★発端
都内の桜の名所……上野、靖国神社、千鳥ヶ淵……で、連続して発見される死体。前日に生存が確認されているそれらの犠牲者は、なぜかすべて白骨化していた。しかも、その白骨は、まるで桜の木の根に抱かれるように絡まれていたのである。さらに異常なことに遺体発見当時、死体の周囲の桜は冬の真っ盛りであるにも関わらず一時的に咲き誇り、死体の周囲には無数の花びらが舞い散っていた。そしてその後、それらの桜は急速に枯死していた。★真相
「オカルト知識」を持つ者は、梶井基次郎という作家の、「桜の木の下には」という短編作品の冒頭の一文を思い出す:
「桜の木の下には、死体が埋まっている!」
PCたちが事件を調べると、いくつかの事柄がわかる。DMは、PCたちの調査の方法や段階に応じて、情報を与えるようにする。
- 被害者は、大なり小なり「霊感の強い」体質である、つまり「悪魔が視える」人々であった
- DDS−NETに出入りしていた「梶井基次郎」というハンドルネームの人物が、最初の事件の前夜からネットへのアクセスを絶っている
- ハンドル「梶井基次郎」の作成した梶井基次郎のウェブページの更新が、最初の事件の前夜で止まっている
事件は「梶井基次郎」こと佐倉 遼平が引き起こしたものである。DDS−NET経由でアーム・ターミナルを受け取った彼は、逆に悪魔によって支配されてしまい、自らの内なる欲求を歪んだ形で実践することになった。即ち、「桜の木の下には死体が埋まっていなくてはならない」と考え、それを実践することになったのである。★展開
彼にとりついた悪魔の狙いは、3つある。1つ目は、自分達の目的の障害となるであろう、転生体(アバター)となる可能性のある「霊感の強い」人間を抹殺すること。2つ目は、桜の花によってなぐさめられて東京の地下に眠っている多くの怨霊達を開放する(そしてゲートパワーを上げる)こと。そして3つ目は、同時に彼らのマグネタイトを集積し、高位の邪神を召喚することである。
ハイテクの「ハッキング」によって「梶井基次郎」の正体をウェブページ元のプロバイダから入手する、「パソコン通信」で「梶井基次郎」と面識のある人物を探して聞き出す、その他裏のコネなどを用いた情報収集などの成功度に応じて、DMは佐倉 遼平のことをPCに明かしてよい。
佐倉のアパートは典型的な独身男性のものである。それ以外に目を引くのは、分厚い梶井基次郎の作品集(夭逝した作家なので数は少ないが)と、様々なオカルト関係の書籍である。直観チェック(もちろんトリックの特技「鋭い勘」も可)に成功すれば、パソコンデスクの脇に投げ出された1冊のオカルト書籍に目が止まる。本にはしおりが挟まれており、いくつかの事柄が目に止まる。この時点で、最後の千鳥ヶ淵での事件から一晩が経過していなければ、次の事件は白金台で起こる。一晩経過していれば、最後の事件は多麿霊園で起こることになる。PCたちは、2つのうちいずれかの場所で、佐倉および彼が操る悪魔達と戦うことになるだろう。
- 東京の桜の名所として、上野、靖国神社、千鳥ヶ淵、白金台、多摩霊園が挙げてある
- 桜の花は死者の霊をなぐさめるためにあり、これが枯れれば数多の怨霊が飛び出してくるだろう
参考までに、敵の例を示す:PCの人数に応じて、DMは3〜5レベル程度の悪魔を、佐倉の仲魔として敵に加えてよい。
- 佐倉(エージェント相当) ×1体
- 妖樹ジュボッコ ×1体
- 邪鬼グレムリン ×2〜3体