AI着色は昭和時代の夢を見るか(その16)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回は前回の続きで、最初の北海道撮影旅行の中から室蘭本線栗山-栗丘間に撮影に行った1972年7月16日に撮影したカットの続編をカラー化します。前の4カットのモノクロ版は<雨の栗山(その1) -1972年7月16日->の中で、後の2カットは<雨の栗山(その2) -1972年7月16日->の中で、それぞれ掲載しています。今回は、敢えてモノクロバージョンとトリミングの位置を揃えましたので、比較してみると面白いかもしれません。

前に掲載したモノクロ版が、各列車とも引きとアップの2カットを取り上げているので、今回も同様のスタイルで行きます。まずは、トンネルがサミットになっている栗山-栗丘間を栗丘側から登って行く上り貨物列車。牽引機は滝川機関区のD51561号機。この列車はカラーポジで撮影したカットもあり、<雨の栗山 カラー版(その3) -1972年7月16日->の中に掲載しています。カラーのカットはちょうどこのコマと次のコマの間に当たるタイミングですから、三つ続けると連続撮影になります。このカットはかなりトリミングしてあるのでわかりにくいですが、列車のいる位置を比較してもらうとわかりやすいでしょう。煙がちょっと妙な色になっていますが、あとは比較的良い線でしょうか。

同列車を引き寄せて、機関車をアップで撮ります。室蘭本線の岩見沢-苫小牧間はほとんど勾配がないですが、この区間のみそこそこアップダウンがあります。特に上り列車に対しては唯一の上り勾配ではないでしょうか。その分貨物列車はかなり気合を入れて力行します。といっても1kmちょっとなので、勾配に入る前に若干石炭を足すものの、溜めた蒸気で走れるので、機関助手は着席していますね。滝川からのロングランですが、当時は石勝線がなく根室本線が道東とのメインラインでしたから、帯広・釧路方面からの本州向け貨物を滝川から東室蘭まで拠点間ノンストップで運ぶ列車でしょうか。そう思ってみると、入換用の前の車掌車がないですね。

続いてやってきたのは、岩見沢第一機関区のC57135号機が牽引する上り旅客列車。これのカラーポジで撮影したカットは、<雨の栗山 カラー版(その4) -1972年7月16日->の中に掲載しています。この時は雨が相当に強く降っていたので、カラーポジの方は露出がギリギリで色ののりがよくなく、かえってこちらのカラー化したバージョンの方が雨の日の雰囲気もよく出ていて、色味としてもいいくらいです。こういうモヤっとした景色は、アドビのAI君なんだか強いんですよね。日本風に「ワビサビ」を学んだんでしょうか。これも、ブローニーが間に挟まる感じのタイミングになりますね。

まだ地味だった頃の135号機を、機関車のアップで撮影します。いったことのある人はわかりますが、ここは国道を斜めにオーバークロスすべくラーメン構造のミニトンネルになっていて、その縁に手摺りがあってまさにお立ち台になっています。そこからの撮影ですね。力行していますし、給水ポンプも使っていますが、石炭は新たには焚いていないようで、雨空一面にドラフトが白い蒸気となって広がっています。黒煙モクモクがお好きな方もおおいですが、ぼくはこういう感じもけっこう好きですよ。これも色は渋くていい感じ。雨粒が見えてきそうな気さえします。

三列車目は、D51とC57が重連で牽引する下りの旅客列車。回送での重連ですが、室蘭本線では珍しい定期の重連なので人気があった列車です。トンネルから出てきたところを上り線の国道立体交差の上から狙います。機関車は岩見沢第一機関区のD51118号機とC5744号機。どちらも最末期まで活躍し、現在も保存されているカマです。このカットのカラー版は<雨の栗山 カラー版(その4) -1972年7月16日->の中に掲載しています。カラー版はモノクロ版より後に、もっと引き寄せてから機関車をアップで撮った構図になっています。国道の濡れた感じもなかなか風情たっぷりに描写していますね。

同列車を列車全体が入る構図で撮影しました。35mm版の3:2の画面をほぼフルに使って編成を収めていますから、このカットのみは前回もノートリミング。今回も同様の処理で行きます。霧雨でモヤっている分、全体が青みがかっています。これはこれで色の処理としてはありだとは思いますが、その分なんだか客車の色が青15号みたいにも見えてきます。まあ、よく見ればぶどう色2号を注した上から青みがった霞を乗っけているのですが。うっすらと見える遠景の山並みや、霧雨の中に淡く上がる蒸気などもけっこう良い感じで処理しています。これはこれで世界を作っているといえるでしょう。
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