記憶のメカニズムを知る

 人間の記憶について考えるとき、大切な概念としてスタニスラフ・グロフ博士が命名した凝縮体験系という現象があります。英語ではSystem of Condensed Experienceといい、略してCOEXシステムといいます。何かの記憶にまつわる他の記憶は、時や場所に関係せず、複合的な関連で思い出されます。この現象をCOEXシステムというのです。

 幼い頃にひとりぼっちにされた記憶があったとします。するとその記憶に関係して「ひとりぼっちの状態」がさまざまに思い出されるのです。それは身体的感覚であったり、何かの事件であったりします。つまり幼い頃のひとりぼっちになった体験に直接関係ある、どこでひとりぼっちになったのかとか、なぜひとりぼっちになったのかという時間的空間的関係のあるさまざまなことが思い出されるよりも、時や場所を越えてさまざまな「ひとりぼっちの状態」が思い出されてくるのです。

 COEXシステムはどのようなレベルの記憶にも介在し、その人の感覚や、物事の解釈に対して影響を与えます。

 たとえば「ひとりぼっちの状態」が悲しい思い出と結びついているとき、その人にとって「ひとりぼっち」=「悲しい」となるので落ちつきがなかったり、一人で何かをすることが嫌いだったりします。

「ひとりぼっちの状態」が楽しい思い出やうれしい思い出と結びついているとき、その人は一人でいることに何の恐怖心も抱きませんから、読書や楽器の練習など一人での作業をまったく嫌がりません。このようにCOEXシステムは、人の行動に影響を与えます。

次の項目「自分史を書く」

Healing Writing

http://www.tsunabuchi.com