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映画日記 2012年・2013年 (17本)


2012年・2013年分です。上の方ほど最近見たもの。 評価は ★★★★★ が最高。

No. タイトル 評価 感想
December, 2013
17 ゼロ・グラビティ
Gravity
★★★★ 素晴らしい。衛星軌道上、自由落下状態での孤独・過酷なサバイバルを、超絶の映像技術で描く。 必死でつかんだ希望が次々と失われていく絶体絶命の状況で、 わずかな道筋を求めて前に進み続ける主人公の決断に引き込まれる。 たった100kmしか離れていない地獄は、静かで美しい。 これは3Dで観なければいけない映画。そして、この事故により軌道はデブリで覆われ尽くし、 人類は宇宙への扉を閉ざされるのだろう。
October, 2013
16 ウルヴァリン: SAMURAI
The Wolverine
★★★ 映画版X-MENの主役級キャラクターを 描くスピンオフ2作目。 多分、分かったうえであえて設定したなんちゃって日本(民間の警備員が公の場で短機銃持ってるし、 新幹線は天窓があってパンタグラフはないし、礼儀作法とか妙だし、 過度に名誉を重んじる精神性の描写もアレだし)を気にせずに見られるなら、それなりに面白い。 で、本作の意義は実は本編にはなく、エンドロールで数分描かれる、ウルヴァリンとあの二人との再会だったりする。 要はX-MENの続編へのつなぎということなのだが、このシーンがなければ★2つだったかな。
15 凶悪 ★★★ 埋もれていたおぞましい事件を告発した雑誌記事と、 それを取材して記事にした記者が書き上げたノンフィクションの映画化。 首都圏はずれのどこか荒涼とした地方都市を舞台に、金のため、また時には大した理由もなく、 他人を面白がりながらいたぶり殺す怪物を演じるピエール滝とリリー・フランキーの狂気に圧倒される。 そして、事件をあぶりだす正義感に高揚するあまり、家庭の問題から目をそむけ、 妻を泣かせ続けて省みない主人公の姿を中間点として、現実感を欠いた凄惨な事件が決して僕たちの日常と無関係でない、 地続きの世界にあることを思い知らされる。
14 スター・トレック イントゥ・ダークネス
Star Trek Into Darkness
★★★ J・J・エイブラムス版スタートレックの第2作。 あえて表に出していないが、旧シリーズのある作品を下敷きにしている。 古参のトレッキー(僕は違うが)が落涙する仕掛けだが、どうもこのシリーズへの(偏)愛が欠けている。 まあ、そんなものが無くても面白い映画は作れるのだが、そのせいかやっぱり軽い。 次から次へと連なる危機一髪なイベントも、お約束を高速で繰り出して見せ場にしているだけな感じだし。
August, 2013
13 ワールド・ウォー Z
World War Z
★★★ 多様な人々の多様な戦いの記録を歴史として描き、ゾンビ小説の新境地を拓いた 原作とは異なり、 ブラッド・ピット演じる主人公自身が事態のど真ん中を駆け回る。 つまり、原作の革新的な部分を取り込んでいないのだが、意外とこれが悪くない。 主人公の近傍に視界が限られる一般的なゾンビ映画とは異なり、 サバイバル能力に長けた国連職員である主人公の視点を通じて全世界の動向が緊迫感を以て 描かれている点で原作の精神を維持しているのと、大量のゾンビの群れがワラワラと動くCG描写の完成度が良い。 でも、感染して十数秒で発症するウィルスだと、 潜伏期間中に飛行機などで拡散するとかできないので大陸間を超えて爆発的には蔓延しないぞ。 (ここも原作と違うところ)
12 パシフィック・リム
Pacific Rim
★★★ こちらは、下の『オーガストウォーズ』とは対極的に、 戦場のヒロイズム満載の非現実的な巨大怪獣と巨大ロボットの肉弾バトル映画。 急ごしらえでやむなしとはいえイェーガーは安全性の低そうな原子炉駆動だし、 その原子炉の爆発を使って敵を封じるなど、日本通のはずのギレルモ・デル・トロ監督の見識を疑うシーンもあるが、 やはり、高層ビルサイズの怪獣とロボットを真正面から描かれると、見ていて燃える。 幼少時から僕を作り上げてきた要素の少なくない割合はコレなので、 このジャンルの筋金入りのオタクであるデル・トロ監督の熱に感応してしまう。 ストーリーや設定の甘さ・雑さを問う気はないが、カイジュウの色とか質感が画一的で、 イェーガーが基本近接肉弾戦だけというところは改善の余地あり。 遠距離攻撃を得意とする、みたいなタイプがあってもよかったかな。
11 オーガストウォーズ
Август Восьмого
★★★ 巨大ロボットが大きくあしらわれたポスターと作品紹介に騙された。 が、予想をすかした返す刀で思わぬ角度からガツンと胸をついてくる作品だ。 現実の南オセチア紛争を舞台に(原題は紛争の起こった日付「8月8日」)、 グルジアを非道な侵略者として描き、ロシアの選択を美化する、政治色の濃い映画なのだが、 ロシア軍全面協力という実戦兵器がバンバン登場する至近距離の戦争シーンは凄まじい (ミリタリーマニアにはたまらないようだが)。 それぞれが誰かの子であり親である無数の人命を、 作業として奪い合う非情の戦場に巻き込まれ押しつぶされそうになりながら、 ギリギリのところで抗う母と幼い息子の姿を通して、 改めて、なんで戦争なんてするんだろうね、というやりきれない思いになる。
10 アイアン・フィスト
The Man with the Iron Fists
★★★ 時代錯誤もはなはだしい70年代テイストのカンフー映画で観客を選ぶが、僕は境界の内側にいるので、 大変面白く観ることができた。黒人ラッパーRZAが、原作・監督・主演を務め、本業の音楽も担当した、 このジャンルへの愛を爆発させた究極の自己満足映画だが、そのストレートぶりは潔い。 ストーリーや設定のデタラメな感じはむしろベタなお約束で、スピードあふれるアクションの完成度も高く、 好きこそものの上手なれ、とはよく言ったものだ。それでいて、ありふれた印象を受けないのはさすが。
July, 2013
9 二流小説家 シリアリスト ★★★ 海外ミステリが原作とは思えぬほど、湿っぽく因縁話が和風テイストなサスペンス。 真相が二転三転し、謎が重合していくものの、「誰も信じるな」という宣伝文句ほどにはトリッキーではなく、 武田真治演じる死刑囚もそれほど怪物ではない(むしろ怪物はあの人物か)が、 そういう派手な要素に頼らず、そこそこに緊迫感のある作品に仕上がっている。 この程度の謎なら早々に警察が解き明かしてもおかしくなかった感じもするが。
May, 2013
8 探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 ★★★ だらしないし隙だらけだが正義感と義理に厚いタフガイ探偵を演じる大泉洋が 前作以上にハマり役。 ありがちな所には落ちない思わぬ真相と、苦い大人のテイストが渋いハードボイルド。 大義は大事だが、それを高く掲げたとき、人は道を踏み外すのだね。
7 アイアンマン3
Iron Man 3
★★★ 『アヴェンジャーズ』は未見なのだが、その際の体験でパニック障害を患い、 自己を覆う鎧であるスーツの依存症になっている主人公像というのが、実に今風。 とはいえ、新たな敵との攻防の末、アイアンマンである束縛を克服する(ついでに国家の危機も救う)物語は、 シリーズ完結編としては申し分ない。 メカ好きの観客からすると、見せ場であるスーツ装着シーンは、 回を重ねるごとに数は増えても軽くなってしまっているのが若干残念。 本当に仮面ライダー(というか宇宙刑事?)に近づいてしまっているし。しかし、個人が装着するだけの、 第一作第二作とは異なり、 遠隔操作・自律操縦の人型兵器の集団を率いて戦うというのは、攻撃側の人命リスクのない遠隔操作の 爆撃機が飛んでいる現実を考えると実は相当凶悪な話なんだよね。それに、個人である主人公ならまだしも、 米軍所有のアイアン・パトリオットが他の主権国家で勝手に暴れるのもどうだかなぁ。
November, 2012
6 エクスペンダブルズ2
The Expendables 2
★★★ 前作でカメオ出演だった、シュワルツネッガーと ブルース・ウィリスが本格的に参戦したほか、チャック・ノリスとジャン・クロード・ヴァン・ダムが登場!  チャック・ノリスのチャック・ノリスぶりにニヤリ。 出演俳優の名前を並べたらどんな内容かわかる映画で、それだけを貫いて、観客を喜ばせ、 自分たちも楽しむ潔さは相変わらずで楽しい。それぞれ、それができる積み重ねがある人たちだし。 だけど、第3作も作られるようで(ニコラス・ケイジが出るらしい!)、 「もう一花咲かせようぜ」感がちょっとイヤらしくなりつつあるかも。 で、やっぱりスティーブン・セガールは出ないのね。
5 リンカーン 秘密の書
ABRAHAM LINCOLN: VAMPIRE HUNTER
★★★ セス・グレアム・スミスの原作の映画化。 史実に虚構を巧妙に編みこむ原作からはゴッソリいろいろなところを落としている。 リンカーンの日記の扱いとかエドガー・アラン・ポーとの関係とか吸血鬼の二つの勢力の思想的対立とか。 映画の枠に収めるためには仕方がないんだろうけど、逆に原作を読んでない人にはいろいろなエピソードが 性急・唐突に見えただろうし、あまりうまい映画化ではなかったかも。 あのリンカーンが銀刃の斧を鮮やかに操りヴァンパイアを狩る映画とシンプルにとらえよう。 本編上映前の予告にスピルバーグの『リンカーン』が流れてたのがおかしかった。
September, 2012
4 プロメテウス
PROMETHEUS
★★ リドリー・スコット監督が『エイリアン』の前日譚を自ら手がける、とあって、 酷評されているのは承知で観に行ったのだが、これはひどいね。 人類が異星人に創造されたとする説は、フィクションとしてはよくある設定なので問題ないけど、 それを「信じる」主人公たちは、科学者なのにろくな行動計画もたてずに行き当たりばったりにウロウロするだけだし、 そもそも生物が存在する未知の惑星の調査で、誰もまともな防疫の手続きをとろうとしないなんてありえない。 結果として、(非人類も含め)どの登場人物も目的や意志が支離滅裂で、 何を言いたいのか、何をやりたいのかがすっかり迷走した映画になってしまった。 創造主の探求を主題にしても、『エイリアン』の前日譚であることそのものを軸に据えても、 それなりにキチンとした語り様はあっただろうに。
August, 2012
3 ダークナイト ライジング
The Dark Knight Rises
★★★ C・ノーラン版バットマンの完結編。 第一作で提起された、バットマンであることの呪いからの解放を描く。 他のスーパーヒーロー物とは一線を画すリアル、 バットマンを物心両面から完膚なきまでに叩きのめす圧倒的な強敵ベインの存在感、 全編を貫く陰鬱な緊迫感により3時間弱の上映時間を感じさせない大作だ。 しかし、映画史上の伝説となってしまった、ヒース・レジャーがジョーカーを演じる 2作目がすご過ぎて、 また、実は気になるツッコミどころがかなり多くて(ある種の神話でもある物語なので、 事物やイベントがその文脈で語られるべき、というのはあるが)、評価は★3つ止まり。 だいたい、最後にあのキャラクターを登場させ、しかもあのどんでん返しをしてしまうと、 せっかく解放されたはずの呪いが復活してしまう。 ベインのせいとはいえ、市民が階級間で殺し合い、また、国家から切り捨てられそうになったゴッサム市のこれからを考えると、 おそらくはこれまで以上に彼らが必要になるのだが。 なにはさておき、アン・ハサウェイのキャットウーマンはかなりいい。
2 アメイジング・スパイダーマン
The Amazing Spider-man
★★★ サム・ライミ監督の前 からリブートされた本作では、様々な設定が一新され、ピーターがスパイダーマンになるところからあらためて描かれる。 今回のスパイダーマンは、糸は自前ではなくオズコープ社の製品を流用しているなど、ちょっと弱めだが、 その分、体を張る彼を街の人たちが愛し、傷ついたときには助けようと動いてくれるなどの親近感が 他のスーパーヒーローとは違うところだ。 あの主題曲じゃないのは残念だが、思ってたよりは面白かったかな。 父親と因縁があるオズコープ社に関係する黒幕っぽい存在がいるらしく、次回作に続く予定。 しかし、ピーター、そんなに簡単に約束を破ると死んじゃったあの人が浮かばれないぞ。 図書館の老人はコミックの原作者だって!!
January, 2012
1 ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル
Mission: Impossible - Ghost Protocol
★★ ド派手で見ている間は飽きさせないが、まったくそれだけの映画。 なまじ洗練されているがために、観客を揺さぶることもなく、 彼らのミッションのごとく証跡を残さず映画史から消えていくだろう。 いや、面白くないと言っているわけじゃないんだけどね。 躊躇なく人を殺しながら家族愛を平然と打ち出す無神経は気になるな。