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映画日記 2008年・2009年 (29本) |
2008年・2009年分です。上の方ほど最近見たもの。 評価は ★★★★★ が最高。
【 年度リスト 】 【 ◀ 2010・2011年 】 【 2006年・2007年 ▶ 】
No. | タイトル | 評価 | 感想 |
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September, 2009 | |||
29 | ウルヴァリン: X-MEN ZERO X-MEN ORIGINS: WOLVERINE |
★★★ | X-MENシリーズの中心キャラクターで、 記憶喪失に隠された不穏な過去を持つ男、ウルヴァリンの誕生を描く。 ウルヴァリンが改造された経緯はシリーズ最大の謎だったわけだし、 他のキャラクターの初期の姿を登場させたりと、シリーズのファン向けの手堅い作りではあるが、 悪く言えば、それだけの作品でもある。 それにしても、『インディ・ジョーンズ4』の核実験もそうだったが、 現実の原子炉事故をそんなに軽く舞台にしてはいかんよな。 |
28 | トランスポーター3 アンリミテッド Transporter 3 |
★★★ | 今やバカアクション俳優当代No.1の地位を盤石のものとしつつある、ジェイソン・ステイサム主演のシリーズ3作目。 前作、 前々作より、明らかにフツーへとスライドしている。 主人公はストイックさを脱ぎ捨てて、あまつさえラブロマンスまでこなすし、テーマはよりによってエコだし。 破天荒なアクションのテンションの高さはまだまだ健在だし、リュック・ベッソン製作作品らしい、 なんかエスプリな感じは良いのだがね。まあ、どうあれバカアクションなので、 依頼主はあれだけの組織を持ってるのだから自前で運べば良いのに、とか細かいことは気にするな。 |
July, 2009 | |||
27 | トランスフォーマー:リベンジ
Transformer / Revenge of the Fallen |
★★★ | 前作に引き続き、精神年齢低め・子供だましの映画なのだが、 何でこんなに面白いかね。いい大人としてはどうかと思うが、抜群に面白い。 現実とシームレスな驚異のCGと、とんでもない迫力の戦闘描写、 そしてそれを支えているおそらくはマニアックな情熱(と財力)が可能にするある種の奇跡。 ただし、その魔法は映画館の大画面と音響があってこそと思うので、テレビ画面でみると駄目かも。 |
June, 2009 | |||
26 | スター・トレック Star Trek |
★★★ | このタイトルにはそれほど思い入れはなく、過去に積み上げられたスタートレック世界はほとんど知らない、 と思っていたが、意外と刷り込まれていたみたいで、いろんなシーンに記憶が刺激されて変に感慨深かったり。 しかし、プロット、未来社会の造形、人物像、戦闘シーンなどあらゆる要素が妙に軽い、というか、チャラい。 J・J・エイブラムス監督の特徴なのかな。 軍属宇宙船の女性士官の制服がミニスカートってのはさすがに無理があるのでは。 |
25 | チョコレート・ファイター Chocolate |
★★★ | ノーCG、ノースタント、ノーワイヤー。 『マッハ』で確立された、タイ発格闘技アクションの新境地。 宮崎あおいにちょっと似た感じの可愛らしい主人公の華奢な体から、 ブルース・リーやジャッキー・チェンもかくやの烈しく痛く高速で破壊力抜群の技が炸裂する「だけ」の映画だが、 もう、気合いの入り方がハンパないッス。スタッフも役者も全員バカとしか言いようがない。 ストーリーはベタだし、編集は野暮ったいが、そんなことはもはや関係ない。 昔の香港カンフー映画風ニセモノ日本な感じも面白い。日本ヤクザを演じる阿部寛もグッド。 |
March, 2009 | |||
24 | ウォッチメン Watchmen |
★★★ | スーパーヒーローの枠組を通して、米国現代史の意味を探る大作。 それなりの読解力を必要とする映画なので、気楽に楽しみたい向きにはお勧めしない。 しかも上映時間2時間43分だし。 人類のコントロールをはみ出しかねない核兵器を始めとした強大な軍事力、資本主義に基づく圧倒的な経済力、 卓越した科学技術力で世界を席巻し、 自らの信じる「自由」を強制するアメリカの覇権はまさしくスーパーヒーローの姿であって、 それを自覚的・内省的に検証する本作は、したがって重たい。 善悪が相対化され全てが複雑化した現代にあって、アメリカ的であるということは極めてアンビバレンツなあり方なのだ。 登場するヒーロー達は、多分意図的に他作のキャラクターを思わせる造形だが、 Dr.マンハッタンの超絶っぷりは類を見ない。性器丸出しの青い全裸(CGだけどね)というインパクトも含めて史上最強。 |
23 | ヤッターマン | ★★★ | 小学生の子ども連れの家族、ジャニーズファンとおぼしき女の子たちのグループが半々の劇場内に、 僕のようなオッサン一人がちらほら、という不思議な客層。 オリジナルのバカバカしいところをバカバカしいまでに忠実に再現した上に、 下ネタ(しかも小学4年生男子レベルとスナックで飲んでいる中年サラリーマンレベルが等量)を満載し、 さらにドロンジョ様を演じる深田恭子の神々しいまでの乙女オーラが加わって、 混沌として下品でくだらない、正体不明のバカ映画の境地に到達。 福田沙紀に爽やかな笑顔で卑猥なセリフを喋らせて喜ぶ三池監督は明らかにエロ親父だし、 役者のうち大人の3人、阿部サダヲ、生瀬勝久、ケンドーコバヤシは芸風が変態だし、 まあロクな映画じゃないが、それはむしろ賛辞だったりする。やっぱり三池監督はスゴイや。 で、一番悪い奴は、櫻井翔が演じるヤッターマン1号だよね。 |
February, 2009 | |||
22 | 感染列島 | ★★★ | 実は期待してなかったんだけど、なかなかの良作。 未知のウィルスによる恐怖・パニック(最終的に日本人口の1割が失われる!)と、 その制圧を目指す人々の極限の苦闘を、厚みのあるドラマで見せる。 どの役者もいい仕事していて、これも下の『K-20』と同じく2時間超だが飽きさせない。 疫病の名称があまりに劇的だったり、都合の良いときに雨や雪が降ったりの演出もアレだし、 医療現場の本職の人達はいろいろと意見がありそうな気がするけれどね。 まあ、ドラマとしての要請上の多少の美化・誇張を付加しつつもリアルを感じる迫力はある。 下の『K-20』は日本テレビで、本作はTBS、とTV局製作の映画が続いたが、 TV的なところはあっても、これだけのものが出来るならアリ。 |
January, 2009 | |||
21 | K-20 怪人二十面相・伝 | ★★★★ | いいね、面白いよ。怪人二十面相の正体はハナから丸分かりなんだけどね。 定型のテンプレートに乗った物語ながら、そういうのを、しかも2時間超の長尺で、ブレず、ダレず、ボケず、 きっちりと面白く作るのが素晴らしい。世界造形の妙と、スピーディなアクションと、 主人公達のメリハリの利いた演技が心地よい。 ハリウッド作品にその尺度で比肩するもので、日本映画もこんなのが作れるようになったか、と感慨。 |
20 | ヘルボーイ ゴールデン・アーミー HELLBOY II: The Golden Army |
★★ | 『ヘルボーイ』の続編。 僕の好きな原作を、好きな監督(ギレルモ・デル・トロ)が撮った映画なんだけど、うーん、なんだかなぁ。 今回の映画版オリジナルのストーリーは、全然『ヘルボーイ』っぽくない。 この作品は本来オカルトをベースにしつつも、ファンタジーじゃないんだよね、きっと。 X-MENのような正義の味方的展開も青春&家族ドラマも中途半端。 結構重たい選択が続くのに、登場人物達の葛藤がやたら軽いし、 それにヌアダ王子との闘いも、やってみたらたまたま1勝1敗でした、みたいな感じで盛り上がらない。 デザイン面が優れているだけに残念。死の天使のシーンだけは良いんだけどねぇ。 |
19 | ザ・ムーン In the Shadow of the Moon |
★★★ | 人類初の月面着陸からもう40年。その時、僕は生まれていたがまだ物心つく前で、 リアルタイムでの体感がないのが悔しい出来事なのだ。 月世界を歩いた10数人しかいない宇宙飛行士達自身が語る生のエピソードと 多くの記録映像で綴られたアポロ計画のドキュメンタリー映画に、改めてその事業の偉大さを想う。 まあ、おじいさん達の思い出話になっちゃってる感もあるけどね。 最後にヤラセ陰謀論に触れるところが面白い。結構気にしてるのね。 それにしても、我々は月まで行けた。だが、まだ月までしか行けていない。 |
18 | 永遠の子どもたち El Orfanato |
★★★ | 僕が今、指名買いする一人、ギレルモ・デル・トロ監督の、 『デビルズ・バックボーン』に連なる哀調のゴーストストーリー。 過去の悲劇が現在の悲劇と共鳴し、そこからさまよいでた霊たちが、恐ろしくも悲しい。 大人には見えない友達に息子が連れ去られたかに見える不気味な失踪事件から、 痺れるようなラストまでのプロット、ムードは秀逸。しかし、物語中、強烈な存在感で訴えかけてくる霊たちも、 本当は主人公が陥った狂気の産物で、その妄想の中で真実への道が開けたのかもしれない。 教訓は、探すなら気合いをいれてもっとちゃん探そうよ、ってことかな。 |
17 | WALL・E ウォーリー WALL·E |
★★★★ | エコだなんだのといったご大層なテーマや一途な想いがどうのという映画にはむしろ引いてしまう方だが、 それでも、ピクサー作品にはやられてしまう。 超絶の3DCGで創り上げられた世界を、キュートなロボット達が感情豊かに跳び回り冒険する姿にハラハラ釘付け。 クリエーターたちの作品に対する技術を超えた愛情が感じられる。 まあ、あの楽天的なラストは良くも悪くもアメリカ映画だし(日本映画なら多分彼は直らない)、 ソレが目的なら地球近傍に滞在して望遠鏡を使えばよいわけで航行の目的が意味不明だし、 あんなリサイクル無視の運用で700年も宇宙にいられるはずはないし、 ライフスタイルを改心することなく帰ってきても結局は元の木阿弥になりそうだし、 と文句を並べ立てるのは簡単だけど、そういう映画じゃないしね。お勧めはお勧め。 |
November, 2008 | |||
16 | 1408号室 1408 |
★★★ | S・キング原作の幽霊ものだが、霊的な雰囲気はあまりない。 ホテルの一室が、心霊を信じないオカルトライターを襲うのだが、根拠も因縁もない純粋な邪悪は、 無差別・無節操で、ごく私的なトラウマをいじってくるような極めてたちの悪い責め方をしてくる。 しかし、やってることは言ってみれば精神的な脅かしにとどまるので、人間の物理的反撃には弱かったりするわけだ。 といっても、こんな部屋に足を踏み入れるのは真っ平ごめん。 |
October, 2008 | |||
15 | アイアンマン Iron Man |
★★★★ | 筋力を増強するロボットスーツが既に実用化・商品化されつつある現在、 幾つかの工学的ブレークスルーと一人の天才がいれば、このパワードスーツは本当にできるかもしれないと思えてしまう (超音速での急制動に装着者が耐えられるはずがないとか、アフガニスタンまで往復する推進剤の格納量や 膨大に発生するであろう熱の処理とかの不可能性の材料はいくらでもあるにせよ)。 主人公たる社長の愛すべき傲岸で放埒なキャラクターも含め、すがすがしいまでのアメコミっぷり。 結局は、軍と連携しつつアメリカの国益を護るために活躍することになるイヤらしさはともかく、 スーツ装着シーンの有無を言わせぬカッコよさに悶絶。これを見るだけでカネを払う価値は十分にある。 溶接跡も無骨な手作りの1号機から、自由に空を飛ぶ3号機までのアイアンマン・スーツの出来はメカ好き諸兄必見。 |
14 | ウォンテッド Wanted |
★★★ | ストレスばかりの灰色の日常に倦み飽きて、自分は本当はそこに属さない刺激的な運命を 帯びた何者かなのだと夢想するのは誰にでもあることだが、その夢想をそのまま映画にしたのが本作。 負け犬サラリーマンが実は歴史の陰で秩序を司ってきた暗殺者結社のエリートの血を引いていて、 異能の凄腕として目覚めるなんて話自体は、週刊少年サンデーあたりに連載されてそうな内容ながら、 映画表現は極めて派手でシャープで、そのスピード感は面白い。 といっても、表現処理のアプローチも徹底的に漫画的なんだけどね。 しかし、秘密組織にしてはおおっぴらに動きすぎで、しまいには関係ない人達を多数巻き込む大事故まで 引き起こしてしまうのは、いただけない。 |
September, 2008 | |||
13 | デトロイト・メタル・シティ | ★★★ | 僕はヘヴィメタ愛好者で、原作コミックのファンでもあるのだが、 ユルめのギャグ作品が実際に動く絵になってみると... 吉本新喜劇だねぇ。 松雪泰子の社長が、どうしても浅香あき恵に見えてしまって(容姿はともかく芸風がね)、 で、そうなるともういけない。 松山ケンイチの根岸君/クラウザーに小薮千豊の顔がダブってきてしまう始末。 楽曲の水準はおしなべてなかなかに高いが、デスメタルの人でないジーン・シモンズを ジャックに配するのは存在感が今ひとつ。「No Music, No Dream.」 |
August, 2008 | |||
12 | インクレディブル・ハルク The Incredible Hulk |
★★ | あちゃー、クライマックスで自分の名前を冠した技の名を叫んじゃったよ。 なぜか後半からラストにむけて急速に論理がメチャクチャになっていく。 質量保存の法則への無頓着さは、この物語の大前提だから置いておくとしても。 2003年度版「ハルク」より本作を推す向きも多いようだが、 これじゃあねぇ。ハルクをフランケンシュタインの怪物かキングコングの様に描く解釈がそもそも気に入らない。 それはハルクの本質ではないと思う。 最後に同じマーベルのアイアンマンを出してきて、チーム結成を仄めかす引きも何を考えてんだか、と言いたい。 凡庸の域にとどまる作品。 |
11 | ダークナイト The Dark Knight |
★★★★ | これは、C・ノーラン監督版「バットマン」の 新作にして、バットマンの映画に非ず。ジョーカーが主役の作品だ。 汚く剥げかけた白塗りメイクと下品な仕草。富にも権力にも興味を見せず、名前も過去も素性もない男。 大した組織も持たず、特殊な能力など何一つ無いのに、圧倒的な狂気だけで、バットマンの全てを削り取り、 ゴッサム市を恐怖にたたき込む怪物。 もはや悪ですらない混沌の化身は、リアルさと神話的象徴性を兼ね備えた存在感を見せる。 本作が遺作となったヒース・レジャーの鬼気迫る演技に引き込まれ、2時間半の長時間を感じさせなかった。 しかし、ゴッサムのTV局はそんなに簡単に犯罪者の送ってきビデオを放送してはいかんな。 街の人達も悪いのはジョーカーなんだから他の人を吊し上げるのはやめようよ。 |
July, 2008 | |||
10 | ドラゴン・キングダム The Forbidden Kingdom |
★★★★ | 僕の中に住む中学生男子が大興奮。登場人物の真似をして、家にある物干竿を振り回しそうな勢い。 なんといってもジェット・リーとジャッキー・チェンの初競演で、二人のバトルをはじめ、見せ場、見せ場のつるべ打ち。 そして、映画の隅々までにこのジャンルへのリスペクトと愛が満ちあふれている。 カンフーオタクのヘタレ学生が、偶然手に入れた如意棒の力で異世界中国へ飛ばされて、 石にされた孫悟空に棒を返すために、邪悪な将軍の率いる軍勢をかわしつつ、 二人の達人とともに修行しながら旅をする、なんて書いてみると相当に恥ずかしい荒唐無稽な話もそれだからこそ。 すごく限定された範囲で傑作。 |
9 | インディ・ジョーンズ4 クリスタル・スカルの王国 Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull |
★★★ | 評判は良くない。だが、腐ってもインディ・ジョーンズということで観に行った。 面白くないわけじゃないし、あのテーマ曲が流れるとテンションは上がるんだけど、 20年前ならともかく、今さらこれではね。 どんなに優れたブランドとテンプレートもそのまま使っただけではダメなのだ。 なんといっても肝心のクリスタル・スカルに重量が感じられなくて、すごいアクリルな印象を受ける。 こういうコトをうまく見せるだけで説得力が変わるのに。核実験場の冷蔵庫のシーンも どう考えても即死(というか跡形もなく燃え尽きてるはず)なのに骨折もなく打ち身程度とか、 ヌルいだけの家族コメディ要素とか、軽く作りすぎ。 とはいえ親子で安心して観られるアクション大作を目指すとこうなるのはやむなしか。 |
June, 2008 | |||
8 | 秘密結社鷹の爪 The Movie II ~私を愛した黒烏龍茶~ | ★★★★★ | 鷹の爪 の映像は何度かネットなどで見たことがあって、面白いのは知っていたが、
その期待を上回る面白さ。くだらなくバカだが、素晴らしいセンスに脱帽。ほぼ個人製作の FLASHアニメなのに、スゲー。
しかも、意外にも泣ける。これだけ高潔で侠気に溢れた悪の組織があっただろうか。
総統カッコよすぎ。前作は惜しくも見逃したのだが、TV版も含めDVD購入即決。 → その後、TV版「The Frogman Show」と映画版前作「~総統は二度死ぬ~」をDVDで鑑賞。 いや、申し分なし。本作を観た時には、全貌を知らないことだけが満点でない理由だったが、満を持して★5つに変更。 素材使い回しは多用しすぎだが、それも技か。 |
7 | ミスト The Mist |
★★★★ | これほど非道な映画は久しぶりだ。 唐突に地獄がやって来る不条理を描くS・キングの原作をさらに凶悪の極みに押し上げる。 生理的な恐怖をかき立てる前半から、精神的な恐怖をあおる後半を経て、 世界そのものが発する強烈な悪意に打ちのめされる絶望のラストに至り、見終わった時には、 重く暗く苦く厭な厭な厭な気分になる。最後の人物を指さして嘲笑する神か悪魔の顔が見えてくるようだ。 この映画から教訓を読み取ってはならない。なぜなら、この物語世界を司る漠然とした何かは、 その教訓を裏返す罠を仕掛けて来るに違いないからだ。 |
6 | Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼 Mr. Brooks |
★★★★ | お目当ての映画が満席だったので流れて観た作品だが、意外とよくできた一作。 ケヴィン・コスナーが悪辣な殺人鬼役というのが珍しい。 その殺人鬼というのが、家族思いの成功した実業家を表の顔として持つ一方で、殺人の快楽に身をよじる変態でかつ、 保身のために徹底的に理性的に振る舞う完璧なシリアル・キラーなのだ。 最初の頃こそ、欲望を抑えようとしているように見えるが、結局は口先だけで、どうみても止めるつもりはなさそう。 明らかに色んな仕掛けが巧く回ってしてやったりと思ってるし。スプラッターではないがえげつない。 ツッコミどころは多数あるが、それ以上に面白い。 もう少しエキセントリックになるとハンニバル・レクターかバットマンの悪役になる強烈なキャラクター造形と、 相当巧妙に練られたプロットがナイス。 |
May, 2008 | |||
5 | ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There Will Be Blood |
★★★ | 『ノー・カントリー』と並んで2007年度のアカデミー賞8部門にノミネートされ、 主演男優賞と撮影賞を獲得した映画。これも『ノー・カントリー』と同じく相当異形な作品。 欲望というか熱情というか、もっとドロドロした何かを真正面から受け入れ、 ソレに駆り立てられ全てを犠牲にしぶち壊しながら走り続ける男たちの物語。 で、結局、みんなソレに焼き尽くされてしまうのだ。ラストの 「終わった(“I’m finished.” だったかな?)」のセリフにドヒャー。 |
March, 2008 | |||
4 | ノー・カントリー No Country for Old Men |
★★★ | デヴィッド・リンチ作品の一歩手前の不条理・狂気のオーラを放つサスペンス。 コーエン兄弟の作品は、これまでに『バートン・フィンク』を観たことがあるけれど、 そういえば、あれも相当イカれた映画だったなぁ。 こんな異形な映画が、よくもアカデミー4部門(作品・監督・脚色・助演男優)をとったものだと思う。 確かに文学的・哲学的ともいえる語り口で隙の無い作りだけどね。 結局のところ、人間は世界・運命を変えられない、というメッセージを思い切り遠回しに 言っている映画なのかな。 ハビエル・バルデムの死神めいた殺し屋は、評判通り異様なまでに鬼気迫る。 |
January, 2008 | |||
3 | 28週後... 28 Weeks Later |
★★★ | 『28日後』の続編。 一瞬にして人を凶暴化するウイルスにより壊滅した約半年後、ようやく復興が始まった英国を再びウイルス禍が襲う。 個人の視点の脱出行であった前作の爽やかさとはうってかわり、 全体が見渡せる視点から、希望が絶望に塗り込められていく恐怖を描く。 やはり全力疾走で追いかけてくるゾンビ(といっても死者じゃないが)に囲まれるのは怖すぎる。 多分、次作も作られる気がする。タイトルはきっと『28月後』。 |
2 | AVP2 エイリアンズ VS. プレデター Aliens vs. Predator: Requiem |
★★★ | お騒がせ新成人の後始末。といっても、最近の成人式のことではなく、 『エイリアン VS. プレデター』の続編の話。 舞台は南極からアメリカの田舎町に移る。未熟なプレデターを襲って逃げ出し、 人間を喰らってウジャウジャ増殖するエイリアンと、それを始末するために来た偉いプレデターが (来るならもう少し大人数で来た方が...)、地元民を皆殺しにしながら闘うという、前作に輪をかけて迷惑な物語。 そこそこ王道の作りなので、映画雑誌といえば? という質問に「映画秘宝」と答える人なら観てもいいけど、 それほど大した映画ではない。 |
1 | 魍魎の匣 | ★★★ | 『姑獲鳥の夏』に続く京極堂シリーズの映画化第2弾。 ネット上のレビューでは酷評されていることが多いけど、悪くないよ。 多分、原作を知っている人には原作からストーリーが大幅に割愛・改変されている(らしい、 というのは僕も随分前に読んだきりで記憶はおぼろげ)上に、 乱歩的陰鬱さが欠けているし、知らない人にとっては説明不足気味で、 中盤以降のSF要素も唐突に感じられるからだと思うが、これはこれであり。 原作を中途半端に憶えているSFファンなら面白く観られるのは間違いない。 ところで、終戦直後の日本の町並みを中国の田舎町でロケしているのだけど、 どう見ても日本には見えない異空間で、まあ、これも好き嫌いが分かれるかな。 |