始業式の日。
潮田玲は赤いチューリップの花束と
小さな鍵を持って、まだ誰もいないはずの早朝の学校へやってきました。“サヨコ”の三つの約束のうちの一つ、「サヨコは
赤い花を活ける」を果たすためです。小さな鍵はサヨコに選ばれた徴で、
北校舎の戸棚の鍵なのです。戸棚の中には赤い花を活けるための花瓶が入っているはずでした。ところが、玲が戸棚を開けてみると、花瓶がありません!玲が正面玄関へ行ってみると、掲示板の下に真っ赤な薔薇の花束が花瓶に生けられています。愕然とする玲の耳に
鈴の音が聞こえました。その音を追ってみると、走り去る女子学生の後ろ姿が…。あわてて後を追った玲ですが、追いつくことはできませんでした。
その日、
関根秋は少々焦りつつ登校しました。じつは、六番目のサヨコに選ばれたのは秋なのです。秋が隠し持っていた
サヨコの鍵を見つけた玲が、自分がサヨコになるために、鍵をこっそり拝借していただけなのです。正面玄関の掲示板の下に飾られた赤い花を見て、「玲が六番目のサヨコをしている」と確信した秋は、始業式をサボって校庭で玲を詰問します。鍵を返すように言う秋に対し、玲は、自分が先を越されたことを告げ、「せめて、もう一人のサヨコを突きとめるまではサヨコでいさせて欲しい」とうったえます。
その時、始業式が執り行われている体育館から不穏な音が聞こえてきました。二人が体育館に行ってみると、
ステージに照明が落下しています。生徒達はしきりに「サヨコがやった」と騒ぎ立てます。玲は落下した照明のそばに、赤いチューリップの花が一つ落ちているのを見つけました。始業式の後、玲のクラス担任・
黒川先生は生徒達に「留め金が緩んでいた為」と説明しますが、玲は釈然としません。
玲と秋のクラスに
転校生が紹介されました。
津村沙世子。言い伝えのサヨコと同じ名前なので、クラスメイト達は動揺します。玲は、今朝聞いた鈴の音と同じ音を彼女がたてたのを聞いて、今朝見た女子学生が津村沙世子だったのではないかと疑います。その疑いが確信に変わった玲は、”六番目のサヨコ”を賭けて、沙世子とバスケットボールで勝負します。けれども、途中で沙世子が負傷してしまい、決着をつけることができませんでした。

秋は、三つの約束が書かれた”サヨコの
指令書”を玲に譲り、とうとう、玲が六番目のサヨコになることを容認します。しかし、転校してきて以来、怪しい行動をとる津村沙世子に、秋はなぜか危険感を覚えるのでした。