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映画日記 2023年 (21本)


見た映画の記録です。2023年分です。上の方ほど新しく観たもの。 評価は ★★★★★ が最高。

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No. タイトル 評価 感想
22 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~ ★★★★ 壮大な茶番劇の名に恥じぬ豪華バカ映画。前作は未見だが、関西にゆかりのある者としては今回は観に行かざるをえまい。 滋賀をはじめとした関西圏のネタが徹底的に詰め込まれた清々しいまでの馬鹿馬鹿しさで、またどの役者も実に楽しそうで観ているこちらも大変楽しめた。 ただ、このシリーズを地域おこし的に活用しようとすり寄るさもしい人たちの気配を感じるので、佐賀を舞台にした第3弾なんてのは作らない方がいいね。
21 SISU シス 不死身の男
SISU
★★★ 第二次世界大戦末期のフィンランドの荒野。撤退中のナチス戦車小隊が、道中で出会った金塊を持ち運ぶ老人に手を出そうとしたら、手ひどい反抗にあう。 老人の正体は、家族を殺された復讐に300人以上のロシア兵を単身で屠った、不死身と称される伝説の兵士だった、というフィンランド製戦争アクション。 この主人公、不死身にもほどがある。地雷原を踏破し、撃たれても、川に沈められても、絞首し吊るされても不屈の闘志で窮地を脱し、 神出鬼没の行動でナチス兵を倒し続ける。しかし、さすがに飛行機が墜落しても生き延びるのはどうかと。 それに劇中全くしゃべらず、ラストで情緒もへったくれもない短いセリフを吐いて終わる、という笑えるほどの武骨さが面白い。
20 シック・オブ・マイセルフ
Sick of Myself
★★★ 肥大した承認欲求が取り返しのつかない事態を引き起こすノルウェー発のホラーという触れ込みだが、 そこそこショッキングだったりエグい描写はあるものの、ホラーという印象はない。 一介のカフェ店員でしかないがインスタントに有名になりたくて、健康被害をもたらす危ない薬を密かに飲んで悲劇のヒロインになろうとする主人公。 そして、彼女と、最近バズりはじめたポップアーティストの恋人が互いに嫉妬しマウントを取りあう愚かさに心が冷える。 一時の注目を得るためだけに自分の命や健康を差し出す想像力の欠如は、いまやありふれたものになっていることの戯画でもあって、 そういう取引を持ち掛ける悪魔がいるとすれば、あまりにチョロすぎてやる気を無くすレベル。
19 Bad Lands バッド・ランズ ★★★★ 大阪の細民街を根城に特殊詐欺グループの中堅を務める主人公ネリを安藤サクラが演じるクライムサスペンス。 詐欺グループを摘発する大阪府警との攻防、ネリを執拗に追う鬼畜な投資家、賭場の負債に縛られた義弟との腐れ縁、 ある事情で得た大金を密かに自分たち名義に書き替える企てなど、複数のプロットが絡み合い物語が進む造りは見事で、2時間超の長尺ながら全く隙がない。 常に誰かに踏みにじられ搾取されるもしたたかに生き抜く主人公の強さ、クズぞろいの他の登場人物たちとのいびつな愛憎は、 原作(黒川博行『勁草』)から主人公の性別を改変しているとは思えないほど完璧にはまっている。 そして、賭場を仕切り裏社会の帳簿を握る女傑を演じるサリngROCKの存在感が素晴らしい。関西の舞台人だそうだが今後も映画で活躍してほしい逸材。
18 コカイン・ベア
Cocaine Bear
★★★ 麻薬密輸業者が飛行機事故で落とした大量のコカインを食べてイカれたクマが人を襲う、という一点突破のネタ感満載B級パニックホラー。 国立森林公園を舞台に、婚前旅行中のカップル、学校をさぼって滝の絵の写生に来た少年少女と彼らを探す母親、森林レンジャーのゲスいオバちゃん、 キャンパーから金品を巻き上げる地元チンピラ3人組、コカインを回収しようとする密輸業者たちが次々と襲われる。 血しぶきが飛び散り手足がちぎれて人が悲惨に死ぬシーンがことごとくコミカルに描かれる悪趣味さが良い味を出している。 ネットの評で見つけたワード「らりっくま」は、この映画の雰囲気を端的に表している秀逸なコピー。
17 スイート・マイホーム ★★★ 斎藤工監督のホラー・サスペンス。夢と希望にあふれた新築のマイホームに潜む何か。そして、壊れていく家族。 といっても、一見好感度高いあの人があからさまに怪しいので真相は中盤でだいたい透けて見える。 ストーリーはなかなかによくできているのだが、恐怖の焦点・象徴たる地下室とエアコンの造りが安っぽい感じなのが残念。 あの家は、新築なのに極め付きの事故物件になってしまって、その後も悪いモノを引き寄せる心霊スポットになるに違いない。
16 オオカミの家
La Casa Lobo
★★★ チリ発のストップモーションアニメ。ストーリーはあって無きがごとしで、縮尺の狂った人形と、壁やあらゆるものに描かれた絵が ひたすら変容しつづけていくグロテスクな悪夢の映像。そして、異様なイントネーションのセリフ。「マリ~ヤ~」が耳に残る。 『JUNK HEAD』『MAD GOD』も大概だけど、 全ての境界があいまいで条理を欠いた本作の悪夢度合はまた格別。同じ監督(C.レオン & J.コシーニャ)の短編『骨』と併映。
15 キングダム 運命の炎 ★★★ 「キングダム2 遥かなる大地へ」に続く、シリーズ第3弾。 攻め入る趙の軍勢を迎え撃つ馬陽の戦い、そこに至る嬴政・王騎と趙との因縁が描かれる。 やはり大沢たかおの王騎将軍は圧倒的存在感で、また、スケールの大きな合戦シーンは見ごたえがある。 一方で飛信隊の活躍に説得力がないのがなぁ。主人公の信は物語の要請上特異点的に強く、羌瘣は暗殺者一族で無双なのは良いとして、 それ以外の隊員は今のところ村一番の力自慢程度の力量で、さすがに趙の正規軍をほぼノープランで突破するのは無理がある。 それに、将が討たれたからといって即座に戦闘を終了して敗軍側が動きを止めるのもどうかと。スポーツじゃないんだから。 一応、このまま繋がる次作にも期待はしておく。
14 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
Crimes of the Future
★★★ 環境破壊に適応して人間が異様な進化をしつつある未来を舞台に、 体内で過剰発生した内臓にタトゥーを入れて摘出するパフォーマンスアーティストを主人公としたグロテスクなSFサスペンス。 齢80にしてなお意気軒高なデビッド・クローネンバーグ監督の作品は極めて難解で、観客を突き放したようでいて、しかし、彼が見せたいビジョンは固く強く、こちらに届く。 内臓を愛撫したりとかの奇態なエロティシズムや、生物っぽい見た目と動きの機械装置の造形、それを見せる悪夢的な描写は唯一無二。 息子はこの域にまで来られるか。
13 イノセンツ
De Uskyldige
★★★ 北欧発のサイキック・スリラー。舞台はノルウェー郊外の団地。主人公はそれぞれ問題を抱えた4人の子どもたち。 ささいな超能力を持った彼らの他愛ない遊びは少しずつ拡大し、やがてその一人が暴走する。 怪物化した一人とそれを止めようとする他の3人の、大人は見えているのに気づかない静かな争いが団地を揺らす。 大友克洋の『童夢』にインスピレーションを受けた作品で、クライマックスはまさにそのまま(スケールはともかく)。 善悪の基準が定まっていない子どもの残酷さ、「無垢」の怖ろしさの描き方が巧み。 ハリウッドとか日本映画ではありえないネコ虐待シーンがあるので愛猫家は観ないように。
12 マッド・ハイジ
Mad Heidi
★★★★ 「アルプスの少女ハイジ」も著作権が切れているので、と作られた、原作の世界観をブチ壊す18禁でエクストリームなB級エログロバイオレンス。 恋人ペーターを殺されたハイジは、捕えられた矯正施設から脱出し、スイスを独裁支配するチーズ企業社長に対する復讐と革命に立ち上がる。 血や臓物、脳漿が惜しげもなく飛び散り、全編に不謹慎なギャグと下ネタ・エロネタがちりばめられる。 なぜか、緑色の後光をまとった女神のもとで武術修業したりするし。 あまりの不謹慎さに本国スイスでも制作に携わった面々が不遇な扱いを受けたようだが、逆境を顧みない造り手のセンスなのか愛なのか、やたら面白い。 ストーリーとかテイストは『アフリカン・カンフー・ナチス』と同じなんだけどね。
11 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
Indiana Jones and the Dial of Destiny
★★★ ついにインディ・ジョーンズも終結。1981年の第1作「失われたアーク」から主演を務めるハリソン・フォードのアクションは、 本作で80歳を超える年齢を考えるとすごいけど、さすがに息切れ気味。その老境感が本作の味ではあるのだが。 だけど、なんだろう、偉大なシリーズの完結編にしてはこじんまりとした感じ。 あのテーマ曲も控え目だし、もっと派手な見せ場でつないでも良かった気もする。まあ、老いたインディで物語を締めるというのはこういうことかもね。 潜水士レナードがアントニオ・バンデラスとはエンドクレジット見るまで気づかなかった。
10 プー あくまのくまさん
Winnie the Pooh: Blood and Honey
★★ 「くまのプーさん」の著作権が切れパブリックドメインになったので、いっちょカマしたろうで作られた、出オチだけのホラー。 であるからこそ、原作を丁寧に台無しにしてほしかった。B級ホラーの定番とはいえ、どう考えてもそこは警察呼ぶか逃げるよね、 という状況でわざわざ危険な場所の様子を探りに行くとか、プーさんの家になぜか電気が通ってたりとか、 ストーリーの説得力がいちいち薄弱(せめて勢いで押し切れよ...)。 なにより、本来、緊迫感を高めるはずの効果音楽が安っぽすぎて萎える。プーさんを題材にしたことではなくて、造作が雑で残念な作品。
9 リバー、流れないでよ ★★★ 『ドロステのはてで僕ら』に続くヨーロッパ企画のタイムループコメディ。 京都貴船の料亭旅館を舞台に、2分間のタイムループに閉じ込められた旅館の従業員や客たちが原因を探り脱出するために右往左往する。 何しろ2分しかないので、できること、行ける場所は限られていて、それでも各人がだんだん要領を得て話が進んでいくプロットは、 極めて良く練られたさすがの上田誠脚本。ただ、リセットしながら同じ時間を繰り返すので途中で休憩っぽいターンがあったりで、 過去と未来がどんどん複雑に絡み合っていく物語をワンカット(風)に撮った『ドロステ』の変態的技巧の完成度には届いてない。 でも、ヨーロッパ企画でないと作れない佳品なのは確か。
8 最後まで行く ★★★★ 韓国映画のリメイクだけあって特濃、刺激強めのストーリーで、 悪徳刑事(岡田准一)が追い詰められる様、エリート監察官(綾野剛)のキレっぷりが半端無い。 物語の中で起こることは、確率の低い偶然と切羽詰まった末のありえない選択の積み上げで、 絵図を描いて転がし始めた人物も、さすがにこうなるとは想定できなかったはず。 事態が混乱さえすればどうあっても利をとれる目算はあったんだろうけど。 映画はまさに「最後まで行く」で終わるのだが、これだけのカオスになると、 この舞台が平穏を取り戻すまでには、この後さらに相当数の死者が出そう。
7 シン・仮面ライダー ★★★ シン・○○ はこれが初めてだが、仮面ライダー1号2号はまさに世代ど真ん中で、 あのBGMが流れると否が応でもテンションは上がる。 あのころの特撮の世界観を再現してるからなのか、ストーリーがモッサリしていたり筋が通らないところも多数あって、 まあそれはそういうモノだとしよう。なので、ノスタルジーを感じる中高年以上の層でないと観ていてつらいかも。 それにしても長澤まさみの無駄遣いがスゴい。本人楽しそうで何よりだけど。
6 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
Everything Everywhere All at Once
★★★ 多元宇宙の危機と家族の危機を重ね合わせて、それらを救うことになる中国系庶民をミシェル・ヨーが演じる。 社会的なメッセージは頑張れば読み取れなくもないが、『マトリックス』っぽい描写は薄いし、 目を疑うような下ネタをブッコんでくる悪ふざけが過ぎる。アカデミー賞の複数部門を獲得する力はこの映画作品の内側には無いよね。 そもそも中国人がカンフーマスターになる世界線なんてのは意識高い人が嫌うステレオタイプなんじゃないの?
5 フラッシュ・ゴードン
Flash Gordon
★★ 1980年に上映されたカルトなSF作品が40年を経て4Kリストア、ということだが、こんなにダメな作品だったっけ。 キャラクターもストーリーもビジュアルもチープの極みで内容の無さに空笑い。当時の眼だとそうでもなかったのかなぁ。 Queen の音楽だけは素晴らしくて、それでようやく評価は★2つ。
4 マッシブ・タレント
The Unbearable Weight of Massive Talent
★★★ ニコラス・ケイジといえば、このサイトだと近年は『プリズナー・オブ・ゴーストランド』『カラー・アウト・オブ・スペース』と、B級かもっとアヤしい作品にばかり出ている印象で、 本作も、彼がかつての輝きを忘れられず迷走するニコラス・ケイジ自身を演じる変な映画との前評に、ある種の期待を持って鑑賞。 確かに変だけど、実に完璧な「ニコラス・ケイジ映画」で彼が俳優業を愛し、映画界内外から愛されていることが伝わる佳品。 お互いに正体と目的を隠して近づいた男二人の間に生まれる友情、問題を抱えた家族関係の再建、 それらを包むコメディとスパイアクション、とニコケイのフィルモグラフィーをカバーするかのごとく盛りだくさんな内容。
3 ベイビーわるきゅーれ2ベイビー ★★★ 前作に引き続き、目を見張る切れ味のガンアクションに近接格闘、 対して、それ以外はポンコツな主人公二人の百合っぽいユルい日常のメリハリが楽しいが、やってることはほぼ同じ。 今回の相手はハンパなバイトの殺し屋兄弟で、前作の狂った過激武闘派ヤクザ組織に比べるとスケールダウンしてるし、 掃除屋やマネージャーとからむコントも面白いけど小さくまとまった感はあるのだが、 多分、起承転結の承なんじゃないかな。大きく展開する3作目に続きそうな気がするのだがどうだろう。
2 ボーンズ アンド オール
Bones and All
★★★ 人間社会に紛れて暮らす人喰族の物語でそこそこ血なまぐさいシーンもあるが、主人公の一人が美男子ティモシー・シャラメということもあって パラノーマルロマンスな甘美さも。ただ、人喰族といっても『東京喰種』などとは違って、 変身するわけでも不死身でもなく、特殊な力も持たず(嗅覚は鋭いが)、厄介な衝動を抱えるただの人間にしか見えないのがこの手の作品としては変則的。 その分特殊メイクやCGが要らないのだが。 家族や友人を持つことも定住することもできない極限の孤独のなかで出会い惹かれあう若い男女の愛と絶望は、普遍的な青春のテーマでもある。
1 RRR ★★★ 英国支配下のインドを舞台に屈強な男二人の友情と対立する立場での闘いを3時間の長尺で描く。 派手で濃厚で1秒たりとも飽きさせないお腹一杯なインド映画で、悪いイギリス人のこれでもかの暴虐ぶり、 抑圧された末に立ち上がる主人公タッグが英国軍をなぎ倒す無双ぶりが分かりやすい勧善懲悪とカタルシスの構図。 これ、舞台を戦前の中国にして敵を悪い日本軍に置き換えると一時期(今でも?)中国で流行した抗日愛国映画と完璧に同じなので、 あのとき苦々しく感じていた人は本作に単純に歓声をあげてはダメな気がする。 それにしても、その辺の草の薬効がハンパないな。