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映画日記 2021年 (60本) |
見た映画の記録です。2021年分です。上の方ほど新しく観たもの。 評価は ★★★★★ が最高。
【 年度リスト 】 【 ◀ 2022年 】 【 2020年 ▶ 】
No. | タイトル | 評価 | 感想 |
---|---|---|---|
60 | ただ悪より救いたまえ | ★★★ | 今年の掉尾を飾るのは、韓国バイオレンス。引退した殺し屋と彼に兄を殺された残忍なヤクザがタイを舞台に衝突する。 殺し屋の娘をさらったバンコク暗黒街の人身売買組織を巻き込み、無数の死体を積み上げながら過激な市街戦が繰り広げられる。 いや、これはハードだわ。主人公二人は一切の躊躇も溜めもなく殺しや拷問を行い、それでいて、銃にしろ刃物にしろ素手にしろ一撃一撃が重い。 華やかさや爽快さとは無縁のノワール。もし実在していたら登場人物の誰の視界にも入りたくない。 |
59 | ラスト・ナイト・イン・ソーホー Last Night In SOHO |
★★★ | 60年代の音楽やファッションを愛する服飾デザイナー志望の田舎娘エリーが、同じ下宿先に当時住んでいた歌手志望の娘サンディの幻影を見るようになる。 エリーは華やかな世界に飛び込むサンディのスタイルを真似ていくのだが、 古き良きロンドンのきらびやかさの裏にあるおぞましい(だけどありふれた)闇がサンディを呑み込み、現代のエリーもその亡霊たちに取り込まれていく。 60年代の名曲に彩られたよくできたホラー。何人かの人には最初に名前をちゃんと聞いておくべきだったね。 |
58 | マトリックス レザレクションズ The Matrix Resurrections |
★★★ | 『マトリックス』トリロジー完結から18年も経ったのか。 誰かのレビューで「同窓会みたい」というようなことが書いてあったが、まさにその通りで、 歳をとった登場人物たちとの久しぶりの再会を喜び、昔話を楽しむといった趣き。 過去作を観てない人はお呼びじゃない。本作中では旧3部作はキアヌ演じる主人公が昔開発して大ヒットしたゲームということになっていて、 あの「バレット・タイム」が画期的だったんだ、みたいなメタなセリフは、まあ面白いんだけど。 |
57 | ドント・ルック・アップ Don’t Look Up |
★★★ | Netflixが製作しただけあって必要以上に豪勢で、中年太り科学者のデカプリオやトランプっぽい女性大統領のメリル・ストリープが楽しそうに演じている。 人類滅亡を引き起こす彗星を発見した科学者の必死の警告が、メディアでは芸能人のゴシップと同列に扱われ、 政治家は支持率稼ぎのネタにし、政府の陰謀だと受け入れない人たちもあふれ、人類が力を合わせれば可能なはずの有効な対策が手遅れになっていく。 温暖化などに対する人々の分断や現実軽視を風刺する作品だが、我々はここまで愚かでないと信じたい。 最後のあの旅は科学技術的に浮きすぎていて余分な要素だと思う。 |
56 | ベイビーわるきゅーれ | ★★★ | 同じ阪元裕吾監督の『ある用務員』(下のNo.5)で女子高生の殺し屋コンビを演じてキレ味鋭いアクションを見せた、 高石あかりと伊澤彩織が同じくコンビの殺し屋役で主演。 高校卒業を機に表の仕事を探すように組織から指示された二人だが、社会不適合者の陰キャなのでうまくいかず、悩みながらもダラダラ過ごしている。 そのギャルっぽくユルい日常と、ヤクザとの凄絶な殺し合いがボーダレスにつながる感じがよい。 特に現役スタントウーマンの伊澤の体さばきはとんでもなくキレキレで、ラストのバトルだけでも観る価値はある。この監督と主演二人は要チェックだね。 |
55 | ダ・ヴィンチは誰に微笑む The Savior for Sale |
★★★ | けた外れの大金が動き世界中の有象無象が群がる美術マーケットの怪しさを暴くドキュメンタリー。 民家の壁に飾られていた安価な1枚の絵が、レオナルド・ダ・ヴィンチの失われていた「サルバドール・ムンディ」と鑑定されたことから、 転売目的や手数料目当ての美術商や仲介人が様々な手段で値を吊り上げていく。 やがて、中東の王族がオークションで4億ドルで落札したその絵は、所在不明となる。 絵の価値というより価格そのものが欲望を引き寄せる生臭さにあてられる。 |
54 | ベッキー Becky |
★★★ | 隠した鍵を手に入れるためにある家庭に押し入った凶悪なネオナチ脱獄囚4人。 彼らに父親を殺された13歳の少女が怒りにかられて反撃する。 地の利があり、襲撃者たちの内輪モメもあるとはいえ、何の戦闘訓練も受けてない少女が森に潜み、罠を張り、忍び寄り、 容赦ない攻撃で一人ひとり殺していくのは非現実的。 しかし、主演のルル・ウィルソンが初期『ランボー』のスタローン並の目の座り方でまるで違和感がない。 覚醒してしまった彼女は、どこかの組織にスカウトされそうだ。 |
53 | キラー・ジーンズ Slaxx |
★★★ | アパレルブランドが新商品として開発したジーンズが動き出し、キャンペーンを準備する店員たちや、 宣伝のために呼ばれたインフルエンサーを次々と襲い、血祭りにあげるスプラッター。 ここまで純粋にB級なホラーもなかなかなくて、そのせいか緊張感なくゆったりとした気分で観られる。 人喰いジーンズがボリウッド映画音楽に乗って踊るシーンは笑う。 とはいえ、生産地の労働者を使い捨てにし店員をやりがい搾取する口だけエシカルな企業の行状、 消費をあおるインフルエンサーとそれに踊らされる消費者の愚かさへの皮肉は一本芯が通っているような。 SDGsホラーと呼んでみよう。 |
52 | アンテベラム Antebellum |
★★★ | 『ゲット・アウト』『アス』 のプロデューサーが製作者に名を連ねる、現代でも根深く残る黒人差別をモチーフとするスリラー。 南北戦争時代の南軍兵士が綿花プランテーションで黒人奴隷をこき使い、些細なことで暴力をふるう序盤には いくつか違和感があって、それに気づくと作り手のミスリードを察することができるのだが、多分そこまで含めて所期の仕掛けだろう。 社会的に重たいテーマを重たいままでエンターテインメントの題材として処理するのは最近の流行だけど、 本作は人種対立をあおり過ぎではないかな。BLM運動はまだまだ続きそうだね。 |
51 | マリグナント 狂暴な悪夢 Malignant |
★★★ | なんか懐かしい感じの王道ど真ん中のホラー。 ガブリエルの正体と来歴や、それが明かされていく過程はなかなか面白くて、J・ワン監督の職人芸が冴える。 最初の殺人はもっと超自然っぽい感じじゃなかったっけとか、留置所と警察署内の虐殺は映画的にハデだけど目的が不明(解放されて高揚してた?)とかの ゴチャっとしたところも、むしろ味。 あの人物は責任とって死刑か終身刑にならざるをえなさそうだ。 |
50 | スリープレス・ビューティ 戦慄の美女監禁実験 Sleepless Beauty |
★★★ | 観客を不快にさせることに特化した、『SAW』の系譜に連なるロシア作品で、その試みは成功している。 正体も目的も不明な集団が若い女性を監禁して何日にもわたり陰湿な拷問を加える。 性的でも重傷を負わせるものでもないが、眠ることを禁止し精神に過酷な負荷を与え続け、それがエスカレートしていく様は、胸糞悪い、としか言いようがない。 そして目的がわかったときも、その理不尽さに胸糞悪さはいや増すばかり。 しかし、このやり方はコストや所要時間に対して、成功率は低いし事後に真相にたどり着かれるリスクが高すぎる。プロ雇うほうが確実では。 |
49 | プリズナーズ・オブ・ゴーストランド Prisoners Of The Ghostland |
★ | やたら低評価なのを分かっててあえて観に行った僕も悪いのだが、これはヒドい。売れないアングラ劇団の自己陶酔だけの演劇を見せられている感じ。 デタラメ日本も描き方次第なのにセンスもテンポも最悪で、これが世界でウケると思ったとしたら園子温監督はどうかしているか、何かの力に逆らえなかったか。 こんな映画にフクシマを織り込んでイキっているのも痛々しい。 これなら、このサイトの下(No.26)にある『アフリカン・カンフー・ナチス』の方が遥かにマシ。 |
48 | 整形水 | ★★★ | 韓国のホラーアニメ。自分の醜い容姿に悩む主人公が、顔や肉体を自在に成形できる「整形水」を手に入れ、誰もが振り返る美女になったことから事態が暴走していく。 美容整形が盛んな韓国ならではの物語かもしれないが、美醜イコール勝ち負けで、勝者は敗者を踏みつけ敗者は勝者を妬み呪う価値観のあさましさがあぶりだされる。 主人公含め登場人物はクズばかりだが、最後のあの人は別格の邪悪。「整形水」は日本だと笑ゥせぇるすまん喪黒福造が取り扱ってるな、きっと。 |
47 | デューン 砂の惑星 Dune |
★★★ | フランク・ハーバードの原作のだいたい半分、ポール・アトレイデが砂漠の民フレメンに合流するまでを映画化。 SF的ビジュアルや音響は圧倒的、西洋の中世史劇を思わせるような重厚な作りで上映時間2時間半を感じさせない隙の無い出来なのだが。 宗教的・哲学的な世界観とか戦闘スタイルを制限するテクノロジーの背景がほとんど説明されないので、原作読んでない人に「なんかすごかった」以上のものが伝わるのかどうか。 説明しすぎは興を削ぐにしても。本作が商業的にコケると後編が作られないかもしれないし心配だなぁ。 |
46 | キャンディマン Candyman |
★★★ | クライブ・バーカー 『血の本』収録の「禁じられた場所」を1992年に映画化、続編も作られた作品のリブートで、前シリーズの続編にあたる。 かつてスラムだったシカゴの高級住宅地で、新進気鋭の画家が、地元民が忘却に埋めた禁断の過去を題材にしたことから、 その主キャンディマンが彼を呼び出した人々を惨殺しながら次第に復活してくる。 劇中では語られるもののそれほど焦点があたっているわけではない、キャンディマンの出自たる黒人に対する迫害の歴史が、 エンドロールの影絵劇ではやたら強調されてて、そんな話だったかなと温度差を感じるのは私の人権感性が低いからかも。 |
45 | クライモリ Wrong Turn |
★★★ | アパラチア山中でハイキングを楽しむ6人の若者が、森に潜む何者かに襲われるスラッシャー。 同タイトルのシリーズのリブートで、ケッチャム「オフ・シーズン」みたいな異常者とか食人一家の恐怖を想像してたら全然違っていて、 長年隠れてきた異質なコミュニティとの接触だとは。 でも、衛星とか航空機からは丸見えだろうから、地元の町とはそこそこ摩擦があったことを考えると存続してたのは無理がありそう。 一人の都会的な若い娘が強靭な戦士になるまでの物語、の一面も。 |
44 | 殺人鬼から逃げる夜 | ★★★ | 連続快楽殺人犯が、犯行を目撃した耳の聞こえない主人公を追い詰める韓国スリラー。 気丈で家族思いの主人公パートの無音の世界の描き方が巧い。 一見好青年の殺人鬼(邪悪な星野源の雰囲気)が、言葉巧みに周囲の人々をたぶらかす傍で、 同じく耳の聞こえない母親と主人公が手話で語り合う、同じ場で次元の異なる会話がすれ違う描写や、 迷路のような坂道だらけの古い街路を全速力で走って逃げて追う様は面白い。 堂々と警察の前に姿をさらしたりと自分を過信する殺人鬼だが、これだけケチがついても撤退しないのはいかがなものか。 テッド・バンティなら逃げてるな。 |
43 | モンタナの目撃者 Those Who Wish Me Dead |
★★★★ | アンジェリーナ・ジョリー演じる森林消防士が、殺し屋に追われる少年を守るため大規模森林火災の中で戦う物語。 展開も結末も想像通りなのだが、要素を必要最小限に絞り込み、それらを一分の隙なく組み上げる「手堅い」を超える秀逸さ。 10歳前後の少年が目の前で父親を殺され、それでも父親に託されたものを守るため、涙をこらえて見知らぬ森を逃げる健気さに泣く。 少年を守る主人公や保安官が、どんな苦境でも正しく行動しようとする姿、 敵である殺し屋コンビが組織のサポート不足に苦しみながらもある意味誠実にミッションに取り組む姿にそれぞれのプロとしての矜持を感じる。 妊婦なのに殺し屋相手に対等にわたりあう保安官の妻が最強かも。 |
42 | アナザーラウンド Druk |
★★★★ | ここにSFでもホラーでもアクションでもミステリでもサスペンスでもない作品が並ぶことは少ないのだが、このデンマーク映画はやたら沁みる。 血中アルコール濃度0.05%を常時維持すれば活力あふれ幸せになるというある哲学者の主張を実験する、人生に疲れた高校教師4人。 はじめは酒の力を借りた前向きさで生徒たちや家族との関係を改善し、生活の充実を感じる彼らだが、その行先は語るまでもない。 でも、全てが破綻するわけではなくて、大切なものを失うが得るものもあり、変化を受け入れ未来に向かう実に芳醇な人生賛歌だ。 高校生から飲酒可能で、酔っ払いに寛容なデンマーク社会ならではの物語だけど、飲酒をたしなむ中年以上は感情を揺さぶられること必至。 |
41 | レミニセンス Reminiscence |
★★★ | ヒュー・ジャックマン演じる記憶可視化装置オペレーターのニックと短いが深い恋愛関係となった女性メイが突然姿を消した。 ニックが自分も含む人々の記憶を探りメイの行方を追ううちに彼女の裏の顔が見えてくる。 水没しかけた世界で記憶に潜り記憶に溺れるサスペンスは、世界設定とか(水没する都市の描写は見事)、 記憶可視化装置などの道具立てはいい感じなのだが、どうにもニックの行動原理が執着的すぎるような。 海面急上昇による洪水で世界が混乱した時や軍役時代に何かトラウマを抱える事情はあっただろうから、 それを想像して補足しながら観れば納得できなくもない。 |
40 | オールド OLD | ★★★ | M・ナイト・シャマラン監督らしいスリラー。なぜか急速に成長・老化が進行するビーチに閉じ込められた家族たちの恐怖を描く。 1日が50年に相当するそこからの脱出の試みが一つ一つ潰され、そのたびに誰かが命を落とし、 かといって手をこまねいていると老衰し動けなくなる閉鎖環境はなかなかの地獄。 この異常現象の理屈とか、彼らをビーチに送り込み遠くから観察する者たちの目的とか基盤となる設定の説得力は薄弱なのだが、 その枠組みの中にギッチリと詰め込まれた展開の濃さとのギャップがシャマラン監督ならでは。 ちなみに主人公の家族の父親はアクチュアリー。 |
39 | 鳩の撃退法 | ★★★ | 特徴的なタイトルの作品を続けて。観終わっても、ああタイトルはそういう意味だったか、とはならないのはイマイチかな。 表舞台から消え北陸の地方都市でくすぶる元直木賞作家が巻き込まれた一家失踪事件と偽札事件。 一見無関係な事件の謎が、(映画内の)現実と、事件をモチーフに主人公が書き進める小説の場面として描かれる。 現実とフィクションが交錯し、両方の主人公である作家の視点が混在することで、観客を惑わせる。 事件の真相も分かるようで、主人公の創作だったり観客の想像に任せたりの部分が大きく、スッキリしないのがイヤな人には向かないかも。 |
38 | 元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件 Horizon Line |
★★★ | ヘンな邦題は割と評価。冒頭のリゾートビーチでの洒落た恋愛模様で主人公たちを紹介したあと、 彼らが乗ったセスナ機の機長が急死しGPSや通信機が壊れて絶体絶命のサバイバルに間髪を容れず突入するコンパクトな作りが 気が利いている。ひたすら手に汗を握る緊迫感は半端ない。 ただ、連続する確実に詰んでる局面から、極度にハイリスクな手段を見つけて実行し生き延びる主人公たちは 軍の特殊部隊出身か何かとしか思えない。普通の人には絶対あんなことはできず、すぐ死んじゃうよ。 |
37 | フリー・ガイ Free Guy |
★★★★ | ライアン・レイノルズの能天気な笑顔のポスターと、ゲームのモブキャラが意思を持ったことから騒動が始まって... という陳腐そうなストーリーに、観る前は正直ナメてたのだが、どうしてどうして。 とりわけ、自由意志を得たものの自分が実在しないことを知り、苦悩し、それを乗り越えて 自分の世界を救うために駆けるガイの姿に、思いのほか胸を打たれた。 盗用されたゲームを苗床とし、不遇のゲーム開発者の想いが種子となり生まれる奇跡や、 自分の存在基盤がなんだろうと誰かを助けたいという気持ちはリアルなのだという悟りとか、結構ウエットだけどね。 |
36 | サマーフィルムにのって | ★★★ | キラキラ学園恋愛映画を楽しそうに製作する他の映画部員たちと合わずクサってた時代劇マニアの高校生女子が、 自分の構想する時代劇の主役にピッタリの青年との出会いをきっかけに、友人たちを巻き込み映画の撮影に突き進むのだが、 結局、キラキラ学園恋愛映画になっとるやないかい。 それに、未来からのタイムトラベラーが出てくる時点でアレだが、素性不詳な人物が普通に高校構内をうろうろできたり、 最後の体育館の剣劇の経緯が弾け過ぎとかのツッコミどころはファンタジーとして気にすまい。 でも、そういう要素を含めて、ハツラツとした青春の躍動感が爽やかでなんか良い。 |
35 | ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結 The Suicide Squad |
★★★ | やたらに殺しまくるグロいシーンも下品悪趣味なギャグもなぜか洗練されてる、 のはトロマ出身のジェームス・ガン監督ならではか。 ハーレイ・クインを除くとDCの中でもマイナーなヴィランばかりだが、 (冒頭思わせぶりに登場して即全滅するチームはともかく)メンバーそれぞれに焦点をキチンとあてていて意外と丁寧。 で、要所要所でストーリーが思わぬ方向に転がり、最後にはどう見ても『宇宙人東京に現わる』の巨大宇宙人が町を破壊する 怪獣映画になるとか、色々と枠を超えてくるのが面白い。この感じなら続編も期待できそう。 |
34 | ワイルド・スピード ジェットブレイク Fast & Furious 9 |
★★★ | 良くも悪くもワイスピ。男子中学生属性を持つ観客向けパラメータに全振りで、 そういう客をとことん喜ばせようというサービス精神は素晴らしいが、それ以外の要素は無いに等しい(褒めてる)。 あんな改造車で衛星軌道まで行ったり、強力電磁石を駆使したカーバトルで世界征服の陰謀を叩き潰したりのスケールアップは 天井知らずで、次作は巨大ロボでも登場しそうな勢い。 |
33 | ジャッリカットゥ 牛の怒り Jallikattu |
★★★ | 私は何を見せられているのか。カオスの極みでプリミティブなパワーを放つインド映画、と言ってしまえば聞こえは良いが、 暑苦しいオッサンの大群が村や森を奇声を上げながら走り回り胸倉つかみ合うだけの話に呆然。 暴走する水牛を追いまわすのだが、計画とか協調とか皆無で、逆に向かって来られたら逃げ惑うだけだし、 密集した大混乱のなかで銃ふりまわしたりするので危なくてしょうがない。 日本人には登場人物の顔つきや服装の見分けがつきづらいのも混沌を感じる要因になっているかも。 それでも、むき出しの欲望を叩きつけあう得体のしれない熱量が感じられて面白いのは面白い。 |
32 | サイコ・ゴアマン Psyco Goreman |
★★★★ | 日曜朝の特撮ヒーロー番組に出てきそうな造形の宇宙人・怪人が束になって出てくる作品。 チープで下品で、全編、血と内臓と肉片が飛び散るロクでもない話なのだが、なんだろう、この面白さ。 封印されていた残虐な宇宙魔人を偶然解放し、なんでも指示できる宝石を手にした8歳の女児ミミの悪ガキぶりと、 どれだけ凶悪に威圧しても受け流されて困惑する魔人がおかしい。 強大な破壊の力を洒落にならないイタズラに使い、誰に対しても徹頭徹尾ブレないミミの言動や、 復活した魔人を追う宇宙の正邪両陣営のうさん臭さ、そこから繰り出される不道徳きわまりないギャグがキレてる。 チープで下品でクズで結局それだけの作品はたくさん観てるが、たまにこういうのがあるからなぁ。 |
31 | 最後にして最初の人類 Last and First Men |
★★★ | ステープルドンの壮大な原作を、 ティルダ・スウィントンの朗読と旧ユーゴスラビアの記念碑《スポメニック》群の モノクロ映像、 監督ヨハン・ヨハンソンの音楽で映画化。画面に人物は誰も出てこなければ動きらしい動きもなく 上映時間のうち三分の二くらいは無言という型破りな作品で、原作に打たれた経験があったからこそ 睡眠不足での鑑賞でも落ちずにいられたが、原作を知らない人だったら多分寝てしまう。 スポメニックの無機質な威容は物語の精神によく合っていて、映画館からの帰りに思わずスポメニックの本 (『スポメニック』グラフィック社)を買ってしまった。 |
30 | プロミシング・ヤング・ウーマン Promising Young Woman |
★★★ | いまだに「前途ある青年のちょっとした脱線」と「わざわざ危ない場所に行ったバカな女の自業自得」の 構図で語られがちな事件で親友を失った主人公キャシーの復讐と新しい恋と復讐と復讐の物語。 事件は裁かれることなく無かったことにされ、自ら命を絶った親友は忘れられ、 一方で加害者はのうのうと幸せな生活を続けている。そんな過去に10年もとらわれ、こじれている彼女に対して 「前を見て生きろ」とは徳を積んだ高僧でもないと言えない。 キャシーはとてもクレバーなので、自分が積み上げている行為の無意味さは分かっていて、 その上で希望と絶望の間を揺れ動く様は時にポップだが胸に痛い。 加害者を(多分、昔の事件も)そそのかしたジョーが一番の悪かも。 |
29 | キャラクター | ★★★★ | 日本のサイコスリラー映画としては出色ではないかな。 原案は漫画原作者の長崎尚志で、よくできた漫画を余すところなく実写化したような、って結局漫画的なのだが、 グロテスクさの塩梅や衝撃的な出来事をちょうどよいタイミングで持ってくる話運びは流石。 ラストのじんわりとした不穏さも巧くて、脚本このままでハリウッドリメイクされても違和感なし。 連続殺人鬼の虚ろな狂気、それでいてどこか純粋さを感じさせる映画初出演のFukaseの演技が良い。 彼や主人公の漫画家菅田将暉が狂気的な役なのに対し、小栗旬演じる刑事が理性と善性の要として物語を引き締めている。 劇中の漫画は江野スミ。後で調べたら『亜獣譚』の作者。道理で血みどろでも美麗なわけだ。 |
28 | 夏への扉 — キミのいる未来へ — | ★★★★ | ハインラインの古典SFを日本を舞台に映画化。山崎賢人主演だし副題はこんなだし、というキャッチーさに あまり期待していなかったのだが、いや、正直面白かった。 タイムループにより、不可解な逆転劇の謎が別の角度から解き明かされて(または作られて) 分かっているハッピーエンドに向かう良い意味での予定調和の安心感。 『Arc』とは逆の分かりやすい演出が思いのほかハマっている。なにより猫のピートの演技が素晴らしい。 まあ、2回目の睡眠の必要性は疑問だし、 個人税理士が担当もしてない企業の税務不正を暴くことは無理だろうし(国税を動かすツテでもある?)、 生命保険会社が冷凍睡眠を保険商品として事業化しているのにはどうしても違和感はあるし、なのだが。 |
27 | Arc | ★★★ | 原作者ケン・リュウ本人がエグゼクティブプロデューサーに名を連ねる短編「円弧」の映画化。 人類の文明・精神の歴史的大変革の先頭に立つ芳根京子演じる主人公の生き様を、 普通のSF的な見せ場どころか感情的な盛り上がりを伴うイベントの描写をあえて抑制し、変革の現場から引いたところで描く。 前半は本人や遺族の希望で遺体をオブジェ化するプラスティネーション、後半は革命的医療技術による不老不死の実現と、 生と死の関係をやや冒涜的に扱うことで生じる緊迫感が効果的。 実に地味なので商業的な成功は難しそうだが、ケン・リュウの雰囲気は出てるかな。 |
26 | アフリカン・カンフー・ナチス African Kung-Fu Nazis |
★★ | 第二次世界大戦を密かに生き延びたヒトラーと東条英機がアフリカに渡り、 人々を洗脳する血染めの党旗(旭日旗と鉤十字の合体)の魔力と空手の武力でガーナを支配するが、 カンフーを学んだ青年が達人たちの修行を経て立ち向かう、という、アホにもほどがある物語に、 各方面から激怒されそうな不適切なネタを惜しげもなくブッ込んだ怪作。 カンフーアクションは意外とまともだが、それ以外は、ヒトラーと東条がただの下衆くて小汚いオッサンだとか(そもそも似てもいない)、 どこをどう切ってもチープでグダグダで、学生の自主製作でももっとちゃんとしている。 ヒトラー役も兼ねる監督は日本在住のドイツ人だそうで、ひょっとすると全て計算ずくかも。だとすると相当の曲者。 |
25 | Mr.ノーバディ Nobody |
★★★ | 単調な日々を繰り返すサエない中年男がある時キレて大暴れする、という話だが、 割と前半から只者でない振る舞いで、暴れ出すきっかけもどちらかというと 自分から誘いに行ってるし、かつての彼を使いこなせる政府機関があったから良かったものの、 そうでなければ殺人鬼か武闘派犯罪組織のボスかのサイコめいた極悪さ。 過去を捨てて密かに平凡な暮らしをしていたが... というより、普通の暮らしってどんなのか試してみてたけどもういいかな、 という感じで、何の因果かこんな化け物にカラまれたロシアンマフィアはえらい災難。 |
24 | 地獄の花園 | ★★★ | OLたちが、タイマンで闘い、熾烈な抗争で覇権を競うという、バカリズム脚本のバカ映画。 バトルシーンはよく見るとアクションへなちょこなのに、不思議とカッコよいし、 ライバル会社のボスOLを遠藤憲一が演じたりの突き抜けたバカぶりは面白い。 しかし、制服を着たOLが電話応対やコピーとりをしているとか、ラストのラストのバトルの決着が あんなことでひっくり返されるとか、今時どうなのというジェンダー観。 才人バカリズムなので、あえてそうしてるんだろうけど、何か落ち着かない感じ。 ともあれ、ヤンキー漫画の頂点は「クローズ」らしい。 |
23 | 不思議惑星キン・ザ・ザ Кин-дза-дза! |
★★★★ | 「クー! キン・ザ・ザ」の元である1986年公開のソビエト(ジョージア)映画。 幾分スマートになっている「クー!」と合わせて観ると本作の良さがより際立つように思える。 砂漠の中のボロ小屋のような建物、ガラクタのような機械、見た目小汚いオッサンのプリュク人に、当初高慢な態度で 振る舞う主人公が、プリュク人の同行者に対する責任を果たすべく、労苦を負い、危険を冒し、ついには地球に帰還する チャンスを捨てる様がアツい。ヘンテコな珍道中はやはり可笑しいのだが。 いずれにせよ、これは時代や国・制度の違いを越える傑作。 |
22 | クー! キン・ザ・ザ Ку! Кин-дза-дза |
★★★ | あの「不思議惑星キン・ザ・ザ」の監督自身がリメイクしたアニメ。 唐突に訳の分からない異星にワープしたのに、電車が止まった程度の困惑の軽さと適応の早さ、というかユルさの主人公二人。 砂漠の惑星は、ユルいながらもディストピアでロシア社会のカリカチュア。 地球に帰る方法を探して奇妙な異星社会を行き来する軽妙な旅路の描写に、ユルさ、というのは諦念の上にあるのだ、と気付かされる。 |
21 | パーム・スプリングス Palm Springs |
★★★★ | サンダンス映画祭で評価高かったのも分かるSF者から見ても良くできたタイムループ・ラブコメディ (量子力学云々は、まあアレだが)。 砂漠のリゾート地での結婚式の一日という非日常の舞台、新婦の友人の恋人ナイルズと、 新婦の姉で家族との関係が微妙なサラという余所者感のある二人を主人公にする設定が絶妙。 恐らくは万日単位のナイルズの孤独なループに巻き込まれたサラは災難だが、ループの中でこそ解消できた悩みもあった。 このラストだとあの人は彼らを再度引き込めるな(その時は別人格だろうけど)。 |
20 | ザ・バッド・ガイズ | ★★ | 囚人たちに超法規的で危険な犯罪捜査を任せる「ワイルド7」か「スーサイド・スクワッド」の韓国版で、ドラマの映画版かな。 マ・ドンソクが鉄拳で悪党をぶちのめすのはいいのだが、いろいろ雑な感じがなぁ。 韓国の裏社会を乗っ取る極悪な日本ヤクザや、それを豊臣秀吉に例えるところとか、国を売り私腹を肥やす警察幹部と、 その企みを潰した後に公僕の何たるかを諭す現場の捜査官とか、IQ低めの短絡的なウケ狙いが目立つ。 |
19 | 剣客 | ★★★ | 何のケレンも無いド直球の韓国時代物剣劇。歴史の歯車が人々をすり潰す最中、 かつて王に仕え今は山に隠棲する男が拐われた娘を救う為に剣を取る。 強大な権力に独り立ち向かうアクションはシャープで引き込まれる。ただ、娘の出自を語り聞かせるシーンや、 清国側のボスとの浅からぬ因縁が唐突かつ断片的に示されるシーンなど、所々ヘンな断線があるのが残念。 |
18 | 騙し絵の牙 | ★★★★ | 伏線を張り巡らせドンデン返しを重ねるコン・ゲームかと思いきや、全然そんなこと無くて、 多少の騙し合いはあるもののかなり真っ当なお仕事映画。でも作りが上手くて観ていて何か心地よい。 需要も供給も先細る文芸出版を新たな形で蘇らせる企みが繰り広げられるわけだが、 本作を作った一翼がKADOKAWAというのも示唆的かな。最後のビジネスモデルはかなり厳しそうだが。 大泉洋や松岡茉優はじめ演者皆ハマり役で気に入った。 |
17 | JUNK HEAD | ★★★★★ | 最初の感想は、とんでもないモノを観た、だ。内装業が本職の素人が独学で、7年をかけて一人で作り上げたストップモーションアニメの特異点。 そんな背景がなくとも世界観、ビジョン、キャラクター造形、時にグロく時にユルく時にエモいストーリーの全てが完璧で評価は変わらないのだが。 これを個人の頭の中から自ら掘り出して具現化するってどれだけの熱量よ。 才能、なんて言葉ではなく狂気という表現こそが相応しい。本当にとんでもないモノを観た。 |
16 | ロード・オブ・カオス Load of Chaos |
★★★ | ノルウェーブラックメタル史の闇である悪魔崇拝がらみの教会放火や殺人事件は知識としては知ってたけど、 こんな感じだったのね。中二的キャラ付けが膨張し先鋭化して引き返せなくなる彼らは純粋だけど間抜けでイタい。 起点は違えど日本赤軍やオウムもこんな風だったのだろう。全ての中心にいながら周囲の暴走に困惑し、 でもそれを口に出せないユーロニモスが段々「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザーさんに見えてくる (こっちが元ネタだけど)。全て実在の人物だが、肝心のヴァーグにだけ連絡取らずに作るとは思い切ったな。 監督は元バソリーのドラマー。 |
15 | スプートニク Спутник | ★★★ | ポスターでは今にも人類滅ぼしそうなエイリアンだが、実際のところ一体だけだし猛獣程度の脅威かな。 どこからどうやって到来したか分からないが、おそらくは生存の為にやむなく寄生したソ連の宇宙飛行士ごと 軍施設に閉じ込められて研究対象にされる姿に、主人公の女医ならずとも悲哀を感じる。凶暴でグロいけど。 でも、その抑制が効いたグロが良い感じ。なかなかの良作。 |
14 | ビバリウム Vivarium | ★★★ | ミントグリーンの同じ形の家がどこまでも広がる無人の住宅地に閉じ込められ、 少年の姿をした何かを育てさせられるカップルを描く不条理ホラー。スッキリした説明の一切ない、 この手の不条理はひさびさだな、と思ったらベルギー・デンマーク・アイルランド合作というので何となく納得。 新旧マーティンとも兵隊蟻的末端だから意図や構図が見えないのであって、 彼ら全体の視点だとこの仕組にした合理性があるのだろう。 |
13 | ブリス Bliss | ★★★ | スランプで描けなくなった画家が逃避して酒とドラッグと奔放なセックスに耽溺していると、 混濁する意識の中に奇怪な幻覚が現れて... というのが中盤までで、サイケなドラッグムービーかと思いきや、 後半、人体を損壊するゴアな描写にスライドして意表をつかれる。人を喰う夜の種族が出てくるとは。 血塗れでカンバスに向かう主人公と、彼女をとらえるカメラワークの荒々しさは結構良い。 |
12 | ガンズ・アキンボ Guns Akimbo |
★★★ | 両手に銃をボルト留めされて、リアル殺人対戦ゲームを強制される、D・ラドクリフ演じる主人公。 パニック状態の口だけオタクからだんだん慣れてタフになり、銃で携帯使いこなしたりできるようになるのが可笑しい。 でもトッププレイヤーの銃弾がまともに当たらないのは主人公補正効きすぎじゃないかな。 テンポや見せ方に加えて、犯罪だろうが死だろうが娯楽として消費するネット社会を戯画化する描写がセンス良い。 |
11 | 藁にもすがる獣たち Beasts Clawling At Straws |
★★★ | 曽根圭介の小説を原作とする韓国ノワール。借金や生活苦で崖っぷちに立たされた男女が一発逆転の大金を得ようと悪事を企む。 それぞれのエピソードが次第につながってゆく中心にある、札束の詰まったヴィトンのボストンバッグは あたかも呪いのアイテムのように彼らを血生臭い惨事に導いていく。どいつもこいつも欲に駆られたろくでなし。 |
10 | ファーストラヴ | ★★★ | 父親殺しの被告役芳根京子の演技が鬼気迫る。少女に対する男性の視線の暴力性。 あからさまな性暴力やDVには至らなくても恐怖が積み重なると人生が歪む。 被告と通じる経験に苦しむ公認心理師(北川景子)を支える夫(窪塚洋介)と、共に事件にかかわる元彼の弁護士(中村倫也)のような そうでない人物を配置して、男性全体に対する告発にはしてないが、それでも観ている自分の裡なる爪を意識してしまう。 堤幸彦監督とは思えないシリアスな心理サスペンス。 |
9 | ノンストップ Okay Madam |
★★★ | 揚げパン屋の妻、PC修理工の夫と小学生の娘の家族がハワイ旅行に向かった飛行機が北朝鮮工作員にハイジャックされる。 実はこの夫婦はそれぞれ秘密があって反撃に転じる、というアクションコメディ。 脇役全員まで含めたキャラクターの立て方、伏線の張り方と回収の仕方、 キレキレのアクションとベタなギャグと人情エピソードのバランスは見事でまるで教科書。 プロの仕事とはいえ銃や爆弾を簡単に機内に持ち込めたり、乗降扉の吹き飛んだ旅客機が普通に飛んでたりの ツッコミどころもむしろ微笑ましく見えてくる不思議。こういうのは韓国映画本当にスゴいよなぁ。 |
8 | スカイ・シャーク Sky Sharks |
★★ | 北極で密かに生き延びたナチスが、空飛ぶサメに騎乗するゾンビ兵軍団で世界を襲う。 僕はこういう映画が好物なのだが、それでもヒドい。田舎の男子中学生が作ったか、というレベルのクズ。 まあ、その辺わかった上でニヤニヤしながら観るのが正しい姿勢かな。 |
7 | 哀愁しんでれら | ★★★ | 宣伝コピーと冒頭の映像からそうなることはわかってたし、そこへ向けて不穏さが積み重なる展開だが、 ラスト10分の飛躍が唐突すぎて戸惑う。ただ観客の不安を次第に高めた最後に足場を崩す一押し、とする効果はある。 色々狂ってるし普通に見たら意味不明なので怒る人は多いだろうが、この実験は個人的には嫌いじゃない。 |
6 | シンクロニック Synchronic |
★★★★ | 松果体に作用するドラッグによるタイムトラベルという、作り方によっては安っぽくなるネタをここまで重厚なドラマにするとは。 科学的な破綻や御都合主義なところも多いし、どこか映画というよりテレビドラマの印象はあるけど、間違いなく良作。 ラストは主人公帰還の可能性を見せつつも石に刻まれた文字の伏線が... |
5 | ある用務員 | ★★★ | 密閉空間でクセの強い殺し屋たちとの多対一のバトルを描きたくて、それを成立させる物語を付け足した、と言う作品。 襲われる教師や生徒の誰も携帯で通報しないとか、そう言うことを気にするのは野暮。 ラスボスの本田(前野朋哉)が凡庸な風体、柔和で軽妙な笑顔と口調にして物凄く悪いのが良いなあ。 |
4 | Swallow スワロウ Swallow |
★★★ | 富豪と結婚し豊かな生活を送るも、精神的には満たされず、主人公は疎外感から異物食にハマる。 ビー玉に始まり画鋲、乾電池、果てはドライバーとエスカレートして身体を傷付けても得られる充実感に止めることができない。 彼女が歪んでいく経過は共感できなくもないが、夫とその両親はいけすかない金持ちとはいえ真っ当で理性的な人たちなので、 嫁がいきなりあんな壊れ方するのは彼らからすれば悪夢でしかない。束縛と過去から解放された彼女はどこへ行く? |
3 | 聖なる犯罪者 Boże Ciało |
★★★ | 「パラサイト」とともに2019年アカデミー賞国際長編映画賞に ノミネートされたポーランド映画。人の内には矛盾することなく聖と邪が混じり合う。 粗暴で短絡的な少年院上がりの若者が、成り行きで聖職者を詐称することになった田舎町で、 住人の反発を受けながらも過去の悲惨な事故による町のトラウマを正そうともする。 逃げればいいのに留まり続ける主人公の本当の心情はわからない。 彼が改心してそうしたわけではないことはラストの血塗れで凶悪な表情でも示されるが、 それでも町のコミュニティにある種の救済をもたらしたことは確か。 |
2 | ミセス・ノイズィ | ★★★ | モチーフは騒音オバサンだけど、自分を棚に上げて隣人を頭おかしいと決めつけてしまう主人公に共感できず、 中盤の視点転回が生きてないような。小説家なのに他者の事情を想像できない主人公はダメだが、 家族の問題に向き合わずわかったような事を言うだけの夫も同罪だし、騒動に火をつけた甥が一番タチが悪い。 コイツ多分反省してないだろうな。 |
1 | 新 感染半島 ファイナル・ステージ | ★★★ | 前作との関連は無いし作風も全く異なる。 災害や悪疫や超自然現象で荒廃し封鎖されたエリアに何かを回収に潜入した主人公が、中で生き延びた無法者たちと衝突する、 という話は世に無数にあるが、そのテンプレートを一歩も踏み外さないのがむしろ良い。 |