたてるばかりで何も伝わって来ないし、全てが酷い。 こんな映画にイッセー尾形や松田龍平出しちゃもったいない。窪塚洋介に至っては意味ありげに登場するけど何の役割もなく、 彼のシーン全削除でも成立する始末。でもこれに最高の評価つける人もそこそこいるのが不思議。 |
37 | 悪人伝 | ★★★ | マ・ドンソクの極道役がハマってる韓国バイオレンス。 複数の未解決殺人事件の犯人が同一であることに気づいたはみ出し者刑事と、犯人にめった刺しにされメンツを潰されたヤクザ組長。 目的は違えど狙いは同じ彼らは互いの力を利用するため協力して正体不明の無差別連続殺人犯を追う。 この二人もたいがいイカれているが、圧倒的肉体差のいかついヤクザに襲いかかるほど無分別なのに証拠を残さず、 表と裏からの追跡を尻目に笑いながら凶行を続ける犯人の冷静な狂気に肝が冷える。 彼がここに至った背景は仄めかされるが、そっちの視点で映画化しても面白そう。 |
36 | 一度も撃ってません | ★★★ | 題名と宣伝からコメディかと思いきや、ひねっていてもしっかりしたハードボイルド。 時代に忘れられたことに抵抗し、自分しか気にしてない自分の場所にしがみつく老人達を 石橋蓮司、岸部一徳、桃井かおりらが渋く演じる。老人なので暴力シーンは控えめだが、 直接手は下さないにしても裏稼業としての殺人を長年続けた悪辣さが顔にでているのが良い。桃井かおりの唄はカッコいい。 |
35 | ドロステのはてで僕ら | ★★★★ | ヨーロッパ企画の比較的短い作品だが、何これ、とんでもない拾い物。 1階カフェのテレビと、カフェ店長の2階自宅にあるPCモニタがなぜか2分の時間差で繋がって過去と未来の自分と会話できるようになり、 これを利用しようとする友人たちの引き起こすドタバタとちょっとしたサスペンスと恋の始まり、の時間物コメディ。 鏡合わせのモニタを通した二重三重どころじゃない多重の時間ループを使ったおかしなやりとり (ありそうなこと、やりそうなことを、実にうまく並べている)を映像作品として成立させる撮影トリックは変態的。 話も単純に面白い。なぜ電源ケーブルがあんなに長いか、は置いとくとして。これ、世界に配信しようよ。 |
34 | アングスト/不安 Angst |
★★★ | 今年3本目の連続殺人犯実録映画は、殺人者の主観・独白で一家惨殺の過程を描くもので、1983年製作と古いが、 他の2つと比べてもより黒々とした狂気の問題作。主人公は頻繁に「計画」と口にするが、 抑えられないサディズム衝動・妄想に駆られて痙攣的に動いているだけで自分の行動の影響1分先さえ想像できない。 そして法や倫理を気にもかけないことを自覚し一切の反省がない狂人だ。純粋な精神異常のむき出しの描写、 ドローンもCGもない時代に、地上から20m位急上昇して俯瞰に転じるカメラワークなどいくつかの点で先鋭的な作品。 |
33 | 透明人間 The Invisible Man |
★★★ | 今回の透明人間は薬ではなくハイテク光学迷彩スーツ。世界の軍事バランスを一変させるレベルの技術を ストーキングに使うだけとはソシオパスの天才科学者には困ったものだ。 これで邪悪さが控えめならアベンジャーズの一員になれるのに。逃げた恋人を脅かし、彼女の友人達に危害を加え、 その罪を彼女になすりつける計略を冷静に進める科学者の姿(見えないけど)と、 精神を削られ他人には妄言にしか聞こえない真実を叫びながら狂気の顔になっていく主人公の様子が中々に怖い。 |
32 | キラーソファ Killer Sofa |
★★ | ストーカー男がオカルト儀式で憑依したソファが、主人公の若い女性に近づく人々を惨殺していく、というNZ発B級ホラー。 邪悪ながらどことなく愛らしい、Eテレ「みぃつけた!」のコッシーの仲間にいそうなゆるキャラ感のソファだけが魅力の作品で、 話がとっちらかりすぎなのが残念。 |
31 | ランボー ラスト・ブラッド RAMBO: Last Blood |
★★ | 年老い衰えたランボーが、娘のように育ててきた少女を拐い壊したメキシコギャングに立ち向かう。 ゴアな身体損壊描写はいいのだが、「(善良な)私たちvs(邪悪な)アイツら」の単純な対立の構図 (だからアイツらには何をしても良い)、何のてらいもない暴力礼賛には、正直言って引く。 トランプとその支持者には受けるのかもしれないが... |
30 | AKIRA | ★★★★★ | 1988年製作のアニメの4Kリマスター版。言わずと知れた大友克洋コミック原作、本人監督のアニメーション映画。 その後の日本アニメの方向性を決定づけた、30年後の今こそ見るべき傑作。社会のデジタル化が進んでないとか、 そのくせビル群が未来的過ぎとかの差はあるが、不穏な世相の描写はこの現実と違うようでいて相通じるものがあり、 オリンピックを控えてざわつくもう一つの2019年東京の予言めいたリアルに身震いする。これはIMAXで観るべきだった。 |
29 | ANNA アナ ANNA |
★★★ | リュック・ベッソンが監督製作脚本を手がけ、スーパーモデル出身のサッシャ・ルスを主人公にしたアクション。 KGBに育成された凄腕女暗殺者がCIAとの暗闘の中で両陣営に操られながらも一条見える自由への道を探る。 長身でプロポーション抜群の美女が演じる血塗れアクションは華々しく映える。 時間を遡り謀略の裏側を描くどんでん返しの多用は好き嫌いあるかな。 |
28 | デッド・ドント・ダイ The Dead Don’t Die |
★★★★ | ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画。「プラン9・フロム・アフタースペース」を作り直した? 主人公たちが台本や筋書の話を始めたり、日本刀振り回すエルフっぽい奇矯な人物が唐突に現れたUFOに乗って飛んで行ったりと、 やりたい放題のデタラメさ。でもユルいテンポと妙なセンスはオシャレとさえ感じさせる、バカ映画とは言い切れないバカ映画。 してやられた。 |
27 | ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn |
★★★ | ジョーカーの添え物でしかなかったハーレイが自覚し自立する。彼女は運動神経抜群だが、なんといっても弱い。 それでも表社会・裏社会で男に抑えつけられてきた女たちと連帯し、トリッキーなアクションでロクでもない男どもに 鉄槌を喰らわす闘いは爽快。しかし邦題も原題も長い! |
26 | キュアード The Cured |
★★★ | ゾンビ化ウィルスパンデミック終息後の世界を描くとあって目下のコロナとの闘いを思わせるかと思いきや、 舞台となるアイルランドのIRAを連想させるテロの話。迫害される回復者(明らかに紛争終結後の元武装組織メンバーのアナロジー)の 不満と怒りを巧みにまとめ方向づける権力志向の人物はまさにテロ組織再編を目論む幹部。 回復者同盟が過激化したら感染者収容施設が最重要ターゲットなのは明白なのに治安部隊は気を抜きすぎ。 |
25 | プラン9・フロム・アウタースペース Plan 9 from Outer Space |
★ | デジタル処理による総天然色版。エド・ウッド監督脚本製作の噂に違わぬ「史上最低映画」に敬意を込めての★1評価。 ストーリーや特撮はもちろん、何かの使い回しそのままなのが丸わかりの宇宙人衣装や宇宙船設備、 聞くほどに頭の中に?が増える太陽爆弾の説明、ピントはずれで底の浅い文明批評っぽいメッセージなど、 どこを取ってもダメダメでスキだらけなのが愛らしい。が、やっぱり単純にクズとしか言いようのない作品。 |
24 | レ・ミゼラブル Les Misérables |
★★★★ | 観客への問いかけが重い。ことの始まりは少年イッサの愚かな行為で、彼はある意味真っ当な報いを受ける。 その決着の為に、黒人社会の顔役、ムスリム指導者、警察らが利害の対立を抑えて妥協点を得る経緯は経験に裏付けられた知恵だ。 しかしパリ郊外の移民や貧困層が入り混じる街にたまる不満の根は、そういう大人たちの理と力を超え、 手のつけられない暴動として噴出してしまう。それはイッサら子どもたちの逆恨みのようでいて、 不条理な現状に適応してしまった大人たちへのシンプルな怒りなのだろう。 主人公の警官がイッサに銃を向け撃つか撃たないか迷うラストシーンの両者の表情に揺さぶられる。 |
23 | ムルゲ 王朝の怪物 物怪 |
★★★ | 中世韓国の王宮を舞台とした、陰謀と怪物に立ち向かう武人の物語。 怪物と疫病の噂で民心を操り王を追い落とそうとする重臣が実に賢しく強く悪い。 キャラクター設定やストーリーが王道ど真ん中で軽やかで小気味良い。こういうのはさすが韓国映画。 |
22 | 仮面病棟 | ★★★ | ピエロマスクの凶漢に封鎖された病院から脱出しようとする臨時の当直医たちが棟内を探るうちに、 病院に隠された秘密と犯人の真の目的が見えてくる。リアル脱出ゲームかと思ってたら密室ADVゲーム。 ピエロの男は凶悪ではないことが早々に透けるし、真犯人たるあの人物もはじめから結構怪しい、 ということで緊迫感はあまりなくシンプルに謎解きを楽しむ作品。 |
21 | エスケープ・ルーム Escape Room |
★★★ | 失敗即死亡の仕掛けだらけの部屋からの脱出はまさにリアル脱出ゲーム。どの部屋も生きて出られる気がしない。 SCRAPでは勿論こんなの作れない。リスクとかコストとかどうでも良いレベルになっただけでなくモラルもどうでも良くなった 金持ちの道楽だが、配下のデザイナーたちはどんな気持ちでこんな細部まで凝った狂った部屋を作ってるのやら。 |
20 | スケアリーストーリーズ 怖い本 Scary Stories to Tell in the Dark |
★★★ | デル・トロ監督らしい物語と語り手にまつわるホラーだけど無難にまとまりすぎかな。 もっと不協和音とか耽美性とかが欲しい。「IT」に似てるのもちょっとね。 |
19 | 初恋 | ★★★★ | 不幸な生い立ちの不幸なボクサーが、ヤクザに売られヤク中の売春婦にされた不幸な娘を偶然助けたことから始まる暴力の連鎖。 三池監督真骨頂の首や腕が飛ぶ流血描写にはさまる稚気あふれるギャグ、逃げる主人公ふたりの恋愛の兆し、 そして全員エッジ効きまくりの登場人物造形が決まっている。 武闘派ヤクザと中国人マフィア共倒れの抗争の一夜の後、希望に向かいもがく主人公たちの日々を描いて終わるのも良いよね。 |
18 | ミッドサマー Midsommar |
★★★ | 根底から異なる死生観・民俗文化の世界が、無防備に足を踏み入れた現代的価値観の主人公たちと観客を 呑み込む不気味さ。終日白夜の太陽が輝き、美しい花々が咲き誇り、白い衣服の住民たちはみな素朴で優しい 楽園にしか見えないスウェーデンの山村の、明るさが過剰で不穏というのは斬新な描き方かな。 こういう諸星大二郎的な異界は日本も含めた世界のそこここに意外と残ってるのかも。 |
17 | 1917 命をかけた伝令 1917 |
★★★ | 全編(疑似)ワンカットで、死体の散乱する前線や敵兵が潜む破壊された市街を走る主人公を途切れることなく映し続け、 あたかも彼に同行しているかの如き臨場感に観ていて酔うほど。 ただし、画面の中心にあるのは使命のために奮闘する主人公ではなく、 数万の命を喰らってもなお飢えを満たすことのない戦場という化物の姿だ。 |
16 | 屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ Der Goldene Handschuh |
★★★ | 1970年代西ドイツに実在した連続殺人者が、場末のバーで酔いどれ、自宅に連れ込んだ老娼婦たちを無計画に殺す日常を描く。 エンドロールで実際のホンカや法廷での写真を流すところも含め「テッド・バンティ」と似ているが、 知的で華のあるバンティとは違い、どこまでも醜悪で愚鈍。それが人間臭い、と言えなくもないが。 多分この人はケーキを三等分できない人なんだろうなぁ。 |
15 | ナイブス・アウト 名探偵と刃の館の秘密 Knives Out |
★★★ | 原作無しとは珍しいクリスティ風ミステリー。 健気だけど嘘をつくと嘔吐してしまう特異体質の看護師に重大な秘密を負わせて名探偵と対峙させるストーリーだが、 そのモヤモヤした構図をどんでん返しで綺麗に落とす手堅い感じがいいね。 |
14 | 続・荒野の用心棒 Django |
★★★ | 1966年公開のマカロニ・ウェスタンを代表する名作のデジタルリマスター版。そういやこのジャンル初めて観たな。 棺桶を引きずって歩く流れ者の姿とか後の様々な作品で引用されるアイコンが印象的で、 主人公ジャンゴもカッコよく、そしてカッコ悪く、往時の人々を引きずり込んだ力を感じる。 今風の眼で見るとモッサリしてるところはあるけどね。 |
13 | 9人の翻訳家 囚われたベストセラー Les traducteurs |
★★★★ | 思わぬ拾い物。二転三転四転する謎が光る。「物語」が好きでその力を信じている人にはことのほか刺さると思う。 一歩引いて見ると、契約してるとはいえ翻訳家たちを囚人のように扱い、 時に銃まで使った暴力で管理する大手出版社があるわけないのだが(多分)。 ダン・ブラウン「インフェルノ」出版時のエピソードがベースだそうだけど、風評被害になってない? |
12 | スキンウォーカー Lifechanger |
★★★ | 他人の姿、記憶、人生を奪い続けずには存在できないことに悩みながらも生きてきた異形の独白。 次第に劣化する身体に追い詰められた先の唐突なラストが奇妙な感じ。 最後がそうなら、それまで無情に命を落としてきた人々の立場は!? |
11 | 前田建設ファンタジー営業部 | ★★★ | 大の大人が極めた専門能力をフルに注ぎ込んで真面目にバカなことをやる、のベストプラクティス。 日本のインフラを支えた物づくりの情熱と技術を感じさせる。でも会社の新たな収益を切り拓くブルーオーシャンではないよなぁ。 いいんだけど。永井豪さんはコレなら出演しても後悔しないだろう。 |
10 | フィードバック Feedback |
★★★ | 自分がパーソナリティを務めるラジオ番組のスタジオを、武装した仮面の二人組にジャックされ、 過去のある出来事の告白を強要される主人公。主人公と彼らの緊迫する駆け引きは二転三転し、 先は見えなくても血腥く悪い方に進むことだけは確実なイヤ展開。こんな異常事態なら外部がすぐ気づくだろうとは思うけど。 最後まで強い気持ちでシラを切り通せば勝ち、という点が、3つ前の「トラフィッカー」と共通してるかな。 |
9 | サイバー・ゴースト・セキュリティ Necrotronic |
★★★ | 内容はアメコミ映画の出来の悪いコピーで、邦題は(おそらく原題も)絶望的にダサい。 だが、そこがいい、というタイプの映画。隅から隅まで絶妙にCに近いB級のオーストラリア作品。 |
8 | Freaks フリークス 能力者たち | ★★★ | 超能力を持つ新人類が多数派現人類に狩り立てられる、といえば「スラン」以来のお馴染みのテーマ。 またはプロフェッサーXのいないX-MENという感じ。主人公の少女は精神操作、父は時間停止、 祖父は透明化と比較的ソフトな力ばかりと思いきや、最後に監禁を脱する母親がスーパーマンばりの超絶物理能力で驚く。 |
7 | トラフィッカー 運び屋の女 Vargur |
★★★ | アイスランド発のクライム・スリラー。 金に困って麻薬の密輸入を企てる兄弟と彼らに雇われ大量の麻薬入りカプセルを呑み込み空港を通過する女。 しかし素人の計画は綻びる。カプセルを吐き出せない女は体調を崩し、官憲と裏社会から追われ、 どこまでも非情な方向へ事態は進む。憂鬱で寒く乾いたトーンが印象的。 |
6 | エクストリーム・ジョブ | ★★★ | 失態続きで解散寸前の麻薬捜査班が張り込みの流れで買い取ったチキン屋が大当たりして、という韓国警察コメディ。 ギャグ仕立てとはいえ彼らが追い込まれる様はなかなか深刻で見ていて辛い程だが、 クライマックスで実は全員が無双の強者でしたってのはどうなの。その身体能力なら序盤のワタワタした失敗しないよね。 麻薬組織もアホ揃いだし。まあ気にしないことにしよう。 |
5 | パラサイト 半地下の家族 | ★★★★ | 街の汚水やゴミが流れ込む低地の貧民街の半地下に暮らす無職の一家が、 策略を凝らし高台の豪邸に住む資産家IT社長一家に家庭教師や使用人として入り込む前半は痛快なコメディ風だが、 豪邸の秘密が現れてからの後半は一分先さえ予測不能の衝撃的展開の連続で呼吸を忘れる。 資産家家族は使用人に対しても丁寧な態度だが「匂い」というキーワードで浮き彫りになる無理解と差別意識が 悲劇の導火線となる。意表を突いたようで社会問題を鋭くえぐり、かなり酷いことが起こるが、 それでも全編を通じて喜劇である描写はカンヌでパルムドールを取るのも納得の出来。素晴らしい。 |
4 | フューリーズ 復讐の女 The Furies |
★★★ | 理由もなくデスゲームに強制参加させられた女学生が、刃物を手に襲い来るおぞましいマスク姿の男たちに立ち向かい、 ゲームの謎に挑む。過激なスラッシャー描写は悪くないが、大掛かりすぎのデスゲームの設定がイマイチで乗り切れない。 運営者は経済で動いているようだが、明らかにコストとリスクに見合わない。 その辺「SAW」は偉大だった。 |
3 | ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル Hevi reissu |
★★★★★ | 控えめに言って最高。 音楽映画として個人的には「ボヘミアン・ラプソディ」を凌駕する。 ヘビメタ好きなら下らないギャグに手を叩いて爆笑し、そして主人公の熱に深く感じ入る傑作。 フィンランドの田舎でくすぶる主人公たちが、夢を諦めきれず後先考えずにボロいバンでスタートした 不道徳でデタラメな道程の末に大事を成し遂げるのは、彼らがメタルの神に愛され卓越した才能を秘めていたからなので、 一般人は決して真似してはいけないが。 |
2 | ポゼッション Possession |
★★★ | 公開40周年記念のリマスター版。前半、イザベル・アジャーニ演じる妻の言動があまりに理不尽で戸惑うが、 アレが姿を見せてからの流血と破壊の惨事にむしろ得心。結局、小さめの邪神の誕生劇ということでいいのかな。 冒頭から最後まで幼い息子のボブが不憫すぎる。 |
1 | テッド・バンティ Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile |
★★★ | 連続殺人者界のスーパースターの逮捕から裁判までの実話を、彼の裏面を知らなかった恋人の視点から描く。 裁判での芝居がかった丁丁発止も史実通りのようだ。ハンサムで知的で一貫して冤罪を主張する、 それでいて危険な香りのするバンティを主役に、あれだけ大々的にメディアショーとして盛り上がったらそりゃファンも湧く。 殺人シーンがほぼ描かれないのも効果的。 |