「六番目のサヨコは、わたし」
しかし、
潮田玲の告白はクラスメイト達に一笑に付されてしまいます。
サヨコの鍵まで見せて信じてもらおうとする玲ですが、いままで
サヨコの仕業とされていること
- 始業式で、照明を舞台に落とした
- 始業式の日、正面玄関に、赤い薔薇の花を生けた
- 掲示板にメッセージを貼った
- 文化祭で、あの体育館の騒ぎを起こした
- 文化祭で上演された芝居の台本を書いた
そのどれも、玲のしたことではないため、全く相手にされません。
花宮雅子に「玲は何もしていない。玲はサヨコじゃない」と断言され、玲は激しく落ち込みます。
その夜、一人部屋に暗く閉じこもる玲を、
津村沙世子は呼び出します。
「もし、サヨコの約束が破られたなら、全ての扉は閉ざされ、二度と開かない」サヨコの伝説ではそう言われていることから、沙世子は玲に「これから何か起こるのでは?」と心配する気持ちを表します。そして、今日庇ってくれたことに感謝するのですが、玲は、誰にも信じてもらえなかった辛い気持ちを吐露するのでした。
文化祭が終わり、生徒達は勉強に身が入りません。文化祭で起こったことが強烈すぎて、その非日常性からまだ抜けきれないでいるのです。そんな様子の生徒達を見て、
関根秋と沙世子は“サヨコ”について語り合います。「サヨコって何なんだろう」と問いかける沙世子に、秋は「サヨコは覗き込んだ者の心を映す“鏡”だ」と応えます。すると、沙世子は「私たちに鍵を送ってきた人は、どういう自分を映して欲しかったんだろう?どうして私たちだったんだろう?」と提起し、秋も改めて“サヨコ”について考え始めます。

そのころ、掃除当番だった玲は、ゴミになった「
うたごえ喫茶みぞぐち」の歌詞カードを見て、文化祭の芝居「
六番目の小夜子」の台本が、
黒川先生の
ワープロを使用して印刷されたものだということに気が付きます。そして、黒川が
サヨコの正体ではないかとという疑惑が高まり、教室で
昭和六十三年度の卒業アルバムを調べなおします。
自分がサヨコだということをみんなに信じて欲しい玲は、荷物を取りに来た雅子に、黒川と
サヨコ伝説のつながりの事実を告げます。しかし、雅子は「みんなの前でそんなことは言うな」と釘を差します。玲がサヨコの正体を突きとめたとしても、サヨコ伝説が先生が仕組んだ陰謀だったとしたら、みんなをがっかりさせてしまうと言うのです。玲は、直接黒川を追求することを迷います。
秋は、父の元へ弟・
唐沢由紀夫のことを頼みに行きます。そこで父に自分の写真に人物が写っていないことを指摘されます。秋は今までに自分が写した写真を見直しますが、人物が写っているものは一枚もありませんでした。秋は、人物を写すことで写真に表れてしまう、自分の弱さや駄目な部分を直視できなかったのです。秋は“サヨコ”という鏡を覗き込もうとしていなかった自分に気づき、改めてサヨコ伝説に向かいあう決意をします。
翌朝、玲は、自分がこれからどうすればいいのか答えを探しに、体育館にバスケットボールをしに行きます。しかし、玲より一足先に「“鏡”を覗きに」来ていた沙世子に会い、「玲が決めたとおりに行動するのがいい」と励まされ、黒川に直接問うことを決意するのです。
その日の朝の会。黒川に質問しようとする玲より一瞬早く挙手したのは、秋でした。秋は静かな口調で黒川に問います。
「十五年前、先生はこの中学の一番目のサヨコだった…。 そうですか?」