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映画日記 2025年 (更新中) |
見た映画の記録です。2025年分です。上の方ほど新しく観たもの。 評価は ★★★★★ が最高。
| No. | タイトル | 評価 | 感想 |
|---|---|---|---|
| 23 | フランケンシュタイン Frankenstein |
★★★★ | ギレルモ・デル・トロが『フランケンシュタイン』を撮ったとなれば観るしかない。 Netflixが自メディア配信用に制作した作品だが、映画館でも上映してくれるのは本当にありがたい。 幾つかの改変を含めて、異形を愛するデル・トロらしさ満載。ラストは原作に準じているようでいて、しかし、 人の道を外れた創造主ヴィクターと、人の埒外の怪物の両者とも救済される美しい描写になっているのもその愛ゆえか。 結局、絶対的な孤独の道を往かざるを得ない怪物だが、解放され自立した彼は、いずれ『ヘルボーイ』 (もちろんデル・トロ版)の味方として登場しそう。 |
| 22 | 火喰鳥を、喰う | ★★★ | 原作は原浩による第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。信州の旧家で祖父、母と暮らす主人公夫婦。 太平洋戦争中に行軍日記を記した大伯父の手帳がパプアニューギニアで発見されたことをきっかけに、理解不能な事象が起き始める。 密林で死んだはずの大伯父の執着が、現実を書き替えようとしているのか… 。 複数の世界線が実在を賭けて闘争する話なので実はSF成分強め。物語のロジックもそちらよりで、言うならばビフ視点の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。 霊能者役のSnowMan宮館涼太の演技が圧が強くて胡散臭すぎる(ほめてる)。 映画館には彼のファンと思しき女性層が多数来ていたが、舘様あれで良かった? |
| 21 | サッパルー! 街を騒がす幽霊が元カノだった件 สัปเหร่อ |
★★★ | 生活の中に霊が息づくタイ東北部イサーン地方の田舎町が舞台のコメディ・ホラー。 自殺した妊婦バイカーオの幽霊が町の人々を脅かしている。そんな中、冥界の彼女に会いたくて、葬儀屋に弟子入りして幽体離脱の技を学ぼうとする 元カレでダメ男のシアンや、葬儀屋を仕方なく手伝う幽霊が怖い息子のドタバタ。 人間関係がわかりづらいし、バイカーオが自殺した理由やシアンが彼女に会いたい理由が結局よくわからなかったり、 また、映画の造りとしてかなり雑で、日本人には移入しづらく低評価にする人も多いようだ。 でも、生活に密着した当地の死生観がかいまみえて僕は結構好きかな。 同地方を舞台にする『女神の継承』とは対照的な雰囲気。 原題の「サッパルー」は葬儀屋の意味。 |
| 20 | 8番出口 | ★★★ | 話題になった同名のインディーズゲームの映画化。ループ状に閉じた地下鉄通路で、異変があれば引き返し、 そうでなければ進んで8回連続で正しい選択をすればゴールというシンプルなゲームに、 現代社会や人生のアナロジーを重ねて様々なメッセージを読み取れるようにした構成が巧い。 「きさらぎ駅」的な〈場所の怪異〉で、ときにホラーな場面はあるものの、ルールは簡明で最初から明示されているし、 判断を間違っても振り出しに戻るだけなので、ランダムに選択してもそのうち元の世界に帰れるある意味優しい造りかと思いきや、 特定の致命的なミスをすると取り込まれてこの怪異の部品になってしまうバッドエンドもありうるようだ。 |
| 19 | 大長編 タローマン 万博大爆破 | ★★★ | 1970年代に製作された特撮映画という体裁の、岡本太郎の作品と言葉をモチーフとしたデタラメでべらぼうな作品。 70年万博を起点に、常識や人類の進歩を否定する岡本太郎の思想を表す、ある意味現代社会を批判的に茶化す娯楽作。 いや、全編隅ずみまでデタラメで、ここまでデタラメを徹底するとは立派だが、考えてみると、よくできた映画になっているということは デタラメの裏に確たる常識・計算がある証拠だし、「岡本太郎もそう言っていた」のセリフ、ナレーションの多用はリズムを生んで面白いが、 権威主義の匂いもする。真に岡本太郎的ではないかも。 |
| 18 | LABYRINTHIA | ★★★ | 中西舞監督による台湾、韓国、日本で撮影された3篇の短編スリラーからなるオムニバス。 若さに執着する女優が招待された秘密の晩餐会の狂気「SWALLOW」、 高層マンションに住むワーキングマザーの娘のベビーシッターとして採用された女子大生を襲う異変「HANA」、 教会で祈る神父のもとを訪れた女性の罪の告白が次第に不穏になっていく「告解」。 それぞれ10~20分、出演人数も多くて6人とコンパクトな作品群。僕が知らなかっただけで新鋭として評価が高い監督だそうだ。 確かに、どれも低予算な造りだが切れ味は鋭い。他の2篇と異なり、「告解」は女性の声音と神父の困惑顔だけで、(女性の人生は不遇だが) 本質的な怪異は起こっていないような。 |
| 17 | 近畿地方のある場所について | ★★★ | 背筋の同題小説を白石晃士監督が映像化。 同監督の『ノロイ』にも通じる恐怖。 さまざまな映像素材や記事から浮かび上がる奇妙な共通点を追ううちに、得体の知れない呪いに絡めとられるオカルト雑誌編集者を描く。 引用される映像群はリアルで不気味で怖い。特にある廃屋に突撃する配信動画はヤバい。あれ、流れるコメントにあちら側からの書き込みが 紛れているのが原作未読だと気づかないかも。 原作には無い最後のアイツとアレは、明らかに外宇宙か異次元からの来訪者で、そのため急にテイストが変わってしまうのは賛否両論。 また、全編を通して理屈が通ってないことに評価を下げる声もあるようだが、呪いに人の理解できる道理を求めちゃだめだよね、 と私は好意的に解釈する派。 |
| 16 | アフリカン・カンフー・ナチス2 逆襲のロボトラー African Kung-Fu Nazis 2 |
★★★ | あのヒドい映画のまさかの続編。
相変わらずアホで下品でデタラメで、各方面にノーガードでケンカを売りに行く不謹慎さだが、
今回はヒトラーがあまり表に出てこないのもあって、不謹慎度合いは前作より控え目。レベル10000が1000になった程度だが。
第二次世界大戦後なのに大日本帝国で大使はカブキ隈取顔の力士だし、ゲッペルスがアレだし、最後はカンフー関係ないし、
そもそも巨大化までするロボット作れるなら戦争に負けてないだろう、とかツッコミどころしかないがそういうボケ特化の映画だからね。
タイミングが合って、監督、プロデューサーの舞台挨拶ありの回を鑑賞。製作秘話的な話は面白かったし、
わざわざこれを見に来る観客の一体感もあって、楽しくはあったな。![]() |
| 15 | IMMACULATE 聖なる胎動 IMMACULATE |
★★★ | アメリカの教区からイタリア郊外の古い修道院に移り暮らすことになったセシリア。清貧な修道生活のはずが、 なぜか妊娠してしまう。周りから処女懐胎の奇跡として祝福されるのだが、怪しい人影が見え隠れし、疑念の声を上げた同僚は謎の自殺や失踪で消えていく。 そして実質的な監禁状態から逃げようとする彼女におぞましく恐ろしい脅威が迫る。 血まみれホラーで、真相はもっとゲスかと思いきや、狂信が導くプロジェクトだったのね。 傷を負い、破水までしてるのに、手段を選ばず逃げて戦い抜くセシリアの吹っ切れた姿が良い。ラストの石を使ったシーンはなかなか衝撃的。 |
| 14 | リライト | ★★★★ | 未来から来た転校生とのひと夏の恋。10年後の自分から託された、転校生の彼が未来からやってくるきっかけとなった小説を書き上げ、 10年前の自分を迎えてタイムループが閉じるはずが... 原作小説は未読だが、さすが上田誠脚本のとんでもなく技巧的なタイムループ青春SFで、ヨーロッパ企画の 『ドロステのはてで僕ら』、『リバー、流れないでよ』に 連なる。 「リライト」の意味が明らかになる中盤で仄めかされる裏切りと不和が、さらに驚愕する真相で覆り、結末はすべての登場人物が爽やかに前を向く見事さ。 それにしても、クラスの中心人物、茂の活躍が神がかり的。 彼は将来、劇団を立ち上げてタイムループものの傑作を数多く生み出すんじゃないかな、きっと。 |
| 13 | JUNK WORLD | ★★★ | 『JUNK HEAD』3部作の第2話、『JUNK HEAD』より1000年前の世界を描く。 前作同様、捻じれて狂った世界観と、グロくてユーモラスな物語は圧倒的で、他に類するものが無いのだが、 一方、映像表現や物語の造りが洗練された分、狂気の熱量を感じづらくなったかな(決して減ったわけじゃないのだが)。 ストップモーションアニメの特異点であること、抜群に面白いことは間違いない。 吹き替え版ではなく、シュワルツェネッガーだの新海誠だの聞き覚えのある単語がちょくちょく空耳で差し込まれるゴニョゴニョ語版日本語字幕で 観るのが正解。 |
| 12 | サブスタンス The Substance |
★★★★ | ルッキズムと若さへの渇望に囚われ、怪しい再生医療に手を出してしまった往年の人気女優の末路。 『整形水』を2段階くらい上回る強烈な大怪作。 肉体が分裂増殖する生々しい描写、ラスト30分の血と臓物飛び散るカオスな地獄絵図はクローネンバーグばりのグロさだが、 両主役、デミ・ムーアとマーガレット・クアリーの鬼気迫る怪演がすさまじくアカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得。 しかし、エリザベスはセクハラプロデューサーの価値観の世界からとっとと離脱するべきだったのだ。 それになぜ明示されたルールを破って自分の身体を粗雑に扱うのか。この結末は自業自得としか。 サブスタンス医療は明らかに人外の産物で、電話の向こうの声の主は多分ヒトの姿をしていない。 |
| 11 | ヴィーナス VENUS |
★★★ | 『REC』のジャウマ・バラゲロ監督によるスペイン発オカルトホラー。 ギャングが運営するナイトクラブからドラッグを盗み出したダンサーが逃げ込んだのは、姉とその幼い娘が暮らすマンションの一室。 上階からの異様な物音、夢の中で何かと交流している娘の奇妙な言動、そして突然姿を消してしまう姉。 迫るギャングの包囲網と、次第に現実を侵食してくる怪異の双方に主人公は立ち向かう。 ラブクラフト「魔女の家の夢」が原案とのことだが原型はほぼ残っていない。 映画は、かなり唐突で意表を突いた終わり方をするのだが、彼女は結局、どういう力を得て何になったのだろう? |
| 10 | 異端者の家 Herestic |
★★★ | モルモン教の若い女性宣教師二人が訪問した町はずれの一軒家。迎えたのは人当たり良くハンサムな初老の男。 穏やかな会話は次第に不穏な宗教論議に様相を変え、知らぬうちに密室となった館で、男は彼女たちにある選択を迫る。 密室脱出の頭脳戦を予想してたら、思ったより陰惨で血みどろのホラー展開。にこやかなヒュー・グラントがこんな恐ろしいとは。 高齢男性が自分のフィールドで若い女性にしつこくマウントかましてる、と考えれば単なるゲスな話だが。 宗教をボードゲームに例えたり、モルモン教を直接揶揄したりと結構攻めてるので、アメリカだと物議を醸してそう。 |
| 9 | ゴーストキラー | ★★★★ | 「ベイビーわるきゅーれ」シリーズでブレイクした高石あかりの初の映画単独主演となるバイオレンスアクション。 同シリーズの監督、アクション監督である阪元裕吾、園村健介がそれぞれ脚本、監督を務め、 シリーズ1作目で敵方主戦力を演じた三元雅芸がバディ役という、 ベビわる組が、高石あかりを改めて世に押し出す映画となった。 ひょんなことから殺し屋の幽霊にとりつかれる女子大生を演じる彼女の硬軟織り交ぜた顔芸・演技・アクションが相当良いし、 一般人だが社会の不正・悪意に自覚的に怒り立ち向かう肚の座った姿も説得力あり。 殺陣の一番ハードなところが憑依した三元雅芸の姿で描かれるのは仕方がないけどちょっと残念かな。 次は、伊澤彩織単独主演作を是非。 |
| 8 | ロングレッグス Longlegs |
★★★ | ニコラス・ケイジが製作に名を連ね、自身が連続殺人者を演じるオカルトサスペンス。 ネットなどではなぜか低評価が多いのだが、かなり良くできてると思う。常に何か悪いものが映ってそうな不穏なカメラワークが怖い。 宗教的でかつ謎めいた連続殺人とそれを追う捜査官コンビという設定に『セブン』を連想してたのに、 よくわからない力・手段で人が死んでいくのが意味不明と感じた人が多いのかも。 でも理を超えた存在を前提にしたオカルトなので、そのロジックで見ないとね。 岸辺露伴のエピソードの一つであれば高評価になってたかな。 |
| 7 | フライト・リスク Flight Risk |
★★★ | アラスカの僻地で逮捕されたマフィアの会計士、マフィアのボスの裁判の証人として彼を護送する保安官補、 彼らをアンカレジに運ぶどこか怪しいセスナのパイロット。 登場人物は実質3人、舞台のほとんどは狭いセスナの中だけなのに、上映時間中切れ目なく続く、手を変え品を変えの危機また危機。 よくぞここまでキレイに詰め込んだと感心する職人技のような作品。 |
| 6 | シンパシー・フォー・ザ・デビル Sympathy for the Devil |
★★★ | 出産する妻が待つ病院に向かう主人公の車をカージャックするエキセントリックな風体の男。 饒舌だが何かかみ合わない言動で主人公を翻弄し、唐突に無関係の人を巻き込む暴力を振るう謎の男を演じるのは 自身もプロデュースに携わるニコラス・ケイジ。 ただ、ニコラス・ケイジがやりそうな役をニコラス・ケイジが演じる、ある意味予想通りの枠を超えない作品。 もうすぐ封切の『ロングレッグス』の前振りと考えておこう。 |
| 5 | 邪悪なるもの Cuando acecha la maldad |
★★★★ | アルゼンチン発のオカルトホラー。かなり出来が良くて相当に怖い。 悪魔憑きが出没し「教会が終わった」世界。アルゼンチン辺境の田舎町で暮らす主人公が、近隣の家族に現れた「腐敗者」を処理しようとするが、 狡猾な悪魔の虚言に惑わされ、そそのかされて、選択肢を間違い続けてしまう。 もともと生きるのが下手で人生の選択を誤ってきた主人公だが、この間違いの代償は甚大で、 家族や多数の人々を次々と巻き込み拡大する惨劇と絶望の結末に繋がっていく。 映画の中では主人公の周辺しか描かれないのだが、ブエノスアイレスや他の国々はどんな状況になってるんだろう。 |
| 4 | ハイパーボリア人 Los Hiperbóreos |
★★ | 『オオカミの家』の C.レオン & J.コシーニャ 長編第2作。 実写をベースとしながらも前作のような奇怪な人形やアニメーションがシームレスに混じる、極度にアーティステックな混沌と狂気の作品。 かなり難解で観ていて置いてきぼりになった。チリの政治史を知ってたらついていけてたかもだが。 ピノチェト政権下で行方不明になった若者の名前を連ねる短編『名前のノート』と併映。 |
| 3 | ヘヴィ・トリップII 俺たち北欧メタル危機一発! Hevimpi reissu |
★★★★ | なんと『ヘヴィ・トリップ』の続編。 前作で起こした騒動で刑務所に収監されている Impaled Rectum の4人が、脱獄してドイツで行われるメタル・フェスへの参加を目指す。 メフィストフェレスのようなプロモーターが持ち掛ける商業主義的成功のための取引が引き起こすメンバー間の軋轢と解散騒動。 ステップアップしたバンドのありふれた危機は前作ほどハチャメチャではないが、下品でくだらないギャグは相変わらずで好し。 それに BABYMETALが出演していることは知っていたが、チョイ役ではなく、かなり重要な役割でストーリーに絡んでいて驚いた。 彼女たちの在り方って商業主義そのものなのは皮肉だが、それも立派なメタル。正解などないんだよね。 |
| 2 | トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦 九龍城寨之圍城 |
★★★★ | 良かった。香港映画まだ生きてた(本土資本はかなり入っているようだが)。 1980年代香港、九龍城を舞台に、黒社会と住民たちの混戦をハイカロリーで描く。 逃げ込んできた主人公と彼の友人となる若い住民たち、数十年にわたり地域を作り束ねてきた黒社会も含めた大人たち (サモ・ハン・キンポーがいる!)が、それぞれ強くて、高低差を生かした肉弾戦がとにかくカッコよくて燃える。 大人たちから主人公らへの世代交代の主題も胸アツ。 香港返還・九龍城取り壊しが予定されるなか、生き残った登場人物たちが、目まぐるしく変化するだろう香港の未来を想い、 それでも変わらないことがあると語り合うラストは香港映画に対する信念・覚悟を感じさせる。 予定されている続編にも期待大。 |
| 1 | 敵 | ★★★ | 筒井康隆による同名の小説を映画化。定年から20年弱、妻をずいぶん前に亡くし、 今は一軒家で丁寧な一人暮らしを送る元大学教授の主人公が、 老いにともなう心身の衰え、広がっていく社会との隙間、ふいに湧き上がる性欲に自制を失い、 不条理な白日夢に囚われていく。そしてそれらは、近づく「敵」に関するネット上のニュースとして形を得ていく。 理性と成熟を体現したような主演の長塚京三が、崩壊する現実に狼狽する様、それをモノクロ映像で描く造りに引き込まれる。 その境遇に近づく我が身としては、年齢を重ねた果てのデッドエンド感に気が重い。 |