“hiroto的”四柱推命入門 第1回


■ はじめに

 以前から初心者向けの解説をしてほしいという要望をいただいています。一応「四柱推命の見方総論」と称して基礎的な見方を解説をしているのですが、どうもそのページだけではあまり初心者向けになっていないようで(それはわかっていたのですが)、それをアップした後も、初心者向けのページをぜひ作ってほしいとの要望を続けていただいております。

 もちろん、四柱推命の基礎については、巷には入門本が増えていますし、またウェブ上でも多くのサイトがあります。私が四柱推命をはじめたころ(1970年代後半)は、もちろん日本ではインターネットは普及しておらず、四柱推命もそんなにポピュラーな占いではなかったと思います。そのころに比べれば、今はずっと初心者に学びやすい環境になりました。
 それで、そういう要望に対しては、あえて他人の商売をじゃまするつもりはないので、適当な参考書を紹介してきたのですが、すると今度は、それらの参考書を読んでもよくわからないので是非ページを開いてほしい、と言われてしまう始末で、「それなら、その著者なりサイトの作者に文句をいえばいいじゃないか!」と言いたいところですが、それではちょっと冷めたすぎるかなと思い、それじゃまあ初心者向けにページを作るか、と重い腰をあげて作り始めたのがこのページであります。

 とはいえ、私はどちらかというとあまのじゃくですから、市販本や他のサイトと同じようなことを書く気にはなりません。そこで、ここに「”hiroto的”四柱推命」と称して、私ならではの見方(というか考え方)を紹介することにしました。

 このページを書くもうひとつの理由は、そういうものをまとめることで、自分のこれまでの勉強の軌跡にもなるし、長年やっていると考え方もどんどん変わってきているので、一度自分の考え方を整理するのもいいかもしれない、と思ったからです。すなわち、他人のためでもありますが、自分のためのページでもあるのです。

 このページをアップする以上、「四柱推命の見方総論」は削除しようかと思ったのですが、完成までずいぶんかかりそうなので、当面残しておくことにします。

 なお、これは”hiroto的”ということですので、従来の入門書とはかなり違うものになるかと思います(徐々に書き進めるので果たしてどういうものになるか想像もつきません)。そのうえ、いわゆる“中国正統”の見方、考え方ではありません。あくまで自説というか私の見方、考え方です。
 と書いていて何ですが、初心者向けとはいいつつ、四柱推命なるものを見たことも聞いたこともないというような初心者向けの内容ではありません。少なくとも、四柱推命に触れたことがある方を対象としていますので、念のため。
 また文章のあやで、多少えらそうな(目線が高い、先生口調の)言い方をすることもあるかと思いますが、ご容赦のほどをいただきたく存じます。

- このページの目次 -

■ “hiroto的”という理由

 “hiroto流”とあえていわないのは、まだ私自身中級の域を出ず、流派を立てるほどの者ではないためです。“流”というのは自己流というように、必ずしも流派を示すというわけではないのですが、流とつけるとまるで流派を名乗っているような感じなので、“的”を使うことにしました。
 別の言い方、例えば、“hiroto風”というと何か料理っぽい(ex. 中華風)ですし、hiroto式というと何だか機械みたい(ex. 電動式)です。まあ升田式(石田流)とか、機械や流派と関係ないものもありますが・・・。とりあえずは、私的な(private)四柱推命ということで“的”を使うことにしました。

 四柱推命は、“八字”とか“命理”とか“子平”とか言い換えることもできるでしょうが、別にそういうところでかっこつけてもしょうがないですし、このサイトのタイトルが四柱推命ですので、hiroto的四柱推命としています。
 また、占いというのは科学ではないし、また術というのも私の感覚に合わないので、四柱推命学とか四柱推命術とかというのはやめてあいまいなままにしています。
 さらに、四柱推命といいながら、四柱を使わず三柱だけのこともあります。しかし原則は四柱でみます。また、三柱推命という言葉は一般的ではありませんから。

■ “hiroto的”四柱推命のあらまし

 前書きが長いですが、もうしばらくおつきあいください。

 前々項でも述べましたが、“hiroto的”四柱推命は中国正統の四柱推命ではありません。主に中国の古典をベースにしていますので多分に中国で使われている言葉や理論、説を含んではいます。しかし、正統でも主流でもないと思います。独学ですから、どこかの流派を受け継いでいるわけでもありません。
 批判を恐れずにいえば、古今東西いろいろな知識を動員し、新説も貪欲に取り入れ、たまには間違いもありますがそれを悪びれもせずに変更し(よくいえば君子豹変)、大げさにいえば発展の可能性のある、そういうものを目指しています。

 “hiroto的”四柱推命には次の3種類の見方というか考え方があります。

   第1 日主を中心として干支の相互関係、バランスを見る。
      ①五行の強弱を重視する
      ②季節、調候を重視する
      ③生剋(合冲刑化などを含む)を重視する

上の①②③は必ずしも矛盾するものではなく、どこに力点をおくかは時と場合によります。

   第2 納音や神殺で判断する。
   第3 命式の特徴を分類し、その分類の中でのよしあしを見る。

 「“hiroto的”四柱推命入門」では、このうち第1の方法について解説していきます。

 ここで、前の3つの方法について述べると、第1は「子平真詮」「滴天髄」などの方法であり、第2は「李虚中命書」や「蘭台妙選」などに示される方法、第3は「淵海子平」等に代表される方法です。この3つの方法は、まずはアプローチの仕方が違うことを理解すべきでしょう。第2の方法は全く違うのであまり混同はされないのですが、かなり四柱推命を知っている人でも、「滴天髄」と「淵海子平」はアプローチの仕方が全く(でもないけど)違うと言われると、「そんなことあらへんやろ~」(大木こだま風)と言われそうです。しかし、2つの方法を混同してしまって、混乱している初心者をたまに見ることがあります。ひとまず「淵海子平」と「滴天髄」は全く別の四柱推命である、という認識をもつ方がいい、と私は思います。
 さらにいえば、それぞれの方法を混用するのは、本来的には、まずいのではないかと考えます。第1なら第1、第2なら第2なりの見方で押し通すのが正しいのでは。また混用するからこそ、四柱推命は難しく感じられたり混乱したりするのだと思います。
 例えば、格局に対する概念は、「淵海子平」と「滴天髄」では全く違うといえます。同じ格局という用語を使いますが、また同じ名称の格もありますが、考え方はちょっと違います。
 ただ、私は(占術というのは)何も学術的なことをやっているわけではありませんから、その辺の厳密性は気にしていません。実用性があるなら(当たるなら)、正統性などにこだわってもしょうもない、とも思います。(いいとこどりしたっていいじゃない?))
 この辺の詳細については、別に論じることにして、先へ進みましょう。

 上の3つの方法はさておき、これ以降は第1の方法について述べていきます。

 上の繰り返しになるところもありますが、私の自覚していることは、次のようなことです。
   (1)正統ではないこと
   (2)学問(科学)ではないこと
   (3)四柱推命が万人に当てはまるわけではないこと
 (1)で言っていることは、ここで説明する見方は、は私自身が独学で身に着けたものであり、師についたわけではないことも含めて言っています。また、雑多な知識の集積ですから、首尾一貫していないところも多くあります。したがって正統などと呼べる代物ではありません。
 (2)は、万人の認める公理や仮説にしたがって矛盾なく理論が構築されているわけではなく、また統計的厳密性をもって帰納的に結論が得られているものではないということを言っています。まあ、はっきりいって矛盾だらけですし、経験的にいえるといっても感覚的なもので統計をとって証明したわけではありません。
 また、(2)で言っていることは、内容ばかりでなく知識を身につけるアプローチの仕方も学問的正攻法ではないということも含んでいます。まあ行き当たりばったりというところが多いです。
 (3)については、四柱推命の限界について言っています。四柱推命は、私の感覚では5~20%の人は当たりません、というか当てはまりません。したがって、10人に1、2人ぐらい違っているのはあたりまえ、と思っています。こういうことをはっきりと言っている術者はあまりいないようですが、台湾の梁湘潤師などは正直に85%ぐらいと言っています。(『大流年判例』)
 もちろん、やる以上は精度を高めていく努力は必要だというのは当然のことです。それでも、95%以上は無理だというのが私の勘です。99%以上当たるという人がいたとしたら、それは四柱推命単独ではなく、別の要素、例えば霊感とか別の占い(卜や相)とか、はたまたカウンセリング技術とかを使った結果だと思っています。以上のようなことを「占術閑話」に書いていますので、参照してください。

 以下本論に入りますが、入門とはいえ、専門用語を断りなく使います。言葉の意味については「四柱推命辞典」を参照してください。
 不親切だとは思いますが、同じことは2度書きたくないので、私の別のページに書かれていることに対してはリンクを張りますので、そのページを参照してください。
 またいちいち“hiroto的四柱推命”というのは長いので、以降は単に、“hiroto的” と呼ぶことにします。

■ “hiroto的”の基礎知識

 “hiroto的”を説明する前に、共通して知っておくべきことを以下にのべます。

 非常に基本的なことについては、すでに「中国占術の基礎知識」のページで紹介していますのでそれを参照してください。
 以下は“hiroto的”に限らず、四柱推命を志す者は必修項目です。
   (1)干支等の用語は必ず漢字で書けること。
   (2)干支は途中からも逆からも言えるようになること。
   (3)干支と五行の関係を記憶すること
   (4)五行生剋はどちらがどちらを生剋するのかを覚えること。
意外とこれらの基本的なことができない初心者が多いと聞きます。もっとも、やっているうちに身につくものではありますが、なにごとも基礎は大事です。

 この他に基礎知識として必須の事項に万年暦の見方があります。そう難しいことではないので、他のサイトや入門書を参照してください。私は、暦計算を使って自前のEXCELのソフトを使っていますが(太陽黄経を計算するため)、命式だけなら万年暦を使う方が簡単だと思います。

 なお、入門書で甲をA、乙をa等々とアルファベットや数字で置き換えている本があります。その本一冊で四柱推命をやめるならそれはそれでいいのですが、勉強を継続していくつもりならば、そういう入門書は十干十二支を覚えた後で読むことをおすすめします。まずは、アルファベットとか数字ではなく、十干十二支で覚えるべきです。
 ただし、ここで「十干十二支を覚えた後で読むことをおすすめ」というのは、実はそういう本でも内容はいいことを書いていることが結構あって、干支の代わりに数字やアルファベットを使っているからといって、中身まで捨てるのは「いかにも惜しい」と思うことは少なくないからです。ですから、そういう本に向き合うには、まずいったん干支になじんで、その本の記号が何の干支にあたるのかがわかってから、その本の本文を読むのがよいと思います。経験者の私がいうのですから間違いありません。もっとも、最近は記号化する本が減ってきたようで、よい傾向だと思います。

■ 命式の出し方

 命式の出し方というタイトルで書き出したわりには不親切ですが、命式の出し方や万年暦の見方などについては、市販の入門書や他のサイトを参照してください。

 ただし、“hiroto的”においては、次の点が一般的な四柱推命の本と違います。
   (1)一日の境は亥時と子時の間。子時を一日の始まりとする。
   (2)一年の境は丑月と寅月の間。すなわち立春を一年の始まりとする。
   (3)月令(月支蔵干)は太陽黄経の度数をもとに決める。
 (1)はすなわち、夜の11時を一日の境とします。夜子時は採りません。夜子時については、「夜子時問題」を参照してください。
 また、冬至を一年の境とする説(冬至換年柱之説といいます)がありますが、これも採用しません。一年の始まりは立春とします。立春以前は前年とします。
 太陽黄経の度数については、二十四節気の表から求めることができます。二十四節気と太陽黄経との関係は「暦の基礎知識」を参照してください。太陽は1日に約1度進みますから、最も近い二十四節気からの日数をその二十四節気の太陽黄経に加えればいいです。

 月令については、次の表を参照してください。


太陽黄経315°
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351°
351°
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27°
 27°
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 45°
 45°
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 81°
81°
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117°
117°
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135°
135°
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171°
171°
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207°
207°
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225°
225°
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261°
261°
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297°
297°
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315°
月令

 このあたりの考え方については、『四柱推命 暦と運命への科学的アプローチ』 (松倉、甘木著)に詳しいです。
 上の太陽黄経の考え方は簡単で、360度を10で割った度数(すなわち36度)を各干に割り当てているだけです。土用(戊己)は4回ありますから、それぞれ18度ずつ割り振っています。例えば、立春の太陽黄経は315度ですから、甲は315+36=351度まで、乙は351+36=387、すなまち27度まで、次の戊は27+18=45度までとなります。春は甲乙戊までで90度となります。以降は同じです。
 なぜ春は戊、夏は己、秋は戊、冬は己かというと、春は寅卯辰で辰月が土用ですが、辰は陽支なので陽干である戊を月令としています。夏は巳午未で未は陰支ですので己を採用しています。しかしこの論は実は少し変で、夏の場合巳は陰支ですが、月令は丙で陽干をとっています。ですからこの論拠は若干うそくさいのですが、実用上問題にはなりません。というのは、月令が戊か己かの差はあまりないためです。
 いずれにしても、これが“hiroto”的だと思ってください。

■ 変通星、十二運、地支蔵干

 変通星(六親)、十二運については、市販の入門書や他のサイトを見ればわかります。“hiroto的”で違うのは次の点です。
   (1)十二運は五行十二運を使います。土は火に同じです。
   (2)支には月令以外には変通星をつけません。
   (3)地支蔵干は、月令と同じ干の他、会(三合)を採用します。
 (1)については、「十二運論集」を参照してください。ここでは私の採用している十二運表のみをあげます。


日干五行
木行
火土行
金行
水行
 生:長生、沐:沐浴、冠:冠帯、禄:建禄、旺:帝旺

 ただし、本を読む場合は一般的な十二運も知っておく必要があります。一般的な十二運は、「陽生陰死、陽順陰逆」です。すなわち、陽が長生、陰が死で、順番も逆になります。そのほか、陽と陰では建禄と帝旺が逆、胎と絶が逆です。例えば、甲の長生は亥ですが、乙では死となりますし、寅は甲の建禄で乙の帝旺、申は甲の絶で乙の胎です。またそれぞれは逆になります。こうやって覚えると覚えやすいと思います。もっとも生旺墓を飲み込んでいないといけませんが。

 (2)については、流派によって十二支にいろいろと変通星をつける(すなわち蔵干すべてに変通星をつける)人がいますが、“hiroto的”では変通星をわざわざつけるようなことはしません。ただし、変通星をすぐに思い浮かべられる必要はあります。というのは、古典や他書を読むときに必要だからです。“hiroto的”では単に変通星をわざわざ書かないというだけのことです。

 (3)については、次のような配当です。とくに月令の深さで区別はしません。また四孟支(寅巳申亥)には土の余気はとりませんし、午に土は含めません。あくまで月令(方)および会のみを認めるだけです。四孟支は会の陽干、四季支(丑辰未戌)は会の陰干をとっています。例えば、水の三合会局は申子辰ですが、申はには壬、辰には癸を蔵干としています。


地支
蔵干月令壬癸癸己甲 甲乙乙戊丙 丙丁丁己庚 庚辛辛戊壬 
三合----

 “hiroto的”では、蔵干の深さは考えません。古典や他書を読むときには必要ですから知識として知っておくべきでしょうが、“hiroto的”の実占では使いません。

■ 命宮、胎元

 命宮や胎元は七政や六壬(推命)では使いますが、四柱推命、とくに第1の方法では使いません。それらを重視する術者もいますが、私は使いません。
 命宮は他の占術で使いますが、胎元にいたっては、受胎日時を正確に出す方法がありません。胎元で使う受胎日は生年月日から計算しますが、昔は未熟児は早く亡くなるため、少なくとも受胎月は大きく外れることはなかったと思います。しかし、これだけ未熟児が生まれて元気に育つ現代においては、生年月日から受胎月を計算するのは通用しないものだと思います。もちろん生まれたときの医者の話から受胎月はわかりますが、果たして生まれたときに何グラムあって、妊娠何ヶ月目かを知っている人がどのくらいいるものか?
 命宮は生まれたときの上昇宮ですから、生時がわかれば正しく出せます。が、そもそも四柱推命は占星術とは体系が違うと考えています。例えば、袁樹珊師は命宮を見ていますが、その見方も使ったり使わなかったりで、その区別がどうもはっきりしない印象を受けます。

■ 行運

 hiroto的においては、行運として、大運、太歳(流年)、月運(流月)、日運を見ます。しかし日運は死期などを見る場合以外には使いません。小運(小限)もまず使いません。

 大運の出し方は、市販の本や他のサイトを参照してください。“hiroto的”では一般の出し方と変わりません。他に大運の出し方としては高木乗師の方法がありますが、“hiroto的”では採用していません。
 しかし立運年の計算方法は、他書とは若干違います。他書では、二十四節気からの日数を3で割るという方法が普通書かれていると思いますが、“hiroto的”では太陽黄経を用います。前に述べた太陽黄経の簡易計算ならば(すなわち太陽が1日に1度進むとすれば)同じことになりますが、パソコンなどで太陽黄経を正確に計算すると少し違ってきます。これについては、「占術閑話」の中に大運の計算方法として載せています。
 なぜ太陽黄経を使うかといえば、二十四節気が太陽黄経に基づいて計算されているからです。基準日が太陽黄経で計算される以上、立運年も太陽黄経で計算すべきだと考えます。もっとも太陽黄経の計算はめんどくさいですが、何も計算せずとも天文年鑑などを引けばわかりますし、最近は暦計算のサイトもあります。
 ただし私は、大運の境目を厳密に計算することは実用上はあまり意味がないとは思っています。このあたりは我ながらちょっと矛盾した感はありますが。

■ 時差の問題

 香港や台湾などとは1時間の時差があり、韓国とは時差がないことはご存知かと思います。しかし正確にいえば、日本国内でも日本標準時とのずれはあります。地球の自転は1日約24時間で1周(360度)しますから、1時間に15度回ることになります。すなわち地上からみれば、1時間に太陽は15度進みます。東から太陽が昇るのですから、高度差を別にすれば、おおむね、北海道→東北関東→北陸→近畿→中国四国→九州の順に時間が進むことになります。
 例えば、北海道根室市は東経145.6度、鹿児島県南さつま市は東経130.3度、私がかつて(2007~2009年ごろ)住んでいたソウル市永登浦区は126.9度です。日本標準時(韓国も同じ)は135度ですから、根室市は42分(60分×10.6度÷15度)標準時よりも早く、南さつま市は19分遅れ、ソウル市は32分遅れていることになります。すなわち根室市で昼の12時30分に生まれた場合、実際には昼の1時12分生まれということになります。このように本当は生まれた時間にこれらの時間差を考慮しなければなりません。
 最近は母子手帳には正確な時間が記載されていると思いますが、生まれた瞬間をどのタイミングと判断するかでなかなか難しいものがあります。ですから、時の境に生まれた場合は両方の生まれ時で命式を立てる方がいいかもしれません。

■ 例題

命式例1

 例えば、この文を書いている時刻、2009年4月15日午後8時生まれ(出生地日本)の男命であれば、下のような命式ができます。4月の節入りは5日の子時ですから、太陽黄経は約26度で月令は乙、立運は3.7年ということになります。ただし、正確には25.6度で、月令は乙でいいのですが、節入りから10.6度で、立運は3.5年ということになります。後述しますが、大運の細かな年数は、実はたいして意味がないと考えています。下の表では四捨五入して4年としています。なお、わかるとは思いますが、左から時柱、日柱、月柱、年柱、大運となっています。


七殺日主偏印印綬:54443424144
食神傷官偏財正財七殺正官
月令正財

 人の鑑定や人に説明するときには、たぶんにこけおどしの部分もあって、上のような命式を作成します。しかし、変通星とか十二運とかはやっているうちに覚えますから、次のような命式で十分でしょう。私の場合も自分で見るときは、次のような表しか作りません。


:6454443424144

 このように簡単な表しか作らない理由は、変通星や十二運は覚えているという理由もありますが、例えば丙庚と丁辛では同じ七殺でも意味が大きく異なるためです。字面にとらわれないようあえて書いていないということもあります。

命式例2

 もうひとつ例題。1974年7月21日昼12時生まれの男性の場合を考えてみましょう。ウェブサイトで調べると日干支は癸亥です。初心者にはちょっと難しいでしょうが、本来はこれだけの情報で命式が立てられなければなりません。さすがに日干支まで計算で出したり(やってやれないことはないですが)覚えるのは難しいです。

 では、その方法とは?
   ①1974年は末尾が4なので甲年です。
   ②2009年は丑年で、2010年は寅年です。
    すると1974年は2010年の36年前ですから寅年です。
   ③7月の節入は大体7日ぐらいですから、この日は未月です。
   ④甲年の未月は辛未月となります。(これぐらいは覚えましょう)
   ⑤12時は午時です。癸日の午時は戊午です。
   ⑥7月7日から数えると21日は14日目です。3で割ると4.7です。
    陽年生まれの男性ですから順運であり、10-4.7=6.3年が立運です。
    これは簡易計算法なので、立運は約6年とします。
    なお正確には太陽黄経は118.5度です。
   ⑦月令はこの場合微妙ですが、未月で節入から13日以上なら己となります。
    月令については、太陽黄経を暦かウェブサイトを使って出した方がよいでしょう。
 すると、命式は次のようになります。


:6656463626166

 このように生年月日と日干支で命式を立てられるのですが、節入日近辺や土用の入りのあたりは万年暦や暦のサイトで正確に確認した方がいいでしょう。
 このようにできるために便利な表をあげます。これは五鼠遁干法の表です。


甲、己乙、庚丙、辛丁、壬戊、癸
 木 火 土 金 水

 使い方ですが、例えば甲日や己日の場合は子時の干は甲木であり、順に乙丑時、丙寅時・・・、となります。乙日や庚日の場合は子時の干は丙火であり、順に丁丑時、戊寅時・・・、という具合です。年月も同様で、甲年や己年の場合は、子月丑月は前年になりますが、甲子から始まるため、寅月の干は丙であり、順に丁卯月、戊辰月・・・、というふうになります。

命式例3

 しつこいようですが、もう1例とりあげます。
 1970年1月2日午後11時30分に生まれた女性の場合はどうでしょうか。
 この場合、立春前の生まれですから、前年1969年の干支をとり、己酉年となります。
 1970年1月の節入は1月6日ですから、月干支は前月干支である丙子月となります。
 1月2日の日干支は壬午ですが、“hiroto的”では午後11時を一日の境としますので、この人の生まれ日の干支は癸未とします。
 癸日の子時は五鼠遁干法を使えば、壬子時ということになります。
 この日の太陽黄経は281.8度です。1月の節入りまであと約2日です。月令は癸となります。大運は約1年に相当します。女性で陰干支の年の生まれですから順運ということになり、立運は1年ということになります。


:6151413121111

■ 命式の見方 概説

 以下からは、以前にあげた第1の方法について概説します。その方法は主として「滴天髄」で述べられている方法です。
 その方法のおおざっぱな順序は次のとおりです。
   (1)干支が互いにどのような関係にあるかをみる。
   (2)命式における日干やその他の干支の相対的な強さをみる。
   (3)命式としての調和を図るのに必要か不要か障害になるかをみる。
   (4)命式の高低を見極める
   (5)干支、変通星、十二運などの象意を用いて具体化する。
 多くの本が、干支の相互関係をおおざっぱに述べて、変通星や十二運を出してその特徴を述べ、さらに五行の強弱を測定し、格局に分類する、という順序で述べていますが、実は干支の相互関係を十分に把握しなければ、すなわち(1)の作業を十分に行わなければ(2)以下の作業はできません。
 まずは、(1)~(5)のおおざっぱな説明をしたあと、それぞれについて、とくに詳述していこうと思います。

(1)干支の相互関係

 干支の相互関係には、①天干と天干 ②地支と地支 ③天干と地支 の3つがあります。ただ③のうち、日干と月支(季節)は別に考えた方がいいでしょう。
 また、行運を考えると、行運の干支と命式の干支との関係があります。
 この相互関係によって、ある干支、とくに日干の受ける作用を明らかにすることが、この作業の最終目的です。
 実はこの作業が最も大変というか難解で、これがわかれば、以下の作業はとっても楽です。

(2)干支の強弱の判断

 「命式雑論」で述べていますが、日干が自分を示すので、とくに日干が命式において強いのか弱いのかを判断することが重要です。また、命式中で最も強い干支、五行は何かということも判定せねばいけません。
 もっとも(1)で干支の相互関係がしっかり把握できていれば、それらの影響の強弱を判断すればいいわけですから、本来そう難しい作業ではないはずです。ところが、命式によっては判断に苦しむものも出てきます。強弱の差が微妙な命式や、あとで述べますが、いわゆる従格や両神成象格の場合は悩みます。
 この判定を誤れば、吉凶は全く逆になることもありえるわけで、このプロセスもまた非常に大事です。

(3)干支の調和の図り方

 これはいわゆる喜忌の判定方法のことです。
 喜忌を出すためには格局を知らなければならない、という専門家もいますが、私は特に格局の名称を知らなくても喜忌は判断できると思います。実は格局を決める作業と喜忌を決める作業は同じです。
 調和の図り方の詳細は後述しますが、大雑把に分けると次の4つの方法があります。
   ・命式の五行、干支の均衡、平均化を図る。
   ・ある状態に従う。(集団がリーダーに従うようなもの)
   ・命式の干支の作用の流れを作る。
   ・命式の寒暖燥湿など気候的な均衡を図る。
中級レベルの人なら、順に扶抑、専旺、通関、調候というのがわかるでしょう。調候用神は気候的なものばかりでありませんが(例えば鍛錬)、そういうのも含めて気候的と称しました。
 なお、用神法にはこの他に病薬という方法がありますが、これは調和を図るというのとは若干意味が違います。これも後ほど述べることにします。
 どういうふうに使うかには原則というのがあって、(2)のプロセスをきちんと行っていればそう難しいことではないのですが、言葉が難しいためか、この喜忌、用神でつまづくことが多いようです。

(4)命式の高低

 これは(5)の象意と似たところがありますが、吉凶禍福成敗の程度を判断するものです。例えば成功するなら、どのくらい成功するのか、どういう形で成功するのか、具体的に例えを言うと、総理大臣として成功するのか、村長として成功するのか、会社の社長で成功するのか、などを判断するものです。
 ただこれも簡単でなく、命格が高いかなと判断してもたいして出世していないこともあり、なかなか一筋縄ではいきません。ここは、私のあまり自信のないところですし、上級者でなければなかなか正しい判断は無理でしょう。(私自身は中級者との認識です)

(5)象意の取り方

 (4)までは喜忌、吉凶の話だったわけですが、これだけでは占いとしては不完全です。吉凶がどのような形で現実化するのかということがわからないと対応のしようがありません。とはいえ、実はこれもまた難しく、霊感がない限りピタリと当てることは不可能です。しかし、例えば行運が凶で病気のようだと判断できたとき、それが消化系統なのか循環系統なのかというぐらい判断ができれば、占いとしては有用、ほぼ完璧といってよいでしょう。あとは医学的に対応していけばよく、例えばその時期には人間ドックに入るとかすればいいわけです。
 まあ、象意というのは占いの永遠のテーマといってよいでしょう。私はあまり得意ではありませんので、実は象意についてはすっ飛ばしたいところですが、それでも勇を奮って、ある程度は解説を加えたいと思います。

 以上の5つが“hiroto的”の第1の方法のほとんどすべてです。気づいた方はいるかと思いますが、実はこれは「滴天髄」に示されていることとほぼ同じです。しかし「滴天髄」は、理論(というか理屈)ばかりで具体的に書かれていませんし、また解釈の仕方もいくとおりもあり、さらに学ぶべき順序みたいなものを示されていませんから、非常に難解だとされてきました。

 ところで、私がここで書きたかったのは、“hiroto的”四柱推命の学ぶべき順序であり、構成であります。この5つの項目について順序よく整理すれば、学びやすいのではないかと思います。

 第2回以降、実占にすぐ役立つことはなるべく伝えて、さらにできるだけ具体例を入れて、なるべく読む人が飽きないようにくふうしたいと思います。
 できた順にアップしますので、果たして何回になるかわかりません。また、時折脱線することもあるかもしれません。ご了承ください。


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   作成  2009年 7月19日
   改訂  2021年 9月25日  フォーム見直し、一部追記


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