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映画日記 2022年 (20本) |
見た映画の記録です。2022年分です。上の方ほど新しく観たもの。 評価は ★★★★★ が最高。
【 年度リスト 】 【 ◀ 2023年 】 【 2021年 ▶ 】
No. | タイトル | 評価 | 感想 |
---|---|---|---|
20 | MAD GOD | ★★ | 『JUNK HEAD』に呼応する異形のストップモーションアニメ。 グロテスク過剰な生物群がうごめく地下の階層を下り続けて何かを求める主人公の果て無き地獄巡り。 しかも、あのストップモーションの巨匠フィル・ティペットが30年の歳月をかけて作り上げたと聞いては観ないわけにはいかないじゃないか。 だけど、これは「自分が作りたいもの」に寄りすぎていて観客のことを全く考えていないような。 いや、そこがいい、という人たちがいるのわかるんだけど、本作に関しては僕は乗れない。 |
19 | Mondays このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない | ★★★★ | クライアントの無茶ぶりに応じるための徹夜も日常で、もともと仕事にタイムループ感がある小さなCMプロダクションが舞台。 そこで本当にタイムループに巻き込まれたことに気づいた社員たちがそこから抜け出すため奮闘する。 忙しさの中で、目の前のこと、自分のことしか見えてなかった主人公だが、 同じ一週間を繰り返し試行錯誤するうちに仕事の向こうにあるものや同僚・上司の想いが分かってくる。 上映時間84分とコンパクトで舞台劇的なコメディ。こういう技ありな小品は良いよね。 |
18 | ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 Jurassic World: Dominion |
★★★ | ジュラシック・シリーズもついに完結。 ジュラシック・パークの主要キャラクターも勢ぞろいと賑やか。 ストーリーは雑だしご都合主義だらけなんだけどド派手な勢いと迫力で押し切り通している、というのはここでは誉め言葉。 新興テック企業のトップの野望が暴走し、本人のコントロールを超えて崩壊する、という構図は今回も同じ。 |
17 | キングダム2 遥かなる大地へ | ★★★ | 「キングダム」の続編で、主人公信の初陣、蛇甘平原での戦いを描く。 合戦シーンの迫力は素晴らしい。将軍や高官を演じるオジさん俳優たちの炯々たる眼光、圧の高い演技も申し分なし。 だけど山崎賢人の信の雰囲気やセリフが妙に軽い。規格外に強すぎたり、組織の上下関係を簡単に飛び越えすぎるもちょっと冷める(それは多分原作がそうなんだけど)。 戦闘中なのに急に熱く語りはじめ、しかもそこで時間が止まったがごとく敵も偉い人も待ってくれる。 そういう演出がテンポを悪くしているように思える。 |
16 | 女神の継承 The Medium / 랑종 |
★★★ | 精霊信仰が根付くタイ東北部を舞台にした、韓国・タイ合作のホラー。 土着の女神に仕える巫女である中年女性が、姪に取り憑いた「何か」に立ち向かう。 現代的で若く美しい姪が次第に周りを巻き込みながら壊れていく様を、巫女を取材に来た撮影班のカメラが追う体裁で、 『エクソシスト』や『ブレア・ウイッチ・プロジェクト』などを意図的に模倣した盛りだくさんお腹一杯な仕掛け。 姪が狂暴かつ予測不能になっているのに、周囲は結構無警戒に放置しているのは東南アジアの風土か。 で、この映画のラストのその後はどうなるんだろう。適当に成仏して消えるんならいいけどそうじゃなければ軍隊出動案件になりそうな。 |
15 | Ⅹ エックス X |
★★★ | 舞台は1970年代アメリカ。調子に乗った都会の若者たちが、訪れた農村で酷い目にあう、というよくあるフォーマットではあるが、 彼らを襲うのが、(予告やレビューで結構明かされているように)超高齢の老夫婦というのが珍しいかな。 それに、若さの勢いで性的にも生き方的にも奔放な主人公たちと、 若いころにあった(続編で語られるであろう)何かがために彼らに嫉妬する老夫婦との対立をイヤな感じで見せる出し方は上手い。 多分、あの二人は血縁関係の気がする。 |
14 | ブラック・フォン The Black Phone |
★★★★ | 連続児童失踪事件が暗い影を落とすアメリカの田舎町で、黒いバンの男にさらわれ地下室に幽閉された少年。 彼は、地下室の壁に据えられたどこにもつながってないはずの黒電話から聞こえる、友人も含む過去の被害者たちの声を頼りに誘拐犯と対峙する。 オカルトの使い方が効果的で、肉体的には弱いけど芯はタフな主人公の行動力と勇気に心打たれる。 映画を見た後に知ったのだが、原作はジョー・ヒルの「黒電話」 (『20世紀の幽霊たち』収録)で、慌てて読み直す。 かなり短めの短編なので、映画化にあたりいくつか改変とか肉付けはされてるけど、原作は損ねてないね。 |
13 | 林檎とポラロイド Μηλα |
★★★ | 突然記憶喪失となる病気が広がった社会。バスの中で発症した男は身分証明を持たず、素性不明のまま同様の患者の収容施設に送られる。 さらに医師から指示される様々な経験を行うことで「新しい自分」を作るプログラムに参加するが、そこで... という、ギリシャ・ポーランド・スロベニア合作作品。 ところどころの主人公の言動に示唆されているあることが露わとなる唐突なラストで、 説明らしい描写もほとんどないので、相当割合の観客が受け止めそこなったまま映画館を出たのでは。 普通なら、もっと回想シーンを入れたり謎解きっぽいことするんだろうけど、これはこれで新鮮な感じ。 |
12 | ザ・バットマン The Batman |
★★★ | またもやのリブート、マット・リーブス監督版バットマンの第1作。 活動開始から約2年とまだ経験浅いブルース・ウェインは、資金力に物を言わせたチート装備も少なく、 リアルといえばリアルなのだが、その分、コスプレ奇人と言われてもいたしかたない。 本作の敵リドラーは、生まれた時から何も与えられず誰からも注意を払われない無名弱者のルサンチマンの化身という点で、 『ジョーカー』を継承している。 彼から見ると、慈善事業に力を入れる富豪のウェイン家も、利権を争う腐敗した市上層部や裏社会の実力者も等しく復讐の対象なのだ。 全体的に鬱屈として暗いが、メリハリが効いた演出で上映時間3時間という長尺があまり気にならないのは評価したい。 |
11 | ポゼッサー Possessor |
★★ | 遠隔操作で脳を乗っ取った第三者の手でターゲットを殺害する技術を用いて暗殺を請け負う組織のトップ工作員タシャ。 彼女は過剰に暴力的な攻撃衝動や、憑依した人物を自殺させて離脱することが難しくなっている不調を隠していた。 新たな依頼のためにある男性を乗っ取るタシャだが、彼の身体から離脱できなくなり、全ては狂い始める。 D・クローネンバーグの息子ブランドン・クローネンバーグの長編第2作で、グロテスクだが美意識過剰気味な人体損壊や狂気の表現とか父親の作風に似たテイストだが、 いかんせん分かりづらい。カルト的人気を博す、ということもなさそう。 |
10 | ゴヤの名画と優しい泥棒 The Duke |
★★★ | 1961年英国で実際に起きた名画盗難事件の奇想天外な真相を映画化。英国らしい反骨とユーモアに溢れた小粋な作品。 困窮する年金生活者のテレビ受信料無料化を訴える活動が空回りする老人と、そんな夫に迷惑している常識人の妻。 国が高額で購入したウェリントン侯爵の肖像画を盗難しそれを使って庶民の受信料を賄おうとするも結局逮捕される主人公の老人は、 裁判の場でも下ネタ交じりの饒舌さで場を沸かせるが次第にその誠実な思いは彼の家族や裁判の空気を動かしていく。 でもやった(とされる)ことはそこそこ悪いし、陪審員はそんなに甘くてはダメな気がする。 |
9 | ゴーストバスターズ アフターライフ Ghostbusters: Afterlife |
★★★ | あの『ゴーストバスターズ』『~2』の続編。旧メンバーの幼い孫娘が、祖父の遺した装備を見つけ、さびれた鉱山に封印された最強のゴースト復活に立ち向かう。 前作を丁寧に踏襲していて、愛らしかったり恐ろしかったりのゴーストたちや、ファミリー層が安心して観られる、ほど良いハラハラドキドキは評価する。 でも『スパイダーマン』『マトリックス』もそうだったけど、往年の有名バンド再結成で中高年のノスタルジーを釣り上げる的な仕掛けはそろそろ食傷気味かな。 |
8 | ブラックボックス 音声分析捜査 Boite Noire |
★★★★ | フライトレコーダーの音声からイスラム過激派のテロとされた旅客機墜落事故。 優秀だが協調性に欠ける航空事故調査局の音声分析官はわずかな不自然さに気づき独自に調査を始めるがその先には深い闇が広がっていた。 これは面白い。真相やら黒幕は実は手垢がついたものだが、音声をメインに据えたサスペンス、 陰謀論すれすれの仮説に基づき一線を越えて独走する主人公の苦闘は見せ方が巧みで緊迫感は半端ない。 地味な作品には違いないが、単館上映なのはもったいない。 あの二人の生死は最後まで明示されないんだけどヤツが最後まで平静なのだから既に命を落としているんだろうなぁ。 |
7 | パイプライン 파이프라인 |
★★★ | 地下の石油パイプラインからの盗油がテーマという目の付け所が面白い。 盗油業界一のパイプ穿孔技術を持つ主人公が、スポンサーを名乗る人物から大規模盗油計画を依頼されるが、 スポンサーの度を越した悪辣さに、様々な事情で集められた実行グループのメンバーとともに裏をかく仕掛けを始める。 悪党同士の騙しあいのサスペンスは安定の出来だが、人命を何とも思わないスポンサーは、 結局、詐欺でだまし取られた大金の融資返済期限が迫り頭に血が上った小悪党でしかないのは弱いかも。 かといって主人公側も騙すプロではないので、強敵すぎてもダメか。 |
6 | プロジェクト:ユリシーズ Tides |
★★★ | 気候変動や環境汚染で居住困難となった地球から一部の人々は脱出し他星系に移住したが、 数世代を経て生殖機能が低下したことから、地球帰還を目指す調査、ユリシーズ計画を実行する。 しかし地球ではわずかな人々が海岸の泥地にコロニーを作り、かろうじて生き延びていた。 ローランド・エメリッヒ製作総指揮とあって、SFとしての出来は悪くない。 でも雨か濃霧、泥だらけの風景とほぼ灰色一色の地味な作品だし、 結末も倫理的には正しい選択だが、分かりやすいとは言えず普通の観客はモヤモヤするだろう。 これは「未体験ゾーンの映画たち」枠じゃないと上映できなかったね。 |
5 | ノイズ | ★★★ | 過疎化する島を黒イチジクで再興しようとする農家が、現れた胡乱な男をもみ合いの末殺してしまう。 幼なじみの猟師と警官の3人で協力して「島を守るため」死体を隠すのだが、予想外の出来事が続き次第に事態は収拾がつかなくなる。 最初に道を踏み外さなければ、後の3人は死なずにすんだ(一人は別の筋で死んでたかもだが)。 同質性が最大の判断基準となるため選択肢が無い(ように見える)環境ではそういう判断になるのはよくわかるがね。 しかし、刑期を終えているとはいえあの罪状の元受刑者をあんな閉鎖的な島に、しかも多分事前連絡もせずに採用してもらおうと連れてくるかね? |
4 | さがす | ★★★ | 大阪で日雇いの仕事をしている父親が、逃亡中の連続殺人犯を見かけたので報奨金目当てに追いかけると言い残して失踪した。 一人残された中学生の娘は父親を捜すが、状況は二転三転し、やがて複雑に絡んだ過去が浮かび上がる。 この作品、下の『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と不思議と呼応している。 妻を亡くし中学生の娘と暮らす父親の不器用というよりはクズな言動。父親の謎に巻き込まれて大変な目に合う娘と、 そのボーイフレンドがやたらに良いヤツであることなど(ネタばれ領域にもいくつか)。 だからといって佐藤二朗がマッツに見えてくるわけではないが。 妻の件とかいくつか理に合わないところはあるんだけど、良くひねられた脚本で僕は面白いと思う。 |
3 | ライダーズ・オブ・ジャスティス Retfærdighedens Ryttere |
★★★ | 「アナザーラウンド」ではしょぼくれた高校教師役だったマッツ・ミケルセンが、 無骨で坊主ひげ面マッチョの軍人役で同じく主演。この両作がデンマークのアカデミー賞を争ったそうで、その勢いや飛ぶ鳥を落とすがごとし。 で、本作では列車事故で妻を亡くした軍人が、列車に乗り合わせていた統計学者と彼の仲間が導き出した事故の首謀者たるギャング組織に、彼らの力を借りて復讐を試みる。 しかし、過去の経験から偶然の陰に隠れた必然に囚われている統計学者の足元が消え去る衝撃は中々。 ハードなようでユーモアや哲学的な思索もあり、重層的な見ごたえ。 でも、襲撃された側とはいえいろいろヤバいものがあるからあのラストは実現しないよ。 |
2 | スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム Spider-Man: No Way Home |
★★★★ | MCUの世界観が好きではなく、そこに組み込まれた現シリーズはこれまでパスしていたが、この最終作はむしろ過去の 2シリーズ のスパイダーマンとの連携が強い。というかそれらを知らない人は観ない方がいい。 並行世界から呼び寄せられたドック・オックやグリーンゴブリンらのヴィランを過去シリーズの俳優がそのまま演じるのに痺れた。 とくにW・デフォーの凶相たるや! 詳しくは書けないが、旧シリーズのファンにとってはそれを更に超えてくる胸アツの展開で、有終の美に歓声。 しれっとデアデビルが表の顔で出てたりするのも面白い。 DCが向こうを張って「バットマン」でマルチバース展開をしないことを願う。収拾がつかない。 |
1 | 悪なき殺人 Seules Les Bêtes |
★★★★ | 雪降るフランスの山村に車を残し富豪の妻が失踪した事件。 村の酪農家夫妻を皮切りに主人公が転ずるごとに、物語は予測不能な方向に伸び新たな謎が生まれる。 パリのレズビアンの娘やコートジボワールのネット詐欺師など意外な人物が引き継いでいく中で伏線が回収され、 最後に全てのパズルのピースがカチリとはまる見事さにうなる。 怪しい霊能者が詐欺師に語る「人間は「偶然」には勝てない」という言葉が象徴的だが、アフリカの精霊がこの物語の「偶然」を導いているに違いない。 酪農家ミシェルの救いがたいバカさとクズさが笑えるほどで、アリスは男を見る目が無さすぎるよね。 |