His Diary

近況報告

 記といっても、三日坊主になるのは目にみえているので、

徒然なるままに、思いついたら綴っていきます。

日記フリークの方、またちょっと時間のある方、

私の近況を知りたい方。(そんな人いないか・・・)

つぶしに、どうぞ。

 

★2004年★ 

4月 5月 6月 7月 8月 9月  11月  12月

★2005年★

1月  2月  3月

★2003年4月〜2004年3月★

★2002年4月〜2003年3月★

★2001年4月〜2002年3月★

★2000年4月〜2001年3月★

★1999年4月〜2000年3月★

★1998年4月〜1999年3月★

★1997年6月〜1998年3月★

 



3月の予定

今のところ東京

WHAT'S NEW

Magazine For New Travelers
Coyote

5月号 進行中!


 

 

2005年3月9日(水         スピティに似た

 

昨日あたりから、花粉の飛散量が一挙に増えた。
花粉情報とかで知るよりも前に、この身が反応してしまうのである。
飛散量なんか測ることのできる能力があるのなら、
もっと他のところに発揮してもらいたいもんである。
たとえば、運動神経とか、集中力とか、当たる宝くじ売り場をみつける勘だとか……。

ヒノキの花粉にも、反応するので、
ゴールデンウイーク明けまで、辛い日々が続く。
どこかに逃げたいものであるが、
仕事の予定表を見ると、ずっと東京ベースである。
こういう時こそ、ヒマラヤあたりに行きたい。
スピティなんて、どうだろう。
まだ雪解け間近い寒い頃だろうけれど、
空が澄んでいるだろうなぁ。
……などと思いを巡らせていても、しかたがない。
前向きに花粉と闘うしかないようだ。

花粉から逃げ出せない方々に、
清涼剤をひとつ。
『タイマグラばあちゃん』というドキュメンタリー映画がある。
昨年、観た映画なのだが、さまざまなシーンが脳裏に焼きついている。
主人公のおばあちゃんの顔、時計の打つ音、コブシの白い花……。
日本の山村のその淡々とした映像から、スピティで感じていたことを思い出した。
なにげない日常の積み重ねと季節の移ろい。
そして、そこに流れる時間。
忘れかけていた何かが、そこにあるような気がした。
何年にもわたって取材している監督の優しい視線にも共感がもてた。

この映画がアンコール上映するという知らせが届いた。

タイマグラばあちゃん
ポレポレ東中野 3月12日(土)〜3週間
(1)14:00〜 (2)16:30〜 (3)19:30〜の3回上映
東京・ポレポレ東中野/TEL 03-3371-0088 

日本各地でもこれから上映するところもあるので、
気になった方は、チェックしてみてください。

 


   

 

2005年2月28日(月         如月から弥生へ

 

あっという間に、2月が終ってしまった。
閏年でもないので、たったの28日しかないのだ。
実は、2月は誕生月なのだが、
40歳を超えると渋谷区住民は、
誕生月の2カ月前から無料の健康診断が受けられる。
その診断書は、トライアスロンのレースとかにも提出できるので、
結構、重宝する。
その期限も本日まで。
あわてて馴染みの病院に飛び込んだ。
そんな感じで、1月から2月にかけては、
さまざまな雑事をサボってしまっている。
この日記も更新できず、かなりの方から、お伺いのメールがきた。
まだ、返信さえも滞っているのだが(すいません)、
今流行りのインフルエンザでダウンしているのではないかとか、
なかには、『生きてますか?』なんて、メールまで飛び込んできた。
ありがたいことである。
ご心配をおかけしました。
元気で、生きております。
実は、ある原稿に集中していて、他のことが手につかなかったというのが本音だ。
その原稿も山を越え、あと少しで着地しそうだ。
それが終ったら、確定申告やら、次の原稿やら、まだまだ続くが、
精神的には、大分楽になると思う。

そうそう、この2カ月で大きく変わったことがある。
それは、とうとう携帯電話を持つことになった。
さすがに、仕事上、持っていないとヤバくなったのだ。
かかってくる電話を待つだけだけれど、
なんとなく息苦しいのは、現代人の辛さか。
あ、それからひとつ聞いてみたいことがある。
実際に携帯電話を使ってみると、
ほとんど外出している時は、マナーモード。
たぶんほとんどの人も、そうやっているはずだ。
着メロがどうして流行るのかわからないのである。

更新をしばらくサボっていたおわびに、
甘党の僕がおすすめの品をふたつ。
羽田空港の新しくできたターミナルに行くことがあったら、
せひ、KEITH MANHATTANのローストナッツブラウニーをお試しあれ。
8個入りで、安価なわりに濃厚な繊細な味で、病みつきになるはず。
この空港と中部国際空港(名古屋)の限定商品だそうだ。
週末は、夕方には売りきれるというから、お早めに。
それから、今年もハーゲンダッツがやってくれました。
昨年の冬にはまった『あずき』を買いに行って、みつけた『チャイ』!
こりゃ、すごい。
ちゃんとカルダモンの薫りや味がして、
大人の味です。

嫌な花粉の時期になった。
まだ例のマスクをしてはいないが、
今年は花粉が多いようなので、
やはり、カラス天狗になる日も近そうである。

 


 

2005年1月6日(木         年はじめにしては……

 

 

年が明けた。
ここ数年は、実家に戻って正月をしている。
紅白を見て、みかんを食べて、年越しそばを食べて、お節料理に舌鼓を打つ。
子供の頃にしたような、型にはまった正月である。
とはいっても、お年玉はもらうほうからあげるほうへと変わったが……。
そんな平凡な正月が愛おしく感じるのは、歳を重ねたせいだろうか。

東京に戻ってきたら、梅が綻んでいた。
まだ昨年のうちから花粉は飛んでいるし、
絶対に、すべてが少しずつ狂いだしているような気がする。
国内外とも、自然が怒っているようだ。
スマトラ島沖の地震と津波……。
馴染みのある場所だけに、心が痛んだ。
昨年チベット方面を長期取材をした時に、
旅先で出会った多くのバックパッカーたちにインタビューを試みた。
かつて自分でもしてきたような旅をしている彼らとの語らいは、
ほろ苦くも懐かしいひとときだった。
長期旅行者も多かったのだが、
その後は東南アジア方面に行く予定だと言っていた旅人もいて
安否も心配である。
連絡先もわからないので、
元気で旅を続けていることを願わずにはいられない。

後厄も終った。
ここ数年、いろんなところにガタがきて、体調もイマイチだった。
そういう年まわりなのだ。
昨年は吸収の年だったように思う。
それを外に向けて放出する時期にきている。
ここ数カ月は図書館通いの
あいかわらずの毎日になりそうだが、
牛歩の歩みでも進むしかないようだ。

・・・・とここまで書いて読み返してみると、
なんと年頭の挨拶にしては、しょぼい感じ。
どうも宝くじがはずれたのが、影響しているらしい。
当たるわけないと思っていたくせに、
潜在意識のどこかで期待していたのかもしれない。
ホントに、わかりやすい性格だなぁ。


 

 

2004年12月9日(木         白いやつ

 

 

こういう仕事をしていると、
さまざまな雑誌が送られてくる。
その中には、犬のペット雑誌もある。
知り合いの編集者が、毎月送ってくれるのだ。
元来、動物好きなので、その雑誌を読んでいるうちに、
かなり犬についても詳しくなった。

しかしながら、旅が多い僕には、
ペットを飼うのは、至難の技である。
この部屋にいる生き物といえば、
せいぜいサボテンとか竹とか、
手間のかからない植物くらいなもんである。

実は、先日行ったロタ島から、ペットを連れて戻ってきた。
飛行機の中は、揺れたためか、かなりご機嫌斜めだったが、
それでもなんとか日本の気候にも慣れ、
毎日、すくすく育っている。
大好物は、無調整の牛乳。
これさえ与えておけば、文句もいわずに元気になるから、
手間がかからない。

ロタ島でチャモロ家庭料理のレストランをしている日本人から
譲り受けた、この白いやつの正体は……。
『カスピ海ヨーグルト』
普段、僕は毎日ヨーグルトを食べている。、
ロタでスーパーマケットをしらみつぶしで探したのだが、
みつけることができずに困っている時に、
その方が家で作っているカスピ海ヨーグルトを少しわけてくれたのだ。
このヨーグルト、市販のものより粘り気があって、かなり気に入った。
それに、おもしろいように増えるのだ。
菌なのだから、あたり前なのだけれど、
意志を持っている生き物のような気がしてくるから不思議だ。
その日の天候や気温にも左右されるし、
ちょっとでもゆらすとフキゲンになって、なかなか固まらない。
冷え冷えのままの牛乳よりは、常温の牛乳の方が好みのようで、早く固まる。
脂肪の少ない調整した牛乳だと、ドロドロになるし、
生乳だと、すこぶる機嫌が良く、しっとり。

はちみつやメープルシロップ、ブルーべリージャムなど、
気分にあわせてトッピングを変える。
甘党のささやかな毎日の楽しみである。
明日から少し留守にするのだが、
無事、元気でいてくれるか、少し不安である。
 


 

 

 

2004年11月11日(木         ブヒブヒの大群

 

 

日曜日にチベット方面の長期取材から戻った。
1カ月半も留守にしたのは、久しぶりだったので、
不在中にたまりにたまったメールと郵便物の処理に追われている。
メールだけでも700件以上とは、なんとまぁ(悶絶・・・絶句・・・うぐぐ)
とはいってもその半数は、広告宣伝なのだが・・・。
それを仕分けするだけでも、ひと苦労だ。
日々、何気なく繰り返していることでも、ためてしまうと、たいへんなのだ。
「星の王子さま」の1節を思い出す。
毎日こつこつ根を引っこ抜かないと、その根は巨木のバオバブかもしれない。
もしバオバブの根をそのまま放っておけば、小さな星は、爆発してしまうのだ。

チベット方面の取材は、とても充実していた。
発表前なので詳しくは書けないが、あるテーマに添って、旅をしてきた。
漠然とする旅もいいが、ひとつのことを追究しながら旅をするのも楽しいものだ。
これから執筆の方がたいへんであるが、
今回の旅で得た貴重な体験を、文章にしていく作業は、
苦しさの中にも楽しい時間のような気がしている。
来年の4月5日発売の「coyote」5月号の誌面に掲載予定です。
請うご期待。

チベットからカトマンズに陸路で抜けたのだが、
たくさんの羊やヤギが国境を目指していた。
ネパールでは、ダサインというお祭りが間近で、
そのお祭りで需要が高まるからだ。
ダサインといえば、神に血を捧げる祭り。
その犠牲となるのが、この羊やヤギなのである。
彼らは、死に向かって黙々とひたすら歩いているのである。
なんとも。
そのあと行ったインドのアッサムで、
再び道端を闊歩する家畜の大群に会った。
また羊かヤギかなぁ、とよくよく見ると、
ブタ。
思えば普通の道端で、こんなにたくさんのブタがぞろそろ歩いているのを見るのは
きっと、はじめてのはずだ。
家畜小屋を移動でもするのだろうか。
鼻を前に突き出して、ブヒブヒ鳴らしながら
50頭近いブタの大群が過ぎていく。
圧巻であった。

・・・・などと実は、もっと書きたいことがあったのだが、
なんでブタの話になったのだろう。
まぁ、発表前なので、このへんで。


 

 

2004年9月25日(土         第一候補

 

 

久々のチベットである。
しかも長期の取材なので、
結構、気合いが入っている。
しかしながら、いつものごとく出発前はバタバタで、
朝4時起きだというのに、まだ眠れそうにない。

本日も準備などで、外を飛び回っていたのだが、
日本にしばらくいないのだから、
昼飯くらい食べたいものを食べようと思った。
その時歩いていたのは、ちょうど新宿界隈。
で、思いついたのが、新宿南口のサザンタワーに行く途中にある
『みやざき館』のチキン南蛮定食。
1度、頭の中に閃くと、どうしようもなく食べたくなる。
いつもなら、きっと魚系を思い出したのだろうけれど、
今日は、元気を出そうと身体が肉系を欲していたのかもしれない。

この『みやざき館』というのは、宮崎の特産物を集めた店。
特産物が並ぶ傍らに小さな軽食が食べられる場所が併設されている。
たぶん宮崎県の観光課かなにかが出店しているのだろう。
一等地にあるのに、美味いし安いのである。
名物の冷汁定食もいけるが、僕が好きなのはこのチキン南蛮定食。
なんと550円なり。
甘酸っぱいこの味が、たまらないのである。
なぜだろうと、ふと考えてみたら、
これぞ、おふくろの味なのだ。
僕の母は、宮崎の生まれである。
結婚して長野に来るまでは、ずっと宮崎で過ごしてきた。
母が幼い頃から故郷で培ってきた味というものは、
知らず知らずのうちに、僕の味覚にも影響しているようだ。

チベットから戻ったら、もう晩秋だ。
モモやツゥクパの美味いチベット料理を堪能した後、
帰国したら、何を食べたくなるのだろうか。
このおふくろの味が、第一候補かもしれない。

それでは、行ってきます。


 

 

2004年9月3日(金         小さな宿

 

 

学生時代、よく周遊券を片手に列車で北海道を旅した。
今では廃線になったところが多いのだが、
まだ国鉄時代で、北の大地には鉄道が網の目のように走っていて、
周遊券があれば、北海道の隅々まで行くことができた。
真冬の流氷を求めて、
鈍行列車に乗って、
一日中、車窓からオホーツク海を眺めていたこともある。

そんな旅をしていた時に、よく立ち寄った定宿があった。
『遊飛館』という名の小樽郊外の塩谷海岸にある小さな宿だった。
その頃は、僕を含めてユースホステルを泊まり歩く旅人が多く、
そういう旅人の間でも、人気の心温まる宿だった。
その宿のご主人から、一昨年、突然、メールをもらった。
トライアスロンの連載記事を読んで、
もしかしたらあの頃の宿泊者じゃないかと連絡をくれたようだ。
ご主人自身は、15年以上の経験をもつトライアスリート。
不思議な縁だった。

北海道に日本一長いオロロンラインという有名なトライアスロンのレースがある。
その体験取材で、レースに参加したのだが、
ご主人と奥さんが、わざわざ小樽から4時間もかけて応援に来てくれた。
そして、レース後、せっかくだからと、『遊飛館』に招待してくれたのである。
20年ぶりの再訪である。

塩谷の海岸に降りてくると、
なつかしい風景が目に飛び込んでくる。
そして、20年前と同じように、
四角くて黒い建物は、ひっそり佇んでいた。
時がそこだけ止まってしまったかのようだった。

15年ほど前に宿は閉めて、
今は、ご夫婦の終の住処になっているという。
いろんな旅人の思い出がつまった家で、
同じ趣味のトライアスロンの話をする。
そんな至福の時を過ごしながら、
しばし、昔の余韻に浸った。


 

 

2004年8月19日(水         私のうちなる

 

 

最近、いつも携帯して、読み直している詩がある。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私のうちなるコヨーテの息遣いが聞こえる
死を恐れない野性の静けさとしなやかさ
旅はここから逃れることではない
そう囁きかけるのはコヨーテなのか私なのか

ここからどこへ旅するとしても
そのどこはいつも私の生きるここ
からだを運ぶことは魂を運ぶこと
旅路は地平を越えて宇宙へと続くだろう

私のうちなるコヨーテが夢を見ている・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〜谷川俊太郎『コヨーテ』(coyote創刊号)より抜粋〜

 

谷川俊太郎が、新雑誌『coyote』に捧げたものなのであるが、
この詩を読んだ途端、心の奥底から沸き上る感情があった。
雑多な日々の生活の中で、埋没していた熱い衝動が蘇る。
そして力が漲るような勇気を、この詩から感じたのだ。

まだ先の話であるが、『coyote』の誌面で、
目を見開き遠吠えしている、
僕のうちなるコヨーテの姿を、
表現できそうである。

 


 

 

2004年8月8日(日         僕の夏の風物詩

 

 

暑い、暑いと言っている間に、
あっという間に立秋が過ぎ、
もう残暑見舞いの時期になった。
この日記もすっかり月誌化している。
歳月はさらに加速するようだ。

夕方、東京体育館のプールへ行こうと
千駄ケ谷の駅で、いつものように降りたのだが、
ものすごい人。
わ〜、またサッカーかなにかかなぁ、と思っていると。
浴衣姿の女性の姿もチラホラ。
そう、外苑の花火大会の日であった。
いつもすっかり忘れているのだが、
なんだか縁があるようで、
毎年、見る機会に恵まれるような気がする。
人込みの中で、近くから見るのも一興だろうが、
先日、調布の花火大会を間近で見たし、
外苑の花火といえば、自宅のベランダからと決めているので、
1時間、泳いだ後、急いで家に帰る。

この日記をずっと読んでいてくださっている方は、ご存知だとは思うが、
花火をベランダから見るといっても、
かなり遠いし、数年前からは、ちょうど花火があがるあたりに、
マンションが建ってしまって、
半分しか花火は見えない。

なんとか花火開始に間に合って、
電気を消して、空を見遣る。
想像力を働かせながら、
半分の花火を見る。
手には……。
冷え冷えの杏仁豆腐。
僕にとっては、これが夏の風物詩のようだ。

 


 

 

2004年7月12日(月         うっかり八兵衛、危うし!

 

 

以前、トライアスロンのバイク仲間でロングライドの練習に行った時のこと。
ちょうど花見のシーズンで、走行途中にミタラシ団子が並んでいたので、
補給食にと、1本。
郊外のある有名菓子店の工場を発見して、
迷わず寄り道して、フルーツいっぱいのケーキをパクリ。
……などと、自転車練習なんだか、
グルメサイクリングなんだかわからなくなったことがある。
他の仲間も充分に楽しんでいたはずなのだが、
その時ついた僕のあだ名が、『うっかり八兵衛』。
そう、あの水戸黄門に出てくる、少しおっちょこちょいなキャラクター。
食いしん坊のところが、そっくりだと言うのだ。
ぶぶぶ。
まぁ、憎めない愛すべきキャラクターだから、
結構、そのあだ名、気に入っていたのである。

その八兵衛が、胸焼けに襲われたのが、3週間ほど前のこと。
食事どころか、水も喉を通らない始末。
食欲がないのならば、まだ我慢できるが、
腹は減っているのである。
ちょうど石垣に行く朝だったので、
しかたなく空港の診療所に駆け込んだ。
神妙にして、医者の問診を受けると、
石垣から戻ったら、すぐに胃カメラを飲むように言われた。
幸い、石垣では、空港の医者が処方してくれた薬がよかったのか、
症状が軽くなって、食べることができる日もあった。
それでもダメな時は、ゲップもできないような苦しさなので、
石垣から戻った翌日、
緊急でも胃カメラを飲むことができる病院をネットで探して行った。

胃カメラを飲むのは、生まれてはじめてである。
自分の身体の中身がどうなっているか知るのは、
怖くもあり、でもちょっぴりワクワクする。
胃カメラで、僕の内臓を見ることができると思って、
結構、心待ちにしてベッドに横たわった。
「はじめてならば、あまり苦しくない方法でやりましょう」
そう医者から言われ、点滴のようなものを腕にさされて、
マウスピースを加える……。

「はい、隣のベッドで少しやすみましょう」
と看護婦さんに言われて、朦朧としながらも、隣のベッドに移動。
そして、しばらくうたた寝。
たぶん、イビキをかいていたと思う。
ふっと意識がはっきりして、気がつく。
ベッドを移動する前に、とっくに胃カメラは、終っていたのだ。
モニターで、自分の胃を見るのを楽しみにしていたのに……。
楽な方法っていうのも、善し悪しである。

診断結果は、逆流性胃炎というもの。
要するに、食道と胃の境目を閉める弁のようなものが緩んで、
胃酸が逆流して、食道が炎症を起こしてしまうのだ。
どうして緩むかといえば、いちばんの原因が加齢だと言う。
うぐぐ。
後厄にもなると、いろんなところにガタが来るものである。
筋肉のように鍛えられる部位なら良いのだが、
無理のようだ。
胃カメラで撮った写真から見ると、
それほどひどい炎症ではないとのこと。
緩んだものはしかたない。
またそうならないように、予防するしかない。
寝る前にものを食べたり、暴飲暴食は禁物のようだ。

ぎっしり並んだベリーが埋め込まれたタルトが呼んでいる。
涼しげな水菓子が微笑んでいる。
この時期、スパイスの利いたカレーもいい。
街の誘惑に翻弄されながら、
うっかり八兵衛は、しばらくは消化のいいうどんを啜るのである。

 


 

 

 

2004年6月14日(月         微笑み

 

 

近くのスーパーの前で、思わず足が止まった。
3日ほど前のことだ。
店先に並ぶ野菜や果物の山の中に、
懐かしいものを発見したのだ。
テニスボールより二回りほど小振りの少しいびつな球形。
茄子に黒を混ぜたような色をしているその球形の先には、
へたのようなものがついている。
ひょっとしてマンゴスティンじゃ、ないか?


南国の果物は、独特の匂いや味を醸し出し、
どれもが自らを主張して、それぞれに美味いのだが、
中でも、このマンゴスティンは、大のお気に入りである。
シーズン中にタイやカンボジアなどに行った時は、
毎日のように食べたものだ。
そういえば、ワンディと旅をした時も、
いつもそばに置いていた。
紫色の皮をペロッとむくと、
中から白い果実がポロンと出てくる。
その上品な甘さといったら……。
東南アジアの旅の重要な楽しみのひとつである。

以前、高級フルーツ屋の高野で、
冷凍のマンゴスティンを売っていたのは見たことがある。
でも、店先に並んでいるのはどう見ても生のままである。
貿易自由化の波が、こんなところにも来ているのか。
嬉しいなぁ。
と……手にとろうとした時、値札が目に飛び込んできた。
198円。
1キロではない。
ひとつ198円なのだ。
思わず手をひっこめる。
高野で見かけたときは、1個700円くらいだった。
それならば、あきらめもつく。
しかし今回は冷凍ものじゃない。
確か現地では、10分の1くらいの値段だったように思う。
ここは日本なのだから。
と背中を押すもうひとりの自分。
でも……。
結局、買うことができなかった。

それから3日。
スーパーの前を通るたびに、
マンゴスティンたちが微笑みかける。
山盛りになっていたマンゴスティンは、
徐々に数を減らし、
本日、マンゴスティンは姿を消していた。
あ〜ぁ。

 


 

2004年5月18日(金         神と語る

 

 

なんだか晴れマークがずっとないと、
気分も沈みがちだ。
晴れたからと言って、遊びにいけるわけではないのだが、
少なくとも洗濯物は、気持ち良く乾く。
それだけでも嬉しいものだ。
今日も久々に午後から晴れマークだと思って、
あわてて洗濯したのに、
予報ははずれて、曇ったままだ。
洗濯物のことを考えると、
ちょっとでもいいから日差しが欲しいところだ。
どうも台風が近づいているようだ。
その分、週末の天気予報が今日あたりから良くなってきた。
今週末は、長崎の五島列島で大事なトライアスロンのレースがある。
ハワイのアイアンマンの予選だ。
知人も多く出場するし、
僕も来年あたり挑戦してみたいと思っているので、
天気も気になるというもの。
さっきサイトで調べたら晴れマークになっていて、
ホッとしている。
選手たちには、ベストのコンディションで頑張って欲しいものだ。

今年のゴールデンウイークは、ほとんど信州にいた。
伊那谷の飯島町というところで、スピティの講演会をやったのだが、
1カ月前の予定では、すぐに東京に戻るはずだった。
しかしゴールデンウイーク後の海外取材が、
テロの影響で長期で延期になったため、
思わぬ時間ができたのだ。
せっかく近くまでいったのだから、
7年に1度に開催される諏訪大社の御柱祭りを見ることにした。
ちょうどトランヴェールという雑誌で準備段階の取材をしたので、
感慨もひとしおだった。
特に下社の春宮の木落しの時に、境内に響いた木遣りは、
それは味わい深いものだった。
木遣りは歌うのではなく、鳴くのだという。
木遣りは神主のように神と交信する役目も担っているのだ。
天に突き刺さるような高音の響きは、
まさに神と語り合っているようであった。
凛とした声が境内の木々の間で反響する。
それを聞いていると、背筋がのびる感じ。
そして、その木遣りが終ると同時に、
氏子たちが、勇壮な掛け声をかけて、
一挙に神なる木を坂の上から落す。
豪壮な中にも、静寂がある。
そんな祭りだった。

安曇野を自転車でロングライドしたり、実家でノホホンとしたり、
久しぶりにのんびりしたゴールデンウイークを過ごしたのだが、
そのツケが今週あたりまで続いている。
そうそうゴールデンウイークを終えて、家に戻ったら、
ベランダのリュウゼツラン(シンビジュウムかもしれない)のツボミが、
今年も咲きそろった。
全部で10個。
ほんとに、何の手入れもしていないのに、
カワイイ奴で……ある。
そのそばで、洗濯物が風に揺れている。
ええ? 雨が降り出しやがった。
午後から晴れマークじゃ、なかったっけ?


 

 

2004年5月1日(土         咲き急ぐ

 

 

桜が散り、花水木が咲き、もう藤の花が満開だとか。
今年は、花々が咲き急いでいると感じるのは、
僕だけではあるまい。
新緑のあの薄緑もかなり今年は早かった。
花粉も少なく、今年は春というものを多いに満喫した。
充実した4月だったように思う。

そう思えるのは、適度な緊張感を持って、日々過ごせたからかもしれない。
そう、今年も出てきましたよ、宮古島のトライアスロン。
今年の僕の目標は……。
トップ選手がゴールする前に、バイク(自転車)を終え、
トップ選手とランコースですれ違うこと。
まぁ、なんともレベルの低い目標なのだが、
過去2回とも、トップ選手のゴールの時に打ち上げられる花火は、
自転車の上で、聞いている。
だいたいトップ選手のゴールタイムは、
スタートから7時間30分〜40分過ぎあたり。
スイム3キロの僕の予想タイムは1時間くらいなので、
残りの時間は6時間30分〜40分。
楽勝じゃんと思う方もいるかもしれないが、
バイクが苦手な僕にとって、155キロをその時間で走るのは、
かなり難しいのだ。
それでも、今年は冬の間からスピニング(エアロバイクみたいなもの)や実走もしてきた。
腰痛に優しいポジションにも変えたし、
なんとかその目標をクリアしたいなぁ、と思っていた。

レース当日は、天気はイマイチで、
雨も降りそうな予報だったのだが、
波は穏やかで、スイムは、56分台という自己ベストタイムが出た。
これでさらに4分の短縮。
これなら目標をクリアだ、っと意気込んでバイクに乗ったのだが、
風の強いこと。
漕げども、漕げども進まない。
いつものようにバカスカ抜かされる。
やっぱりバイクのセンスがないようだ。
おまけに腰痛も出てきた。
3回ほどストレッチのため、下車したが、
昨年は倍近く降車したので、ちょっとはマシだった。
それで、バイクフィニッシュして、更衣室に入った時は、
スタートから7時間25分くらいだった。
まだ花火はあがっていない。
でも、それから着替えるので、
5分はタイムロスがある。
あわてて、着替えて、食糧を食べて。
ランに飛び出してからすぐに、
トップ選手とすれ違った。
ギリギリである。
でも、地に足がついてから花火の音を聞くことができた。
ひとまず目標はクリアできて嬉しかった。
おまけにランは、思ったほど足にダメージがなかったので、
5時間を切るタイムで、
12時間28分台でフィニッシュ。
参加選手1434人中856位だった。
ノロ亀選手の僕にしては上出来である。

昨年、宮古島に台風14号が上陸し、猛威を奮い、
莫大な爪痕を残した。
でも、人びとは地道に復旧活動をして、
このレースもいつも通りに開催してくれた。
本当に、ありがたいことである。

宮古島が終って、ここ数カ月の目標がなくなり、
ポカッと穴が開いたような気分でもある。
パッと咲いて、パッと散っちゃった感じだ。
でも、咲き急いだ花たちも、もう来年の準備をはじめているのだ。
じっくりゆっくり始動していこうと思う。


 

 

2004年4月2日(金         今年も桜の雨の季節

 

 

ソメイヨシノが満開である。
しかし昨晩の雨で、
そろそろ僕の大好きな桜の雨の時期に突入だろうか。
ここ1ヶ月ほどは運の良いことに、
ずっと東京にいるので、
ソメイヨシノだけでなく、
まだ堅いつぼみから、ほころび、3分咲き、満開と、
さまざまな種類の桜の花が、徐々に移ろうさまが、堪能できた。
なかでも、新宿御苑で見た、シダレザクラの1分咲きのほのかな紅は秀逸だった。
ソメイヨシノよりも、シダレ系が気になるし、
満開の桜よりも、1分とか桜の雨とかが好きなのは、なぜだろう。

ソメイヨシノが桜の雨の頃、僕の最も好きなヤエベニシダレが咲き揃う。
新宿御苑、駒場野公園、そして広尾図書館のある有栖川公園にも、数本ある。
この週末は仕事の合間に、
桜の雨や、ヤエベニシダレを見に、
花見ランでもしようかと思っている。

それにしても、今年は花粉が少なくて、だいぶ楽である。
くしゃみや鼻水は出るものの、
例年の苦しみに比べたら、全然、快適。
花粉症じゃない人は、こんな春を毎年満喫しているのかと思うと、
少々、うらめしくも感じるほどだ。
というわけで、今年はカラス天狗には、1度もなっていない。
(なんじゃ、それという方は、去年の日記へどうぞ)

世の中は、営団地下鉄が東京メトロになったり、
国立大学が民営化されたり、
税込み価格に変更になったり、
年度がかわって、新展開しているようだが、
僕の日常はなんのかわりもなく、
図書館通いに、運動に、花を愛でる日々だ。
そして最近の僕の頭の中のテーマソングは、
もちろん、松たか子の『桜の雨、いつか』である。


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