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1996,1997
ラオス旅行記

シェンクアン
ラオスの「頭」の中心にあたる部分は,シェンクアン高原と呼ばれる。標高1200mほど,かなり涼しい。この一角に,先史時代の遺物といわれる,石でできた壷がごろごろころがっている一帯がある。フランス語の"Plaine des Jarres(壷の平原)"から「ジャ―ル平原」と呼ばれるこの場所を見に行くことにした。
空港では3人がかりの出迎えを受けた。1人は運転手,1人はガイド,そして1人は英語の通訳だ。日本での申込時には,全行程日本語ガイド付きとなっていたが,もちろんこれくらいのことで騒ぐようなことはしない。面白いのはガイドと通訳の関係で,これから海外資本導入をねらうご時世からか,どうやら通訳のほうが若干分がいいようだ。こちらが少しラオス語ができるのがわかると,ガイドのほうは心なしかうれしそうにした。
シェンクアン県の県都ポンサワンの街を見下ろす小高い丘の,敷地内にロッジの点在するホテルが宿泊地だ。テラスに出て見ると,向こうに小さな街,そのこちらに青々とした水田と竹林に囲まれた集落が見え,水牛がゆったり歩く,すばらしい光景が広がっていた。その代わり,ぶらっとホテルを出て散歩するとか地元の店で食事をするというわけにはいかなかった。そして,このホテルの食堂のメニューは洋風料理ばかりだった。食べ終った頃,どこの国か,西洋人の団体が入ってきた。この暗い中どこから来たのだろう。

写真左より
シェンクアン高原の風景■
ポンサワンの街を見下ろす■
ホテルからの眺め■

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翌日はジャ―ル平原を見に行った。なんとも不思議な光景だ。直径1mほど,丸くきれいにくり抜かれた石の壷が,他に何もない平原に散らばっている。誰が何のためにどうやって作りここに置いたかは,まったく解明されていないそうだ。ガイドが地面を指差した。草に覆われて気がつかなかったが,直径5mほどの窪んだ部分がある。アメリカがインドシナ介入の際に落とした爆弾の跡だという。そう言われてみれば,そんな窪地が所々にある。空爆の時隠れたという洞窟にも案内してくれた。
車に乗って移動する。ジャ―ル平原以外にほとんど情報を持たずに来てしまったので,どこに連れて行かれるのかは着いてみなければわからない。着いた所には,またもや石の壷が散らばっていた。

写真左より
ジャール平原■
ジャール平原の石壷■
欠けた石壷■

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ここは何というのかと尋ねたら,ガイドが"Plane of Jar thii saong"と答えた。「第2ジャ―ル平原」……。思わず笑ってしまった。そもそもジャ―ル平原というのもフランス人のつけた名前だ。この土地で牛の放牧をしている人々の間では何か呼び方があるのかも知れないが,国民的に共有され得るような地名を自分たちではつけていないのだ。そんな必要も,少なくとも今まではなかったのだろう。
昼食は,ムアン・クンという所の,小さな市場の向かいの小さな食堂でとった。米粉で作った汁麺を食べているうちに,足元に鶏と猫と犬が寄って来た。市場の屋根の向こうに,仏塔が見える。仏塔のある丘に向かう赤茶色の道を,水牛がのんびり登って行く。

写真左より
ポンサワンの街■
ムアン・クンの市場■
食堂の卓上調味料■

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昼食後,再び車に揺られる。大仏が見えてきた。途中で折れた柱に囲まれているだけで,壁や屋根はなくなっている。なぜこんな姿になったのか,互いの英語とラオス語ではうまく聞き出すことができなかった。この寺の名前は紙に書いてもらった。ピアワット寺というそうだ。
続いて仏塔を2つ見た。フン塔とチョームペット塔という。フン塔はさっきの食堂から見えた塔だ。苔むして崩れかけており,レンガを積んで作ったその構造をよく見て取ることができた。チョームペット塔のほうは,完全に樹に覆われており,そう言われなければ土の盛りあがりとしか見えなかった。塔を見終わって丘から降りてきたところでは,地面の一部を縄で区画して,地雷の探査をしていた。

写真左より
ピアワット寺の大仏■
フン塔■
モン族の人々■

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夜は車の迎えが来て,ポンサワンの街まで降りた。ガイドの親戚が経営する食堂で食事をする。疲れていたのか,高原で気圧が低かったのか,この晩の"Beer Lao"は妙に効いた。帰りがけに地元の旅行社に連れて行かれ,半分上の空で売り込みの話を聞いていると,本当に気分が悪くなってしまい,急いでホテルに戻ってもらった。ロッジの点在する斜面を登りながら,ふと見上げると,車も煙突もほとんどないこの国の,高原の街で,しかも雨季には珍しく晴れた空に,これまで見たこともないほどたくさんの星がまたたいている……ようだった。もう1度はっきりと見定めたいと思ったが,星空はバルブ撮影の写真よろしく頭上でぐるぐる回転し始め,……次に気がついた時には,雨が降っていた。
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