AI着色は昭和時代の夢を見るか(その21)
PhotoshopのAIカラー化のニューロフィルターのプラグインの鉄道写真への利用を実験するこのシリーズ。今回から撮影地が変わりますが、前回に引き続き最初の北海道撮影旅行で撮影したカット。今回からは1972年7月14日に行った室蘭本線沼ノ端-遠浅間・千歳線沼ノ端-植苗間で撮影したカットのカラー化をお送りします。これは相当続きますよ。今回掲載したカットのモノクロ版は</「あそこ」での一日 -1972年7月14日-->と<「あそこ」での一日(その2) -1972年7月14日->の中で掲載しています。今回もモノクロ発表時の4:3トリミングではなく、ほぼノートリミングの3:2で作画してみました。また今回もカラーポジで撮った正真正銘のオリジナルカラー版があるカットもありますが、それは<続・「あそこ」での一日 カラー版(その8) -1972年7月14日->に掲載しています。こちらの比較もお楽しみ下さい。

まず最初のカットは、実際に初めて北海道に足を踏み入れ、初めて撮影した蒸気機関車。千歳の駐泊所に佇む、苗穂機関区のC5738号機です。本州にはないタイプの給水塔が目立つ、いかにも北海道といった風情の中で見るC57形式。38号機は渡道したのが比較的遅く、関東・東北のカマのような感じですが、こういう景色だと北海道のカマらしく見えます。北海道に残っているパシフィックをできるだけ多く撮るというのがこのツアーの目的の一つでしたから、初っ端から気合が入ったのは言うまでもありません。西の里の補機にはC58形式が入ってくることもあるので、C57でラッキーというところでしょうか。苗穂のC57は運用が限られていて、なかなか狙いにくいということもありましたし。カラー化は北海道の朝らしいということで、いいんじゃないでしょうか。

次はいよいよ「あそこ」です。やってきたのは、小樽築港機関区のD51138号機が牽引する上り貨物列車。このカット自体は<線路端で見かけた変なモノ その5 -1/1のジオラマ「あそこの立体交差」 1972年7月->で初公開しています。冷蔵車を連ねていますから、本土向けの貨物でしょう。築堤の茂みは得意なところで破綻なくまとめていますが、ガーダー橋をどうするかが見せどころ。思いっきり汚すと共に、彩度を下げて乗り切ってきました。ホンモノは交直流機のローズピンクのような派手な色で非常に目立つのですが、あの色は実物を知っていないと無理だし、まあこれはこれで無難にまとめているということもできるでしょう。

続いて千歳線の築堤によじ登って上り方を捉えます。まずは岩見沢第一機関区のC57104号機の牽引する下り旅客列車。背景の勇払原野は、けっこうそれらしい感じでカラー化してきました。これはまあこんな感じでいいんじゃないでしょうか。しかし、この築堤の中腹。72年のこの時は「あそこ」には数人しかいかなったので、どのコマにもほとんど人が写ってはいません。しかし75年の夏にここを通った時には、築堤が撮影者で埋め尽くされていたのにはビックリ。一気に蒸気機関車を撮影する熱意が失せてしまったのを、今でも覚えています。実際、それ以降半世紀「撮影のための旅行」には出掛けていません。「あそこの人混み」は、そのぐらいのショックがあるインパクトでした。

今度は線路を越えて、築堤の北側の斜面から上り列車を狙います。ギースル・エジェクタを装備した追分機関区のD51345号機が牽引する上り貨物列車。初夏の北洋の幸を満載した冷蔵車と、返空タンク車が連なっています。追分のカマなので、岩見沢から室蘭エリアへの直行でしょう。これも背景の草木の緑は得意技だけあって、なかなかいい感じに仕上げています。夏の北海道の朝らしい雰囲気が出ています。冷蔵車もレ5000の銀色、レ12000の白、レム5000の帯入りと、違いをなかなかウマく表現しています。目の錯覚か、レム5000は青帯に見えるのがご愛敬。全体として見ても、このカラー化は及第点ではないでしょうか。

つぎの下り貨物はメインカットをカラーでしか撮影していませんが、そのカットを参照すると、牽引機は鷲別機関区のD51741号機です。これが下り貨物列車とこのあたりで離合するので、それをなんとか撮ろうという作戦。しかしやってきた下りのセキ返空貨物列車はなんと「団結号」。もうちょっと後になると登場しまくりますが、この頃は来たら運が悪いという感じ。でも、今となってはこれもいい記録ですね。牽引機はナンバーを直接読めるカットが無かったのですが、前回追分機関区のD51343号機と比定致しました。この一つ前の丁度離合する瞬間のカットは<室蘭本線・千歳線 沼ノ端-植苗・遠浅間 -1972年7月14日->に掲載してあります。

続いて下りの貨物がやってきました。岩見沢第一機関区のD5111号機が牽引する貨物列車。機関車の次位にもワフが繋がっていますので、各駅で入換を行う車扱貨物ですね。トラやレなど道内の返空が目立ちます。道内の都市で卸売市場のある都市へは、冷蔵車での出荷があったので、室蘭や苫小牧発ではないでしょうか。バックの勇払原野はこれもいい感じに仕上げていますが、ここって今では苫小牧の新都心になってものスゴい開けているんですよね。駅前の旧市街の衰退ぶりと好対照な感じで。北海道というと限界集落でゴーストタウン化するイメージがありますが、ぎりぎり大札幌圏の苫小牧は、まだニュータウンができるぐらいの勢いがあるんですね。だんだん陽射しが強くなってきたので、色合いくっきりしてきました。

今回の最後は、鷲別機関区のC58425号機の牽引する、上りの車扱貨物列車です。このカットは<「あそこ」での一日(その2) -1972年7月14日->に掲載したものですが、アンダークロスを抜けたところで撮影した次のカットは、<線路端で見かけた変なモノ その5 -1/1のジオラマ「あそこの立体交差」 1972年7月->に掲載しています。本来この時期は苗穂機関区所属だったはずですが、夏季ダイヤ対応で鷲別に貸し出していたものと思われます。汚さはしっかり鷲別流になっていますね。各駅発着対応の車扱貨物で、C58が運用されていたものと思われます。夏の北海道の日の出は早く、まだ朝の内ですので、これから当分「あそこ」のカラー化が続きます。
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